【赤】 被虐 メイジメイジは、用事がある時以外は、ずっと手術室にいる。 手術台の上でずっと、突っ伏して 返事も帰ってこない抜け殻に話し続けていた。 少年は死後の世界があるなんて知るはずもない。 ……だからこそ、友達にも嘘を吐き続けた。 なにも知らないままでいてほしかった。 「セナさん、雨と風弱まってきたんだ ……もうすぐ帰れるかな。助けなんてくるのかな」 (*11) 2021/07/11(Sun) 0:26:31 |
【赤】 被虐 メイジ「セナさんがいなかったら ……誰がオレを助けてくれるの……?」 そうして呟く背中は、ただの小さな子供のようだった。 「……あはは……もうそんな子供みたいなこと 言ってられないよな……。 もうひとりだ、オレ。家族はみんな死んじゃったり 出ていったり、いなくなっちゃったから」 「自分でやったんだ」 実の父親も、──優しい父親がいたらと夢見た人のことも。 (*12) 2021/07/11(Sun) 13:10:40 |
【赤】 被虐 メイジ「最後、なんて言おうとしたのかな」 ふいに思い出す。考えてもわかるはずもない。 メイジには何も見えない、聞こえない。 だから、ずっと目の前の遺体だけを見つめている。 「死んだら、どこにいくのかな」 「やっぱ地獄かな? 悪いことしたもんね」 「楽になれないかもね」 「オレのこと、実はどっかで見てんのかな ……それはそれで、いやだな」 「オレも死んだらおなじとこ行けるかな 悪いことしたからさ」 思い浮かんだ言葉を脈絡もなくぽつぽつ。 (*13) 2021/07/11(Sun) 13:17:44 |
【人】 被虐 メイジ>>32 【手術室】 「……、……そう」 ぽつり。消え入りそうな声が零れた。 ロクの話を戯言と思うこともできた。 だけれど、どうしてもそう口にする 友達が容易に想像できてしまうのも事実だった。 「……バカじゃないの」 だから、八つ当たりのような言葉を吐く。 言い表せない感情を拳に込めて握る。 「どこまでイイコぶってるんだ、あいつ」 「じゃあなんだよ……素直に"オレのために食料になれ" って言えばよかってことかよ……」 皮肉なものだ。 自分は最後まで"すごくて、いい友達だった"という 夢を見させたまま、彼を殺そうと決めたのに。 メイジは自分勝手な人間だった。 (34) 2021/07/11(Sun) 18:48:20 |
【赤】 被虐 メイジ「頭から焼きついて離れないんだ」 バラバラになっていく手足や、開かれる胸、鮮血 赤黒い内臓、砕かれる骨──頭だけになった、人間の姿が。 人を刺して、肉を切る、感触が── この手で、脈打っていた鼓動を止める瞬間が。 忘れろ、と言われたことは覚えている。 忘れられる日なんて、来るだろうかと今は思う。 胸が痛い、頭が痛い、とうの昔に治ったはずの傷が疼く メイジは、よく怪我をする少年だった。 (*14) 2021/07/11(Sun) 19:23:13 |
【赤】 被虐 メイジ「……嫌いだよ。みんな、みんな」 「生きてって言い残して勝手に死んでくのも オレの心に付け込んで殺させるのも オレを許してくれるやつも」 「どうにもできないオレ自身も」 誰のせいではない。誰のせいにもできない。 だってそうしなければ生きられなかったのだから。 でも行き場のないこの感情は、何にむければいいのか。 「……でも……ありがとう」 (*15) 2021/07/11(Sun) 20:59:34 |
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