人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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視点:


ラッコ9票

処刑対象:ラッコ、結果:成功

[犠牲者リスト]
該当者なし

決着:龍人族の勝利

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 腐敗した管理形態の代わりに
  崩壊した倫理意識を翳しては
  跼蹐した一般市民を庇いだて。

  そうして今日に至った組織内には
  曇った爪先をした人間は一人もいなかった。


  大通りを歩む人影も豪奢な装いをするわけでなく、
  まして整備の行き届かない路地裏の景観においては
  男の服装は浮きに浮いている。

  複数の組織が常に対立しあうこの街において
  潤沢な資産と資金源を主張する為のオーダーメイドは
  牽制の為の鎧であり、威圧の為の銃であった。

  犬が犬を食うような趨勢の中、
  年齢で、性別で、出自で、国籍で、
  些細な切っ掛けでヒトを舐めたがるバター犬どもの
  鼻っ面を吹っ飛ばす弾に比べりゃ安いもんだと
  ことあるごとに嘯いた女の声を知っている。 ]

  
(0) 2020/10/08(Thu) 8:30:27

【人】 Cucciolo アジダル



 [ その肩口を軽率に汚しながら、青年はゆるりと瞬いた。
  まだ聞きなれていない背後の声は肯定する色ではなかったが
  それでも想定の範囲内であった。

  小競り合いが頻発し、日々銃声を聞くような街では
  家の無い人間など紙幣ほどの価値もない。
  気紛れに愛されたり殺されたりするそれらを、
  理解し難そうな彼は無価値と思うのだろうか。

  猫の子でも扱うような皮肉交じりの口ぶりは
  青年の喉を愉快そうに鳴らすには十分で。 ]


   やだね。
   囲うほどの甲斐性も義理もないな。
   死ぬまで愛玩するだけの執着もないし、
   これが俺に出来る最大限だわ。


 [ その割には少し冷えた目で彼を見る。
  目敏く示された時計は力でも、安定ではない。
  自分に人一人を救うだけの力がないことなど
  青年は誰よりもよく知っていた。 ]

  
(1) 2020/10/08(Thu) 8:30:30

【人】 Cucciolo アジダル


 
 [ 誰よりもよく知っていた。
  少し下に向けた視線の汚れた石畳、
  そのインクの持ち主の顔も知っていた。 ]


   というかあれだって人間だ。
   生き延びる術なんか生きてりゃ勝手に学ぶでしょ。
   それでも生きられないような子供を助けるほど
   俺は、……優しかねえさ。


 [ 秘密裏の武器輸出の仲介として利用された奴が
  取引の終了と共に片付けられたことも知っていた。
  受け渡しが完了するまで息をひそめ、
  報酬を求めて伸ばされた手が赤く染まるのを
  黙って見届けた男は知っていた。

  ケツ持たなきゃ手を出しちゃいけねえ法はねえよ?
  と、そいつは自嘲めいた声を上げる。

  光の当たる道では金色の毛虫に黒髪の子供が近寄り
  何やら一言二言を交わしている。
  一人の手を引いたら芋づる式に繋がってくること等
  今更眼前の彼に言うまでもないだろう。 ]

  
(2) 2020/10/08(Thu) 8:30:32

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 躊躇なく助けられれば良かっただろう。>>2:31
  けれど執着を晒せば弱みとされ、
  宝物を知られれば狙われるような状況においては
  情の深さだけでは如何ともし難く。

  だから、せめて。
  数多の救えないものの存在を知った青年は
  浅はかな愉悦と酔狂を建前に
  不愉快に思うか? お兄さん、と
  眉を寄せた笑顔で問うてみた。 ]*

  
(3) 2020/10/08(Thu) 8:30:51

【人】 Marguerite シャーリエ

[庭で眠ってしまった先の世界で、
久しぶりのお姉さまの顔を見た>>3:40

お姉さまの捜索はなにも進まないまま、
長く時が過ぎている。
頭を撫でてもらったのもどれくらい前か。
大好きな庭で大好きなお姉さまと夢にまどろむのも、
忘れないでと言われた>>3:39声も久しぶりで、

これが夢だと悟ってしまった]


 お姉さま。
  ……いつも助けてくれてありがとう……

[シャンパンの髪と萌黄の瞳をしたあなたは
お姉さまじゃなかったけど、私を支えてくれた。
綺麗な顔を可愛らしく崩して、
会いに来てくれた彼女の手を握った。]
(4) 2020/10/08(Thu) 9:03:10

【人】 Marguerite シャーリエ

[空に浮かぶラッコがポケットに雲を仕舞って太陽が差す。
私が握った手は女性のしなやかな左手ではなく、
固い金属でできた彼の利き腕じゃない方の手。
あの日に繋いだ>>1:D29左手だった]


 おかえりなさい、リフル


[夢なんだと知ったから逆らわなかった。
あの日に置いてきぼりにされた私が笑って、
彼を抱きしめる。ようやく捕まる気になりましたか?

ほら、お嬢様と呼ぶ声がする。
今日は教会で祈る日なんだから人が来るのはわかってるんだ。
目が覚めて忘れてしまうまで、このまま居させて……]
(5) 2020/10/08(Thu) 9:03:36
村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 志隈

[着られてるようなスーツは、
貧困に苦しむ追い剥ぎが鴨にしそうだと印象を持つ。>>0
身なりの良さが報復を恐れて、守る代わりになるのかは知らず。

実力はそれなりにはあるのだろうか。
現在軸でアジダルは生きて目の前にいるのだから、
なんとかはなってるようだ。恐らく。

金持ちだから、貧乏だからどうかとか、
人の価値のあるなしは考えた事が無い。
自分の価値を無意味と思った時、
泣き出すほど嫌だったのは覚えてる。
]

金はあるかと思ったが、足りなそうか。
その辺は割り切ってるんだな。

[やだと明確な答えが返れば、
そこには得信したような顔を向ける。
下手に苦しそうな顔をされても困ったし、
貧しい国の中で自分も全てを助ける方法など思いつきはしない。]
(6) 2020/10/08(Thu) 13:22:44

【人】 志隈

[あれだって人間と言う言い方に、
どの位置に子供を置いているのか思案する。>>2
生き延びる術を学ぶこと、
そうしてかなきゃいけない事はいい。
優しかないと言うが、
自嘲気味に落とされた声は、
青年の優しさを示してはいる。]

少ない施しでもありがたいものだろ。
そうやって、1日でも凌げば、
命をもっと大人になるまで長く繋いでいけるかもしれない。

自分の身銭を切ってまで救えなんて言わないし、
こうしてるだけでも立派なんじゃないか。

[行為自体は不愉快に思わない。
優しさと明るさ、
何処かヒーローの素質を持った青年でもあるだろうか。

引っ掛かったのは別の話。]
(7) 2020/10/08(Thu) 13:23:00

【人】 志隈

ただ───

精一杯生を全うしてる子供を“可愛い”と言ったあんたに、
人を愛玩動物として扱う気味悪さを感じた。
子供が動物に餌やりをしてるような、な。

[眉を寄せた笑顔に、不愉快なのはそちらだと隠さず告げる。>>3
どれだけ小さくても人には変わりなく、
救えるものは救うべきだと言う善意はあっても、
極論救おうが救うまいがどちらだっていい。
優先順位がある。
全部掴もうとしたって零れてしまうなら選ばなきゃならない。


こんな風に言った所で子供の腹は膨れないし、
意味だってなかった。
あれが本心だったのなら、
精々可愛がって助けてやってくれと思う。

俺が気に食わなかっただけの話。]*
(8) 2020/10/08(Thu) 13:23:05

【人】 小林 友



「この世に悲しいことはたくさんある。
 だが、自分の手で死ぬのではなくて
 「ここにいたくない」と言うならば
 どれひとつ、同じ願いを持つ者と
 お前とを入れ替えてみよう。

 元の世界にいる、お前を知っていた人間は
 皆お前のことを忘れてしまう。
 そうして、お前は新しい世界で
 新しい親や友と生きるのだ。

 けれど、悲しいことはなくならない。
 影のように、お前のうしろをついていく。」

   ─────『あの日、月が言ったこと』

 
(9) 2020/10/08(Thu) 18:57:44

【人】 一年生 小林 友

  ー 数年後・某大学研究室にて ー


  「こら、小林くん。また手指消毒忘れてる」


[同じゼミの柳原が可愛らしく頬をふくらませて
 俺の背中を指でつついた。
 この『入退出時の手指消毒』の習慣は
 いつまでたっても慣れなくて
 ついサボっては、自分より
 頭ふたつ背の低い女の子にドヤされるのだ。]


  悪い悪い。何年経っても忘れるんだなぁ。


[一旦持ち出そうとした本を脇に置いて
 出入口に置かれたスプレーを掌に吹き付ける。
 いつまで経っても、俺はこの世界の風習に
 完全には馴染めないままでいる。]
(10) 2020/10/08(Thu) 18:58:35

【人】 一年生 小林 友

[─────あの日、月に願いを届けた瞬間
 俺の意識は遠のいて……
 気が付けば、病室の一角で
 色んな機械に繋がれていた。

 慌てて起き上がろうとしたら
 病室の前を通りがかった看護士が
 飛び上がらんばかりに驚いて叫んだ。

 『友くんが動いてる!』って。

 後で聞いて分かったことには、
 俺という人間は、中学校からの帰り道に
 トラックに跳ねられて以降、ずっと
 目を覚まさぬ植物人間状態だったらしい。

 名前も同じ『小林 友』。
 父親と母親の顔も同じ。
 ご丁寧に、中学校の友達と言って
 青柳と佐々木達まで見舞いに来た。]
(11) 2020/10/08(Thu) 18:59:00

【人】 一年生 小林 友

[すんなり飲み込むには、
 あまりに大きな変化だった。

 リハビリに励みながら何度も事実確認をして
 どうやら、ここが『コロナ』というウイルスに
 脅かされている世界だということは分かった。]


  …………じゃあ、菜月はここにいるの?


[だけれど、俺の周りに
 菜月を知っている人が
 誰一人としていないことが分かった時は、
 俺は、自分の世界を捨てたことを、
 ─────少し、悔やんだ。

 結局、君に会えないなら
 もう生きていたって仕方がない。]
(12) 2020/10/08(Thu) 18:59:36

【人】 一年生 小林 友

[でも、俺は結局諦めきれなかった。

 リハビリを終わらせて退院したら
 青柳達から一年遅れて高校に入り直して
 今、大学で近代文学を学んでいる。

 研究作家は、小川 未明。

 どれだけ研究しても、あの時
 俺と菜月に起きた、夢みたいな出来事の
 説明なんか付かなかったけれど。]
(13) 2020/10/08(Thu) 18:59:51

【人】 二年生 早乙女 菜月

「エレベーターで、ベースはそんな足の持ち方しちゃだめ! 手でトップの体重のかかりかたを感じて、トップから目を離さない!」
「エレベーターに乗り込むとき、トップはもっと膝の屈伸を使って! スポットはただいるだけじゃないのよ、ちゃんとトップの腰を支えなさい!」
「ダブルテイクの時は、トップの足の高さを合わせて! そのためにはベースが高さを合わせないとダメ! トップ、内股!」
「そんなやり方でエクステンションを続けたら、ベースは肘を壊す!スポットはもっとトップの足首を握って全体を観察しなさい! 何のためのスポットなのよ!」

[大学で入ったチア部は、高校以上にスパルタだった。
 私はチアをやめることなく、ずるずると続けている。アキナと同じ大学で。

 大学の中で会っても、外で会ってもどこで会っても、アキナは何も言わない。ただ、割れた鏡のような目で私を見るだけだ。
 いっそ何か言ってくれれば、と思うけれど、私だって自分からは話しかけることができない。
 結局私たちは微妙な関係のままだ。]
(14) 2020/10/09(Fri) 6:39:52

【人】 二年生 早乙女 菜月

[つまんないな、と心から思う。
 チアをやっていても、どこか冷めた自分が邪魔をする。

 苦しい思いをして、考えないで済む時間ができるのはありがたい。
 だけど、チアそのものの魅力には、コロナ前の方が取りつかれていた。

「今」の菜月が好きだよ。>>3:-48


「今」の私はどうだろう。]
(15) 2020/10/09(Fri) 6:41:19

【人】 二年生 早乙女 菜月

[鞄の中には一冊のお守り。
 一枚も増えていない、正しい重さの童話集。
 ラミネートコーティングされ、
 「私立桐皇学院高等学校」と書かれている。
 結局高校の図書室に残していくことはできず、
 通常よりも高い値段で買い上げた。

 ともすると、友君と過ごした日々が
 ただの妄想じゃないかと思ってしまう。
 
そんなのは悲しすぎるから。

 今となっては、この本だけが
 あの不思議な現象の証拠になってしまった。

 やりとりが何一つ残らなくなって、
 確かに友君と過ごしたんだ。
 私ひとりじゃ本なんか読まない。
 私だけじゃ、こんなに四季には気づけない。
 友君からもらった言葉で、私は世界を表していく。

 だけど、だけどね、やっぱり、
さびしくて、しかたがない。]
(16) 2020/10/09(Fri) 6:41:35

【人】 二年生 早乙女 菜月

「お、早乙女。いい加減続き読んだか?」
[構内をふらふらしていると、小埜先生に話しかけられた。
 小川未明を研究しているとかで、彼の授業を取って以来、なんとなく気にかけられている。他学部の私がわざわざ受けに来たのが珍しいらしい。
「続きは読まないですよ」「そのこだわり何なんだよ」「貞節です」
 授業は意味が分からなかった。だけど、毎回単位を落としながらも、同じ授業を受けている。
「下手の横好き、ここに極まり、だな」
 いいんだ、必修じゃないし。]

「そういや、今年もう一人入ったぞ。小川未明好きが。早乙女と違ってできるけど」
 悪かったですね、と唇を尖らせるのも、小埜先生は聞いていない。ちょうど外から入ってきた男子学生に手を上げて、「あ、いたいた。おーい小林……消毒!」アルコールをせずに入ろうとした青年に叱責を飛ばす。]


 ……小林?


[はいはいと聞き流そうとして、それができずに青年を見た。
 よくある名前だし、ただの偶然、だとは思う。
「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。文学部じゃないのに俺の授業撮って、歴史に残る酷いレポートを書きながら毎回授業取ってくる。今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」
 ぺらぺら話しかけてくる小埜先生を無視しながら、
 それでも、ほんの少しだけ期待してしまった。]*
(17) 2020/10/09(Fri) 6:44:06

【赤】 在原 治人

 
[基本、無愛想。
 虫のことを語らせれば
 楽しそうとか、活き活きしているとか
 思われることがあっても、

 ”可愛い”>>3:*24なんて
 言われた記憶は
 どこを探しても見つからない。

 妙にくすぐったくて
 そわそわして
 けど、決して居心地が悪い訳じゃない言葉。


   (でも…、貴方の方が
       ずっと似合っている)


 声を立て、
 肩を揺らして笑う姿に思う。]
 
(*0) 2020/10/09(Fri) 11:17:41

【赤】 在原 治人

 
[堪らず見惚れていると

 胸の真ん中あたりが
 ぎゅっと少し苦しくなって
 あったかくもなって

 そこから、ベニスカシジャノメが
 次々と翅を広げて
 貴方に向けて
 飛び立って行くような心地が、した。]*
 
(*1) 2020/10/09(Fri) 11:18:34

【人】 在原 治人

 
[外へ出てからは、慌ただしく過ごした。

 本当は少しの期間も
 手放したくはなかったけれど、
 貴方は大企業の代表で、忙しい身の上だ。

 俺は俺で、旅行らしい旅行などしたことがなく
 パスポートを申請するところから
 やらなければならなくて
 最短で7日間+移動を含む1日
 逢えないことが確定してしまった。


   
(…………淋しい)



 もう二度と、
 こんな想いはしたくないから
 手も目も掛けてやらなきゃいけなくて
 足枷になり得る甲虫たちは
 躊躇なく、全て引き取ってもらうことにした。]
 
(18) 2020/10/09(Fri) 11:28:40

【人】 在原 治人

 
[一般的に買取りは
 幼虫は2齢のみ、成虫はA品のみ等と
 条件が付くことが多いのだが、

 AlberTだと名乗れば
 わざわざ定休日に店長自ら出向いてくれて
 卵に至るまで全て、諸手を上げて買い取ってくれた。

 大きさ、艶、角やアゴの形の美しさ
 青みが強く出た人気のスーパーブルー、稀少な亜種など
 超優良血統ばかり。

 手塩にかけて育てた彼らを
 どうして手放すことにしたんですか?と
 不思議そうに訊ねられ、]



   外国に行くんです
   長期になるかもしれなくて、それで…



[要領の得ない答えを返せば、
 ついにワイルド個体を自らの手で
 捕まえに行くことにしたのか?と食いつかれた。]
 
(19) 2020/10/09(Fri) 11:30:53

【人】 在原 治人

 


   いや、 あの…
   クワカブじゃなくて、 ひと、なんです



[彼の、屈託のない笑顔や
 綺麗な微笑みを
 思い浮かべながら否定をすれば
 自分でも気づかぬうちに表情に出てしまっていたのだろう。
 
 おめでとうございます、と
 何故か買取り金額に
 色まで付けてもらってしまった。

 店頭に並べば、1頭で
 軽自動車が買えてしまう7桁を超える雄も居たから、
 しばらく、自力でも
 あちらに滞在できる程度の金額になったのは
 とても有り難かった。]
 
(20) 2020/10/09(Fri) 11:33:32

【人】 一年生 小林 友

[大学は、まさに人の坩堝。
 同じ講義を受けてる人間の名前なんか
 全く知らずに同じ教室にいる。]


  『おーい、小林!消毒!』


[小埜先生から呼び止められて視線を上げると
 隣に、背の低い先生より頭半分高い
 見たことのあるような女の子がいる。
 先生に招かれて近くによると
 背丈は、俺と同じくらいだろうか。

 あの子はチアをしていて
 筋肉がどうとか言ってたっけ。



  「「小林、こいつが前ちらっと話した面白いやつだ。
   文学部じゃないのに俺の授業とって
   歴史に残る酷いレポートを書きながら
   毎回授業取ってくる。
   今年も落ちる予定だ、なあ早乙女」」


[先生がそう、笑って紹介してくれた
 その女の子の胸には、ボロボロの
 『小川未明 童話集』。]
(21) 2020/10/09(Fri) 18:44:39

【人】 一年生 小林 友



[その背表紙に『私立桐皇学院高等学校所蔵』と
 書いてあるのを見た瞬間、息が止まった。]

 
(22) 2020/10/09(Fri) 18:45:00

【人】 一年生 小林 友



  …………小林、ユウ、です。
  友、と書いて、ユウ。


[あれだけ見たいと願っていた顔が
 水面に揺らぐようにぼやけていく。
 話し掛けたいと思っていたのに、声が出ない。

 人違いだったらどうするんだ、と
 冷静な自分に急き立てられるように
 俺は、ただの小川未明好きかもしれない人に
 こう尋ねるんだ。]
(23) 2020/10/09(Fri) 18:45:44

【人】 一年生 小林 友

[もし、それに肯定が返ってきたならば。

 ……ああ、先生の前でキスなんかしたら
 後でしこたまからかわれるし……。
 世界を越えてもままならないことばかり!

 それでも、君と一緒なら。]
(24) 2020/10/09(Fri) 18:46:28

【人】 一年生 小林 友



   窓を開けると、いい月夜でした。
   美代子さんは、自分の造った千代紙の花を
   すっかり、窓の外に投げ散らしました。
   二、三日すると、庭には、
   いろいろな花が、一時につぼみを破りました。
   千代紙の花が、みんな木の枝について、
   ほんとうの花になったのです。

    ─────『千代紙の春』
            小川 未明

 
(25) 2020/10/09(Fri) 18:49:54

【人】 一年生 小林 友

[まるで夢みたいな話で、きっと
 俺たち以外誰も信じちゃくれないだろうけど
 でも、他ならぬ君が信じていてくれるのなら。]


  俺はずっと、金の指輪の片方を
  探し続けていたんです。


[まだ千代紙の春は、始まったばかり。]*
(26) 2020/10/09(Fri) 18:53:54

【人】 二年生 早乙女 菜月

[小林君の視線が、私の手元に注がれる。>>22
 いつのまにかボロボロになってしまった本。
 驚いたような顔をする小林君に、私の感情が呼び起こされる。
 いくつもの「もしかして」と「まさか」が、
 水泡のように浮かんでは消える。]


 ゆう、くん……?


[嘘だ、って、とっさに思う。
 だけどそれ以上は声が出てこなくて、
 会えてうれしい、とか、
 ちょっとひねりを加えるなら、私はアキナだよ、とか
 うそっこ教えるのお揃いだね、とか、
 色々。もっといい言葉があったはずなのに、]


 ……なんでぇ?
 なんで、ともくんがここにいるの……?


[私が言えたのはそれだけで。
 友君の目の縁に溜まる雫に>>23
 私の涙も導かれた。]
(27) 2020/10/10(Sat) 7:14:50

【人】 二年生 早乙女 菜月

[そうして、友君の言葉を受けても>>-76>>26
 うん、うん、とうなずくことしかできなくて。

 私たちを見てちょっと焦った先生が、
「……死ぬにはまだ早いぞ?」
 自殺の誘いを目の当たりにしたと勘違いする。]
(28) 2020/10/10(Sat) 7:15:17

【人】 二年生 早乙女 菜月

[ぎゅっと抱きかかえた小川未明の童話集。
 友君の世界の名残と共鳴して、本が強く、脈打った。]
(29) 2020/10/10(Sat) 7:16:13

【人】 二年生 早乙女 菜月

「不意に、本が膨れ上がる。
 本は幾千幾万もの真っ青な
へと姿を変えて、
 私たちの視界を奪う。

 青い翼をはためかせて、銀の鱗粉が尾を引いて、
 私たちの周りを舞いながら、
 様々なものに姿を変えた。

 例えば、野ばらから尻を突き出したミツバチ。
 例えば、目を細めて針の穴をみつめるおばあさん。
 線香持ったおじさんや、太鼓を叩くラッコまで。

 それらは幾度も形を変えながら、
 窓の外へ、浮かぶ雲島へと飛んで行き、
 しまいには、魂は、みんな青い空へと
 飛んでいってしまったのだ。]
(30) 2020/10/10(Sat) 7:17:22

【人】 二年生 早乙女 菜月



 
雲を泳ぐラッコ、

を、

誰が見た、と言うのさ?


 
(31) 2020/10/10(Sat) 7:18:28

【人】 二年生 早乙女 菜月

「空にラッコ?」「ラッコが雲を泳いでる……?」
[空を見上げた人たちが、さわさわと騒ぎ出す。]
(32) 2020/10/10(Sat) 7:20:05

【人】 二年生 早乙女 菜月

[白昼夢だと思ったんだろう。
 「……俺、寝る。今日休講な]
 小埜先生はふらふらと去っていった。

 その後ろ姿を見送って、私は泣きながら、

 笑ってしまった。]**
(33) 2020/10/10(Sat) 7:21:05

【人】 在原 治人

 
[スーツケースと衣類も買い終え、
 時期的に少し早いが
 年に1度の定期検診のついでに
 主治医にもドイツへ行くこと
 長期になるかもしれないことを報告すれば、

 あっちで何か異変があった時に
 頼れる医師への
 紹介状も書いてくれて

 着々と準備だけは進んでいく。]
 
(34) 2020/10/10(Sat) 8:38:54

【人】 在原 治人

 

[だけど、時間は 遅々として進まない。]

 
(35) 2020/10/10(Sat) 8:39:50

【人】 在原 治人

 
[持て余した時間は
 ネットの情報を漁ったから、
 逢いたくて逢いたくて仕方がない貴方の
 写真や動画を保存したフォルダーが
 ひたすらに膨れていった。

 世界中の人が憧れる
 このひとに、俺は触れたのだ。
 剰え、針で────…


 手当ての時の、痛みを堪えた息遣い>>3:*27
 服を身に着けていく時の少し照れたような表情>>3:*28
 もう少し…と眠ったふりをして堪能した
 ぬくもり、匂い、それから重み。>>3:*30


 あのチャペルでの24時間を
 切なさと共に、脳内に蘇らせていると

 なんだか堪らなくなって
 それで…

 
初めて誰かを想って、シた。
]*
 
(36) 2020/10/10(Sat) 8:45:43

【人】 在原 治人

 
[当日は気が急いて
 めちゃくちゃ早く空港に着いたから
 迷子になっても平気だった。]



   すみません
   これに乗りたいのですが…
   なんか、どこに行ったらいいか分からなくて…



[貴方が手配してくれたチケットを見せたら>>3:38
 待ち時間はこちらで…と案内された
 ラウンジが凄くて驚いたし

 飛行機の中も快適すぎて
 食べ物なんか
 喉を通らないだろうと思っていたのに
 見た目も美しい料理に、つい口を付けてみたら
 するすると腹に納まってしまった。

 貴方が、俺を大切にしてくれているのが
 行き届きすぎてる
 サービスからも伝わってきて

 今、まさに向かっているところだというのに
 早く逢いたくなって、困った。]
 
(37) 2020/10/10(Sat) 11:08:18

【人】 在原 治人

 


  ”Holiday”、…”3 months”、…”Friend's house”



[自身の希望と、
 言葉にしづらい関係性を
 納得いかないままに片言の単語に載せて
 入国審査をやり過ごすと
 かなりの早足で、出口を目指す。

 ネットの情報によれば
 もう空港には到着しているらしい。>>3:37
 サングラスなんかしていたって
 その素晴らしく長い脚は隠し切れていない。]
 
(38) 2020/10/10(Sat) 11:10:07

【人】 在原 治人

 
[扉をくぐった瞬間に、名前が呼ばれ
 はっ!と顔をそちらに向ければ
 切望して止まなかった姿が飛び込んできたから
 スーツケースを置き去りにして、駆け寄った。

 いつから来てくれていたのかまでは
 知らなかったけれど、
 待ち侘びていてくれたのだろうと
 表情の変化から伝わって>>3:37



   アクスル…!



[嬉しくて、浮かれて
 自分より長身の彼を抱きしめたくなった。

 人目がある手前
 どうにか押し留まったけれど、
 抑え付けた分、余計に欲は膨れて。]
 
(39) 2020/10/10(Sat) 11:11:17

【人】 在原 治人

 
[気遣ってくれる言葉に>>3:37
 元気だった
(でも、淋しかった)

 言葉もなく曖昧に頷き、
 空腹かどうかの質問には首を横に振る。>>3:38

 そんなことよりも、俺は────]



   
早く、人目のないところへ行きたい


           
……貴方に、触れたい




[ひそめた声で
 至極ストレートに欲を吐露して
 貴方のプライベートが保たれる空間へ
 今すぐ連れて行って欲しいのだと強請った。]*
 
(40) 2020/10/10(Sat) 11:16:09

【人】 アクスル

 
[身軽に近寄って来てくれる彼が
 可愛くて仕方なくて
 眼差しには隠すつもりもない愛おしさが滲む。

 有象無象……、出待ちのパパラッチが
 カメラを手にしようとも
 彼のことしか見えていない。

 曖昧な頷きは>>40、空白の期間に
 体調を崩すことがあったのかと気にかかるが……、
 僕だけが拾えたお強請りを前に、霧散してしまう。]
 
(41) 2020/10/10(Sat) 17:17:27

【人】 アクスル

 
[けれど、ここではダメだ。
 こんな場所では完璧じゃない。

 彼の言う通り場所を移ってから――、
 それと、用事を済ませてからだ。]


   
……、少しだけ我慢してね



[公の場に相応しくない色を帯びた瞳を
 サングラスで覆った。
 我慢、をするのは果たしてどちらだろう。]
 
(42) 2020/10/10(Sat) 17:17:35

【人】 アクスル

 


   じゃあ、その子も連れて行こうか


[彼の後方に置き忘れられたスーツケース>>39を指して
 くすくすと笑いながら空港を後にした。*]
 
(43) 2020/10/10(Sat) 17:17:46

【人】 アクスル

 
[1時間と2分の距離。
 排気ガスを吐き出さない車が走った。

 自分で運転を出来たなら
 車内で少しくらい触れ合えたのかも知れないけど
 運転の免許は取ったきり
 身分証明書としてしか役に立っていない……。
 今日を彼の命日にするのは大問題なので
 普段通り運転手を頼んであった。

 せめてと、車内では後部座席で並んで座り
 黒い蝶柄の手袋を外した素手で彼の手を握っていた。

 ……かえって、もっと触れて欲しくなったけれど
 離すことなんかできなかった。]
 
(44) 2020/10/10(Sat) 18:39:45

【人】 アクスル

 
[窓の外の風景は都会的なものから
 自然が目立つものへと変化していき

 軈て車は、森の中に聳える古城の門を潜り
 敷地内で停止した。

 会社も家も、先代のものだ。
 気に入っているけれど、自分は引き継いだだけ。]
 
(45) 2020/10/10(Sat) 18:39:51

【人】 アクスル

 
[治人が嫌がらないようなら
 中から出てきた使用人達に荷物を託してから
 繋いだままの手を引いていく。

 案内する先は、地下室だ。]


   逢わせたい人が居るって言ったでしょう
   ……これまで誰も紹介したことがないから
         少し緊張するなぁ……


[暗い階段を降り、
 静脈、虹彩、厳重な認証を経て扉が開く。
 部屋の中からは冷気と、強い花の芳香が漏れ出てて]
 
(46) 2020/10/10(Sat) 18:40:07

【人】 アクスル

 
[二つある寝台のうち一つの上に
 ドレスを着て横たわる姿がある。

 僕と同じ金色の髪は抜け落ちたものを集めて
 ウィッグにして被せたものだ。
 ぴくりとも動かぬ肌は青白い。]


   ……彼女が僕の母だよ


[見かけの美しさにのみ囚われて生き、
 そして息子の手で永遠を得た哀しき女性。

 空いている方の寝台に眠ることは
 僕自身の願いではなかった……、彼女の願いだ。
 そしてもう僕は、望んでいない。]
 
(47) 2020/10/10(Sat) 18:41:02

【人】 アクスル

 

   ……母さん、紹介するよ
   日本から来てくれたHerr 在原治人
      ......Er ist mir lieb und teuer.


[大切な人だと伝える仕草には、照れが混じった。
 母の理想とは異なる道を選んだ僕を、
 どうか、許して欲しい。**]
 
(48) 2020/10/10(Sat) 18:41:19

【人】 Cucciolo アジダル


 [ 適者生存と弱肉強食の理が並び立ち、
  理性的なのか野蛮なのかも曖昧な場所に於いて
  常識外れな一般論に>>7>>8に降り積もるのは
  僅かな喜びと、それとは裏腹の嘲笑だ。 ]


   えらく人道的なことを言うな。
   あんた旅行者かなんかだろ。
   このあたりにそんな考え方をするような輩は
   そうそういないもの。


 [ 野垂れ死んでいてもおかしくない人間など
  一歩角を曲がればごまんといる。
  見慣れたくなくとも見慣れる世界に生きているのは
  もちろん自分だけではなくて。 ]


   それで、口さがねえあんたは
   人が人を動物扱いするような行為は
   初対面の人間に吐きつける程に
   許しがたいってわけか。


 [ お優しいことで。
  曲がりなりにも嫌悪だというのに包み隠しもせず
  あっさりと渡された感情が可笑しくて
  くつくつと喉を鳴らしながら立ち上がる。 ]
  
(49) 2020/10/11(Sun) 1:50:50

【人】 Cucciolo アジダル



   ──どうでもよくねえ? んなこと。
   ここには道理も倫理もカミサマも何も無いし、
   人が動く切っ掛けなんて欲だけだよ。

   俺が欲しいのは彼らが明日を迎えるって結果だけ。
   そこにまあ、理由……
   尤もらしい言い訳なんか思いつかねえわ。

   そんな風に"気味悪く"慈悲を振りまくよりか
   畜生扱いしたものを愛でてる方が
   よっぽど真っ当だろうと思うけどね。

   少なくとも、


 [ 言い訳じみた行動理念を吐く程度には
  憐憫所以の施しはこの場所で受け入れられ難い。
  必要なのは真実でなく、周囲を説得するだけの言葉だ。 ]

   少なくともまー、さあ、あれよ。
   理由なく人助けするヒーローに憧れてるとか言うより
   よっぽど真面な理由だろ。


 [ 彼を見ていた視線は外れ、瞼の下へ。
  そんなアホなことを肯定するのは一人で充分で、 ]

 
(50) 2020/10/11(Sun) 1:51:09

【人】 Cucciolo アジダル



   ……?


 [ 一人、誰の事だっただろうか。
  眼を開けたかと思えば
  どこか遠くを見るように揺らめいて踏鞴を踏む。

  壁に頭を打つようにして前のめりにふらつけば、
  彼の方に倒れ込みかけて、

  見覚えのある、
        ある。そう。
  見覚えのある黒髪が視界に留まって眼を見開いた。


  一人、たった一人。]


   ………。


 [ その世迷言を肯定してくれた人がいたのだ。 ]

  
(51) 2020/10/11(Sun) 1:51:18

【人】 Cucciolo アジダル



   
───。



  [ ひとり、甘く。彼の耳元で女性の名を呟けば、
   その空間は激しく明滅した。 ]

  
(52) 2020/10/11(Sun) 1:51:54

【人】 アジダル


  
( Ditele di farmi una camicia di lino        
Prezzemolo, salvia, rosmarino e timo… )    



 [ ……窓から差し込む朝日が眩しくて、  
  抱き締めた肩口に目元を押し付けた。  
  細くも透き通った歌声が一瞬途切れ、  
  笑息を含んだ声色が男の名を象った。 ]  


(
Buon giorno. Ajdal.
)    


……Buon giorno. Mia bella.   


 [ ……音はその部屋には鳴らなかった。 
  既に思い出せない声は聞こえないが、 
  言葉は字幕のように脳に入ってくる。 
  衣擦れ、歌う声、川辺の水音、喧騒。 
  その人の吐息による残響を追いかけ、 
  擦り寄った首筋に暖かなキスを贈る。 


──これは、安寧の、
 ] 


(53) 2020/10/11(Sun) 8:42:57

【人】 アジダル



 [ ……? ] 


(54) 2020/10/11(Sun) 8:43:03

【人】 アジダル



 [ 擽ったそうに捩る身体をつかまえて、   
  脚を絡めながら下腹部を緩く撫でる。   

  僅かに弛んでいた皮膚の触れ心地は、   
  すっかり本来のすがたを取り戻して、   
  少し前までそこに命が入っていたと、   
  思わせないほどになめらかであった。   

  膨らんだここに耳を当てて語り掛け、   
  見苦しいほどに頬を緩ませた日々は、   
  未だ男の記憶の内に根を張っていた。   

  朝の風が薄手のカーテンを纏い踊る。   
  その影を受けた揺り籠の覆いの下で、   
  ありふれた幸せがやすらかにねむる。   

  十年すら共に過ごせなかった時間の、   
  何気ないたった一欠片だというのに、   
  瞼を開かずとも綿密に思い起こせた。 ]  


(55) 2020/10/11(Sun) 8:43:08

【人】 アジダル


 [ ……。             
  執着の強い思い出だからこそ、  
  違和感に対する修正力も強く。 ] 


   ──、ケンブリックのシャツは、まだだ、   
   もう少し、……ここにいてよCuore mia……  


 [ 観測者の存在など忘れた故に、  
  閉じ込めた愛しい人の心地が   
  多少違ったところで構わずに。  

  柔らかく感じる髪を指に絡め、  
  唇の先端で軟骨を食むように   
  耳の先を撫でつつ愛を囁いた。  
  
  「二度寝しよう?」と誘えば、  
  「ダメ」と叱られるんだろう。  

  恰も幸福の泉に沈み切っては   
  呼吸すらする気のないような   
  熱っぽくも蕩けたその笑顔は、  
  日常と地続きのルーティーン。  

  ……観測者が一歩でも動けば   
  容易に観測点がずれる程度の。 ] 


(56) 2020/10/11(Sun) 8:43:57

【人】 アジダル



 [
是が失われることをもう知っていた。
  


  聞き飽きる程の甘さを撒き散らして、  
  この時全てが終わればよかったのだ。  

  揺りかごの天使がかわいい声で泣き、  
  寝乱れた聖母が柔らかく抱き上げて、  
  それを朝食のラテとビスコッティで   
  迎えに行って寄り添うばかりだった、  
  そんな至福の時で。        


    至福の時だという、のに、   
    記憶の中ですら陶酔しきれずに。
] 


(57) 2020/10/11(Sun) 8:44:06

【人】 アジダル



 [ 光を放つ扉の横を通ってキッチンに立ち、  
  カップを満たし、振り返れば。 ] 

  
(58) 2020/10/11(Sun) 8:45:24

【人】 アジダル



 [ いつだって忘れきれない光景は光を簡単に呑み、
  テレビのチャンネルを移行するように脈絡なく、
  鉄臭くも醜悪な景色に切り替わる。


   赤い溜まりの中に横たわる黒髪の女と、
   その腕の中で良い子に眠る赤ん坊と、
   報復の怒りが滲む凄惨な室内。


  瞳にそれを映した男は
  憎悪と怨恨を湛えた顔で、
  泣けもせず観測者とすれ違う。 ]*

(59) 2020/10/11(Sun) 8:46:09

【人】 志隈

[故郷は此処より治安がいい。>>49
同じ価値観を持つことは出来ないだろう。
尤も兵になる前の記憶は大分曖昧ではあるが。]

この国に関わった事が無いから、
旅行者と言うのは間違ってない。

[甘く見えようが気にもせず。
それが何か関係あるかと無愛想なまま。]

動物扱いするなとも、許せないとも言った覚えはないがな。
あんたがわくわくしてる姿が、
気味悪さを覚えただけだ。

[人を人と思わない行為は珍しくないが、
表面的に優しく見えるものには眉を顰めた。
優しい訳でもなく、
ここに文句を付ける筋合いも無かったが、
不愉快に思うか?とはあんたが聞いたんだろと
そう口にして。]
(60) 2020/10/11(Sun) 9:32:50

【人】 志隈

[どうでもいいと言われれば、顰めた眉を元に戻した。
冷静にはなっていく、
怒るほどではないものでもある。
違和感は拭えないが。]

結果には影響のしない話だな。
理由に関しても、おかしいと思ってる訳じゃない。
あんたはそれでいい。

犬猫と同じに扱うのが気味悪いのは、俺の都合だ。

[価値観が違うのは当然のようにある。
数ヶ月前、合わずに衝突した覚えも。
今でさえ、同じ景色を見てるとは言い難いだろう。

子供は施す側の理由なんて気にしないものだ。
運が良かった、くらいに考えている。
人を人としての価値を認めたがるのは、
あの人や自分の価値が過るからか。
それすら思い出せず。
]

理由なく人助けに憧れる純粋なあんたが見れるかと思ったがな。
これもあんたらしいか。

[瞬間的に忘れていた夢だと言うことを思い出して、
言った所で思想が変わらないように出来てるかもしれないなとも。
説得をするとも、出来るとも思わない。]
(61) 2020/10/11(Sun) 9:32:57

【人】 志隈

[ふらつく姿に支えを伸ばさなかったのは、
目の前の若い存在は嫌うかと思ったからだ。>>54
寄りかかるなら避けまではしないが、
殴られた場合の抵抗準備だけはしていたが。]

───

[耳元で、甘く紡がれた女の名前に僅かに目を見開く。
明滅する世界に気を取られるのが一瞬遅れる程には動揺した。]
(62) 2020/10/11(Sun) 9:33:02

【人】 志隈

[近くに感じる匂いは毒のようだ。>>53
数ヶ月前感じたものとは違っても、
どうしてか、他の人間とは違うように思えてしまう。

朝日の差し込む世界で、
寝ぼけていると言うなら何時でもそのままにした。
何も思ってない事はよくわかっているなら、
意味はない。

──無いのは解ってる。
それでも触れるものに甘さがあれば余計に身を固くした。
開いた物は更に指がかかって開かれてるんだろう。
好ましいと感じて、
その姿を向けられたいと願って…
悪い冗談だと思う。


過去に愛した女性がいるのは何も思わない。
だが、そうやってあんまは愛せる人間だから、
何時か誰かを思い愛するのだろう。
それが堪らなく嫌なのだ。
幸せを願ってるくせに、手放したくない。
あの人が自分を忘れて結婚して幸福になった事は、
後悔もないし良かったと喜んでいるのに、
どうしてかあんたの幸せから跡形もなく消えるのは──
]
(63) 2020/10/11(Sun) 9:33:08

【人】 志隈

[どん、と突き飛ばすように動いた時には、
赤い世界が広がっていた。>>59

愛してたものを失う痛みはどれくらいのものなのだろう。
娘は生きていると聞いたから、腕の中の子は無事だろうか。

憎悪と怨恨の顔の方が頭が冷えていって、
息を吐く。
そうまで思うなら娘の側にいて欲しかったが、
難しい事だとは聞いた。

戦争をすれば、
勝者が敗者から略奪するのは珍しい事ではない。
この光景だって、そこまで苦しみは呼ばず。
苦しみを越えて前を向いて欲しいと願うのは酷いことだろうか。

声はかけずに彼が動くなら付いて行って、
そのままであるなら女と子供の顔をじっと見つめた。
代わりに与えられないものを与えようとするくらいには、
子供は大切らしかった。
何時か再会出来れば、あんたは笑うのだろうか。]*
(64) 2020/10/11(Sun) 9:33:41

【人】 在原 治人

 
[春を知るのが
 些か遅すぎた元虫狂いな魔法使い。

 募る気持ちを
 ただ愚直にぶつけてしまえば
 貴方の瞳が匂い立つような色気を帯びる。>>-107

 煽られて、熱が燻ってしまう。 が、]



   …… ん、 わかった



[貴方の言いつけなら>>42
 必死に、我慢しようと思う。]
 
(65) 2020/10/12(Mon) 6:52:20

【人】 在原 治人

 
[繋ぎたい手は目の前にあるけれど
 今はぐっと堪えて、

 楽しそうな笑いでやっと思い出した”その子”の>>43
 体温のない取っ手を握り
 歩調をぴたりと合わせて歩き出す。

 少しでも距離を縮めるために
 貴方と反対側で
 ごろごろと音を響かせて。]
 
(66) 2020/10/12(Mon) 6:53:16

【人】 在原 治人

 
[運転手に恭しく出迎えられて、車に乗り込んだ。
 走り出しも滑らかで
 乗り心地は驚くほど良い。
 エンジン音のしない静かな車内では
 手袋を脱ぐ音すら聞こえそうだった。>>44

 袖の少し内側、
 見え隠れする黒革に気がついて
 一気に体温が上がる。


   
(なんか… 
俺のモノ
、って感じがする…)



 枷との境目の肌を指先でなぞり
 掠れた小声で「…うれしい」と伝えてから
 ぎゅっと手を握った。

 空調は最適なのに
 熱くて、暑い。]
 
(67) 2020/10/12(Mon) 6:54:14

【人】 在原 治人

 
[貴方の吐いた息を
 そのまま吸えてしまう距離。

 気を抜けば燃え盛ってしまいそうな欲を
 誤魔化すように、]



   あ、そういえば
   飛行機 すごかった…!



[シートが、食事が、サービスが…
 空の旅の感想を音にした。

 世界中を飛び回る
 この美しいひとにとっては日常で
 俺にとっては大冒険の時間を、
 はじめてのおつかいを
 達成したばかりの子どもみたいに語る。

 高揚や興奮
────欲情

 懸命にすり替えて
 62分の距離を、どうにかやりすごした。]
 
(68) 2020/10/12(Mon) 6:55:19

【人】 在原 治人

 
[そうやって辿り着いた
 ”Friend's house”の規模と形状は
 あまりにも規格外で、またもや度肝を抜かれた。>>45

 ネットで検索している時に
 彼のことを王子に見立てて書かれた
 夢小説なるものも目にしたが……]



   ここが、アクスルの家、 いや城、か‥‥



[世界が違うとは、まさにこのことで。
 はー…っと呆けていると、
 自分からは離す気のない繋いだままの手が引かれた。>>46

 貴方の居るところになら
 どこまでだって共に。

 向かう先に、
 驚きの連続の今日を
 あっさり塗り替えてしまう衝撃が
 待っているとも知らないまま、寄り添って──…]**
 
(69) 2020/10/12(Mon) 6:56:44

【人】 アクスル

 
[Wその子Wに譲るんじゃあなくて>>66
 彼自身の手を取りたいのは山々だったけれど
 
だって僕は、その掌が大好きなのだから


 折角彼が人目を気にして
恐らくは僕を気遣って

 声を潜めてくれているんだから>>40
 僕が台無しにしてはいけない。]


   ……、……


[Wその子Wがごろごろと反対側をついてきて>>66
 ともすれば、腕同士が擦れ合う位置。
 車内まで我慢した僕は、偉いと思う。]
 
(70) 2020/10/12(Mon) 10:24:51

【人】 アクスル

 
[黒レースの手袋を外して手を伸ばせば
 服従の証の首輪の如く毎日つけている
 枷近くの肌を、彼の体温が撫ぜる。>>67



   ……っ、……、……うれしい? よかった



[確認のように触れられただけでも
 ぞくぞくと悪寒のようなナニカが走って
 吐息が漏れてしまう。

 どうして彼ってこんなに気持ちが良いんだろう。

 誤魔化すように掠れた声の確認をして
 握られた手を指を絡めて強く握った。

 少なくとも滞在してくれている間
     この手は、僕だけのものだ。]
 
(71) 2020/10/12(Mon) 10:25:21

【人】 アクスル

 
[カラダが熱くて、暑くて
 冷房を強くして貰うか悩んだが
 心地の悪いものじゃなかったから
 そのままに。]


   ……本当?
   過ごしやすかったなら良かった


[子供みたいに語る治人の可愛さに>>68
 聴いているこちらはどうにかなりそうだ。

 実際の幼少の頃はどんな子だったのだろう?
 想像をしているうちに
 見慣れた門が視界に入ってきた。
 これはまた後で訊ねることにしよう────。**]
 
(72) 2020/10/12(Mon) 10:25:44

【人】 新郎 小林 友

[千代紙の花が芽吹き、
 古びた本が蝶へと変わり、
 ラッコが空を飛んだ日。

 あの日から、俺は菜月の温もりや声を知った。

 手を繋ぐと力強く握り返してきて
 たまに手が痛くなるのとか、
 案外涙もろいのとか、
 キスしよう、と言うとちょっと目が泳ぐのとか。
 あの日から菜月の新しいところを知って
 多分、菜月も影じゃない俺のことを
 毎日少しずつ分かってくれていくのだろう。

 何せ、俺は別な世界からの住人だ。
 手紙が窓から羽ばたいた夜から
 今日に至るまでの長い長い物語は
 千夜語っても語りきれない。]
(73) 2020/10/12(Mon) 14:01:01

【人】 新郎 小林 友

[だから、初めてデートに行くのなら
 一緒に本屋に行きたいと思う。

 めいっぱいオシャレした
 菜月の姿をこの目で見てから
 改めて「君が一番可愛い」って言いたい。

 それから、一緒に読むための本は
 相変わらず小川未明の童話集。
 紙越しじゃなくて、隣で
 君と他愛ない感想を言って笑いたい。

 そしたら、喫茶店でお茶でもしよう。
 フラミンゴのマドラーと一緒に
 意味深に、ストローが二本付いたドリンクを前に
 俺は多分もにょもにょ言ってしまうけど
 君が「一緒に」と言うならば
 必ず俺はそう、するから。]
(74) 2020/10/12(Mon) 14:01:22

【人】 新郎 小林 友

[それから、それから─────

 ああ、やりたい事は山ほどある!
 君に伝えたいことも。

 一日がたったの24時間なのが惜しくて
 つい、伝えられない気持ちのまま
 いきなり君を引き寄せて、キスしてしまったり。

 そう打ち明けたら、君は笑ってくれる?]
(75) 2020/10/12(Mon) 14:01:57

【人】 新郎 小林 友

[今は笑って指さしてくれたって構わない。

 いつか、君が隣にいるのが当たり前になった時
 ちゃんと言葉で想いを伝えたい。

 消えないよう、心の中に。]**
(76) 2020/10/12(Mon) 14:04:50

【人】 アジダル



 [ 嘲笑うでもなく、呆れるでもなく。
  戻ってきた言葉たちに肩を竦めただけに留める。>>60
  自分の事を知っているかのような口ぶりには>>61
  僅かに警戒するような反応は見せていた。 ]


   気味悪い方がここいらじゃ真っ当なんだよな。

   人助け結構。施すもご自由に。
   ただしそんなものを受け取りたいかと思うかは
   また別の話しなんだぜ。


 [ タダより高いものはなく、
  純粋な感情ほど信用ならないものはない。

  今や廃墟になった教会の、
  Take freeの篭に入ったパンよりも
  生ごみ袋の減りの方が速かった。

  悪意と策略に篭絡された街に於いては
  下心がある程度が丁度いいのだ。
  それは例え味方の内であったとしても。 ]

  
  
(77) 2020/10/13(Tue) 0:06:50

【人】 アジダル



 [ 画面の向こうにいた英雄は太陽を背負っていた。
  真っ新な拳を祈るように振るい、
  守る手を開いて弱きものに伸ばしていた。

  それを取れるのは守られる人が他人を信じられるからだ。
  生憎と路地裏ではそんな感情は疾うに売り切れている。 ]


   それに、もう俺は人を殺しているし。


 [ 路地裏の角裏、伸びる影に隠れて立つ体を見降ろせば
  真っ新な服を赤に濡らした昨日が見えて
  奪うばかりの人間がうつっていた。

  英雄を名乗るには黒に潰され過ぎているが
  取引をするには十分な信用が見えるのだろう。

  精一杯の振る舞いを糾弾する良心を殺したから、
  小さくかぶりをふって。 ]

  
(78) 2020/10/13(Tue) 0:06:56

【人】 アジダル



 [ 人にやさしくされた分だけ。
  生き延びて嬉しかった分だけ。
  ただ他人に受け渡してやりたいとはあまりに不遜な感情。

  ただそれが真実であるという事実だけが
  片付け忘れた死体のように重く転がっている。 ]


   
いい加減、
がっかりしたか?


 [ どうでも良さそうな声色は何重にか重なって
  さっさと通り過ぎ。 ]

  
(79) 2020/10/13(Tue) 0:07:00

【人】 アジダル



  [ そうして、目的の為に手段を択ばなかった皺寄せは
   きっと長いこと留まり続けていたのだろう。 ] 

 
(80) 2020/10/13(Tue) 0:07:03

【人】 アジダル



  [  …………。
    当然の報いだと理解していた。
    男はそれだけの事をしてきたのだ。
    捕虜の口を割る役目を担い、
    酷なことを他人に強いてきた。

    同じ宿に二人で入り、
    一人だけ出るようなことだってあった。

    けれど。

    彼らなりの落とし前としての行動だったのだろう。
    拷問にしては甘い遺体の損壊具合と
    ほどなくして泣きだした赤子の健康状態を見れば
    いっそやさしくされていた方だと気づいていた。

    けれど。

    それは勝者を定める戦争でなく、
    雌雄を決する諍いでもなかった。

    ワンターンずつ入れ替わるゲームのように、
    規定も、協定も、権能も、目的も、条件も、何も。
    何もない。
    子供の喧嘩よりも単純な癇癪で、
    蹂躙されてしまったのは、。  ]

  
(81) 2020/10/13(Tue) 0:07:08

【人】 アジダル



  [  だからヒーローには相応しくなかった。
    過ちと知って尚、怨恨の連鎖を断ち切るのが
    取るべき道だと理解しておいて尚、
    男は銃を捨てようとはしなかった。     ]

  
(82) 2020/10/13(Tue) 0:07:13

【人】 アジダル



 [ 観測者の姿が目に入りなどしないかのように景色は廻る。
  
  ふらふらと歩みながらあらゆる反撃を行い、
  暴虐と呼ぶに相応しい復讐を撒き散らし。
  自分のボスに潰れる程殴られても、
  生まれて初めてめぶいた自分だけの殺意を
  持て余しているかのように関係者を根絶やした。

   最後の一駒を撃ち抜いた空虚を背負い、帰った拠点。
   こちらに手を伸ばして笑う娘を見て、
   漸く一粒涙が、落ちる。 ]

 
(83) 2020/10/13(Tue) 0:07:18

【人】 アジダル



   Fra l’acqua del mare e la spiaggia
   Allora sarà il mio vero amore...



 [ 柔らかな髪を優しく撫でて、
  喉を握り潰した慟哭は
  擦れた歌声の形をしていた。 ]

  
(84) 2020/10/13(Tue) 0:11:49

【人】 アジダル



  Ditele di mieterlo con un falcetto di cuoio
  Prezzemolo, salvia, rosmarino e timo



 [ 明滅して、
  揺り籠の赤子は少女へと成って、 ]

 
(85) 2020/10/13(Tue) 0:14:38

【人】 アジダル



  E di legare i covoni con rametto d'erica
  Allora sarà il



 [ 明滅して、
  髪の伸びた少女は小さなまま男に手を振って、 ]

 
(86) 2020/10/13(Tue) 0:16:35

【人】 アジダル



  
Mio  vero   ...amore.



 [ 明滅して、
  行き先の知れない船に乗って消えていった。 ]
  
(87) 2020/10/13(Tue) 0:18:58

【人】 サティ家次期当主 シャーリエ


 あ……


[空に浮かぶ茜色に白と茶色の毛並みの生き物がいた。
それは、水面を割るように雲に潜ってこっちにやってくる。
手を伸ばすには遠すぎるところで、
短い手から奇跡のかけらを零して帰って行った]


 流れ星……

 
(88) 2020/10/13(Tue) 1:36:56

【人】 志隈

[考えの違いはよくあることだ。
警戒の色には僅かに何とも言えないような顔をした。>>77
現在のアジダルの産物と考えれば、
明かしてもいいようになる気分は察してほしいものだ。]

気まぐれで施される食物……餌の方が多いって事か。
善意の方が警戒されると言うなら、
俺がここの治安を良く見誤ってたようだな。

[見誤ってたとしても考えは変わらないが。
籠に入ったパンの方が減らない事は知らないし、
それに合わせて施し方を変えてるかどうかも、
特に気にする事では無い。

気に食わないだけだと言った。
人扱いされない兵隊を沢山見れば見るほどに、
俺達は一人の人間だと叫ぶ仲間がいて、
そんな環境で育った価値観もあるだろう。
takefreeと書かれてれば生ゴミよりそちらを選ぶ。
例えば自分が殴られたとしても、
あの人に安全な物を食べさせる方が優先された。

郷に入れば郷に従えと、この場所では彼の方が通用したとしても、
此方は“旅行者”でしかないのだし。]
(89) 2020/10/13(Tue) 1:50:42

【人】 志隈

[人を殺したと言えば、
そうだろうなと驚きもせずに頷いた。>>78
俺も殺してるとも一応告げて、
戦わなければならない世界には慣れ過ぎた。
それがどうかしたという顔を浮かべ。
路地裏に倒れる人間に眉一つ歪めないような男は、
相談相手には不適だ。
善意を知識として知っていても善人ではない。
ヒーローだって悪人を倒すからいいだろとは言っておく。
ヒーローより英雄は、
人殺しで呼ばれる事もあるなんて思い出したが。]

あんたにがっかりする事は別にないな。

[何故そう思った、と
また答えが返らなそうだと考えながら問うた。
理由があっても無くても、がっかりはしない。
憧れの混じった視線で見ているからもあるだろうし、
怯えて泣き出しても新鮮に変換される。
青い姿に呆れるは有り得るが、今の現状では思いつかない。

貰った分の優しさを伝えてるなら立派な物だと言うだろうか。
行動に関しては元より言う気がない。
相手が自分より人の心を持っているのは知ってる。]
(90) 2020/10/13(Tue) 1:50:59

【人】 志隈

[目まぐるしく世界は変わっていく。>>83
見慣れているとは言え眉を顰める怨嗟。復讐劇。

もしも。あの人が殺されたとしても復讐には走らない。
あんな殺意を持って奮う事は出来ないだろう。
ただ憐れみ、その魂の救いを願うだけ。
当然のように復讐される世界だとも考えてはなかった。
因果応報と巡るとしても、軍の仕事なら躊躇なく銃を撃ち、
復讐と言われても素直に身に受ける気もない。



甘ったるい声で人を愛せるあんたには、
酷な事だったんだろう。
慟哭が、それだけの愛を物語る。
同じだけ娘も愛したのだろう。

手放すしかないと言うが、
本当にそれしか無かったのかとは何度も思ってしまう。
危険に晒したくない気持ちには同意し、
逆にあの人に関する事を言われれば聞く耳が無いので、
一応納得はしてるものの。
成長していく少女の姿を見送る。
大切な物を失ってしまったあんたには、
彼女こそが必要で救いになっただろうにと痛ましい。
表情は変えずに、
“あんたは幸せになるべきだ”と気持ちを強くした。]*
(91) 2020/10/13(Tue) 1:51:16

【人】 志隈

──起きた後、近い内に──

あんたは、俺の恩人なんだろうな。
あんたがいたから、全部は捨てずに済んでいるし、
俺は俺として生きていられる。

…もしあの人に会うなら、あんたも一緒に行ってくれないか。
そうやって助けられたんだと紹介したい。
細かいことは言えないがな。

[何も思い出しはしないが、
ほんの少しの温かさが胸に湧いていた。>>2:=6
辛いことなど何もなかった。
あの人が幸せならそれで良かった。
あんただって甘えるなとそう言うはずだと考えていた。
苦笑めいた顔が優しさの様な物に見えた淡い夢。


“名前を呼びたい”なんて言われなければと眉を寄せていた為、
当時は素直に言うに至らなかったが、気が向いた。

無理強いをするつもりはなかった。
一人で行けと言われれば、
ビジネスライクな関係を築いてくるだろうか。
もう子供は子供ではなく、
あの人には変わりなく仕事がある。]
(92) 2020/10/13(Tue) 1:55:36

【人】 志隈

[……アジダルに抱く思いは恋愛感情なのだろう。
それだけではないが、それも含んでいる。
あの人への思いの違いを表すには一番しっくりは来た。

幸せにしたいと願い、
幸せになる姿を見届けるつもりだ。
そうして誰かがあんたを幸せにして、
自分が邪魔になると思えば、
また別の国に行ってもいい。
──と、強がっても心に痛みは伴っている。
離れたい訳ではないし、無理やり皮膚を剥がすような物だ。
それでも、やらなきゃならないならやる。

体温と匂いと、近付く事で掻き乱されるのはあんただけ。
不毛でも思い続ける事は苦ではない。
無愛想な中に甘さを薄く滲ませ見つめ続けるだろう。

恨むなら扉を開いた自分の迂闊さを恨め。
あれは俺の所為じゃない。
誰かと間違えて甘い色を落として、
自覚するほど更に広げたのだって、
寝ぼけてたあんたの所業だ。

だから、悪びれる気もなく。
寝てる時に唇でも奪ったらどうするのかと、
そんな悪巫山戯を考えそうなくらいには開き直る。

女装ランウェイの良さは未だにわからず惑っている。
汗と年の匂いを重ねたノーマルなあんたの方が好みなのは自覚した。]*
(93) 2020/10/13(Tue) 1:55:47

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 自業自得だ、と、
  男は土に立って吐き捨てる。

  傘もささず濡れるに任せた雨の中、
  質のいい服を着ろと教えた人のいる
  6フィート下の箱へ。

  後方の建物では誰も喪服など纏わず、
  次のトップを誰にするかばかりを議論している。
  有力候補であった男が女一人殺された程度で
  使い物にならなくなったのは、彼らにとって
  想定外で好都合だったようだ。

   所詮温い故郷の出身、
   ボスに囲われてただけのガキ、
   血を絶やさないよう、

  かまびすしい有象無象共を、男に世話になった
  十数人の仲間たちと元金色毛虫の青年が
  その拳を以って黙らせている。

  彼が気にかけた男の方にはその喧騒は届いていない。
  最初から墓と男しかいないかのように
  その空間はしとしとと静まり返っていた。

──これは、決別、の。
] 


 
(94) 2020/10/13(Tue) 1:58:36

【人】 Cucciolo アジダル



   ……非道いタイミングで死んだね。


 [ 顳顬を伝った雫が顎に溜まりを作る。
  揺れた景色に混じった言葉がほつんと落ちた。

  無法地帯だった街を暴力で支配し、
  肥大した権力で公的機関に圧力をかけて
  お飾りだった秩序に意味を持たせ終えて直ぐに
  その人は心臓に鉄の口づけを受けた。

  娘を妻の親族に引き渡し、
  ボスの為に生き直そうと男が決めて間もない頃だ。 ]


   あんたはいつもそうだ。
   僕の気持ちなんかお構いなしに土足で入り込んで……
   あんな話、


 [ 彼女の人生は父親の自殺から壊れていったという。
  他愛ない肴だった話は、自棄になった男から
  残酷に選択肢を奪っていった。

  繋いだ恋人の手は冷え、我が子の手は離れていった
  その手に最早何を握ればいいのかわからないというのに
  首に繋がっていた筈の輪さえ消え失せて。 ]
(95) 2020/10/13(Tue) 1:58:43

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 観測者の存在には気付いていない。
  けれどそれがどう振舞おうが気に留めず、
  後ろだか、土の下だか、あるいはどちらでもなく
  静かに言葉を紡いでいた。

  雨脚が強くなる。 ]


   ……。
   僕は、組織を抜ける。
   母と妹ももう僕の助けなんていらなくなったみたいだし、
   Giustinoも、……強い子だから、大丈夫だ。

   ごめんな。あんたの仇は取らない。
   苦しいのに生きる理由なんてもうないけど、
   ……苦しんで生きる以外に、
   ……幸せにならないでいることしか、もう。
   …………あんたや、妻や、娘を、
   あいしている証明の仕方がわかんねえや。


 [ どんな因果がどこに繋がり、誰を傷つけるだろうか。
  自分の力では守れないと気付いた今は恐ろしく。

  ずぶ濡れになった目元から温い水が伝い、
  臆病な言葉と一緒に土に染みた。 ]

  
(96) 2020/10/13(Tue) 1:58:50

【人】 アジダル



   ……、ああ、いや───、
   でも、
  
  
(97) 2020/10/13(Tue) 1:59:05

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 徐に膝をついた。
  既に濡れきった膝に土が纏わりつくのも構わず、
  墓石の前を手で掘り返す。

  棺桶まで至らない小さな穴は、染み出る水に追い立てられ
  徐々に底がせり上がっていった。
  その穴が埋まってしまう前に顔を近づけると
  水鏡に映った、あまりにも情けない顔の人物は
  しずかに口を動かした。 ]


   ……、あ、
   ……………───。
   ──っ、

  
(98) 2020/10/13(Tue) 1:59:23

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 一言落とした穴に土をかけて、
  恩人と共に埋葬したならば、
  人のいる方へ……光る扉の方へと踵を返した。 ]

  
(99) 2020/10/13(Tue) 1:59:44

【人】 新婦 早乙女 菜月



[2度目のキスは、
 ちゃんと、
 触れ合った。]

 
(100) 2020/10/13(Tue) 6:48:41

【人】 新婦 早乙女 菜月

[図書室だけだったデートの範囲が、
 広がっていく。
 初めてのデートは本屋。
 だけど私は熱心な読書家にはなれなくて、
 友君の持つ本を横から覗き込んだり、
 友君の睫毛を眺めたり。

 喫茶店で頼むのは、
 ピーチゼリーソーダと
 バナナのミルククレープ添え。
 クレープは二つ、ストローもふたつ。
 友くんがもにょもにょ言ったって、
 ドリンクだけはひとつきり。
 だって、美味しいドリンクを分け合うなんて、
 影だけが相手じゃできないもん。

 友くんと触れ合えるのが嬉しくて、
 甘やかな声も、意外と豊かな表情も、
 どんどん好きになっていく。

 だけど──]
(101) 2020/10/13(Tue) 6:49:40

【人】 新婦 早乙女 菜月

 笑ってくれない。>>75

 キス魔なのは、その、困る。
 ちょっと、困る!

 人前は一応避けてくれるものの、
 二人きり、の瞬間を狙って
 友くんはキスをしてくる。

 そりゃ、嬉しいけど。うれしいけど!
 見られやしないかヒヤヒヤするし、
 私にも心の準備ってものがある。
 それこそ、チアの子達に何を言われるか!]
(102) 2020/10/13(Tue) 6:50:17

【人】 新婦 早乙女 菜月

「ナツキ全然彼氏のこと喋らないね?」
「前はぺらぺら話してたくせにー」
[と、チアの子にはからかわれる。

 笑いを取るのは好き。
 自分がピエロになることで
 みんなに笑ってもらえるなら、
 積極的に話に行くけど。

 だけど、友くんと何を話して、
 私が何を感じたかは、
 誰にも言わない。
 自慢したいけど自慢したくない。
 そんな気持ち、初めて知って。

 だから、初デートのおしゃれのため
 部員達に泣きついて初めて
 友君の存在が知れ渡ったのだ。

「ナツキつまんなーい」「吐けー」
 良いんだ。笑顔にならチアでするから。]
(103) 2020/10/13(Tue) 6:51:16

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 人を害したことを後ろめたく思う程度には
  青年にだって人権意識が存在する。
  倫理よりも手段を選んだこと全てを理解されようとは
  元から思ってはいなかった。

  然し口から飛び出したのは意図せずして防御のそれ。
  否定されたことに僅か安堵したこと、
  眼を瞠るほどに驚いたのは青年自身だった。>>90

  虚勢を張って面子を保つ日々に
  ……心から弱みを晒すだけの余白はなく、
  肩を並べて後ろを守り続けた組織では
  随分空っぽの意識だけが育っていたようだ。

  ……ひとときの肯定や心休まる場所。
  剥き身の自分と向き合える時間が
  適切に取れていれば違っただろうか。

  ───。
  青年が振舞った優しさは、
  男がただ二人にしか向けられなかった愛情は
  
次は絶対守り抜くと決意できない程に、深く。>>91
  娘の方へと向けられた。
 ]

  
(104) 2020/10/13(Tue) 6:51:30

【人】 Cucciolo アジダル



 [ 弱音と信仰を埋葬した墓を背に、
  悲しみでも逃避でもない眼をしながら
  光の扉を潜り抜け─── ]

  
(105) 2020/10/13(Tue) 6:52:03

【人】 新婦 早乙女 菜月

「GO! FIGHT! WIN!」

[自分の中にある熱が、
 汗となり、声となり
 発散されていく。

 会場内は熱い。気温だけではない。
 ここに集まっている人たちの
 若さや、情熱や、希望や、愛情で、
 とにかくあついのだ。

 声がどこまでも広がって、
 やがて自分の耳に戻ってくる。反響。
 たっぷり体に染み渡るような、残響。

 モーション。体の中の筋肉、
 インナーマッスルで体を止める。
 体を動かす時間をできるだけ短く、
 モーションを決めている時間を
 できるだけ長く。
 腹筋に力を込めて、
 明確に体をストップさせる。

 反響して戻ってきた声で、
 シンバルのように鼓膜が揺れる。]
(106) 2020/10/13(Tue) 6:53:18

【人】 新婦 早乙女 菜月

[これは、と気づく。
 高々とアキナを投げる。
 重力が消える最高地点でトゥ・タッチ。
 これは、反響しているんじゃない。
 私たちの声の残響じゃない。
 客席からの掛け声だ。
 掛け声が返ってきている。

 二分三十秒の演技が、終わる。
 席に並ぶ一つ一つの顔、
 その中によく知った顔立ちを見つけた。

 二分三十秒の演技が、終わる。
 鳴り止まない歓声の中、
 客席に並ぶ笑顔の中の、
 一番良く知る顔に向かって、
 繋いだ手を高々と真上に突きあげる。

 チアリーディングはスポーツだ。
 グラウンドの外の花じゃない。
 技を競う真剣勝負。
 勝利の証は、会場に溢れる笑顔。
 私たちは誰かを応援するために、
 競い、高め合う。

 だけど、私自身が折れてしまった時に
 応援してくれたのは、
 友君、あなたの言葉でした。]**
(107) 2020/10/13(Tue) 6:54:37

【人】 アジダル

── 寝覚めの悪い朝に ──


  ……大袈裟だな。


[ 珈琲の湯気が線になって燻る朝。何を思ったのか唐突な言葉にひくりと口の端を引き攣らせた。>>92
 ……自分が見てきたあらゆるもののように、彼もまた何かを夢に見たのだろうか。問い詰めるのは恐ろしく、机に手をついたままカップで口を隠す。 ]


  行くことは構わないけど、
  紹介されるかどうかはちょっと考えさせてよ
  僕は何もしたつもりないし。


[ それになんて紹介されるか分かったもんじゃない、と冗談交じりに揶揄って。 ]
 
(108) 2020/10/13(Tue) 6:58:10
 




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