【人】 小さな心 サルガス>>70 昼過ぎ メレフ 「だいじょうぶ、だいじょうぶだ。ああでも午後、おやすみ、もらったんだ。 だからね、へいき。うごけるよ。みんなのこと、それに、解決のほうほう、さがさなきゃ」 声は濁り、喉の裏側をえぐるように低く鳴らす。普段のようにアルトは通らない。 横倒しになった顔は痛みのせいかみるみる紙のように白く青ざめる。 襟首を広げてみるならば、よくよく見れば白い包帯が覗いていた。 「メレフ、むりに、触らなくていいよ……ころんだ、だけだもの。へいきだよ。 ねえ、メレフ、あれから、なにかあったんでしょう。きみのほうが、ずっと心配だ」 それでも。案じ、思い起こすのは朝方の貴方のひどく弱った様子のほうで。 ななふしのように細い腕に力をかけて、体を起こそうとする。 なにか、話したいことが、或いはこれからについて、相談したいことがあるのだろうと、 そればかり気にしているのだ。 (72) 2021/05/30(Sun) 1:54:20 |
【人】 小さな心 サルガス>> 中庭 ルヘナ 「……うん。きっと、できるよね。ぼく、がんばるよ。がんばらせてほしい。 そのために、ここへ来たんだもの」 貴方の方へも、歩み寄って手を伸ばして。握り返してくるものがあると信じている。 少しだけ笑顔を作ったけれど、それはすぐに真剣な表情に置き換えられた。 「ルヘナ。ぼくも、きみも。ここにいるよ。きみの傍に、ぼくはいるよ」 (74) 2021/05/30(Sun) 2:21:14 |
【人】 小さな心 サルガス>>73 昼過ぎ メレフ 「……がんこ、なんだもんな。ぼくも、そうみえるのかもしれないけれど。 ぼく、あんまりだれかに話すの、とくいじゃないんだ。……お兄ちゃんだもの」 いつでも、一人きりで頑張ろうとしていたのは、それが自分が立っていられる理由だから。 口にしてしまえばそこから瓦解してしまいそうで。 話し始めるまではさらに随分時間が掛かった。どうしても、誤魔化してしまいたいように。 黙りこくっていれば背中に隠していられるのではないかと、状況は拮抗していた。 それがずいぶんと続いて、埒が明かなくなってしまってから、ようやく口を開いた。 「……教員棟を、さがしてみてたんだ。 こんなにたくさんいなくなったから、一人くらいは見つかるかもしれないと思って。 森の中にひとをかくすのは、たいへんだから、そっちじゃないかなってかんがえたんだ」 (75) 2021/05/30(Sun) 2:33:35 |
【人】 小さな心 サルガス>> 中庭 ルヘナ 握り返された手を取る。少し体温の高い指が、柔らかく力を込めた。 「ああ、……なんだろう。ゆるしてくれるんだなって、思ったかもしれない。 これからのことが。いまここにいる君がどこにもいってしまわないよう。 がんばるよ、ぼく。もうだれも、なんかいも、だれかをとられてしまったりしないよ」 触れ合うことができるのか、不安に思っていたのは少年も同じだった。 何も出来ず、連れて行かれるのを是としてしまった有象無象の一人に過ぎない自分を。 また手をとってくれたことを、とてもとても大事なものだとして。 手繰った手は、そこにある形を確かめるようにきゅうと握った。 (76) 2021/05/30(Sun) 3:03:08 |
【人】 小さな心 サルガス>>3:77 昼頃 メレフ 「そんなことは、ないよ。メレフだって、みっつしか違わないもの。 このなかで、きみたちは忘れがちかもしれないけれど……ここにいる子は、みんなこどもなんだ」 年長者が年少のこどもの面倒をみるような環境では、それが一つの社会になる。 けれどもここの子供たちがどれほど功を成しても、外で一人前と見做されるのは難しい。 店は持てないだろう。剣は勝てないだろう。屋号を受け継ぐなら家の事から始めなければ。 ここがとても特殊な空間だということを、市井のこどもは知っている。 「うん、それで。あいている窓があったから、雨樋をのぼってのぞいてみたんだ。 中はまっくらでよく見えなかったけど、ひとかなにかがいるみたいにみえた。 こんなひるまに、暗くしてるのに。 ……そしたら指をすべらせて、落ちちゃったんだ。なんとか、なったけど」 シャツのボタンを少し動きの滞る指で外す。本当は普段の動きをするのも大変だ。 横倒しのまま肩をはだけると、肩から胸にかけて巻かれた包帯が見えた。 右肩から背中にかけては、薄皮一枚剝いたかのように赤と、青との入り交じる痣ができている。 疲労骨折や気胸を危惧して、強く固定しているのだろう。 それから、それとは関係なく。鎖骨から胸の下部までかけて、定着しきった傷が一本。 けれどもそれ以外に目立った傷はない。転ばされ、けつまずいたものはあるかもしれないけれど。 (78) 2021/05/30(Sun) 9:28:44 |
サルガスは、知らない生徒に声をかけられました。 (a87) 2021/05/30(Sun) 14:44:53 |
サルガスは、ひなたを抜け、日の落ちかける教員棟へと入っていきました。 (a88) 2021/05/30(Sun) 14:52:42 |
小さな心 サルガスは、メモを貼った。 (a91) 2021/05/30(Sun) 15:30:33 |
サルガスは、深夜の教員棟を走り出しました。 (a92) 2021/05/30(Sun) 16:36:39 |
サルガスは、深夜の教員棟で知らない大人に見つかりました。 (a97) 2021/05/30(Sun) 18:01:59 |
サルガスは、走り回って逃げています。 (a98) 2021/05/30(Sun) 18:02:15 |
サルガスは、大人に追いつかれてしまいました。 (a99) 2021/05/30(Sun) 19:01:58 |
【人】 小さな心 サルガス>>93 昼過ぎ メレフ 「……けれど、いちにち、いちにちと状況が変わっていくのだもの。耐えられないよ。 メレフだって、ぼくの立場だったなら、そうするのじゃないかな。 ぼくは……メレフになにがあったのか、知らない。話したいとおもうまで、聞かないよ。 けれど、ぼくだったなら。やはりきみと同じように、多くに働きかけようとするだろう」 見えないもの、聞いていないこと。互いに、秘匿していること。 それを程度問題で比較することなどできやしないが、それでも、漠然とわかるのは。 自身がくじけそうになっても、手折られても、自分たちは止まらないだろうということ。 「これは、ぼくの病気のほう。ほら、ここにきた子たちは、なにかしら抱えているでしょう。 ぼくは、これ。生まれつき、心臓が人よりもずっと小さいんだって。 だからそれを治すために、なんどか手術をしているんだ。ほかにも、投薬や検査とか。 ……そのおかげで、むかしに言われていたよりもたくさん生きれてるのも、ほんとうなんだ」 ギムナジウムへの不信を抱えきれてしまえない理由。 それは、確かな成果だった。小さな体に、確かに真の意味での恩恵は果たされている。 逆に言えば、それがなかったらもっとたやすく、不信を武器に敵意を抱えられていただろうか? (97) 2021/05/30(Sun) 19:32:28 |
サルガスは、ネズミのような心臓をとくとくと鳴らしている。 (a104) 2021/05/30(Sun) 19:35:03 |
【人】 小さな心 サルガス>>100 昼過ぎ メレフ 「……シェルタンに? ……それは、ぼくは……聞いていいこと? きみが、だれかに知られたくないとおもうのなら。それは、むりしなくていいんだよ。 きみからみたらぼくはきっとちいさい年少者だろうけれど……ときどき、わがままを言っていいんだ」 絞り出すような言い様に、単純にわかったと返すことはできなかった。 いいかな、と一言だけ確認をとって、横顔に手を伸ばす。 相手がそうしたように、ほとんど触れるかどうかもわからない手が、ぽんと叩いた。 「ぼくがびょうきのこどもでなければ、もっと激情のままにうごけたかもしれない。 でも、だからって、ぼくは苦しんでいるこどもたちに、がまんしろなんて、言わないよ。 だいじょうぶ。きみが戦うなら、ううん、きみが立ち止まっても。 そのさきで、ぼくはまだだれかを守るために、たたかっているだろうから。 だから、いいんだ。きみは、きみの思うように、やるべきだ。 立ち止まってもいい。振り返ってもいい。それでも、きみは、きみだから」 薫風は窓から薄っすらとそそぎこみ、曇天を透かした陽光が差し込む。 転げたままの体は、言葉ほどには強かではなく、たよりないと笑ってしまえるかもしれないが。 それでも。少年の瞳は、折れた様子ではなかった。 触れた皮膚から、静脈から。とくとくと小動物のような鼓動が、血の流れを伝えている。 それはまだ、多くが起こる前。昼の陽光の下の、はなしだった。 (102) 2021/05/30(Sun) 19:54:08 |
サルガスは、知らない大人を教員用の井戸に突き落としました。 (a107) 2021/05/30(Sun) 19:55:25 |
サルガスは、浮かび上がってくることのない体を、見えなくなるまで見つめていました。 (a108) 2021/05/30(Sun) 19:55:48 |
サルガスは、 。 (a109) 2021/05/30(Sun) 19:56:07 |
(a111) 2021/05/30(Sun) 19:59:20 |
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