【人】 踊子 リリー ―― 早朝:自室 ―― [ …外の騒がしさで目を覚ました。 祭り二日目となれば熱気が落ち着く、…こともなく 相変わらず朝から人々は忙しない。 窓越しに見える年若い歌姫が歌を響かせ それを観衆が褒めたたえ、──繰り返し。 女の耳にも既に、男の圧力は届いている。>>1:102 ああも怒らせたのだから予想し得た未来とはいえ、 やはり昨日、青年を巻き込まなくて正解だった。 ────さらりと髪を揺らし、立ち上がる。 ] (……食えない狸ね、本当) [ 奇しくも他の誰かと同じような感想だったか。 今頃噂話は人を伝い、母にも届いているはずだ。 溜息を零しては、首元へリボンを結びつける。 ] (6) 2022/11/26(Sat) 21:35:31 |
【人】 踊子 リリー[ それでも一度だけ味わったあの自由は、 女の足元をぐらつかせた。 自分自身でさえ、自分を大切に出来やしないのに 向けられる優しさは心を不安定にさせた。 本当は、自由になる方法なんて知っている。 …………ひとりになるのが怖いから、 誰かに縛られる道を選んでいるだけ。 ] (8) 2022/11/26(Sat) 21:35:42 |
【人】 踊子 リリーあーあ。 ……悪いことしちゃったな。 [ きっと彼は、ただの善意だったに違いないのに。 ……それにしても、噂通りだったのは見目と歌だけで 血濡れたナイフや二択を迫られることもなかったな、と ラ・コスタの怪人の話を思い出し、息を吐く。 彼が本当にそうであるかはさておいても、 ─あの奇妙な力を思えば、荒唐無稽な話でもない。 時間を掛けて身支度を整えた女は、 無意識に昨日の噛み痕をなぞっては それから外へ足を踏み出した。** ] (9) 2022/11/26(Sat) 21:37:27 |
踊子 リリーは、メモを貼った。 (a11) 2022/11/26(Sat) 21:38:20 |
【人】 踊子 リリー[ ────女のするべきことは決まっていた。 あの腹に一物どころか何物も抱えた男の元へ赴き、 文句の一つでも投げてやろうと思ったのだ。 ……というよりも、そうせざるを得ない¥況へ 整えられている…と言った方が正しいか。>>22 許しを乞うつもりはなかった。 それさえ男の神経を逆撫でしそうなものだけれど、 もしそうなったとして、そんなもの今更だ。 ……彼はあの時、 女神よりも先に望むものを与えると言った。>>0:74 けれど彼では、──否、女神以外の他の誰でも 女の望みは叶えられない。 大きな舞台も、輝く為の権力も捨てた妄執が、 今以上の不興を買うことは覚悟して──… ] (40) 2022/11/27(Sun) 12:40:28 |
【人】 踊子 リリー[ 面倒な質問と彼は言うけれど、大事な問いではある筈だ。 彼が本当に怪人なら、人の世の道理は ある程度無効にもなりはするだろうけれど それにしたって巻き添えを食らわせる必要もない。 いや、そもそも、自分は昨日言ったのだ。 ──忘れてくれていい、と、…確かに。 ] …………まさか貴方、 わざわざ返事をしに来たの? 忘れていいって言ったの……聞こえなかった? [ そんなはずはない。届く声で紡いだのだから。 とはいえ質問を遮断する強引さを思うに、 訊いても答えが返ってくる気はしなかった。 ──あの狡猾な男の圧力は、各方面に掛かっているが 流石に街の、管理者などいていないような場所は 抜け道に近しいものでもあるだろう。>>28 ] (42) 2022/11/27(Sun) 12:40:39 |
【人】 踊子 リリー[ ──────……、震える足で地を踏んだ。 不自由を貫く方がきっと楽で、 この先困らないことなんて知っている。 ここで踊ってしまえばもう、後に引けないことも。 一歩。 歌に合わせ、くるり、と舞う。 二歩。 ────後はもう、心の向くが、まま。 ] (44) 2022/11/27(Sun) 12:40:49 |
【人】 踊子 リリー『 ねえリリー、 いつかお母さんの手から離れられたらさ、 もっと自由に踊れると良いね 』 [ 姉の、いつかの言葉が不意に脳裏を過った。 ] (45) 2022/11/27(Sun) 12:40:53 |
【人】 踊子 リリー[ まだ夢うつつから醒めない人もいる朝に、 青年の歌は冷たい空気へ熱を乗せた。 私は、──きっと誤魔化す手段も持っていたけど それでも、……二人だけの舞台で踊った時みたいに ──或いはそれ以上に、花が揺れるように、舞って。 確かなことなんて分からないけれど。 私が、私を、──大事にしてみたいって その時初めて、…………思ったせいだ。 ] (46) 2022/11/27(Sun) 12:40:58 |
【人】 踊子 リリー[ やがて遠くないうちに歌は止み、 女の舞いもそこで一度終わりを見せる。 周囲の人々や、この舞台を作り上げた青年を 目に入れる余裕は未だ無く。 女は、今にも崩れそうな足を叱咤して、 立ち続けるのが精いっぱいだった。** ] (47) 2022/11/27(Sun) 12:41:01 |
踊子 リリーは、メモを貼った。 (a21) 2022/11/27(Sun) 12:42:03 |
【人】 踊子 リリー[ その問いはいつかの再演のようだった。>>90 女もそれを理解して、苦く笑いながら肩を竦める。 忘れていいと言ったのに、 ──寧ろ忘れて欲しいと思っていた程には。 ある意味では、そこも彼の自由さかもしれない。 人々の拍手の音はどこか遠くに聞こえて、 ただ、促されるままにどうにか足を伸ばすだけ ] ……いつ聴いても、素敵ね。貴方の歌。 [ ちいさく微かに、呟いた。 そんなにも綺麗ならきっと、大きな舞台も夢ではない。 未だに名を語られる演者たちのように。 ────なんて、流石にそこまでは言わずとも。 言外に含ませ、僅か、睫毛を伏せた。 ] (104) 2022/11/27(Sun) 23:04:40 |
【人】 踊子 リリー[ ──…この二日間で何度目かの浮遊感。>>91 どこに連れられてももう驚きはしないだろうけれど、 先手を打って全てを明かす様は なんだか随分と、女の相手に慣れたような。 ] ……ご丁寧にどうもありがとう、怪人様? [ よく手入れのされた部屋と、日の差し込む窓。 品の良いアンティークの調度品が置かれた室内は、 使用人でも雇っているような清潔感だ。 流石に家主のベッドに座るのは、…と思ったけれど 結局は、促されるままに柔いベッドへ腰を下ろす。 喧騒から遠のいた室内に 投げられた問いかけはよく響いた。 ……微かに、けれど確かに、肯いて。 ] (105) 2022/11/27(Sun) 23:04:45 |
【人】 踊子 リリー────良いよ。 自由なんてまだ、……何にも分からないもの。 貴女が隣で、教えて。 [ 私を私とは見てくれない人の為に踊るのは、 もう、したくないけれど。 貴方だけの、舞姫。 ──…なってみたいなって、思ったの。* ] (107) 2022/11/27(Sun) 23:04:57 |
(a40) 2022/11/27(Sun) 23:06:57 |
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