人狼物語 三日月国


131 蕐の残香、追憶のブーケトス

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視点:


プロローグ

【人】 街路灯



     今日も街は静かに時を重ねている。

(0) 2022/02/13(Sun) 1:15:16





到着:  グレイス

村の設定が変更されました。

【人】   グレイス



    
「 わすれないで 」


  
(1) 2022/02/13(Sun) 7:12:33

【人】   グレイス



  それはささやかな願いでした。
  死にゆく彼女が生者に願うこと。
  
忘れないでいて欲しい。

  たったそれだけのことでしたが、
  それを叶えるのは存外難しいものです。

  人は嫌なことを忘れて生きていきます。
  
悲しみから、苦しみから、自身を守ろうとするから。


  
(2) 2022/02/13(Sun) 7:13:24

【人】   グレイス



  どんなに好ましい
の香りも
  いつか、時とともに薄れゆくように。

  人の記憶はいつか儚く散る運命。


  
(3) 2022/02/13(Sun) 7:16:32

【人】   グレイス



  それでも、忘れて欲しくないと願った彼女は
  
追憶
の機会を作るために。

  あちら側からこちら側へと手招きを。
  生と死で引き裂かれてしまったとしても、
  唯一それをつなぎとめることが出来る物…
   記憶 ≠ナ二人を再び繋ぎたいと願うのです。

  
(4) 2022/02/13(Sun) 7:19:04

【人】   グレイス



  私にできるささやかなことといえば、
  二人へと幸せを祈る花束を贈ることくらいです。
  
  これは二人の物語。
  私が贈るのは彼女への餞の言葉。
  私が語るのは彼への追憶の言葉。

  
(5) 2022/02/13(Sun) 7:20:26

【人】   グレイス



  
二人の心が穏やかであるように、と

            
*花束を捧げましょう*


  
(6) 2022/02/13(Sun) 7:21:39
到着:患者 アンネロズ

【人】 患者 アンネロズ




ㅤㅤ
A secret makes a woman more beautiful.

      
秘密は女性をより美しくするの



  
(7) 2022/02/13(Sun) 15:16:49

【人】 患者 アンネロズ



[ 人はだれしも何か、秘密を持っている。
  私もそうね、ひとつ。
  秘密にしていることはあるの。

  といってもこの秘密は私の親は知っている。
  私を担当している医師も知っている。
  私によく笑いかけてくれる看護師さんたちも。

  
知らないのは、私と親しい人たち。

  
  私の病気を知っている人たちには
  病気のことは言わないでって口止めしているの。
  だって、病名を聞いたらどんな病気なのか
  調べる可能性があるでしょう? ]

  
(8) 2022/02/13(Sun) 15:17:53

【人】 患者 アンネロズ



[ 
嫌なのよ、
難病指定されているような、

  死ぬかもしれない病気だなんて知られて
  憐みの目を向けられるのも
  腫れ物に触るような態度を取られるのも
  頑張って、って他人事のように言われるのも。 ]


  
(9) 2022/02/13(Sun) 15:18:50

【人】 患者 アンネロズ



   私はそんなに強い人ではないから。
   同情されたら、あなたたちはいいね、って
   僻む姿を見せてしまうかもしれなくて
 
   でも、そんなの嫌なのよ。

   死ぬかもしれないのならせめて
   記憶に残る姿は、明るく笑ってる姿がいい。


  
(10) 2022/02/13(Sun) 15:20:03

【人】 患者 アンネロズ



[ だから、対して強くもないくせに虚勢を張る。
  私は大丈夫よ、って。
  でも、そんな風に何でもないように
  見せてたからかな。お見舞いに来てくれる人は
  日に日に少なくなっていって。
 
  当たり前なのは、解っているの。
  みんな暇じゃないってことなんて。

  
わかっていても……。 ]


  
(11) 2022/02/13(Sun) 15:21:49

【人】 患者 アンネロズ



[ 寂しいって気持ちを抱かないなんて無理よ…。 ]


  
(12) 2022/02/13(Sun) 15:23:31

【人】 患者 アンネロズ


***


[ 専らベッドの上で本を読んで過ごしている
  私だけど、その日は陽の光が浴びたいと思って。
 
  天気のいい日だったから中庭で
  暫く過ごそうと思ったの。

  手に持っている本はよくある恋愛小説。
  周りになじめない男の子と
  どこまでも明るい女の子の恋物語。


  両親が買ってくれたベストセラーになった本。
  本屋さんに行けば山積みしてあるような。

  そんな本を左手に持って中庭へ行ったその日。 ]
  
(13) 2022/02/13(Sun) 15:24:22

【人】 患者 アンネロズ




[ その日が、彼との出会いの日だった。 ]**


  
(14) 2022/02/13(Sun) 15:24:50
到着:ピアニスト イングラハム

【人】 ピアニスト イングラハム




The secret is just like a wedding veil.

女の秘密とは、花嫁のベールだ。




(15) 2022/02/13(Sun) 16:38:16

【人】 ピアニスト イングラハム



   そう、私の父は言っていた。
   その意味を幼子の私が知るはずもないが。

   
   ピアニストの父と母もしかり
   私の家系は芸術に対するバイブスが高めらしい。
   それは私自身もそうで、ピアノの演奏には
   幼い頃からずっと魅了され続けている。

   ボランティアとして病院でコンサートを
   開催することだって何度もあった。
   私としては慈善なんてない純粋な演奏を
   味わい、楽しみたかったのだが。そうも言えない。



(16) 2022/02/13(Sun) 16:41:07

【人】 ピアニスト イングラハム



   兎角、想い馳せるは薄れゆく記憶。
   ベールにその素顔をひた隠す少女。>>12

   いつか出会った君の真っ白なヴェールを
   私が外すことは叶ったのだろうか。

   今の私にはもう、その答えが、分からない。


(17) 2022/02/13(Sun) 16:44:55

【人】 ピアニスト イングラハム



  ***

   遡ること数年前。
   私にとっては数あるボランティア活動のひとつ、
   病院でのコンサートに出向いた時だ。

   「音楽は人の心を癒し、勇気を与える」と
   そんな両親の言葉を胸に臨む演奏は
   首輪を繋がれた犬のような息苦しさを覚えて。

   休憩と称した期間限定の逃避行の果てに
   私は
彼女
のいるその場所へ、辿り着いた。


(18) 2022/02/13(Sun) 16:46:38

【人】 ピアニスト イングラハム



      「やぁ。こんにちは。」


(19) 2022/02/13(Sun) 16:55:39

【人】 ピアニスト イングラハム



   演奏者として恥じない礼装姿のまま
   先客にそう声をかけた。
それが始まり。


   彼女の反応なんてお構い無しな私は
   まだ子供のように無作法なままで
   彼女が何を思うかなんて知らずに。

    「本、好きなの?」

   そう言って手元の本に視線をやったりもした。


(20) 2022/02/13(Sun) 16:57:03

【人】 患者 アンネロズ



[ 病院は慈善が集まる場所だと私は思うの。
  ピアノのコンサートもその一つ。

  私も、聴いたことはあるの。>>16

  純粋に聴き惚れていたのは事実。
  演奏の美しさに。滑らかに動く指先に。
  彼の演奏に魅了されたの。  

  でも、叶うなら、病院という舞台ではなくて
  ただ、音楽を楽しむだけのコンサートホールで
  その演奏を聴きたい、なんて我儘を思ったわ。 ]


  
(21) 2022/02/13(Sun) 17:48:49

【人】 患者 アンネロズ



   どうしてかって?
   だって、彼の表情はどこか翳っていて。
   息苦しそうな気さえ、してしまったのよ。

   自由に演奏しているというより
   どこか型にはめられて窮屈そう。

   そんな素人の意見がどこまで正しかったのか
   知る機会はあったかしら?

  
  
(22) 2022/02/13(Sun) 17:49:29

【人】 患者 アンネロズ



 ***


[ あたたかな陽の光が照らすその場所で
  私と彼は出会ったの。

  眩し気に目を細めて、ベンチに腰かけている私と
  礼装姿の貴方の出会い。それはただの偶然? ]

  
(23) 2022/02/13(Sun) 17:50:33

【人】 患者 アンネロズ



    こんにちは。いい天気ね?

  
(24) 2022/02/13(Sun) 17:51:50

【人】 患者 アンネロズ



[ ふわり、とゆるく口角を上げて。
  日焼けしていない白い頬は
  少し不健康そうに見えてしまったかしら。
  
実際、不健康だからここにいるのだけれど。


  礼装の彼とは対照的に私の服は病衣。
  運命の出会い、というにはあんまりいい恰好は
  してなかったかもしれないけれど
  服装を気にするのも今更よね。  ]

 
(25) 2022/02/13(Sun) 17:52:35

【人】 患者 アンネロズ



   本は……好きよ。
   ……ううん、
好きってことにしてる
の。

   あんまりすることなくて。
退屈だから読んでる。



[ 手元の本に視線が移れば
  題名が見えるように表紙を見せて。
  
  代わり映えしない日々に退屈してたものだから
  つい、言わなくてもいいことまで
  口走ってしまった私は、右手の指先を唇に当てた。 ]

  
(26) 2022/02/13(Sun) 17:54:05

【人】 患者 アンネロズ



   あ、これはひみつ、ね。
   皆には本好きのアンネだと思われてるから。

   名乗ってなかったわよね。
   私はアンネロズ。
   アンネって呼んでもらえたら嬉しいな。

  
(27) 2022/02/13(Sun) 17:54:36

【人】 ピアニスト イングラハム



   病院が慈善活動の溜まり場にされたとして
   命懸けで戦う患者からすればいい迷惑だろうに。

   そんな承認欲求のために患者を利用する気分は
   当然、いいものとは到底思えない。

   だがまさか鍵盤の音色に隠れた私の顔色を
   見抜いてしまうような者がいたとは思わない。
   全く、不思議なこともあるものだ。>>22



(28) 2022/02/13(Sun) 18:33:33

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   その出会いは、冷えた心には心地いい。
   いい天気だという彼女に同意を示し、
   隣へと腰かければ見えぬ物も見えてくる。

   太陽を知らぬ純白は外界との距離を感じさせ、
   その程度は知らずとも、病院にいる理由が
   私にもなんとなく分かる程だった。


(29) 2022/02/13(Sun) 18:34:04

【人】 ピアニスト イングラハム



    「退屈、か。」


   正直、驚きはしなかった。
   少し考えれば想像がつく話なのだから。
   それでもってこの事は
   周知の事実というわけでもないらしい。

   脳裏に浮かぶ「同情」の二文字は
   ぐっと脳の奥深くへと押しやった。



    「その本は僕も見た事がある。
     確か本屋でも最近見かけたやつだよね。」


   面白いの?そう聞かない理由は、
   彼女の言葉がその答えだ。>>26


(30) 2022/02/13(Sun) 18:36:46

【人】 ピアニスト イングラハム



   幸か不幸か、彼女を知らない私は
   彼女が造り上げたフィルターが効かない。
   本好きのアンネと聞いて首を傾げたのは
   言うまでもないこと。>>27



    「あぁ、ごめん。最初に名乗るべきだった。
     僕はエドワード・イングラハム。

               よろしくね、アンネ。」


   間違えていた順序を正すと
   私は彼女に倣うように自身の名を名乗る。


(31) 2022/02/13(Sun) 18:38:58

【人】 患者 アンネロズ



[ 慈善が集まることが悪いとは思わないし
  音楽だったり人の優しさは患者にとって
  勇気にもなりうる。
毒にも、なりうるけど。


  私は、同情が入り混じった慈善は
  毒だと思っているから
  全部を受け入れることは出来ないの。


  だからかもね。
  全ては見えなくとも横顔だったり纏う雰囲気が
  窮屈そうにみえた貴方は多少なりとも
  頭の片隅に残り続けていたの。 ]
  
  
(32) 2022/02/13(Sun) 21:11:57

【人】 患者 アンネロズ


[ 退屈と言ったら同情されるかもしれない。
  なんて、普段なら思うのにね。
  つい言ってしまった一言への彼の反応は>>30
  私にとっては好ましいものだったの。 ]


   そうね、ベストセラーらしくて。
   両親からプレゼントされたのよ。

   まだ途中だけど、いい話だと思う。


[ きっと結末は、二人が結ばれて終わるんだろうな。
  そんなふうに思ってしまうくらいの、王道な物語。
  私は嫌いじゃなかった。
 
  この物語に出てくる子くらい
  明るく前向きになれたらいいのにとか
  色々思うことはあるにしても。 ]

  
(33) 2022/02/13(Sun) 21:14:07

【人】 患者 アンネロズ


[ 本好きだ、なんてフィルターを通していないから
  本好きのアンネ、なんて言われたら
  首を傾げるのも当たり前よね。
  そんな様子がおかしくて少し笑っちゃったわ。 ]


   こちらこそよろしく、エドワード。


[ 名前、全く知らないわけではなかったの。
  だって、奏者の名前は
  コンサートの張り紙で見たもの。

  知ってたとしても、本人から直接聞くのが
  礼儀かなって私は思うから。

  それに、彼が何もフィルターを通さずに
  私の事を見ているように
  私だって、彼を奏者というフィルターには
  通したくなかったのよ。 ]
  
(34) 2022/02/13(Sun) 21:14:47

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   分かるよ、と共感を示すべきか?
   生憎と消毒薬に満ちた病室の虚無感を
   私は知らなければ、知ることも無い。

   私が知っていることはただひとつ、
   共感こそ毒に他ならないことのみだ。>>32

   毒を毒に思わせない器用さがあれば
   少しはマシなことも言えたかもしれないが。



    「確か、恋愛小説だったっけ。
     僕も詳しくは知らないんだけどね。」


   表紙とタイトルからの予測だったから
   その辺はあまり自信がなく答えてしまった。

   それなら読んでみようかなって
   そう思う理由は、秘密だ。



(35) 2022/02/13(Sun) 22:27:23

【人】 ピアニスト イングラハム



   恐らく他者とアンネの間にとって
   本好きというのは演劇の役であって
   それでいて私とアンネの間に演目はない。
   笑うアンネの姿に尚更首が傾くばかり。

   それから思いついたように目を見開いて


    「せっかくだし、エドって呼んでもいいよ。
     僕と仲のいい人は皆そう呼ぶんだ。」


   彼女が私にアンネと呼ぶことを望むなら
   それと同等のことを望んでいたい。
   そんなわがままを伝えてみせただろう。


(36) 2022/02/13(Sun) 22:28:23

【人】 患者 アンネロズ


[ エドって呼んでもいいってことは>>36
  呼ばれたいってことと同じに取っていいのかしら。
  少なくとも呼ばれたくないのなら
  そんなこと言わないはずだから、
  その望みには喜んで応えるの。 ]


   なら遠慮なくそう呼ばせてもらうね、エド。
   これで私も、仲のいい人の仲間入り?


[ そう言って楽しげに笑った。 ]
  
(37) 2022/02/14(Mon) 0:33:32

【人】 患者 アンネロズ

***


[ それから後、両親には出会った彼のことを
  軽く話して、次また来てくれた時のために
  チョコレートを用意したい、なんて
  わがままを言ったりもしたわ。
  それくらいなら、って喜んで両親は
  私のわがままを叶えてくれた。
  お友達と仲良くね、って両親に言われて
  頬が緩んでしまったのは彼には内緒。 ]

 
(38) 2022/02/14(Mon) 0:38:59

【人】 患者 アンネロズ



[ さて、冷蔵庫の中のチョコレートが
  貴方の目に触れるのはいつだったかしら。

  私の病室に貴方が訪ねてきてくれたなら
  笑顔で出迎えて、座って?って
  椅子を指し示しながら、冷蔵庫からチョコを出した。
  
貴方が来るときのために用意してたの、
って
  少しだけ得意げにね。 ]

  
(39) 2022/02/14(Mon) 0:39:44

【人】 患者 アンネロズ



   来てくれてありがとう。
   お話の続きをしましょう?


[ 貴方と向かい合うようにベッドに腰掛けて
  話し始めることにするの。
  そうね、この前の本は読み終わったとか
  そんな話を最初にすることになるかしら?

  前は貴方の事を聞いて終わったから
  私の事を聞かれるのなら、
  
病気のこと以外なら
何でも答えるつもりよ。 ]*
  
(40) 2022/02/14(Mon) 0:40:20

【人】 ピアニスト イングラハム



   仲間入り。言い得て妙な話だ。>>37
   こちらの意図を丁寧に読み解く姿に
   私は驚きを隠すことが出来なくて。


    「そういうことになるね。
     正しくは、仲良くなりたいと思うくらい
     君に興味を惹かれてるってところかな。」


   そういう意味では仲良しの人よりも
   特別なのかもしれないね、と。
   楽しげに笑っているアンネに私は告げる。


(41) 2022/02/14(Mon) 3:02:01

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   私が彼女に会いに行った回数など
   両手両足の指を足しても及ばない。

   彼女の両親に会うことがあったのなら
   プロの演奏家らしく礼儀正しく振舞っただろう。


   しかし彼女の前とあっては私も流石に気が緩む。
   見舞いに来る度に彼女に何を話そうか
   次第に考えることが楽しみになっていた。

   
(42) 2022/02/14(Mon) 4:36:12

【人】 ピアニスト イングラハム



   いつの日だったか。
   お見舞いにと持ってきていた果物を
   冷蔵庫へとしまおうとした時に
   私はそのチョコレートを見つけた。

   「これは?」と尋ねてみれば
   どこか得意げにチョコを準備するアンネがいて
   私は嬉しさのあまり思わず笑ってしまったのは
   今でも記憶に新しい。


(43) 2022/02/14(Mon) 4:38:50

【人】 ピアニスト イングラハム



   「ふふ、僕のためにか。
    それなら今度から紅茶を持ってこよう。
    アンネが紅茶が苦手なら他のお茶でもいい。」


   優しさと気遣いに何も添える物がないのは
   すこしばかり寂しい気もするからと
   その日を境に見舞いは小さなお茶会へと変わる。


(44) 2022/02/14(Mon) 4:40:34

【人】 ピアニスト イングラハム



   重ねられるお茶会の時間。
   アンネが楽しそうに聞いてくれるから
   最初はほとんど私の話ばかりだった。

   もちろん彼女の事を聞こうとしていても
   なんだかんだで自分の話をして時間切れだ。


   またいつものように迎えてくれるアンネに
   私は微笑みかけて、あの時の本の話を始めると
   読み終わったと彼女が言っていたものだから。


(45) 2022/02/14(Mon) 4:41:55

【人】 ピアニスト イングラハム



   「本の見所を聞いてもいいかい?
    本の内容は流石に聞けないけど...

    君がどんな場面が好きだったか、
    君が見たままで聞いてみたいんだ。」


   本を読む前に聞くのはタブーだったかな、と
   アンネのリアクション次第では今のは無しと
   取り下げることになるだろうが。

   頭にチラつくのは病気のこと
   だかその話題は繊細なもので
   こちらから聞くことは、本来許されない。



(46) 2022/02/14(Mon) 4:42:21

【人】 ピアニスト イングラハム



   好きな食べ物のことなど
   アンネに聞かれたことはお返しにと
   聞き返すことがほとんどだった。

   後は...そうだね。
   どんな演奏を聞いてみたい?とか
   どんな場所に行ってみたい?とか

   話はどんどん病院の外のことへと
   渡り歩いていくことになっただろう。


(47) 2022/02/14(Mon) 4:43:48

【人】 患者 アンネロズ



[ 少し揶揄う意図がないわけではなかったのに
  素直に肯定…ただの肯定以上のものが
  貴方から返ってきて、落ち着かなくなった私は
  頬を撫でていた髪を耳にかけた。
  
特別って響きになんだか照れてしまって。>>41 ]


  
(48) 2022/02/14(Mon) 11:02:12

【人】 患者 アンネロズ


 ***

[ 彼はたくさん会いに来てくれた。
  変わり映えしない日々が鮮やかに彩られていくようで
  次は何を話そう、何を聞こうって。
  そんなことばかり考えて過ごしていたし
  楽しみが増えると退屈だと思うことは減った。

  両親にも時折、彼が来るのが楽しみだと伝えてたから。
  彼と両親が会った時、>>42
  父も母も好意的な態度を見せたはずだし
  「時間があるときにまた会いに来てあげてね」
  なんて、言葉をかけていたと思う。 ]

  
(49) 2022/02/14(Mon) 11:06:09

【人】 患者 アンネロズ



[ 冷蔵庫のチョコレートが見つかった日は>>43
  私にとっても嬉しい日。
  
何故って、エドが嬉しそうにしてくれたんだもの!

  彼のために、って準備したものが
  喜ばれていたならこれほど嬉しい事もないわよね。 ]

  
(50) 2022/02/14(Mon) 11:06:38

【人】 患者 アンネロズ



   エドも紅茶が好きなの?私と同じね。
   私は特にアップルティーが好きなの。


[ 折角用意してもらえるのなら、断るのはむしろ失礼。
  だから、私が好きな紅茶の種類も教えたわ。
  そうして私たちのお喋りの時間は
  お茶会へと変わるの。>>44 ]
  
(51) 2022/02/14(Mon) 11:06:59

【人】 患者 アンネロズ



[ いつでも、私はエドの話を楽しそうに聞いていた。
  だって、楽しいんだもの。
  自分の話をしたくないわけではなかったけれど
  話したくないことが一つある私と
  聞いたことに応えてくれる貴方では
  自分のことを話す時間に差が出るのは自然なこと。


  本を読み終わった話をすれば返ってくるのは
  見どころが知りたいという質問がきた。 ]

  
(52) 2022/02/14(Mon) 11:08:06

【人】 患者 アンネロズ



   見所…そうね。
   主人公の女の子が周りのことも自分のことも
   いつでも信じていられる強い心を持っているのは
   いいな、って思うの。
   
私は、そんなに強くないから。


   主人公は私のためにしてることだから、って
   好きな男の子を助けているから
   男の子がそれを断れない場面も好きよ。

  
(53) 2022/02/14(Mon) 11:08:41

【人】 患者 アンネロズ


[ 内容に触れすぎると楽しみが減るから 
  少し難しい質問だとは思ったけれど
  タブーだとは思わなかった。
  口元に手を当てて少し考えてから
  伝えたことが貴方の楽しみを奪うことに
  なっていなければいいな、と思いながら答えたの。

  貴方の反応を聞いてから本を渡して、
  読み終わったら感想をぜひ聞かせてね
  なんて笑って言うのよ。 ]
 
(54) 2022/02/14(Mon) 11:09:48

【人】 患者 アンネロズ



[ 楽しい時間を重ねていくたびに
  自分が病気のことを秘密にしているのが
  苦しくて、胸が痛くなってくる。

  本当にその人を大切に想うなら
  きっと言わなければならないこと。

  でも、私は言えなかった。 ]


  
(55) 2022/02/14(Mon) 11:10:14

【人】 患者 アンネロズ


[ 好きな食べ物はリンゴのタルトだったり、甘い物。
  でも、食べ過ぎるとよくないから
  そんなには食べてない。後は魚より肉が好きとかね。
  変わった好みではないし
  ありきたりな答えだったかもしれないわね。

  どんな演奏を聴きたいかって言われたら
  貴方の演奏、って返してしまったから
  少し困らせてしまったかしら?
  どんな、とは違うものね。 ]

 
   貴方が自由に演奏しているのを聴きたいの。
   
   行ってみたい場所は……海、かな。
   砂浜を走り回ったり泳いだりしたいわ。
   

[ 貴方の心の赴くままに演奏している姿が見たいと。
  そう言う意味で言えば納得してもらえたかな。
  
  行きたい場所は叶わない夢を乗せて伝える。
  
激しい運動は、今はもう出来ないから。

  でも、夢見るだけなら私にも許されると思うの。 ]
 
(56) 2022/02/14(Mon) 11:14:00

【人】 ピアニスト イングラハム


 ***

   彼女の両親の前でやけに緊張したのは
   はて、何故だったんだか。

 
   好意的に接してくれる彼女の両親の言葉は
   迷惑かという私の懸念を打ち消してくれた。
   なんとなく血の繋がりを感じたりもして、>>49
   不思議とあの日食べたチョコレートに
   心満たされたことも記憶に在った。
 

(57) 2022/02/14(Mon) 23:40:15

【人】 ピアニスト イングラハム


 

    「アップルティーか。よし、覚えた。
     楽しみにしていて欲しい。」
 

   彼女の好みをまた一つ知るその裏で>>51
   今にして思えば「今度」なんて無粋かと
   そんな不安があったりもしたものだ。
 
 
(58) 2022/02/14(Mon) 23:41:05

【人】 ピアニスト イングラハム



   重ねられるお茶会の時間の最中
   語られる本の見所に私は耳を傾ける。
   核心に触れずに見所を教えてほしいなんて
   我ながらとんでもないわがままだとは思う。>>54


   答えてもらえば考えるように指先を顎に当てて
 
 
    「強い心、か。
     我の強ゆえの優しさなんだとしたら
     二人は最後に幸せになりそうだね。」
  
  
   そんな感想の口にすることになるだろう。
 
 
(59) 2022/02/14(Mon) 23:43:26

【人】 ピアニスト イングラハム



   そう呟くとすぐにはっとして。
 
 
    「ごめん、知ったようなこと言って。
     気にすることじゃないって言いたかったんだ。
       .......この本、読んだらちゃんと返すから。」
 
 
   誤魔化すように笑って彼女から本を受け取ると。
   いつか求めた未来の予定を口にすることになった。


(60) 2022/02/14(Mon) 23:49:17

【人】 ピアニスト イングラハム



   ありきたりな答えであっても
   私にとってはダイヤのように貴重な資源
   期待はずれなどありえない。>>56

   しかし彼女の考えていた通り
   「貴方の演奏」と言われれば戸惑いを
   隠さずにはいれられなかったのも事実。


   イメージが浮かばずに困っていると
   その答えを彼女はくれる。
   それは私にとっては理想の演奏の形で
   それもまた彼女に惹かれた理由だ。


(61) 2022/02/14(Mon) 23:52:18

【人】 患者 アンネロズ



[ きょとんとしていたら、
  貴方は誤魔化すように笑った。

  聞いた方がよかったのかもしれないわね。
  貴方のどこか強くないのか。
  でも、それを聞いてしまえば
  私達が越えずにいる最後の線を
  越えることになりそうで、言えなかったの。 ]



   ううん、エドは優しいわね。
   それに、貴方と同じならいいかもって思えるの。

   
返しに来てくれるの、待ってるね。



[ また一つ、会う約束を重ねて。
  願っていた通りにそれが叶うことが嬉しかった。 ]
  
 
(62) 2022/02/15(Tue) 2:12:12

【人】 患者 アンネロズ



[ 戸惑わせてしまってもそのあとの
  私の答えできちんと伝わったみたいで安心した。>>61

  私が聴いた時の貴方の演奏は
  自由、からは離れていたし
  コンサートのために課題曲を演奏しているのも
  話に聞いていたから。

  私はね。
  貴方が弾きたいと思った曲を
  何も気にしなくていい状況で弾いてほしかったの。
 ]

  
(63) 2022/02/15(Tue) 2:15:50

【人】 患者 アンネロズ


 ***


[ いつのことだったかしら。
  私は長い事入院しているけれど
  病院から全く出られないわけではないのよ。
  身体の調子がいいって検査でわかれば
  外出だってできるのよ。

  そう、私が外出できるかもしれないと
  貴方に伝えた日が、確かにあったのよ。 

  外に出てもいい日が久々に訪れるとして、
  叶うなら、貴方のコンサートに行きたいなって。
  私は、そう考えたものだから。 ]
  
(64) 2022/02/15(Tue) 2:21:49

【人】 患者 アンネロズ



   ねぇ、聞いて、エド。
   いい知らせがあるのよ!


[ なんて上機嫌でそのことを告げたの。
  貴方が前に約束してくれた、
  演奏を聴かせてくれるって話が叶うかも、なんて。
  
  海にだって、いけるかもしれないわ。
  その時の私はそう思っていたの。  ]*


  
(65) 2022/02/15(Tue) 2:22:27

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   私の言った意味を知ってか知らずか
   呆気に取られたような彼女の表情は
   少しばかり怖くも思える。

   引いた国境を踏み越えるような不安は
   相手を想えば想う程花瓶になるのだから。



    「それなら良かった。
     あぁ、必ず、返しに来るよ。」


   必ず、と口にしたからには返しに来るのも
   当然早くなるもので。余す時間の全てを
   読書に注いだのは言うまでもないこと。


(66) 2022/02/15(Tue) 8:25:24

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   君一人のためだけに僕の音色を届けましょう。

   そんな想いは運命の因果を掛け合わせて
   結果、彼女の優しさに甘える形に収まる。

   叶うかも分からない約束を交わせば
   それは私自身の生きる糧ともなっていった。

   課題にも観衆にも民俗にも縛られない
   そんな自由を彼女の為に使えるのなら...。


      未来を夢見ていたのは、お相子というわけだ。

      

(67) 2022/02/15(Tue) 8:32:04

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   彼女の助けになろうと躍起になったものの
   実際、私は私で彼女に救われた。

   それは譜面に音符のインクが滴るように
   彼女との約束は私の演奏への意欲を
   この上ないほどに高めてくれていたから。

   両親がからかうように
   「何かいいことでもあった?」などと言うので
   やめてくれと不満を顕にすることもあったが。



(68) 2022/02/15(Tue) 8:55:32

【人】 ピアニスト イングラハム



   新たに予定表に書き込まれる日課
   学校と演奏の練習以外には何よりも優先される
   病院への見舞いというイベント。

   それまではアンネが病室から出られる日がある
   なんて思ってもみなかったから。
   アンネからそれを聞いた時は分かりやすく
   喜びの表情を浮かべることになっただろう。>>64

   受付で看護婦が微笑ましげに
   ニヤついていた理由が、その時初めて分かった。



(69) 2022/02/15(Tue) 8:56:12

【人】 ピアニスト イングラハム




   「本当か!?」


   外出の許可が降りたということは
   回復も近いのだと私は勝手に解釈して
   病室には相応しくないくらい声を張り上げる。

   それからこほんと咳払いをして
   頑張ったんだね、などとアンネを労うと


   「なら、その日は必ず予定を空けるよ。
    僕にとっては君が一番大事だから。」


   そう、意気込んでみせるのだった。
   その心臓の奥底に、大きな決意を秘めて。



(70) 2022/02/15(Tue) 8:57:48

【人】 患者 アンネロズ


 ***

[ 必ず、という彼の言葉はきちんと守られた。>>66
  思った以上に返してもらえるのが早かったから
  読むの早いのね、って感心したりもしたわ。

  貴方の感想を聞きながら紅茶を楽しむ時間は
  やっぱり私にとってかけがえのない時間だった。 ]

 
(71) 2022/02/15(Tue) 12:11:17

【人】 患者 アンネロズ


 ***


[ ボランティアとして病院に来たことがあって
  多少なりとも顔が知られている彼が
  病院へと見舞いに来ているというのは
  私を知る看護婦さんたちも知っていること。

  ちゃんと私から言うから秘密ね、って
  口止めはしておいたはずなのに!
  ニヤついていたなんて貴方から聞けたなら
  貴方が見ていない所でこっそりと
  文句を言いに行ったと思うわ? ]


  
(72) 2022/02/15(Tue) 12:17:42

【人】 患者 アンネロズ



   ふふ、本当よ!
   最近は調子がいいから
   もしかして、って自分でも思っていたの。
   

[ 労いの言葉には嬉しそうにしつつ、>>70
  貴方が予想以上に喜んでくれたから
  くすくす笑いながら、付け加えた言葉。

  
回復が近いようにも聞こえるそれは

  
きっとあなたの勘違いを招いてしまったのでしょう。

  
調子がいいのは回復が近いから
ではなくて

  
神様がくれた最後のチャンスだった
…なんて


  当の本人ですら予想してなかったのだから
  その解釈を責めることなんて
  誰にもできはしないのよ。  ]



   私達同じこと考えてたのね。
   私も、外出できるって聞いた時
   真っ先にあなたを思い浮かべたのよ?


  
(73) 2022/02/15(Tue) 12:21:03

【人】 患者 アンネロズ


 ***


[ 約束をした日が迫ってきたある日。
  その日は、お母さんが見繕ってきてくれた
  服を試しに着ていたの。
  黒を基調にした裾にフリルのついたワンピース。
  胸元にリボンがついていて、それを後は結ぶだけ。
  そんなときに病室のドアが開いたの。
  訪ねてきた人が貴方だと分かった時は
  それはもう、びっくりしたわ。
 
  
だって今日は来ないと思っていたんだもの。 ]



   エド……!?
   
な、なんで、っ……。


  
(74) 2022/02/15(Tue) 12:24:46

【人】 患者 アンネロズ



[ いつもの病衣姿じゃないことに
  気づかないわけ、ないわよね。

  貴方との約束の日に着ようと思っていて
  当日までのお楽しみにしたかったのに。
  予定外の訪問で貴方に見られてしまって。
  少しだけ唇を尖らせて拗ねたように、 ]


         
……この服のことは当日まで

         
秘密にしようと思ってたのに。



[ なんて言って、ふい、と目をそらした。 ]

  
(75) 2022/02/15(Tue) 12:25:51

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   あの日は確かたまたま近くで公演があって
   せっかくだからと病院に足を運んでいた。
   観客から頂いたフルーツのおすそ分けという
   我ながら取ってつけたような理由を添えて。


   とはいえ急な来客だったものだから
   迷惑でないか、と病院の看護婦に
   再三確認を取ったわけで。

   とんとん、というノックと共に
   彼女が許可をくれれば病室にその顔を
   覗かせるのだったが。>>74

   私が驚きのあまり口をポカンと空けたその顔は
   まさにマヌケと呼べるような情けないものだった。


(76) 2022/02/15(Tue) 21:27:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   サプライズドッキリにしては
   あまりにも空気が読めてなかったらしい。

   アンネがどうして不服げなのか
   すぐに察した私はというと


    「あ、いや、ご、ごめん。
     一言連絡をするべきだった。

        その......僕は、間が悪いな。



   思わず頭を下げると慌てて病室の外へと
   出ようとする。

   しかし目を逸らすアンネを前にして
   そのままトンズラをこくという訳にもいかず
   ただ反省の色を浮かべることしか出来なかった。


(77) 2022/02/15(Tue) 21:29:02

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   アンネとの約束の日。
   私は朝から落ち着かない気持ちでいた。

   演奏の練習も全てキャンセルして
   彼女に会うためだけに身嗜みに普段以上に
   気を遣ってみせたりもして。
   彼女の可愛らしい姿を思い出して
   少しでもそれに釣り合うようになりたかったから。


   この後何を予定しているかは
   傍から見ればすぐに分かってしまうほど
   私はずっと浮き足立っていた。
   まるで、何も知らない呑気な子供のように。


(78) 2022/02/15(Tue) 21:34:03

【人】 ピアニスト イングラハム



   病院から一番近いところにある海
   付近の公民館をわざわざ無理を言って借りて
   夢を叶えようとこの日の準備を重ねてきた。

   彼女はどう喜んでくれるだろうか。
   そんな期待に胸をふくらませて。

   私は病院へと向かって歩き始める。
   「お昼頃にそっちへ迎えに行くよ」と
   そんな連絡をひとつ残して。

   私は彼女に、会いに行くのだった。*


(79) 2022/02/15(Tue) 21:35:14

【人】 患者 アンネロズ



[ ノックの音を聞いて、私は最初、
  お母さんかなって思ったの。
  そうじゃなくても着替え終わっていたから
  部屋に入られても問題ないと思って。

  彼は今日公演があるって前に話していたはず。
  来るとは思ってなかったの。>>76

  驚いたのはお互い様。
  不服だったけどすぐ機嫌をなおせたのは
  貴方の感想への興味が大きかったけど
  貴方の驚いた時の表情が可笑しかったから、なんて。
  そんな理由も少しあったのよ。 ]


 
(80) 2022/02/15(Tue) 23:15:53

【人】 患者 アンネロズ



[ 貴方がサプライズで訪ねてきたら
  普段通りなら、きっと喜んで
  お茶会を始めていただろうから
  貴方は何も悪くない。>>77
  ただ、二人してタイミングが悪かったのね。

  貴方があまりにもバツが悪そうにするものだから
  
気にしないで、
とかそんなことは言ったわ。 ]

 
(81) 2022/02/15(Tue) 23:16:24

【人】 患者 アンネロズ


 ***


[ エドとの約束の日。
  私は朝からずっとそわそわしていたわ。
  
いいえ、前の日の夜から、ずっと。


  綺麗に髪を梳かして
  いつもはしないお化粧だってして
  褒めてもらった服を着て。

  
貴方の演奏が聞ける
って、
  子供のようにはしゃいで待っていたの。 ]

  
(82) 2022/02/15(Tue) 23:19:47

【人】 患者 アンネロズ



[ 海の近くにある公民館に行って
  貴方の演奏を聴く予定。
  どんな演奏なんだろう、とか
  色々考えていたし、
  夢がかなうって思って、わくわくしてた。

  貴方の連絡に、>>79
  
楽しみに待ってるね、
と残して。

       
貴方と交わした言葉はそれが、最後。 ]


  
(83) 2022/02/15(Tue) 23:21:11

【人】 患者 アンネロズ


[ 貴方から連絡を貰った後、
  私は窓の方に立って、貴方が来るのが見えないかと
  ずっと景色を眺めてたの。
  
  
舞い上がってた気持ちは、胸の痛みに邪魔される。 ]



   
いっ……いた、い……。



[ 昨日まで、私の体調は安定していたし
  今日だって、大丈夫だろうと言われたから
  この日をずっと待っていたのに。

  
嫌だ、嫌だ、約束があるのに。


  立っていられなくなって、胸を抑えながら倒れ込む。
  近くで待っていた両親が慌てて
  ナースコールで医師を呼んだ。  ]
  
(84) 2022/02/15(Tue) 23:22:42

【人】 患者 アンネロズ



[ エドとの約束を破りたくない嫌だ、
  そんなふうに心が叫ぶ一方で。


         死が迫っているのを感じたの。
         死にたくない、って強く思う。 ]


  
(85) 2022/02/15(Tue) 23:23:15

【人】 患者 アンネロズ



[ きっとそれは音にはならなかった。
  最後に名前を呼ぶことさえかなわず。
  苦しくて、目をつぶれば、脳裏に浮かぶのは貴方の顔。
  
会いたいな……。

  それが叶わないとどこかで思ってしまったのは
  
死期を、悟ってしまったから。

  自分の身体のことは自分が一番わかる。
  そんな言葉の意味を死ぬ直前で知ることになるなんて。

  私は薄れゆく意識の中で、
  遅すぎる
後悔
をしていた。

  貴方に病気のことを伝えればよかった。
  貴方にもっと我儘を言えばよかった。 ]


  
(86) 2022/02/15(Tue) 23:25:26

【人】 患者 アンネロズ



[ 後悔なんてしてもすべてが遅い。
  ねぇ、エド。

  もし、私が秘密を抱えず、
  全部貴方に打ち明けていたのなら。
  何かが変わっていたのかしら。

         私には、わからないの……。 ]


  
(87) 2022/02/15(Tue) 23:27:48

【人】 患者 アンネロズ



[ 私が意識を失った後も
  医師は処置を続けてくれていたけれど。

         貴方が病院にたどり着く前に
         私の心臓は止まってしまった。 ]


  
(88) 2022/02/15(Tue) 23:28:20

【人】 患者 アンネロズ



   [ 私と貴方の時間は、

           
終わってしまったの。 ]


  
(89) 2022/02/15(Tue) 23:29:03

【人】 患者 アンネロズ


 ***

[ 貴方が到着したとき。
  私は病室のベッドの上で永遠の眠りに落ちていた。
  何が起こったのか、空気でわかったかもしれない。
  わかっていてもいなくても、
  私の父が、震える声で娘の死を伝えたはず。
  母はずっと泣いていた。
  でも、貴方に気づいたなら ]


   「 ごめんなさい…もっと早く、言えば…。 」


[ そんなことをずっと、繰り返したでしょう。
  両親は私が貴方に病気のことを伝えていないと
  知っていたし、伝えるべきか悩んでいた。
  でも、娘の意思を尊重して、
  自分の言葉で伝えるのを待っていたのだ、と。
  そんな説明を聞いたら、貴方はどう思ったのかしら。

  説明すら、聞く余裕もなかったかしら。 ]
  

  
(90) 2022/02/15(Tue) 23:30:05

【人】 患者 アンネロズ



[ 私の両親は娘を喪った悲しみに暮れながらも
  貴方のことを、ずっと心配していたはずよ。

  私の想い人だと、知っていて。
  もう付き合っているとすら思っていたはずだから。

  そして、どこかのタイミングで
  貴方にこう告げるの。   ]


  「 今まで沢山気にかけてくれてありがとう。
    アンネのことは、もう忘れていいのよ。 」


[ それは、両親の気遣いだった。
  でも……。それが貴方にとって
  果たして、慰めになったのかしら、ね。 ]*

  
  
(91) 2022/02/15(Tue) 23:32:36

【人】 ピアニスト イングラハム



   部屋を後にして数分。

   誰もいない部屋の隅の棚
   飾っていたピアノの写真が
   棚から落ちて砕け散った。

   砕け散るガラス片が何の予兆なのか
   私は取り返しがつかなくなった頃に思い知る。

   それが全ての終わり。

   
(92) 2022/02/16(Wed) 2:19:25

【人】 ピアニスト イングラハム



    そして二度と、始まる事などない。



(93) 2022/02/16(Wed) 2:20:18

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   病院に辿り着けばもう一度アンネに連絡を送る。
   この前は急で驚かせてしまったから
   今度はそうならないようにと気をつけた結果だ。

   しかし、送った連絡に返事が来ることはなく。
   私は少しだけ心配になりながら院内へと
   その足を踏み入れることとなった。


(94) 2022/02/16(Wed) 2:21:01

【人】 ピアニスト イングラハム



   やけに重苦しい空気が満ちる。
   汗を垂らし走り回る医者に
   まるでお通夜のように顔を淀ませる看護婦


   穏やかな空気じゃないのは確かだ
   それはまるで、誰かが亡くなったかのようで。
   けれどそれが誰なのか、私には見当もつかずに。



(95) 2022/02/16(Wed) 2:21:43

【人】 ピアニスト イングラハム



    「えっと、すみません。
     アンネロズさんと面会を
     お願いしたいんですが......。」


   そう受付の看護婦にいつものように声をかける。
   けれど看護婦はいつものようには答えてくれず
   何かを隠すように口ごもっていて。

   その理由を知った時、私は息を飲んでしまった。


(96) 2022/02/16(Wed) 2:22:22

【人】 ピアニスト イングラハム




       え───────。



(97) 2022/02/16(Wed) 2:22:53

【人】 ピアニスト イングラハム



   本当の絶望を目の前にすると
   人は怯えることすら出来ないのだと
   私は最悪の形で学びを得る。

   アンネの訃報の引き換えに得たのは
   知りたくもない人間の真理と、消えない傷。


   けれど、彼女はそんなこと一言も言ってなかった。
   いつか自分が死ぬかもしれないなんて
   彼女は一言だって言ってはいなかったはずなのに。

   彼女はきっと、回復の途中だと思っていたのに。


(98) 2022/02/16(Wed) 2:23:48

【人】 ピアニスト イングラハム




     「なん、で.........。」



(99) 2022/02/16(Wed) 2:24:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   現実を受け入れられなくて怒るのでも
   現実を受け入れて哀しむのでもなく

   まだこれが現実だという自覚すら持たず。
   私はただ鉛のように重い身体を引きずって
   彼女がいつも出迎えてくれた病室を目指した。



(100) 2022/02/16(Wed) 2:25:17

【人】 ピアニスト イングラハム




     しかし事実は残酷で。
     私の眼前に飛び込んできたのは

               アンネの、亡骸だった。



(101) 2022/02/16(Wed) 2:27:46

【人】 ピアニスト イングラハム



   くらりと意識が飛びそうになる。
   血管が悲鳴をあげるように
   血液までパニックを起こしかけた身体を
   無理矢理奮い立たせると
   病室にいた者たちの視線が私へと集まって

   私に気づいた彼女の両親が
   その全てを、教えてくれた。>>90


   こちらへ謝罪をする彼女の両親は
   私よりも深く哀しむことになるのだろうに

   最後まで他者を気遣うその心に
   私は彼女の面影を辿らずにはいられない。



(102) 2022/02/16(Wed) 2:30:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   今ここで泣き叫ぶことだって出来た。
   それをしなかったのは
人徳者彼女の両親
の前で
   私がそんなことをするわけはいかないからで

   そんな私に追い討ちをかけるように
   忘れていい。>>91
そんな言葉が心臓を抉る。

   彼女の両親の気遣いだということは
   痛いほど伝わってきた。

   それに憤る資格など私にはないということも
   十分に分かっていた。


(103) 2022/02/16(Wed) 2:31:43

【人】 ピアニスト イングラハム




   「すみません。少しだけ...
    彼女と二人にさせてもらえませんか。

    彼女に...ちゃんと別れを、告げたいんです。」


(104) 2022/02/16(Wed) 2:32:18

【人】 ピアニスト イングラハム



   赤の他人の私が言えたことではない
   しかしこれまでの事を好意的に見てくれた
   彼女の両親は私の願いを聞き入れてくれて


   部屋に残ったのは
   取り残されてしまった私と
   逝ってしまったアンネの亡骸だけとなった。


(105) 2022/02/16(Wed) 2:32:54

【人】 イングラハム



 ***

   アンネに別れを告げて病室を出ると
   外で待っていてくれた彼女の両親に


    「ありがとうございました。 」


   そう深々と礼をして私はその場を後にする。
   向かう先は病院の玄関出口...ではなく
   誰も通らないような外付けの非常階段で。


(106) 2022/02/16(Wed) 3:31:25

【人】 イングラハム




    私はコンクリートの壁を


          己の握り拳で殴りつけた。



(107) 2022/02/16(Wed) 3:32:45

【人】 イングラハム




   なにが『約束』だ。


   なにが『強くなくてもいい』だ。


   なにが『一緒に背負いたい』だ。


   なにが『僕が連れていく』だ。



(108) 2022/02/16(Wed) 3:34:10

【人】 イングラハム



   自惚れるな、惚れた女一人守れぬクズが。

   お前に出来ることなど何もない。



(109) 2022/02/16(Wed) 3:35:06

【人】 イングラハム



   アンネロズを失った痛みが魂を引き裂く。
   壁へとぶつかる怒りの数だけ
   引き裂かれた魂が更にバラバラに崩れていく。

   粉々に砕け散る魂が今更どの面を下げて
   彼女を愛しているなどと言えようものか。



(110) 2022/02/16(Wed) 3:38:25

【人】 イングラハム



   ゴン、ゴン、と不細工な音を奏でる度に
   耐えかねた拳からは流血が零れ落ちていく。

   あぁ、痛くない。痛くないよ。
   君が背負った痛みや、君を失った痛みに比べたら。


   すると胸ポケットから何かが
   血溜まりの上に落ちていった。

(111) 2022/02/16(Wed) 3:40:04

【人】 イングラハム



   それはチョコレート。
   アンネが私の為に用意してくれた
   甘くて美味しい、私の一番好きな食べ物。

   包みから落ちて血と砂で汚れたチョコレートを
   拾い上げて、それを口へと放り込むと

   甘くて蕩ける想い出の味を
   ざりざりとした鉄の味が邪魔をする。


   
(112) 2022/02/16(Wed) 3:41:58

【人】 イングラハム



   それでいて。

   このチョコレートは
   もう二度と、口にすることは出来ない。



(113) 2022/02/16(Wed) 3:42:31

【人】 イングラハム




   小鳥が囀り子供たちがはしゃぐ
   そんな長閑で平和な病院の何処かで


         一人の男が、慟哭を奏でていた。**


(114) 2022/02/16(Wed) 3:43:27
(n5) 2022/02/16(Wed) 3:46:34

 




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