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【独】 暗雲の陰に ニーノ一歩踏み出せずに、扉の向こうから覗き見た最初を覚えている。 初めてオレが見たそのひとはベッドの上で泣き続けていた。 傷だらけの腕が示すのは彼女がどれほどに自分を傷つけていたのか。 新たに血を滲ませようとする指先を握る彼の顔も痛みに満ちていて。 『ねえ、どこなの』 耳を打つ濡れた声は、頼る先を見失った幼子のそれによく似ていた。 #SottoIlSole (-179) 2023/09/29(Fri) 9:52:17 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「夜までは身体を休めてくださいね。 食事も食べられそうになったら、いつでも」 変わらず優しい家政婦に声を掛けて、自室へと足を踏み入れる。 まず目に入ったのは扉近くの数箱の段ボール。 何が入っているのか一瞬思い出せなくて……でも、すぐに思い出した。 置きっぱなしだったからもうダメになってしまっているかもしれない、たくさんの果物。 ……ああ、そうだったな、そういえば。 怒りも憎しみもやはり湧かなかった。 あるとするなら上手く騙してくれたことへの感心と。 最後、取り繕えなかった綻びへの好意だろうか。 やさしいひとだって、今でも思っているんだ。 ……ぽすり。 誘われるように重たい身体を寝台に載せれば、毎夜目を通した本が其処に在った。 手に取り頁を捲れば幼い子供の字が書き綴られている。 うとうとと落ちていく瞼が最後読めたのは幾度も辿った一文。 『 おとなになったら、けいさつかんになる!!! 』#SottoIlSole (67) 2023/09/29(Fri) 9:53:24 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ学など無い子どもだったから、まず必死に文字を覚えた。 全ての遅れを取り戻すように寝る間も惜しんでペンを握った。 学校で話す友人はその場だけの付き合い。 遊びに誘われてもごめんねと答えて帰る。 そうまでしないと到底、 この頭では『夢』に追いつけそうになかったのだ。 あの頃を思えばなぜか、 社会に出てからの方が幾分も余裕のある生活で。 だからこそ、ずっと、ずっと。 道がぱたりと途切れたような感覚が、怖かったんだ。 #SottoIlSole (-180) 2023/09/29(Fri) 9:54:12 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──名を呼ばれて目を覚ます。 気付けば外はどっぷりと暮れて暗闇に満ちていた。 起こしてくれた家政婦の顔は晴れたものではなくて。 彼が帰ってきたことを知り、立ち上がる。 部屋を出て向かうのは居間。 普段通りの整ったスーツ姿で、その人はソファに腰掛けていた。 右手に巻かれた包帯に視線が寄せられたのは一瞬だけ。 後は、テーブルに載せた一枚の紙を見つめていて。 「……逮捕は誤認に近かったそうだが。 お前がマフィアと関わりを持っていたのは、事実だな」 固い声、感情の読めない色。 目を細め、「はい」とひとつだけを返す。 これほどの騒ぎとなり彼が知らない筈がなく、だから予感は当たったのだ。 「なら、言いたいことは分かるだろう」 この人にとってどうしたって許容できないもの。 そのラインをオレは知らず飛び越えていた。 ならばこれは、当然の帰結だ。 #SottoIlSole (68) 2023/09/29(Fri) 9:55:07 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ (69) 2023/09/29(Fri) 9:56:45 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ一目見てオレを引き取りたいと伝えた男の人の後ろを歩いて行く。 遠ざかる養育院での思い出に後ろ髪を引かれながら、彼を見上げていた。 『これからはニーノと名乗ってくれ』 感情の良く見えない横顔だった。 何を考えているのか知りたいのに、わからない。 『……死んだ息子の名だ』 わからなくて、わからない間に、困惑した。 『彼女の前だけでいい』 『代わりをしてほしい』 ……急にそんなこと言われてもな。 見たこともない誰かの代わりだなんて、気乗りはしない。 返事はできず、一度足を止めてしまう。 彼も足を止めて振り返る、やはりその眉はぴくりとも動かないまま。 それでもふと落とした視線の先に、強く握り込まれた拳が在った。 『…………これ以上は、もう』 震えたそれは表情よりもよっぽど、彼の感情を示しているようで。 オレはしばらく視線を注ぎ、もう一度歩き始めた。 #SottoIlSole (-181) 2023/09/29(Fri) 9:57:43 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ……拾い上げる。 訓練で幾度か触ったそれは、最後まで人に放つことは無かった。 先輩に幾度か教わった撃ち方を思い出しながら左手に持つ。 利き手じゃないからブレそうだな。 ねえさんはどんな気持ちで、これを握っていたのだろう。 見つめて、見つめて、見つめて──その銃口を。 目の前の彼へと、向けた。 「────」 感情の良く見えない横顔だった。 何を考えているのか知りたいのに、わからない。 それでも彼が眉を動かすこともなく、静かに瞼を伏せた現実を見て。 「…………あはは」 ……笑えてしまった。 ああもう、ずっとそうなんだ。 いつも、いつも。 #SottoIlSole (70) 2023/09/29(Fri) 9:58:47 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「……恨んでほしいなら」 「もっと、うまくやれよなぁ」 手は落ちる。 懐へとその重みを仕舞う。 『ねえ、かあさまに会わせてよ』 『それでおしまいにするから』 オレは笑って伝えられただろうか。 返る声はなく、彼は小さく頷いただけだった。 #SottoIlSole (71) 2023/09/29(Fri) 9:59:32 |
【独】 暗雲の陰に ニーノ『──ニーノ!』 花が咲いた、と。声を聞いて思ったのは初めてだった。 強く抱きしめてくれる腕は不思議とこわくはなくて。 『あぁ、おかえりなさい』 『心配してたの、ずぅっと待ってた……』 知らない誰かの名前で呼ばれて。 知らない誰かの帰りが喜ばれる。 困惑、動揺、ちがうのだと言いかけた刹那……けれど。 覗き込んだ表情は心底うれしそうに綻んでいた。 それがまるでようやく縋る場所を見つけた小さな己と重なった。 この世の掃き溜めの隅でも、絶え間ない愛情が降り注いだ理由。 だいすきな姉を置き去りに、陽光の元に己だけが拾われた理由。 それらの全てがもし、 この奇跡のような偶然に繋がるために在ったのなら。 『……ただいま』 声は自然零れ落ちる。 そのときから死んだ彼の生は引き延ばされ。 オレの人生はそこで止まっていた。 #SottoIlSole (-182) 2023/09/29(Fri) 10:01:38 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ寝台の上で眠る、随分とやせ細ったその人の頬を撫でて囁いた、「かあさま」。 薄らと開いた瞳はオレとよく似た色をしていて、この姿を視界に入れた途端にほらまた、花が咲く。 「……ニーノ、ずっといなかったきがするの」 「そんなことない、かあさまが寝てただけ」 嘘を吐くことに胸は痛まず、騙すことに罪悪感も無い。 「ニーノ、手はどうしたの」 「転んで怪我をしただけ、大袈裟だよね」 願うのはどうか、彼女がまた迷い路に落ちてしまいませんように。 「そう……、…………ねえ、ニーノ」 「……うん」 「…………ニーノ」 「なぁに」 ただ名を呼ぶだけで体力を消耗し、また落ちかける瞼に微笑んでみせた。 この世はきっと、残酷でやさしい嘘に満ちている。 信じるには時に辛く、眼を塞ぎたくなる現実が其処にある。 だとしてこの身に手渡された祈りに偽りはなかったんだろう。 ──オレが、この人の幸せを願うように。 閉じ切った瞳、冷えた額へと唇を寄せた。 #SottoIlSole (72) 2023/09/29(Fri) 10:03:01 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ「……良い夢を」 「愛してる」 ──彼女の前で一番の本当を告げ、寝顔をしばらく眺めた後に部屋を出る。 自室へと戻って、着替えて、荷物を纏めて、居間を覗く。 彼の姿はもう其処には無くて、最後の挨拶なんて一言もないまま。 ならばと出て行こうとする背を呼び止めたのは家政婦で、差し出されたのは一枚のカード。 全部がへたくそな人だなと、やっぱり笑ってしまった。 軽くなった身体で夜の道を歩いた。 ひとり、星空を眺めていれば先のない孤独を見たような気がした。 だから『大丈夫』をまた形にする、それだけで不安が溶けていく。 向かう場所はどこにしようか。 ……そうだな、今日はとりあえず。 #SottoIlSole (73) 2023/09/29(Fri) 10:03:59 |
【人】 暗雲の陰に ニーノ──みゃぁ、白い子猫が鳴いて擦り寄った。 「……んぁ〜なあに。 新入りに挨拶しにきてくれた? そうだよお揃い、住所不定無職の名無し……ああいや、名前はあるな」 「今日はミルクはないぞ〜。 朝になったら買いに行ってもいいけどさ」 深夜、誰も居ない公園の原っぱに寝転んでいたらすりとちいさなぬくもりに擦り寄られる。 頬を左手で撫でてやりながら、あたたかな存在に知らず目が細まった。 「これからどうしようかな。 死人が歩いてちゃだめだよなあ、街は出ないと……」 それでもそうする前にやることはある。 解は見つかった、誰に、何を言いたいのかも。 けれどこの夜が明けるまではここで一人、空を見上げて居よう。 ようやくに訪れた彼の死を悼もう。 言葉を交わしたことのない、知らない誰か。 オレに今日までを与えてくれた、陽だまりの子ども。 #SottoIlSole (74) 2023/09/29(Fri) 10:05:07 |
【人】 夜明の先へ ニーノ「……おやすみ、ニーノ」 上手にらしくあれただろうか。 彼女が望むただ一つの太陽に。 陽は何れ落ちる。 夜は必ず訪れる。 されどまた、輝きは昇るだろうから。 その時は違い無く、己自身の光で誰かを照らせますように。 #SottoIlSole (75) 2023/09/29(Fri) 10:06:07 |
【妖】 新芽 テオドロ>>-110 「いいじゃないですか」「俺がいるんだから」 それだけでこの部屋には価値ができる。 あんたが訪れる。誰かが遊びにくる。それを自覚した者の言葉。 この家には沢山の捨てられなかったものがある。 良いも悪いもない過去の思い出、漠然と受け取った賞状に、 頭にあるのに読み返してばかりいた書物たち。 これからの自分に必要ないものは多く、 きっと新しく増えるものもまた、多いのだろう。 「本調子じゃありませんし、 適切な仕事の割り振りが行われている為か、 案外忙殺されているという訳ではないな」 「俺がこうなる前に働き詰めでいた甲斐もあっただろう」 表情や視線に対しても全く悪びれずに言う。 ただ代償を支払っているだけのこと、罪悪感に苛まれるつもりは毛頭ない。 「失礼なのはお互い様でしょうが、全く。 暑くないとは言わないが、こっちの方がマシですね」 少なくとも、剥き身で見せるよりかは。 ($0) 2023/09/29(Fri) 10:27:14 |
【人】 夜明の先へ ニーノ……ぼんやりと夜空を眺めて過ごした夜。 空が白んできた頃にようやく身体を起こした。 本当に仲間だと思ったのか懐かれてしまった子猫を、……悩んでとりあえず抱えて。 さて、しばらくはどうしようか。 『ニーノ』が死ぬとなればスマートフォンは置いてきてしまった。 手持ちにあるのは幾らかの現金と、少しの着替えと、それから入っている金額を聞いたときに耳を疑って笑ったキャッシュカードだけ。 他にはなんにもない、けれど小さなころよりはずっとましだ。 金があれば大体はなんとかなる、誰かも言ってた。 あまり顔を見られないようにとパーカーのフードを深く被り、ついでに黒いマスクもしておく。 不審者っぽいかな?合ってるからいいか……。 会いたい人にはこの足で。 場所がわからないなら連絡先だけメモをした紙はあるから。 「……行くか」 返事をしてくれるみたいに、子猫が腕の中でまた鳴いたのでひとり笑った。 (76) 2023/09/29(Fri) 10:50:22 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ──早朝も早朝。 貴方のスマートフォンに着信が一件入る。 表示される名前は非通知、或いは『公衆電話』。 怪しいそれにあなたがもし出てくれるのなら。 『……あ、ろーにい?』 『…………ですか?あってる?』 聞き慣れた声が届くだろうか。 (=0) 2023/09/29(Fri) 10:51:08 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-158 あんたが正直者で助かりましたよ、と苦笑した。 無事ならば何でもいい、……なんて思考は、少々雑だろうか。 「やっぱあの騒ぎはあんたか。 ……その言い方だと逃げられました?」 後でやり返しに来やしないだろうか、なんて思うのは その相手を知らないからだろう。 ──事実、知ったところでその相手についての事はあまりよく知らないのだが。 貴方の気分が悪くなっている理由も知らずに、別ベクトルの心配が始まっている。 「座席の下の引き出しになんか入ってなかったけ…… パーカー畳んで入れてたはずなんで使っていいですよ。 サイズも合うでしょ、きっと」 どこへ行くにもその格好じゃまずいだろうと考えて、そう言えば非常用に一つ上着を用意していたことを思い出す。 汚れたタオルはそこら辺に放っておいてもいい事を伝えながら、エンジンボタンを押してシートベルトを締めた。 「じゃあ見に行きましょう。泳ぎやしませんよ、寒い」 「人も建物も視界に入らない方が思考もスッキリするんじゃないですかね〜。多分ですけど」 自分も海を見たい気分だったし丁度いい。 ハンドルを切り、車を発進させる。 あんまり揺らしちゃ気の毒だとスピードはいつもより少しだけ抑えられていた。 #ReFantasma (-183) 2023/09/29(Fri) 11:31:43 |
【鳴】 corposant ロメオ「……ん”ぁ」「ぁに……何?」 早朝のコール音。 寝起きは良からずとも無理やり起きる事には慣れている。 また何か誰かの手伝いの依頼だろうか……とベッドサイドに置いたスマートフォンを手に取り画面を見れば、なかなか見ない表示がそこにあった。 訝しむ一瞬で受話ボタンを押すのが遅れたが、無視するわけにもいかないと通話に応じ、 「あいもしもし…… あ? 」「フレッド!? 何お前ムショ出てたの!?」 ……無事に一気に目が覚めた。 寝転がったまま電話に出たのに、 飛び起きたみたいに上体を起こす。 思わず問う声は早朝に出すにはやや大きかった。 (=1) 2023/09/29(Fri) 11:46:01 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ>>-183 「逃げられたんじゃねえ、逃がしてやったんだよ。 またいつか来るからその時は殺してやる」 まるでその日を楽しみにするような態とらしく穏やかな声で殺意を述べる。 ここまで誰かに執着しているのも少ない、他には黒眼鏡ぐらいだったろうか。 別れの日が来てほしいなど思っていない、それでも嫌いなのだ。 「そうか、それは助かる。借りるぞ。 いや、…… 脱げばお前も驚くだろうからな…… 」男は何故か普段着ないタートルネックを着ている。 上着の血飛沫が付いた部分を内側に畳み込みタオルも添えて座席に放れば引き出しをあさりにかかる。 少し大きめか丁度いいそれを手に取れば自分のシャツの血が固まるのを待つことにした。べた、あと少し。 「カナヅチじゃないが俺が夏の浜辺に行くとモテてしまうからなあ、海に泳ぎにいかんのだ」 「んー……そう、だな……? 別にその辺の空き地に放っておいてくれても良かったがな」 その様子だと付き合ってくれるんだな、となんともなしに。 時間があったから来てくれたのだろうが。自分は貴方に頼み事をするのが苦手であるので少し助かった。 こんな時ぐらい少しぐらい素直になれたら良かったが、電話をするので精一杯だった。 #ReFantasma (-184) 2023/09/29(Fri) 12:00:06 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → リヴィオ手を弄られている様子を見て小さく笑い声を零す。 自分が訪れた時には既に目の前の貴方は魘されていて地面には既に血が滲んでいた。 さて無理やり起こしてもよかったが、体力が弱ってる友人を眠らせてやりたかったこともあり怪我を減らす方向に動いたのだ。 結果は、まあ今このようになっているのだが。 「ん? 後輩たち……あー。どれぐらいの数かね。 それぞれ連れが居たから見送ったり、案内したり。 俺が話聞いて病院に投げ込んだり、……ほぼ全員無事だ」 少し思い出すように目を伏せてからいくつか名前を告げてやる、男の名前は忘れがちだった。 そして大体が出ていったから貴方を迎えに来たのだとも重ねて。 ほぼ、というのは確認できていない人間もいるということだがこの状況なら仕方ないだろう。 「いつもの夢っていうにしたらハードすぎるだろそれ。 なんだ、こどもの頃の夢かあ? 随分嫌なことをいう親だな。 今も言ってるなら侮辱罪か名誉棄損で訴えてやったらどうだ? 町の宝がそんな謂れのない批判を受ける方がおかしいだろう」 「存在否定なんてもの、個人の私怨以外、なんも正当性はないんだからな」 お可哀想に、同情もしていないようなわざとらしい言い方をすれば貴方の頭を撫でまわしてくる。 嫌だったなー。と笑って髪を乱せば貴方が眠らないように時々こめかみの近くを押してやったりなどした。 (-185) 2023/09/29(Fri) 12:20:48 |
【秘】 corposant ロメオ → 口に金貨を ルチアーノ>>-184 「え。なんすかそれ。いいな」 へー、と面白い物を見せてもらった子供みたいに弾んだ声を出した。 そんな人が居るんだとも思ったし、 それってちょっといいなとも思った。 絶対殺したい人、オレにはいないしなあ。 『脱げば驚く』の言葉に見せられない何かがあるんだな、と雑な察し方をして「そか……」と口を少し曲げてこれまた雑な返事をした。 「あ。モテてる人の台詞だあ。色男は大変すね」 「……え? やですけど……オレそこまで薄情じゃないんで」 「愚痴でもなんでも付き合いますよ。 どーせ今日は暇だったんす」 海が近くなれば運転席の窓を開ける。 こうやって潮風を浴びるのが好きだった。 青空の下であればどこまでも青い風景だったんだろうけど、 海は素直なものだから空の色をそのまま映している。 「あんたと話もしたかったし。何話すんだって感じですけど」 ハハ、といつもの調子で笑った。 あれからもロメオは変わっていなかった。 昔から起こった事を引きずらない方だった。 感情の振れ幅は一定で、今回もどうやらそうらしい。 #ReFantasma (-186) 2023/09/29(Fri) 12:21:34 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ深く息をする。心拍を落ち着けようと試みる。 早く鳴るのは身体を動かしたからでもあった。刷り込まれた暴力、肌に感じる肉の感触でアドレナリンが分泌される。それから、やはり、怒り。 好んで従う者をこき下ろされたことへの怒りだ。瞳の温度がかっと上がった。 「くそ野郎はどっちだ」 「随分口汚くなりましたね」 貴方の言葉を男は一向に受け入れない。悪人の愚弄に乗らない。犯罪者の口車に乗らない。そんなものでは動揺しない。だって、法に従っているのはこちらだ。 言葉と共にゆるやかに落ちた視線が貴方の背後を浚う。机の位置を確認してそれを使おうとした思考は、きっと隙になった。 力を込めていなければガードにはならない。 攻撃後に緩めていた腕が蹴りを食らってそのまましなる。身体から離れていた分遠心力は強く、後ろ向きの動きに前進気勢を僅か削がれる。 舌打ち。また舌打ちだ。ガラの悪いのはこちらも同じ。徐々に苛立ちは募る。 どうすれば止まるだろうか。 あの口もうるさいな。 テーブルの縁の部分。あそこに叩きつければ止まるだろうか。思考と共にまた足を払いにかかった。 (-187) 2023/09/29(Fri) 12:44:55 |
【秘】 夜明の先へ ニーノ → リヴィオ「昼に歩いたら目立つね、目立つよ。 でもオレが言いたいのはそうじゃなくてぇ〜……」 鉄格子越しに面会をしたときより、貴方の口振りは普段通りだった。 それでもそんな姿でこんな時間に歩いていることを思えば、だ。 「……どう見たって重体なんだから。 ちゃんと寝ていた方がいいってこと」 じっとするのを苦痛に思う何かがあるとは察せられた。 もう一度突いて唇を尖らせてみたが、ぱ、と話せば溜息ひとつ。 そうしてフードを取り去って笑う。 「会えたからうれしいけれどね。 昼空の下だったらもっとうれしかったけれど」 「オレ、警察官やめたんです。そういうのって聞いてるのかな……。 だからせんぱいにもどうやって会おうかって考えてたところ。 まだ散歩は続けるつもりですか?」 ニーノ・サヴィアは死んだことになったから、実際に署で伝えられるのは訃報だが。 やめたのはやめたで事実だから、口調が砕けているのもそのせいだった。貴方も気にしないのだろうなと甘えて。 多分Uターンさせるべきなんだろうが、Uターンしたくなくてここにいるのだろうなと思う。 なら最後の問いは"話す時間がありますか"と同義だ、肯定が返るのなら場所を変えようと思って。 (-188) 2023/09/29(Fri) 12:49:47 |
【鳴】 夜明の先へ ニーノ『声でけえ〜』 電話口では貴方の大声に何やら笑っているらしい声。 『刑務所出たよ、ついでに家無し子になった』 『いや、今はそれいいんだ、あの、その』 『やっぱり困っちゃって……ええと……』 よくはなかったが、家が無いのは最初に戻っただけなので。 あまり深刻に捉えていなかった、今の一番の問題は別。 無期限、回数無制限、いつでも言っていい。 に、甘える最初がこれなのもどうかと思うが。 『ぁの〜、…………あのさぁ……』 『……よくないとは思うんだけど……』 よくないなあと思っているから声はちいさくなる。 犯罪だよなあ、わかってるんだけど。 『………………こ、』 『…………戸籍って……お金で、買えるかな……?』 身分を証明するものがないと、何をするにしても困る。 まだはっきりと貴方の素性を聞いたわけではないけれど。 想像がついている弟は、よくない頼り方をしているところだ。 (=2) 2023/09/29(Fri) 12:52:08 |
【秘】 幕の中で イレネオ → リヴィオ開いて閉じかける双の眼。一部始終を見届けて、男はふんと鼻を鳴らした。 それは酷く従順な様だ。 そうして男にとってはつまらない様だった。 ぐん。既に傷んだ腕を強く引く。折れた箇所が更に引きちぎられて周囲さえも傷つけただろうが、そんなこと男にとってはどうでもいいことだった。 抵抗しない貴方を引きずり上げるように椅子に座らせようとする。一度。二度。貴方がそれでもずり落ちるなら、ようやく諦めて手を離すだろう。それだって当然丁寧なものではないから、貴方は力の入らない腕を床に叩きつけることになるはずで。 その痛みに悶えている間に。 男は何かを取りに壁際に寄った。金属製のものが仕切り板に擦れる軽い音。顔を上げても背に隠れて見えないが────さて。器具を使う拷問と言えば、最もわかりやすいものがひとつ、脳裏を過ったかもしれない。 (-189) 2023/09/29(Fri) 13:02:06 |
【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ肘の辺り目掛けてふるった。注射器を掴んだ手だった。立ち上がる仕草を妨害する。 というよりは、嬲りに偏ったような動作だ。 当たり所が悪ければ関節が非可動域に曲がり込んだかもしれない。或いは、使用済みの注射器の針が刺さったかもしれない。単にバランスを崩して、再び地面に顔から叩きつけられただけだったかもしれない。 血液の匂いはここにない。 ここにいるのは血に飢えた狂犬ではない。 「人を殺しておいてその態度か?」 「心が痛まないのか? これだからノッテってのは嫌なんだ。」 決めつけ。マフィアとはそういう生き物だ。 しかし今回はひとつだけ当たっている。貴方が人を殺したということ。 「黒眼鏡の命令か?」 問いながら自分の携帯を取り出す。 逃げない内に応援の要請。それから被害者の捜索が急務だ。相手をねじ伏せて少し落ち着いた頭は冷静な判断をしようとし、しかしそれは隙にもなる。 (-190) 2023/09/29(Fri) 13:19:31 |
【人】 路地の花 フィオレ>>56 ロメオ 「涙は安売りしてやらないんだから」 少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。 あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。 「やってやったんだから。私」 「ね、何でもしてくれるなら」 「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」 みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。 解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。 #BlackAndWhiteMovie (77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14 |
【妖】 路地の花 フィオレ「どこからそんな自信が出てくるんだか」 なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。 あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。 あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。 「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」 テーブルにグラスも並べて。 なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。 「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」 「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」 他はまあ、追々。 とりあえずは食事が先決だ。 「乾杯でもする?」 ($1) 2023/09/29(Fri) 14:20:27 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → corposant ロメオ「いいわけあるか。……あー。 五年前俺が馬鹿みたいに落ち込んでた奴だよ! 別れの言葉は、あびやんて……だったか? 何語だ……何処にいた……また来なかったら許さん」 雑に叫んでやった、自分を置いていった上司が目の前にいたからぶっ殺してやろうと思ったと。 でも逃がしてやったと言うことはそれなりに情と殺意が入り混じっているということで。 ファミリーでは見かけたら殺していいとは言われているが故にこそこにきまりは悪く。 殺し切れた方が絶対良かったのだ。いつまでも自分は甘ったれである。 「あとは肌が焼けるのも嫌だ、結局疲れるから海水浴自体は好かん」 「……? 薄情も何も。何処かに運んで置いておくのは十分仕事してるだろ」 「愚痴なんてものもなあ……、愚痴なんて……。 言語化するほどあいつらを殺したくてたまらなくなるからいいもんじゃない」 「殺したくないんじゃないぞ、あいつらがの逃げ足が早すぎるからチャンスが掴めんのだ」 雲が泣きそうな天気だった。 あれから数時間経った今、相変わらずの重たい灰色は緩やかに流れていく。 「俺と話したい? 本当になんでまた。 お前はそんなやつじゃないだろう。 ……この間の文句でも言いたいのかあ?」 文句の一つでもあったほうが救われたかもしれない。 そんな事は言ってやらないが、貴方が変わっていないことを確かめるためにあえて話題に出した。 #ReFantasma (-191) 2023/09/29(Fri) 14:26:07 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ「少なくとも俺はくそ野郎に成り下がった覚えはねえな。 それと、この口は元からだ。」 元々口が良い方ではない。 警察官だからある程度の体裁で、直しているだけで。 だから此方が、この男の素であり 今まで隠してきた、獣の部分なのだ。 男は犬は犬でも、狂った狼だ。 例え貴方が法の下で、男と同じ法の執行を目指していても それが従うべきものでないと判断すれば。 容赦なく噛み付き、食い殺す事を厭わない。 蹴った後の体勢を戻していれば 足払いが飛んできて、避けることは適わないだろう。 けれど足を払われながら 体勢だけは崩しきらないように体を捻る。 貴方の次の一撃に対応出来るように。 (-192) 2023/09/29(Fri) 16:28:42 |