人狼物語 三日月国


52 【ペアソロRP】<UN>SELFISH【R18G】

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視点:


チサ10票

処刑対象:チサ、結果:成功

[犠牲者リスト]
該当者なし

決着:龍人族の勝利

村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 
[ 翌朝目を覚ましたのは既視感の酷い状況の中。
  取り乱した誰かの絶叫に叩き起されての事だった。

  意識が浮上した頃には既に、扉の向こうの従者が
  困惑に満ちた声色で入室許可を求めている。
 “それともお飲物をお持ちしましょうか”と訊く辺り、
  動揺の具合が伺い知れる。 ]


       ……んー……? ああ、必要だ。
      水差しとゴブレット、両方貰おう。

            侍女に出させる様に。


[ 寝惚けた頭ながら、最低限の事は為済ませた。
  起き上がると、シーツに挟まり呆然と動けぬ儘であろう
  学友の事は其方退けで書き物机を片付け始める。 ]

[ 放り出されたペンの下には、未だ白紙の遺書。 ]

 
(0) 2020/12/10(Thu) 8:23:13

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 
[ やがて部屋に入って来た侍女に言い付けたのは、
  其処に隠れている“客人”の服を見繕う事だった。
  運び込まれたシュミーズと上衣は少し大きかったが、
  彼女の普段の服装になるべく近いものだったろう。 ]


    言い忘れていたが、今朝は早く出る予定だ。
    馬で半日も進めば帝都が望めるだろう。

          早い処、身支度を済ませてしまえ。
          然も無くばもう一度襲う事になる。


[ 涼しい顔と平坦な口調で告げるのが単なる方便だと
  気付くのは、寝起きの頭には難しいかも知れない。
  どんな反応が帰って来ようと、欠伸を噛み締めて
  何処吹く風といって様子なのだった。 ]


[ 慌ただしく帰還準備が進められる砦の廊下では、
 “昨晩お聞きした際には女は不要と仰ったのに……”などと
  何処から現れたかも分からぬ同衾者の噂が立ったとか。 ]*

 
(1) 2020/12/10(Thu) 8:23:49

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[…………最悪な目覚めであった。]

[砦の中だということを忘れかけていたのかもしれない。
扉の向こうの他人の声に乙女には程遠い野太い悲鳴ですっぽり布団を被って震えていた。
昨夜の乱れ具合が嘘のように生まれたままの姿を隠し、朝の寒さに震え続ける。
随分昔の頃のように寝ぼけ、平然とした相手を恨めしそうに睨め付けた儘、差し出された服を震えた手つきで引っ掴む。もぞもぞとシーツの芋虫の如く蠢いた後、いつもよりも長い袖に不満を零しながら這い出てきた頃合い。
自分が窓を叩くまで彼が何をしていたのか。
知る機会がなければ、白紙の紙の内容さえも察せる筈もなく、


    ……掛けられた言の葉に頬を染め、き、と睨みつけた。]

 
(2) 2020/12/10(Thu) 21:42:11

【人】 終焉の獣 リヴァイ




(これほどまでに昨夜の不貞を呪ったことはない。
 もう間違いは重ねないでおこうと誓ったのは
 彼の言葉を本気で捉えたせいであろうか。)



    
お前、本当に殺してやるからな……!



[わなわなと振動する拳を振るうよりも先、昨夜散らばった衣服の残骸から見つけ出した短剣を引っ掴み、懐に放り込む。眼帯を探して拾い上げればしゅる、と傷跡が目立つ右目に括り付けた。

思い出したように、転がっていた真鍮製の注射器を取り上げる。
ぶかぶかとした服の袖をたくし上げれば、狂ったように注射痕の乱れ咲いた腕が曝け出された。
いつか見た事があったであろう真紅に染まった液体を、唇を噛みしめ血管の中に注ぎ込む。

…………決心の現れを、身に刻み込むように。


殆ど手ぶら同然の彼女の支度はこれにて閉幕。]


[その後浴びる視線と独り歩きする噂話は、かつての学び舎を彷彿とさせる。ポーカーフェイスの仮面を被りながら、化け物の噂は立っていないかと神経を張り巡らせていたのは内緒の話。

────そんな余計な心配も、彼が帰路の途中で寄る場所の正体を察してからは消えてなくなるのだろうが]*


 
(3) 2020/12/10(Thu) 21:42:14

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ 僅かな配下を引き連れ、馬上から降りる。
  帰還途中で足を運んだのは城下より間もない宿場町。
  その広場に建つ古びた教会だった。

  騎士団長を務めた勇士はこの街一番の名家の出で、
  歴代の当主と共に緑豊かな敷地の墓所に眠っていた。
  最も新しい墓標の前に自ら花を手向ける。 ]


 ( 戦は終わった。俺もまた終わる。
   だが、彼方で逢うべきではないだろう。

           おまえはもう自由なのだから。
                   それに…… )


[ 墓前にて語り掛ける言葉が無いのは、
  既に別れは済ませてあるから。

  主従であり、幼馴染であり、戦士同士であれば
  乱世の運命など互いに分かり切っているというもの。 ]

 
(4) 2020/12/11(Fri) 2:38:29

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



[ 凱旋は箍が外れる兵も多いもので、
  “客人”は常に自分か侍女の目の届く範囲で連れ歩いていた。
  他国の法に一切従わないとは言え、
  懸賞金が掛かれば秘密裏に報酬を求める者も居る。 ]


[ 帰り際、馬上で隣の彼女に語ったのは
  騎士アルベルタが最後に出陣した戦場の話だった。 ]


  彼奴は二千の兵と共に俺が死なせた。
  空挺部隊はそうでも無ければ下せなかっただろう。

    敵将を取る為に多くの駒を失い、
    而して俺は独りでに斃れる最期の一騎となる。


[ 感傷に浸っていた事は言うまでもない。
  従者や護衛に聞かれぬ様に声を潜めて、
  この二人以外の誰の命も懸けさせる心算はないと
  暗に示すような表現を用いた。

         最期に手をかける獲物は一人だけ。 ]
 
(5) 2020/12/11(Fri) 2:39:08

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




 ( 必要な犠牲。

   其の言葉を拡大解釈していけば────
   いずれ己もそうだと納得出来るのか?

        ……何もかも滅ぼした後ではもう遅い。 )



[ 帝王学部の特別学科に参謀役として入学した彼女を、
  かの賓客は顔見知り程度としか知り得ないだろう。

  其れでも話そうと思ったのは、踏ん切りを付ける為。
 
■きたかった。たった一つの夢を諦める為に。

  二人だけの物語に、もう他の犠牲者は不要であるから。 ]
 

    [ 誰かを死に至らしめる前に幕を引くのだ。 ]*

 
(6) 2020/12/11(Fri) 2:39:31

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[かの皇帝が信仰の熱い人物だと言う話は今まで聞いたことがなかった。
故に、教会などという場で足を止める理由が追悼以外に見つからない。無関係であるのは百も承知であるが、一歩退いた場所でその様を俯きがちに見つめていた。
刺さる視線が酷く痛い。王族に擦り寄る女にしては、随分と場違いな噂が尾鰭を付いて回っている。それが大きくなればなるほど自身の首の値など信じられぬ値段になる故──彼の判断は妥当、といったところか。


帝王学部に難癖を付けておちょくってきた学生時代、彼女のことを聞いたことも無ければ直接話したこともない。
が、時折彼の傍らにいた事実のみを思い出し───「そうか」と相槌を打った。]


(とっくのとうに捨て去った筈の陽だまりが、
 少しずつ確実に崩れ落ちていることを改めて理解する。
 その選択を、尊い犠牲を、
 自分が口を出す資格なんてあるはずがなく。)


 
(7) 2020/12/11(Fri) 9:56:45

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(学友のみでなく、守りたかった本心とは裏腹に、
 踏み台にして国家焼却炉の燃え滓にしてしまった
 嘗ての同胞たちのことが頭によぎっていた。

 人権さえ奪われていた彼等が
 国の土の下に眠る権利を与えられるはずもない。
 殺した事実を国へ公表した手前、
 満足に墓も作ってやらなかったことを思い出す。

      ……彼等に罵られて当然の結果だろう。)



  ……お前がそう決めたのであればそうなのだろう。
  特に何も言いやしないさ。
  争いとは生と死によって成り立っているのだから。

                   
お前と私も。

                 ……そうだろう?


[声を潜めた密談に肯定とも否定とも取れぬ言葉を返したのは、
どちらの立場にも立つことができない内心があってこそ。
物憂げに睫毛を馳せて───再び上げた隻眼は、真っ直ぐな意思を持っていた。]

 
(8) 2020/12/11(Fri) 9:57:46

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  ……頽れる前に私が喰ってやるから安心しろ。
             苦しませはしないさ。

  (懐の中で握りしめた約束が、やけに熱かった。)


[悪魔の脚本通りのつまらぬ芝居などごめんであった。
チェス盤に並べるには些か駒数が少なすぎるかもしれないが、2騎もあれば勝負はできよう。
犠牲に必要か否かを問うには既に罪を重ねすぎた思考回路を無理やり望む向きに正そうとしていた。

     ……未だ彼の本心にも、託した毒が使われるのかも
             気付ける予兆も感じないまま。]*

 
(9) 2020/12/11(Fri) 9:57:51

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 
[ 数万と続く人の群れは帝都に近付くにつれ数を減らし、
  最後には千人程度が主君に続く様にして残った。
  王宮務めの騎士達を中心とした軍勢は
  昼過ぎには隔壁の麓まで辿り着き。

  堆い門をくぐれば、直ぐ様視界に赤い吹雪が舞った。
  使い鳥の報せを受けて待っていた民衆達が終戦を祝う。
  そして二百年前の皇族に因んだ薔薇の花弁を投げるのだ。

           
再びの力と栄光を祝して

     “Gewinnen Sie Macht und Ruhm zurück!” ]


 ( ────こんな光景を待ち望んでいた訳じゃない。 )


[ 飽くまで戦争に携わらなかった賓客に出る幕は無いが、
  この国の頭目のすぐ後ろを馬で着いていけば
  散々、赤薔薇に塗れる羽目になるだろう。

   民家が立ち並ぶ狭い路地を抜けて大通りに出れば
   視界を覆う程の花吹雪も少しは収まるが。
   見慣れぬ女の姿を民衆が気に止める事はなく、
   手を振り返す君主の立ち振る舞いに誰もが夢中だ。 ]
 
(10) 2020/12/11(Fri) 10:06:49

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




 [ 結局は、全て殺めた所で満たされはしなかった。
   正しくは、解放される事に安らぎを見出したのだ。
   ……最期を看取る者が既に在る安心感を。 ]

 [ 薄い笑顔の下、死を恐れぬ戦士の殺伐とした希望 ]


 
(11) 2020/12/11(Fri) 10:07:10

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ 日がだいぶ傾く頃合には王宮へと戻った。
  南西の夕空に浮かぶ白い半月が、
  一週間にも満たない残りの時間を指し示している。


  賓客に与えられるのは寮長時代の自室より大きな部屋と、
  専属の侍女、絢爛豪華な衣装、食事、其れから自由。
  熱い湯を浴び、傷を癒すのも思いの儘だったが、
  たった数日で満喫するには少々此処は広過ぎる。 ]


 ( 『茶でもどうだ』とつい声を掛けたのは、
   もうじき終わる人生だとしても
   積もる話が山程あるからだ。

        その中に、長らく抱き続けた違和感の
        手掛かりがあるのではないか、と。 )


 
(12) 2020/12/11(Fri) 10:07:23

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 ……俺の死が予定調和の上と教えた時、
   おまえは散々俺を咎めたな。

     だが、おまえと其の旧友の過去を聞いた時も
     俺は同じ様に咎めた。
     “誰かの為に死ねる程その命は安いのか”と。

[ 誰にだってもう、死んで欲しい訳じゃない。
  いつか口に出した息苦しさは消えていたが、
  次に苛まれたのは毛色の異なる■の苦しみ。

      収拾のつかない心を見つけ出す為に問う。 ]

 
(13) 2020/12/11(Fri) 10:07:40

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ 薄く口の広いティーカップに注がれたダージリンは
  秋の終わりに摘まれたばかりの皇室御用達の品。
  何度も品種を変えながら、五年の間の出来事を
  心行くまで語り合った。

  何かと口煩いから甘すぎぬケーキを従者に出させて、
  陽の差し込む庭園でなく敢えて自室を選んだ。
  ……本当は、事ある毎に小言を差し込まれることも
  いつからかは鬱陶しく感じなかったのだけれど。


  彼女の“獲物”と看做された夜に、
  どの様な情緒の変化があったのか。それが知りたくて。 ]


   遠い昔の邂逅だったとは言えど、
   おまえが“そんなもの”の為に命を投げ打ったのかと
   苛立ちさえ覚えたものだ。

    ……抱いたことの無い奇妙な思考だった。


[ 彼女にとっては何にも代え難き幼馴染であるとは
  分かっているのに、どす黒い気持ちが抑えられない。
  そうしていつか冷たい言葉を吐いた事さえあった。

     己は運命“如き”の為に魂さえ捧げたというのに。 ]

 
(14) 2020/12/11(Fri) 10:07:59

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



( あれからずっと、気の浮き沈みを繰り返していた。)



   おまえも似たような心持ちだったのか?
   肯定するならば、詳しく考える事は止めておく。
   同じだと言うのなら、其れだけで充分だ。


[ 誰かの運命を自分のそれより煩わしいと思ったのも、
  其れが永遠に訪れなければ良いと考えたのも、
  生まれてこの方経験がなかったものだったから。
  凸凹の感情にもいつか当て嵌る時が訪れるだろうか。

 
『満月の晩、夜半過ぎに謁見の間まで来てくれ』
 
  ……そう告げれば、此度の茶会は締め括られる。]*

 
(15) 2020/12/11(Fri) 10:08:18

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[搾取ばかりを繰り返し、戦乱にあけくれ、絢爛豪華な閉鎖空間で悦を得るばかりの祖国を見てきた自分には、英雄の帰還を祝うような他国の雰囲気が少しばかり眩しく見えた。]


[場違いなのだとわかっていても、飛び交う真紅に圧倒される。
君主の振る舞いに刮目し、称賛を述べられ、それに応える姿は幼い頃に夢見た理想の国の姿と重なってしまう。

(権力の全てが憎らしいとさえ思っていたが、
 民主主義を声高々に掲げようとも思わないのだ。
 誰も搾取されず、貧困に喘がず、差別もされず、
     幸福に生きていられるのなら……それで。)


数日経てば馬の扱いにも慣れ、指定された立ち位置を保ちながら民に揉まれる元学友の姿を唖然と見つめている他無かったのだ。]


(ひとつの国が長年の屈辱から解放される瞬間。
 誰もが縛られることがない。誰もが自由を喜んでいる。
 誰もが不安を抱えることなく生きている。

 血と断末魔を乗り越えた先に存在するエデンの証明。
 こんな場所で、あの子と生きてみたかったとさえ。)


 
(16) 2020/12/11(Fri) 21:15:49

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  
(…………でも、 お前は?)

  [前よりもやや逞しくなった後ろ姿からでは
  彼の表情なんかわかりやしないのだろうが、
  彼が本当に心から笑っているのか自信が無くて、
  やや俯いた表情を曇らせてしまった。

        手元に残るは、引き裂くべき生命の運命。]

  (私が此処迄穢れる道を辿らなければ、
   お前は唯、誰にも知られず孤独に燃え尽きたのか?)


 
(17) 2020/12/11(Fri) 21:15:52

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[まるで帰りを悲しむ輝夜姫のようだ。
道行く月を見上げては意識を遠ざける日々が続いていた。
毎晩毎晩戒めるように刺し込む注射器の数は日々減っていき、その効力も定かなのかさえわからなくなってくる。
悪夢に苛まれる時間が増え、学生の頃よりも寝不足になっていたのかもしれない。
煌びやかな衣装は元々余り惹かれる性格でもなければ、刻限が迫る時の中で侍女と話して交友を深めようとも思えない。
削れていく自我を徐々に感じながら、残った意識を手繰り寄せるように食事だけは噛みしめていた。人間以外で湧き出る涎こそが自分を自分たらしめる証拠だとでもいうように。]


[声を掛けられたのは、夢遊病のように部屋を彷徨っていた時だった。
少し瞬いた後二つ返事で向かった先はどの部屋よりも広々としており、彼の権威を思い知らされる。
権力を何より嫌っていた癖に、大人しく王宮に収まる自分の今の状況に心の中で苦笑しながら席に着く。

────随分と昔、学び舎の一室で似たようなことをしたことを思い出していた。]

 
(18) 2020/12/11(Fri) 21:15:55

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[日頃の彼の暴食っぷりを見ていれば、
糖質控えめのものでも少々眉を顰める要因にはなろう。
……けれど、もう今は小言を言う気にもなれなかった。言えるような精神をしていない、と言うべきなのか。

つかの間に与えられた安らぎに浸るように言葉を紡ぎ、低体温症の身体に暖かな紅茶を流し込んでいく。
茶会の席で彼女が選んだドレスコードは、最初に与えられたものと同じ。黒を基調としたロング丈のワンピースの上に、男物の軍服。]



  お前と私じゃ価値観が違う。
  生まれも育ちも違えば何れ突き当たる常識だな。
  昔は全くもって理解出来やしなかったが、
  今ならなんとなくわかる気がする。

    私はお前では見ている景色が違いすぎるだけだ。
                   だけど……な。


  
(19) 2020/12/11(Fri) 21:15:58

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(自分の決めた道を真っ向から突き放すような言葉を吐かれ、
 思わず頭に血が上り、我を忘れて相手を貶したことを思い出す。
 あの時は互いに守りたいものが異なっていただけだというのに
 馬鹿の一つ覚えのように傷つけあって、おかしなことだ。

 ……どちらも決めた道から逸れないのだと知っていたのに。)



   ────そう聞かれれば、そうなのかもしれないな。
   私もどうしてなのかは全くもってわからないのだが
   もう二度と自分の目の前で、自分以外の誰かが
   相手自身のためではないことに苦しむことが
   見ていられなかっただけなんだろうさ。


(自分は守られたいだなんて思っちゃいなかったのに、
 守護の代わりに命を捨てる誰かの姿を思い浮かべて目を細めた。
 ……相手の中に渦巻く感情を理解できてもいないから、
   平然とそんなことを言っていられた。)



[死刑宣告のような重みのある言葉に隻眼を軽く向け、返事は瞬きを数回。……承諾なんて声に出さなくてもいい筈だ。
その呼び出しの意味を、どうしようもなく理解できていたから。]


 
(20) 2020/12/11(Fri) 21:16:02

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[初めて触れる重い扉を押せば────案外呆気なく視界は開けた。
壁を飾るステンドグラス、眼前に聳え立つ階段の先に見える鉄の玉座はどこまでも冷たい温度を感じさせるようで。

未だに長い袖の下の手をぐ、と握りしめたのは、伝わる寒さに耐えようとしたのか。
凍土の色を抱く瞳で頂上の主を真っすぐ見つめる。その目は昔のように燃え盛るかの如く光っているのだろうか。

月は未だに雲間に隠れ、その正体を現していない。自分の病の発作が現れる予兆が無いのなら、少し位の言葉は交わせたのかもしれないが、]


        ………………どうやら、もう時間のようだな。


[最後の会話がどんなものであれ、満月の衣は何れは流れ去ってしまうから。
徐々に訪れる視界の揺らぎと、頭痛の初期症状を鈍いながらも感じれば、か細い声で非道な運命のカーテンコールを告げようか。*]


 
(21) 2020/12/11(Fri) 21:16:14

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 [ 幼き我が子を腕に抱く慶びも、
   長らく別れていた妃との再会も、
   戦場を共にした戦士達との祝賀も、
   『我等の王』と慕う民草の言の葉も、

    ────全てすり抜けて、過去の幻燈となる。 ]


 ( 宿業から解き放たれて尚、刻限は迫る。
   何を遺そうにも時間は足らず……
   とうとう遺言は書き上がらなかった。

    新たな国土統治の取り決め及び相続、
    そして新帝が成人する迄の代理人を立て。

     誰にも終わりを仄めかさず、
     終ぞ彼奴にも秘めた
約束
の話はしなかった。 )



 
(22) 2020/12/11(Fri) 22:58:40

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 


  [ 其の理の外側に在る至高の獣が、
    この冠ごと打ち砕いてくれる瞬間を望む。

      冷えた鋼鉄の玉座は心まで蝕む様で、
      黙した儘、目を閉じ其の刻を待った。 ]


 
(23) 2020/12/11(Fri) 23:02:46

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

[ ────聞き慣れた、鈍い音色が鼓膜を震わせる。
父帝もまた、この玉座であの扉が開く音を聴いたのだ。


  緩やかに瞼を上げれば、謁見の間へと訪れる
  唯一人の姿を視界に収める。

  篝火だけがその輪郭を轟々と照らし、
  朧気な光を受けて佇む王の姿とは対照的でもあった。 ]


   [ 足取りを、佇まいを、揺れる漆黒の髪を。
     大理石の階段の遥か上から、瞳に焼き付けて。 ]



[ 誰もが主君を仰ぎ見る様に造られた百の階段から、
  僅かな囁き声でさえも降ることはなく。
  砂時計の最後の粒が落ちようとしていた。 ]

 
(24) 2020/12/11(Fri) 23:03:05

【人】 征伐者 ヴィルヘルム

 

 [ 隻眼の冷たい色合いと搗ち合えば、
   少しばかり背を伸ばして薄い微笑みを投げ掛けた。 ]


      ( 餞別など必要でない。
         我々は同じ場所へ至るのだから。 )



 [ 糸が切れた様に王座へと深く座り込み、項垂れる。
   肘置きから零れ落ちた片腕がだらりと垂れては
   二度、復元力に引かれる儘に力なく揺れた。 ]

 
(25) 2020/12/11(Fri) 23:03:49

【人】 征伐者 ヴィルヘルム




  ( また直ぐに逢える。おまえを信じているから。 )

  ( 何があろうと殺す。おまえを■しているから。  )


 
(26) 2020/12/11(Fri) 23:04:10

【人】 征伐者 ヴィルヘルム



 [ ────雲間から顕れた月光が、鉄の玉座を照らす。


      冠は真白く煌めき、
         傍らの剣は炎を発し、
            大地は俄に震え出す。


   裸の氷輪と、其れに呼応して姿を変え行く怪物に
   共鳴するかの様に、階段の頂点に黒い霧が掛かる。 ]



 [ 誰も来る事は無い、冷たく孤独な二人だけの世界。
   女の眼前で其れは冒涜的な存在へと姿を変え、

   立ち込めた霧は衝撃波を伴って四方八方へ飛散した。 ]


 
(27) 2020/12/11(Fri) 23:04:34

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム



 獅子の頭に、不確かな影、然して巨大な剣。
 魔力を纏う体躯は到底王座に収まらず。
 数倍に嵩んだ人ならざる姿は憤怒に
える瞳で
 遥か下方の怪物を見下した。


  永く肉体を持てず彷徨い続け、
  漸く再臨の叶った悪魔は未だ不完全であった。
  故に、滅ぼすべきは今この刻のみ。


    砕けた硝子が降り注ぐのをものともせず、
   『其れ』は剣の柄から離した片腕を振るった。


 
(28) 2020/12/11(Fri) 23:05:09

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム

 

  
とは到底呼び難い火が降る。
  頂上から階下へ、命脅かすモノを撃ち落とす為に。


   この瞬間、彼女は救うべき獲物ではなく
   退けるべき怨敵でしかなかった。
   そう、現界を果たした悪魔にとっては。



       

    
   涙  走    

     球       り    の
               
  




  風を唸らせて飛来する無数の焔は、
  逃げ場を無くすかの様に降り注いだ。

   鱗を灼き、尾を焦がし、瞳を煙と変え、
   何れはこの城ごと焼き落とす事さえ厭わなくなる。


 
(29) 2020/12/11(Fri) 23:05:30

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム

 




    今こそ一度限りの舞台へ駆け上がり、
     呪われし運命に終止符を打つ時。*

 月光だけが微笑みながら、其の終幕を見詰めている。


 
(30) 2020/12/11(Fri) 23:05:47

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[────静寂だけが二人の繋がりを証明する手段のようだ。
投げかけられた微笑みとは対照的に、見上げる夜色の女は唇を噛みしめ顔を歪ませる。

(同じ場所へ至れるとまでは思っていない。
 微かな願いは届くわけがないとさえ思っている。
 今まで通り送り出すのみの略奪者の仮面を被り、
 血に塗れた腕を伸ばすだけの未来を見ていた。)


     ────力尽きたようなさまを見開いて認めると同時、
     この世の終わりのような痛みが脳を襲って頽れた。]


 
(31) 2020/12/12(Sat) 1:07:05

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  (お願いだから持ってくれ、私の自我よ。)

  (どうか、楽に逝ってくれ、私の…………)



           
[意識がノイズに乱される。]

 
(32) 2020/12/12(Sat) 1:07:09

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[噫!
頂点に聳え立つのは月をも喰らいつくさんとする百獣の王を模した幻影の如き虚な姿と
(影と混ざり合う、まるでキメラのようなそれは、月光病さえも彷彿とさせるような…)

そこに至る迄の試練の如く降り注ぐのは
灼熱地獄にも似て非なる───冷酷非道な怪物の命をかき消さんとする

        随分と”洒落た”カーテンコール!!]


 
(33) 2020/12/12(Sat) 1:10:36

【人】 終焉の獣 リヴァイ




     ────────……… 
ッ !!



[温度が上がる。
     
         裁きの炎が堕ちてくる。

ばらばらと崩れ落ちる硝子片たちを避けながら、
ステップを踏めば、遥か頂上の仇を睨み上げるのだ。
そうして口の中に仕舞い込んだ短剣を砕かぬように感触を確かめ──────、]

 
 
(34) 2020/12/12(Sat) 1:10:42

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[────苦痛と共に硬い表皮に覆われた巨大な身体を大きく振るわせる。
燃え盛る火炎に呼応するように、ひとたび大きな咆哮を上げた。
鱗を舐める高音をものともせず、嘗て諸国を超えて彼の元へ辿り着いた四足歩行が空間ごと揺らす勢いで何段かもしれぬ階段を登り始める。
目指すは頂上一点のみ。その先に臨む宿敵を───神を欺く憎き悪魔から大切なものを奪い取るために。

  数多の武器を跳ね返す鋼の如き身体でも、
  あの日の銃弾が脇腹を抉ったように、弱点はある。
  女が完璧な怪物になりきれぬ証のように。
  ちりちりと焦げる熱が臓器まで浸そうとも、
  この自我だけは……生命だけは、燃やさせない。


大昔の聖人が海を割った逸話を繰り返すわけではないが───目には目を。歯には歯を。炎には炎を。
ご お ぉ───……
と、鋭い牙の生え揃った顎を大きく開け、蒼く燃え盛る
を吐いた。

      
(35) 2020/12/12(Sat) 1:11:52

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[怪物の吐息にも似たそれは、見た目に似合わず凍えそうな死の温度を纏っている。
試練に立ちふさがる灼熱の壁を溶かし、一本道の活路を切り開けたのかどうか。]



[否、作れなくとも構わない。その壁を突破し、彼奴に届けばそれでいいのだ。

どこまでも彼に温もりを与え続けた怪物が最後に届けるのは終焉を知らせる冬の到来。
左手には闇を、左手には約束を。誰よりも憎み■したかった者たちを壊すために目覚めたのだから。


凍てつく波動じみた炎を、遥か上の相手へと叩きつけるように吐いた後、
切り開いた活路を───開かれないのであれば、腹を焦がしながら。重い身体を引きずらせ、只管に玉座を目指し続ける。
口内にしまい込んだ短剣を振りかぶる時を待ちわびながら、燃え盛る瞳は真っすぐに相手を打ち付けながら。]*


 
(36) 2020/12/12(Sat) 1:14:16

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム



 互いにヒトとしての自我を無くしたならば、
 同様に言葉さえも不要。

 燃え落ちよ、この足許へ至る前に灰と化すべしと
 降り頻る焔が幾千と連なる山脈の如き鱗を灼く。



  不確かな体躯はたった一撃、
  魔除の加護を受けた刃で貫けば跡形もなく消えるだろう。
  故にこそ近付けさせてはならない。
  玉座に至る前に滅しなければならない。



 火球の一つが怪物の顎門に直撃しようかという寸前で
 其れは吐き出された絶対零度の前に掻き消える。
 覆う空気が凍て付けば、焔とは影も形も無くすもの。


 
(37) 2020/12/12(Sat) 1:56:12

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム



 ────獅子は瞳を再び見開く。


 その牙の内側に隠した品の何たるかを識っている。
 忌々しい
約束
だけはこの身に触れさせる事を良しとしない。


 深紅の爪を抱く掌を開けば、
      一際大きい
を振り落とし。

  質量を持つそれは、躱せば自ずと石段を砕く。
  即ち、退路が完全に失われるのと同義。
  然し────この期に及んで背を向ける者など居ない。



  隕石にも似たその影の裏から躍り出る姿が在るならば、
  いよいよ魔剣と化した獲物の柄を握り直す。


 
(38) 2020/12/12(Sat) 1:56:26

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム



 浴びた冷気は纏う熱に触れれば一瞬にして蒸気と変わる。
 視界が歪むのはそのせいだ。

 返礼の如き
哮と共に、
 半月を画く様にして禍々しい刀身を振り落ろす。
 刃の煌めきも、尾を引く残像も其処にはなく。

  まるで光を喰らった様な漆黒だけが、空を裂く。



       蝿でも叩き落とすかの様でありながら、
       確実に身体の正面を捉えようとした一撃を
       擦り抜ければ、その心臓にだって手は届く。

       ────約束を果たすことだって。*


 
(39) 2020/12/12(Sat) 1:56:57

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[修羅を貫く真っ赤な旅路の道中で、数多のものを投げ捨ててきた。

最後まで使うことの無かった、約束だけをこの手に残して。

必死につなぎ留めた意識を代償に、この身に降りかかる災厄を全て受け止める。罅割れかけた精神がこれ以上は限界であると叫ぼうと───この夜だけ保ってくれたらそれでよかった。


(その後は、どこへなりとでも燃え尽きればいいのだ。
 理性を失い、数多の人を喰らい、正真正銘の野生へ変われ。
 だが───今は。今だけは。
 略奪者ではなく、救済者としてあってくれ。

        この場で朽ち果てるわけにはいかないから。)


掻き消えた絶対零度が示す道を辿るように一直線に百段を駆け上がろうとすれば、大気圏に触れて温度を上げる小惑星じみた火炎が眼前に迫る。
咄嗟に吐き出した吹雪は勢いを弱めていたものの、石段を砕け落とす前に威力を弱めることはできた筈。

何層にも分かれた炎が頭蓋骨にぶつかれば、元来の頭痛が更に速度を上げて、鱗の隙間から血が垂れ流された。

苦痛を振り切るように轟く咆哮が空気を震わせれば、焦げ付く身体をくねらせて、数多の命を喰らった巨大な口を大きく開き───絶え間なく涎を垂れ流す。]

 
(40) 2020/12/12(Sat) 2:52:31

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[断頭台の如き刃の一撃を、身を捩って躱しきる。
四肢の骨が焦げる音がしたが、知ったことではない。

床に勢いよくついた前足にスナップを効かせれば、尾が大きく上へと踊る。そのまま勢いよく振り下ろせば────空間を大きく揺らし、砂埃のような瓦礫の屑が一帯を覆うだろう。

  目くらましのようなそれに目を奪われていれば、
  きっと獣の行方も、変わった姿も、認める早さは遅くなる。
  衝撃を利用して一瞬のうちに宙へと躍り出た────
  大口を開けた獣と言うよりは、鱗に覆われた女の姿。

たったひとつの約束を抱えて、悪魔に襲い掛かろうとする、運命でさえも抗うちっぽけな存在。
赤から戻ったアイスブルーと、錆びることなく澄み切った刃の輝きだけが、これから起こる未来のことを物語るように。]


 
(41) 2020/12/12(Sat) 2:52:34

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[刹那────月が翳る。]



     ッ 、
う゛
あぁぁあぁぁ!!!!!!!!



[咆哮と叫びが混じりあっていく。
飛び掛かった獣の姿が剥がれていく。

雲間に隠れた月明かりがわずかに照らすのは、高く跳躍した人外の一部を残した女が空気に躍らせる、漆黒に輝く黒髪の艶やかさ。
未だに痛む身体中の火傷の残響が示しているのは、“元の姿に戻るのはこれが最後である”という証。

鋭利な牙が生えそろった顎が、何にも穢れぬ短剣を振りかぶった両腕に代わり────獲物に喰い掛かる代わりに、その左胸を貫き通そうとした。*]

 
(42) 2020/12/12(Sat) 2:52:41

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム




 砕けた彗星の欠片と纏う残り火、
 飛び散った血痕が大理石の上に散る。
 これ迄辿った血塗りの路を示唆する様に。


  薄闇の最中で僅かに煌めいた短剣の誓いは、
  女が姿を変えつつあっても決して身から離れず。
  白銀の残影を、その身体ごとだって両断してしまいたい。


   命に届くか紙一重の斬撃が捉えたのは
    ────僅かに血が付着した石畳でしかなかった。


       
空を仰ぎ……


 
(43) 2020/12/12(Sat) 4:29:38

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム




 月明かりの消えた舞台に舞ったのは、
 ヒトの四肢と貌を取り戻した女の姿。
 撥ね付けられた瓦礫と塵埃が其れを隠せば
 最後の抵抗として振るった腕が形を捕らえる事はなく。



     霧中を跳躍する漆黒の旗めき。
    其れが悪魔の視た最期の光景となる。



 
(44) 2020/12/12(Sat) 4:29:57

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム




 胸を穿った聖なる刃の痛みを享受する前に、
 突き刺さった箇所から錬成された肉体が解けていく。
 黒い煙へと変わり、空気に混じって消失する。

 藻掻けど足掻けど終焉の針が止まる事はなく、
 本分を得る前に全ては拡散して行った。


     十余年を経て成就する筈だった悪魔の目論見は、
     此処で終わりを迎える。実体を完全に無くして。




  其の最中をゆっくりと落ちて行く身体、
  制御を奪われ、悪しき存在に覆われていたヒトの身は
  今は未だ、見付けだす事は叶わない。 


 
(45) 2020/12/12(Sat) 4:30:16

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム





         ────……



 [ 重力に引かれて往くのとは裏腹に、
   緩やかに意識が浮上する。

     燃える様な痛みと共に目覚めれば、
     此処が死後の世界で無い事くらい理解出来た。 ]


   (    嗚呼、終わったのだと。
      同時に……免れない死を感じる。 )


 
[ 激痛に漏れ出そうとする叫びを流動体と共に抑え込む。
  空になった瓶が落ち、足許で粉々に砕け散った。
  懐剣が同様に叩き付けられる音に混じって、
  きっとその存在を誰も気に止めることはない。 ]

 
(46) 2020/12/12(Sat) 4:31:23

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム

 

[ 床に足が着くと共に霧と驚異は去ったが、
  体重を支える事も当然叶わずに崩れ落ちる。
  生まれて初めて膝を折ったのが宮中だとは、
  歴史書でさえ語る事のない、一人だけが知る事実。


  視覚を取り戻していけば、追い縋る様にして腕を伸ばした。
  幕を閉じる場所は其の腕の中でありたいから。 ]



     [ 死に物狂いで血の海を這い、
       よく知った温度に辿り着く頃には
       既に足の先が感覚を失くしている。

        燃える様な痛みは寒さへと変わり、
        平等で残酷で耐え難いものが
        背後に迫る恐怖に襲われる。 ]


  ( 終わりが、来る────……其の前に。 )


 
(47) 2020/12/12(Sat) 4:31:50

【人】 荊冠の王 ヴィルヘルム

 


 [ 温もりを頼りに破れた衣服の上を掌で辿り、
   震える指先で首筋と垂れ落ちた髪に触れる。
   最期の力はこの為だけに使う。
   その顱が引かれる儘に下がり、距離が零になれば。




   
────噛み付く様に、渇いた唇を奪った。
 ]



   [ からん、からんと音を立て、
     黄金の冠が血濡れた階段を転がり落ちていった。 ]



 
(48) 2020/12/12(Sat) 4:34:31

【人】   ヴィルヘルム

 

[ 柔らかな肉を貪ると同時に、舌を突き入れて。
  上から覆い被さる様にして首を伸ばした。
  甘い、何処までも甘い蜜を口端から零しながら
  血と唾液の混ざり合った其れを咥内へ注ぎ込む。


   快楽等ある筈もないが、逃がす積もりもない。
    喉が上下する迄、確実な死を飲み下す迄。
     引き寄せた小さな頭を抱き込んだ儘、
   嚥下する音が耳許を撫ぜるまで決して離さない。



  込み上げる喀血の味を、呼吸を共有すれば
  安らかな死など鮮血と酸素を求め喘ぐ苦しみに塗れる。
  合わさった唇から漏れ出すのはどうあっても苦悩の声。 ]


    [ 其れはサロメの狂気にも勝る、破滅のくちづけ。

        彼女自身が作り出した『罰』を今この場で、
            自らの命と臨終の時を以て返す。 ]


 
(49) 2020/12/12(Sat) 4:35:16

【人】   ヴィルヘルム





( 身を灼く熱情の炎が執着に依るものと知ってしまえば、
  抱く願いなど唯一つ。
  遺言を放棄し、死の運命を秘密として守り通し、
  剰え醜く足掻き、苦痛を増やす道を選ぶ程度には

                
こい

  ────如何しようもない程に
してしまっていた。 )



 
(50) 2020/12/12(Sat) 4:43:00

【人】   ヴィルヘルム




( 死を目前にしてやっと気付いたのは、
  おまえを何処にだってやってしまいたくないという事。

  ずっと満たされなかった奇妙な心地の正体は、
  同じ死の苦しみを味わう事になったとしても
  共に在り続けたいと叫ぶ秘めた想いだった。
  蓋をし続けたのは己だったのだ。


          だから、どうか…………どうか。 )



 
(51) 2020/12/12(Sat) 4:51:29

【人】   ヴィルヘルム





       
     ────……傍に居てくれ、リヴ。

       
   ( Egal was kommt, ich werde dich nie verlassen )



 [ 凍える身体が全身で紡いだ、たった九文字の願い。
   ずっと痛んでいた、空白ばかりが胸を占めた、
   <利己>に限らぬ想いの応えを導き出した。 ]


 
(52) 2020/12/12(Sat) 4:55:23

【人】   ヴィルヘルム

 


[ 互いの唇を結んだのは泡を含んだ赤い糸。
  伏せていた瞳が揺らぎながら愛しい貌を見詰めては、
  散々血に穢した口許を歪めて、弱々しく笑った。


  其れを最後に、とうとう全身の膂力を失い
  首元に回した両腕さえ零れ落ちて、躰は沈んで行く。
  抱き留めてくれると言うのなら、其の温もりの傍で。
  唯独り、死後でさえ離れたくはないと望んだ者の元にて。



   空気を喘ぎ求める事もなく、痛みに喚く事もせず、
   死を受け入れる支度が調えばいっそ穏やかに、
   かんばせを見上げ続けていた瞳を閉じた。 ]

 
(53) 2020/12/12(Sat) 4:55:43

【人】   ヴィルヘルム




[ 其の表情は苦悩に塗れた最期を示すものではなかった。 ]*



 
(54) 2020/12/12(Sat) 4:56:04

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[──────────びゅいッ と黒翼広げた暗殺者独り
冬空を切って星まで堕とさんとばかりの勢いで振りかぶる。
心の臓を着地点とした短剣がどうなったのか、悪魔学に疎い己はすぐに判断などできず貫けてしまったとして...これから起こることなど、分からない。

 それでも、ふと我に帰れば狂気の離れた身体を
 抱き止めてやりたくて、思わず腕を伸ばした。
(誰だって意識のある確実な死は寒いものだから、
 大切なのだと認めた者の最後くらいは寄り添いたい。
 ……自分自身が征服者として奪ったものを、
   まだこの胸の中に残ったわずかな人間性で。)

 息さえぴったりと合わされば、抱き合う形をとって、

───それから。]


   
(55) 2020/12/12(Sat) 8:08:00

【人】 終焉の獣 リヴァイ




     ………ッ
!?


            ふ……ッん────ぅ、


[御伽噺の口づけなんかとは程遠い、貪り尽くすかのように覆い被さられたそれに大きく肩が跳ねた。
甘さの中に錆びた香りが混じりこんだそれは酸素の代わりに強制的に流し込まれて、脳みそを強過ぎる刺激が塗り替えていく。


その味の正体が、嘗て自分が渡した小瓶の中身だということにすんでのところで気づけない。
逃げることを許されない確実な死を運ぶ餌付けを享受しながら、ファーストキスにしては酷過ぎるそれまでもを受け入れようとする。


互いが最後に共有するのは終焉へと至る迄の過程だったのか。理解しようとしても時既に遅し。
小さな身体が唐突に受け止めるにはその激情は果てしなく重く、きつく蓋をされ続けてきただけのしかかるものの多さに圧倒される。

幾ら閉鎖的で鈍感な精神と思考を持っていても、
過去に抱いたことのある感情への名前の付け方を知っていれば……己に向けられるそれがなんなのかくらいわかる筈。

……自惚れているのかと思われても仕方ないかもしれないが。]


 
(56) 2020/12/12(Sat) 8:08:05

【人】 終焉の獣 リヴァイ




[鼓膜を揺らすのは、遅すぎるくらいの愛の懇願。大きく見開かれた片目の澄み渡った凍土が激しく揺れ、隠し切れぬ動揺を明らかにしていた。
……些か物騒な赤い糸を繋げた激しさに朦朧とした意識をなんとか奮い立たせようとしても、微笑まれた相手の視界には蕩けた表情を隠すことができない己の情けなさが映し込まれるのみ。]



           …………どうして、私なんか、
           
(怪物なんかいたところで、)



[思わず零れ落ちるのは、純粋な疑問。
その答えを聞く前に、終わりに近づく身体は冷たい床の上に頽れていこうとするから───反射的に相手を抱きとめ、包み込んで。
ゆっくりと正座するように腰を下ろしたその膝へ、頭を降ろさせようとする。]

 
(57) 2020/12/12(Sat) 8:08:09

【人】 終焉の獣 リヴァイ



(……ぽた ぽた と。
 その頬に流れゆくのは、枯れたと思っていた涙。
 冷ややかな頬を伝えば、温度を徐々に失う相手の顔に
 水滴を立ててしまうから、絶えず指先で拭っていた。)



[………今からずっと昔。
幼馴染を喰らった日からだった。
どんなに慕われようと、ひとの関わりは自然と薄れていった。
自身の友好関係など、信頼関係など、誰かの蜘蛛の巣から零れた糸を伝っていたものに過ぎなかったのだ。


 ( ”弱い”自分の代わりに、”智慧”を身につけた。
   身につけても、私は─── 弱虫で、臆病者だ。
   全てを守れるだけの力も 救える力もなかった。
   だから、 「選んで」 「棄てた」。

    修羅を歩む孤独な道が正しいのだと信じて。 )


────……大事なものなんて、選べるものじゃないのに。
    その先は、何よりも恐れる孤独があるだけなのに。]


 
(58) 2020/12/12(Sat) 8:08:29

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[力尽きたあの子を抱き上げてから気づいた。
私は呪いなんて要らなかった。
ただ、大切な誰かが苦しんでいるなら、
その悲惨な苦痛に苦しんでいるのなら。

    ────…… 傍で寄り添い、支えたかっただけ。
      互いにひとりぼっちになりたくなかっただけ。]



    ………傍に、いてくれるのか?
    これからも、ずっと……私の隣に。


[今も舌先に残り続ける甘ったるさの味の源を辿ろうとすれば、漸く彼の意図がわかった気がして───叶わなかったはずの自身の悲願が届いたような、不思議な暖かさが広がって。浮かべたのは泣き笑い。

指し示されるはずのなかった“自分を持ったままの終焉”を約束された安息感だけが、この心を静かに満たしていた。]

(返事なんて必要なかった。
 返される内容さえも察しがついてしまう問いだから。
 もう孤独に震えることも、泣き叫ぶこともない。
 死の向こう側に至ってもずっと、寂しくないという事実が
 揺らぐことなく目の前に差し出されているだけ。)


 
(59) 2020/12/12(Sat) 8:08:50

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[プロポーズにも似た短い言葉に、乙女のように応えることは自分らしくもないだろうから。
ほんの少しだけ……死の間際に、痛みを我慢してほしい。
全てを奪われたあの夜の仕返し。火傷だらけの身体には、彼の所有印が未だ色濃く全身に残っていたはずだから。]


[相手に覆い被さって、その喉元を引き裂かぬ程度に食らい付く。
口づけのお返しとしては少々野蛮な噛み跡をひとつ、そこにくっきりと浮かばせて───それが懇願への返事の代わり。
此奴は永遠に自分の獲物だと言わんばかりのマーキング。]


[遅効性の毒薬がその身を激しい苦痛の末路へと誘うまで────あと少し。
死に向かうには寒すぎる季節の訪れを告げるのは、割れてしまった窓から降り注ぐ雨から変化した───……*]


 
(60) 2020/12/12(Sat) 8:15:17

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[私は自分勝手な復讐心で数多の敵と同胞を殺し、狂い果てるべき定めの“ひとでなし”だった。

  (こんな私を怖がらない。
   こんな私を拒まない。
   あまつさえ、こんな私の願いを叶えようとした。
   いつまでもばかで愚かだと思うが────……、)

でも、お前が私に向ける気持ちを、漸く理解できた。

(2人寄り添い眠った夜が穏やかだった訳も、
 餞別を渡す名残惜しそうなかんばせも、
 甘く抱かれた夜に触れる優しい手つきも、

     ……いまなら全部、納得がいく。)

────────……… だから、「噛んだ。」
                (応えた。)]


 
(61) 2020/12/12(Sat) 9:46:39

【人】 終焉の獣 リヴァイ




  (『────……傍に居てくれ、リヴ。』)
  (「……何処にも行けぬと知っておろうに。」)



[大切なものを傷つけてはならないと知っていたのに。
死に向かう痛みを増やすだけだというのに。

百獣の王には、その生き様に相応しいくちづけを。
(いつまでも自分から祝福を送れないまま、)
その喉に自己主張の少々激しい其れを残してしまったのは、

   地獄までの一本道で出会うための目印代わりと
   ─────指切りの代わりだったのかもしれない。]

 
(62) 2020/12/12(Sat) 9:46:58

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[───手先の痙攣と共に、苦痛は不意にやってきた。]

[体制を崩し、胸を押さえて倒れ伏した時。彼はもう逝った後だったろうか。
どちらであれ、冷たい床に投げ出してしまった事実に焦り、びたんびたんと暴れる腕を動かして、その手を繋ごうとする。
その行動が叶ったと同時、呼吸が大きく乱れてきつく痕ができるほどに握りしめてしまった。

同胞に飲ませたのは睡眠薬が入ったもの。
生命を奪う毒薬にしては長時間の苦痛を味わわせる配合にしたのは、敢えて自分のものだけ情け程度の眠りを与えなかったのは、……全てを見え透いていた過去の自分から非道な手段しか辿れない未来の怪物へ送る罰。

うまい呼吸の方法を忘れ、瞳孔が閉じるのを忘れ、急激に三途の川を渡り始める体はすでに限界だった。]


(寒い。苦しい。……その筈なのに。
 息絶えて既に体温が失われている此奴の手が温かいから、
 何故だか笑みが溢れてくる。

 涙でぐしゃぐしゃで、ひどい顔をしながら、笑った。)


 
(63) 2020/12/12(Sat) 9:47:58

【人】 終焉の獣 リヴァイ



[痺れに苦しむようなか細い吐息を溢して、呻きを流す。

「ヴィル。」


徐々に神経まですり減らされれば、滅びを迎える肉体が与える苦痛を感じることも無くなる。
通りが良くなった喉を震わせて、1人の名前を呼んだ。]


   夢で未来を、見たことがあるんだ。

      
黄泉

     …彼処は昏くて..寒くて…….
         …怖いばかりで、...何もない。
         まるで今の季節のようだ。


[紅鏡の気配に、少しばかり眉を寄せる。
もう片方の腕を床に這わせるように動かして───冷たい身体を抱きしめ直した。]



   
(64) 2020/12/12(Sat) 9:48:15

【人】 凍土 リヴァイ





     だから、

     ……お前の傍にずっといるさ、ヴィル。
     お前が私を求める限り、
     私を拒んだりしない限り ……永遠に。


(呪いが解けた御伽噺の人物のように、
 甘ったるい言葉を……らしくもなく吐き出す様は、
 怪物の性から解放された、普通の少女のままで。)





   
(65) 2020/12/12(Sat) 9:50:15

【人】 凍土 リヴァイ



[思い返せば彼の名前を呼んだことがなかった。
甘味の取りすぎを咎めるときも、口喧嘩をするときも。
……身体を重ねたあの夜の時だって。
卒業時に形式めいて叫んだフルネームは呪文のようなもので
相手のことを思って発したことなんて一度たりとも。

         お前は私を置いていくのだと思って
         その身に縋り付くような恥を晒して
         お前に何れ来る暗い未来をおもって
         どす黒く回る心を抑えられぬ時も。

孤独に震える末路は自分だけの秘密で
感じていた体温も何れは離れていくものだと……
毒薬を与えたくらいで何も変わりやしないのだと、勘違いしていたのかもしれない。]


   
(66) 2020/12/12(Sat) 9:50:36

【人】 凍土 リヴァイ





 (お前は、こんなにも私のことを想ってくれていたのに。)



 
(67) 2020/12/12(Sat) 9:50:55

【人】   リヴァイ





       
『死んでもこの手は離さないでくれ』

    ....... もうすぐ、この感触を頼りに逝くから
                待っていてくれ。



  
(68) 2020/12/12(Sat) 9:51:47

【人】   リヴァイ



[それきり、女の唇が開かれることはなかった。

魔性を失った朝焼けも間近な空の中、宵闇が手を招いている。
初雪が2人の上を白いシーツのように覆って仕舞えば、まるで互いに寄り添い眠っているように見えるのかもしれない。

苦痛に顔を歪ませ、喉をかきむしった痕跡こそあれど、
その表情は憑き物が取れたように穏やかで、少々上品な笑みを讃えてこそいた。]

 
(69) 2020/12/12(Sat) 9:52:04

【人】   リヴァイ



[……もう、辛いことは何も感じなくなった。
冬の到来を知らせる新雪も、美しさを感じるばかりで気にならなくなった。
だけれど今はやっぱりひどく寒いから、最後まで寄り添っていても許されるだろうか。]


    
“  もう2人、何もかも分け合えるから  ”

  (この冬の寒さでさえも、2人だけの秘密にしよう。)**

      


   
(70) 2020/12/12(Sat) 9:53:24

【人】   ヴィルヘルム



[ 生涯の最後に浴びる雨がこんなにも暖かいものだとは
  想像だにしなかった。
  返答の代わりに降ったのは、獲物を仕留める様な愛咬。
  獣化の兆候が色濃く残る其れは鋭い痛みを齎して。


    吸い込んだ息は終ぞ言葉にはならず、
    痛覚に呻くこともなかった。但し…… ]


      
人間として見ていてくれた

  ( 俺をヒトの儘終わらせてくれるおまえは、
    向こうでも必ず俺を見つけるのだろう。 )


 
(71) 2020/12/12(Sat) 9:59:43
 




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