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【人】 衝撃波 ポルクス処刑の時間。男は今日も自室にいる。 自室に居るにも関わらず扉は薄く開きっぱなし。 動く人の音の行く先を心臓で追っていた。 「…………、」 どうしても気になってしまう。 完成した曲の楽譜を乱雑に片付け、中継を繋いだ。 (1) 2022/03/05(Sat) 21:48:50 |
【人】 衝撃波 ポルクス自室で中継を見ていた。静かに中継を見ていた。 中継を見ていた。中継を見ていた。 中継を見ていた。中継を見ていた。 中継を見ていた。 中継 を、 「……、…………う゛、あ゛……」 画面から大きく響き渡る叫びに。 空いた扉から伝わる微かな振動に。 胸を、頭を抑える。身体が震える。 心臓が苦しくなる。恐怖心が流れ込む。 思考回路はぐちゃぐちゃだ。ギターを手にした勢いのまま扉にぶつかり崩れ落ちる。 ――処刑室にはもう絶対に来るなよ 思考回路はぐちゃぐちゃだ。震える手と身体で扉を開き動き駆け始める。 「……る、……れしゃ…………、ッ!」 思考回路はぐちゃぐちゃだ。間に合う、間に合わない、関係ない。考えられない、分からない、分からない事も分からない。 ただ頭にあるのは。 ――一刻も早く愛しの魚が陸へ打ち上げられてしまった舞台へ 出来損ないの機械は。 制御不能のまま恐怖を辿り処刑室へと向かう。 (41) 2022/03/07(Mon) 2:49:55 |
【人】 衝撃波 ポルクス「……ッ、ある、れしゃ、」 ギターを背にした出来損ないの機械がひとつ。 心臓を抑えたままに。フラつく足取りのままに。 荒くなる呼吸に身体を震わせ現れる。 ――最後くらい華やかにやろうと思ってさ 穏やかな笑みを浮かべていたあの時の音はどんなだったか。 自室で中継を見ていた。だから知っている。 あの部屋には炎も、赤い空も、崩れた瓦礫も、焦げた跡も。 何もなかった。 狼の首を討ち獲ろうと舞い踊る 処刑人達 と。夢を攫うのを代償に赤に沈んだ 鎖の蛇 と。恐怖に掬われ打ち上げられた 歪な魚 と。凶器と血溜まりがあるだけだ。 端から周りなど見ていない。目もくれない。 魚に歩み寄る英雄も、銃を構える悪魔も認識しない。 その機械は真っ直ぐに愛しの魚まで駆け抜ける。 死に抗い跳ね続ける身体の傍まで。 この機械は此処に辿り着く前から己へと強化を施している。 身を軽くする振動により駆ける動きは素早く。 筋力を底上げする振動により抑え込む力は強く。 脳に無理やり信号を送り続ける。 己を襲う激しい頭痛など知らん顔だ。 アルレシャの痛みに比べたらこんなもの。 (48) 2022/03/07(Mon) 22:04:29 |
【人】 衝撃波 ポルクス駆け抜けるそれが魚へと近付くことが叶ったのならば。 崩れ落ちた身体の目の前で両の膝をついて。 片方の手をアルレシャの頬へと添え。 もう片方の手でアルレシャの愛銃を。 震える手と一緒に包み込むように握るだろうか。 撃たせぬよう引き金にある指を指で浮かせ。 強い握力と腕力に導かれ銃口は天を仰ぐ。 一般的な人間であれば容易く抑え込めるくらいの強化はしてある。 それでも足は取り押さえていない。暴れようと思えば暴れられるのだろう。 尤も、この拘束を解く力は今のアルレシャには無いのかもしれないが。 己の震えと共にアルレシャの震えが伝わる。 そして音、振動でその感情の全てが伝わる。 「アルレシャ、迎えに来た」 それでも、この機械の声と瞳は揺るがない。 「大丈夫、怖いのはもう……終わるから」 口だけを動かす。 「――――…………」 ▼ (50) 2022/03/07(Mon) 22:23:37 |
【人】 衝撃波 ポルクス機械は夢を見ない。 機械は魚を愛でる。 愛しの魚の額へと口付けを落としたその後は。 天を仰いでいた銃口をその魚の頭、米噛みへと突き付け。 体温をなぞり絡めるよう動かした手。 己の指を引き金へ添え。 引く。 ――バン!!! いのちの終わりの音。 銃声をひとつ、轟かせた。 そばにあるのはもう。 音の無くなった身体だけ。 (51) 2022/03/07(Mon) 22:25:15 |
【人】 衝撃波 ポルクスぐずっていても仕方がない。 ――理解している。 仰向いて口をきゅっと結び。 ――もう零れ落ちないように。 か細い溜息が長く空を揺らした。 ――心臓が寂しいな。 やがてそれは。 抱き締めていた身体をゆっくりと引き剥がし。 床へと寝かせ。乱れた髪を、服を整えてから。 運ぶのに邪魔になるといけないから。 ……それは漸く、愛しの魚から離れていく。 それでも。 運ばれていってしまうまでは。 寂しくないように。 そばにいるよ。 (55) 2022/03/07(Mon) 23:50:22 |
ポルクスは、二度寝を感知した。 (a28) 2022/03/08(Tue) 4:30:10 |
【人】 衝撃波 ポルクス男は演奏を行うためステージへと向かう。 だがその歩みはまだ。 まだトレーニングルームには向かわない。 気まぐれに散歩をするように。 わざと遠回り。廊下を巡回する。 「…………〜♪ 〜♪ 〜♪」 ギターを背に。アンプを手に持ち。鼻歌まじりに男が歩く。 「演奏中」の札、紐を人差し指に引掛け肩に乗せたそれが歩くリズムに合わせ揺れる。 今の男の姿を見た者は気付くだろうか。 気付いたらいい。これから演奏をするのだ、と。 もちろん声を掛けられたら言うつもり。 「最後のライブをするから、良かったら来なよ」ってね。 (69) 2022/03/09(Wed) 20:47:29 |
【人】 衝撃波 ポルクストレーニングルームに着きました、 ライブのお時間です! 風景は、テンガンから襲撃を受けた時の舞台と全く同じライブステージだ。演習ロボットは要らないだろう。ギャラリーならホンモノがいるから。 アンプとギターを繋ぎ。 マイクスタンドの前まで立ち、構えれば。 両手を高く掲げてギターへと落とす。 まずは"はじまりのFの音"で観客を迎えて。 (81) 2022/03/09(Wed) 23:24:53 |
ポルクスは、Fの音の後も、観客へ向けて両手を振っている。 (a38) 2022/03/09(Wed) 23:28:14 |
【人】 衝撃波 ポルクス手を振った後は、その片方をマイクに向ける。 指先で軽くつつく。とんとん、と。 音もちゃんと響くだろう。とんとん、と。 その後に口を近づけ。 「あーあー、てすてす……、 オッケー 」マイクテストを終えれば、ぱっと笑みを浮かべる。 「 いえーい☆ なんて、調子よく挨拶をしつつ、耳を済ませるような動作をする。 緊張の様子はない。手慣れている。ファンサをするこの男を見た事がある人間ならば、もうそれも理解の範疇だろうけど。 「ウンウン、まずは来てくれた羽虫共サンキュな! 俺は元気! 気合い十分! ま、見ればわかるか」 「じゃ、早速演ろうと思うんだけど……演奏を始める前に! 俺の演奏を生で聞いてくれる羽虫共のために、改めて自己紹介しておこうか」 深く息を吸い、 (82) 2022/03/09(Wed) 23:32:28 |
【人】 衝撃波 ポルクス「囚人ナンバー【F-104】! なんか色々の……なに? 損壊と窃盗と恐喝脅迫教唆強要ゥ……?ンなことより いずれ伝説になる男、ポルクス・ムヅィカによる ライブ、スタートだぜッ!!!!」 ……なんてな。 (83) 2022/03/09(Wed) 23:37:24 |
【人】 衝撃波 ポルクス「――Matic Affection」 意味のないタイトルコールと共に音をかき鳴らす。 ギターは、いや音は、振動は、猛る。 軽快に、それでいて深く重く響くハードロック調の曲に共鳴するよう小さな身体でギターを大きく振るって。 大音響、それも 能力によって酷く正確に確実に奏でられる。 「 A ha? 魅惑の Babe 翻 しA ha? 気 付いた慕情に戸惑いA ha? でももう 鳴 り止まないA ha? A ha? A ha? ――♪ 」音も、音量も、音階も、 全てが美しいまでに完璧だ。 騒音というわけではない。この男の大声に比べれば。 普通のライブ会場にいるのと同じくらいの音響。 ……それでも、此処にいる者なら感じるのだろう。 空を切るような風圧と、心臓を揺さぶる大きな振動を。 (84) 2022/03/09(Wed) 23:45:09 |
【人】 衝撃波 ポルクス地面を蹴る。衝撃波が起こる。 ギターを鳴らす。衝撃波が起こる。 「 揺れたのは確かだ 酷く乾き 感 じてまだ少し 傍 に居て 声にしても La La――♪ 」ギターにちら、と視線を送り。 ピックを持った手、顔の横で払うような動作をして。 「 抱 き締めてみたくて 手を伸ばしてみたり気まぐれに耳元で 愛 を囁く とか笑――♪ 」挑発的に舐め回すような目付きで観客に瞳を向ける。 見上げた顔は。 大胆不敵に嗤った。 (85) 2022/03/09(Wed) 23:50:20 |
【人】 衝撃波 ポルクス「 置 いていかれたままの Matic じゃあ制御不能のままで 駆 けてくよ――♪ 」ああ、 生きている と感じる。ああ、 呼吸をしている と感じる。ああ、 鼓動は力強く 呼応している。なあ、俺はさ、お前の振動が一番好きだよ。 お前と共に振動を奏でるこの時間が一番好きだ。 ――……一番好き、だったんだけどな。 お前と共に振動を奏でていないとまるで死んでいるみたい、だったんだけどな。 「 淡 い記憶の残骸の Affection じゃあ止まれないよ 奪 っても いいの――?♪ 」歌と音が振動を生む。揺れを起こす。空を切る。 地面を蹴る。かき鳴らす。繕って笑った顔は。 満足出来やしねェけど。 それでも、心の臓は最大限に叫ぶ。 愛しの魚に焦がれていると。 (86) 2022/03/09(Wed) 23:55:23 |
【人】 衝撃波 ポルクス「 柔く 揺 れる前 髪の隙間から僅か 仄 めかされ夢 見てた情景の熱と慈愛 にまた 崩 れていく――♪ 」ラストスパート、まくし立てるように音と歌声が 猛 る。「 Ringing 響き続けた 音 Heart 聴 かせてよこのままAffection 魅入られ 閉 じ込めたら不 可分の衝撞 A ha――!♪ 」嗤 う。嗤 う。喉をからからと鳴 らせば、 (87) 2022/03/10(Thu) 0:01:25 |
【人】 衝撃波 ポルクス「 Ringing 鳴り止まない 鼓 動Matic 動 き出したのなら――♪」大 音響を轟 かせ。「 Affection キミだけが 欲 しくて離 れ難い衝撞 永遠に A ha――!♪ 」演 奏の終 焉を飾 った。斯くして、この宴におけるこの機械の演奏は終わる。 この歌で誰かの何かを揺さぶれたならいい。 演奏は終わる。演奏は終わらない。 命ある限り、高らかに鳴動し続けてみせよう。 出来損ないの機械 Matic Affection ――終演―― (88) 2022/03/10(Thu) 0:14:34 |
ポルクスは、聞いてくれた羽虫共、 Thanks!!!! (a44) 2022/03/10(Thu) 0:26:13 |
【人】 衝撃波 ポルクス演奏が終わった後。 響く拍手には満面の笑みを向けるだろう。 ちゃんとその場に居る一人ひとりに目を向けて。 みんなそれぞれ違う音が鳴ってて。 それが伝わる。嬉しいんだ。 「愛してるぜ羽虫共〜〜〜!!! Thanks!!!! ん〜〜〜まッ!」ライブの一環だ、また調子よく投げキッスをして。 振動を奏でた幸せな時間は、そうして過ぎてゆくのだろう。 (89) 2022/03/10(Thu) 1:37:32 |
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