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【人】 骸狩り スカリオーネ空を見上げる。窓際の席で。いつものように。 しかし今日は、いつも通りではない夜。 別に、年貢の納め時なんてつもりはなく、 街中に広がっている部下達の内、 3割程はなぜか今この酒場に集っていて。 煙の魔女に目をつけられない程度の注文をしながら、 入口の方を睨んでいる。魔女は男の方を睨んでいるが。 「……俺を睨むな。文句なら政府に言え」 そもそも、売り上げに繋がっているんだから 文句を言われる筋合いもないはずなんだが。 そうこうしている内に、扉が開いて。 衛兵がひいふうみい…… まあ、少なくとも前日までよりはずっと多く。 お陰で、入口でにらみ合いが起きていて。 「スカリオーネ!骸狩りのスカリオーネ、出頭せよ!」 なんて怒鳴り声まで聞こえてくる始末。 なんとも、喧しい夜だ。 (2) 2021/12/19(Sun) 1:23:39 |
【人】 骸狩り スカリオーネ「騒ぐな」 席を立つ。こんな状況になるのは政府連中もわかっていたはずだ。 だからあんな大所帯で押し掛けて、 今や戦争もかくやと言う二分の軍勢が出来ている。 その片方の人波は、自分が歩けば勝手に割れていく。 「お前らのような阿呆が騒ぐから、死者が眠れん」 歩いていく。衛兵の群れを前に、威容が立つ。 言い草が気に入らなかったのだろう衛兵の一人が、 苛立ち交じりの声と共に拳を振るった。 「…………」 男は、変わらない。その表情ひとつ歪めない。 部下達を諫める為に片手を挙げ、 殴ってきた男を冷たく見下ろした。 「俺がこうして大人しくしているんだ、 お前達も大人しくしていた方がいいとは思わないか」 その言葉に、悪態と共に下がっていく兵を見て、 その後ろについて――いこうとして。 (3) 2021/12/19(Sun) 1:34:50 |
【人】 骸狩り スカリオーネ後からやってきた兵が、耳打ちして。 オロオロしている様子に、耳をそばだてる。 聞こえる内容は、まあ、つまり、 様々な混乱の中、全部"なし"になったという話で。 「……ほう?」 いびつに笑って、手を伸ばす。 先に手をあげた男に向けて。 つまりはこれも、男のルール通り、"平等"に。 「なら、お前がしたのは、喧嘩の押し売りだな?」 そうして、鎧の男を持ち上げて。 いつかのごろつきと同じ光景が 鎧の分、騒がしく繰り広げられた。 手をはたいて、一瞬後に部下の歓声があがって。 「さあ、これでいつも通りの夜だ。 ……。お前達、何をボサっとしている。仕事に戻れ!」 骸の代わりに狩られてはたまらない、と 部下達は蜘蛛の子を散らすように酒場から消える。 そうして、残された骸狩りの男は、 いつもの席に戻っていって、 「……東国酒と、赤蜥蜴の尾開きを。 今夜はゆっくり過ごせそうだ」 いつものように、注文した。 (4) 2021/12/19(Sun) 1:44:43 |
スカリオーネは、まだ変わらない。まだ、終わらない。 (a6) 2021/12/19(Sun) 1:46:11 |
スカリオーネは、コップを二つと、上等な酒を持って部屋へ帰った。 (a11) 2021/12/19(Sun) 22:13:07 |
スカリオーネは、交わした約束は概ね守る男だ。 (a13) 2021/12/19(Sun) 23:51:23 |
スカリオーネは、ノアベルトの主として、潰れる前に酒はやめておいた。 (a45) 2021/12/20(Mon) 19:44:01 |
スカリオーネは、詩人の言葉を思う。変わらぬものはない。万物は変転する。しかしその理は変わらない。 (a55) 2021/12/20(Mon) 20:57:15 |
スカリオーネは、ならば、と思う。変わる事こそ、変わらぬ事。変わらぬ事こそ、変わる事。 (a61) 2021/12/20(Mon) 20:59:33 |
スカリオーネは、きっとあの日にしがみついていようとも――煙以外を、ほんの少し纏っているのだろうな。 (a66) 2021/12/20(Mon) 20:59:48 |
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