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【秘】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ → 暗雲の陰に ニーノ「そうかぁ」 ありきたりではなかったか。元気な否定がこんなにも微笑ましい。 思わず口調が緩んで、喉をくつくつと鳴らして笑った。 揺れるような瞳をして廊下で声を掛けてきた時と比べれば、 今の笑顔を見せる貴方は、庇護者の一人としてはいっそう頼もしく思えた。 これなら遠慮なく、多くを任せて構わない。 「それじゃあ、あと15年か20年の間に立派になってもらわないといけないな。 警察官の一年は矢のように過ぎていくから、ぼうっとしてはいられないぞ。 周りの人にもたくさん支えてもらってたくさん甘えて、頑張りなさい」 子供の頃よりはずっと育ったとて、長らく務めるものの多い職場からすれば貴方は若い。 面倒をみたがるおせっかいは、決して男だけではないだろう。 多くを頼って、いつか多くに頼られるようになればいい。 そういう祈りが、男の言葉には込められていた。 「……そろそろ仕事に戻らないと職務怠慢の判子を押されてしまうな。 ニーノも寄り道をしていないで、まっすぐ家に帰りなさい」 さほど長話をしたわけではないものの、秋の夕日ははっきりと顔を傾けつつあった。 パンの残りを口に入れると、包み紙をぐしゃぐしゃに小さくして手の内にしまい込む。 小麦のにおいのするゴミを持ち帰ったら、男の方はサボりはバレてしまうのだろうな。 (-152) 2023/09/24(Sun) 13:18:47 |
【秘】 リヴィオ → 暗雲の陰に ニーノ君の瞳を見た時、痛んだ心は事実なんだろう。 正直自分がそう思えることに驚いたし、 でもそんなことを考えている暇はなかった。 自分のことは後でいい。限られた時間を有効に使え。 こちらへ来てくれる君に、柔く微笑んだ。 それと同時に、君 へと 手が届かないよう一歩足を下げる。「取調べ……はしないよ。する必要がないからね。 だから面会ってやつだ、こんにちは」 元気そうには見えないからお決まりの言葉は言わない。 痛々しい右手をちゃんと治療してやれと言いたかったが、 下手に騒いでこの後に動けなくなるのは 避けなければならなかった。 「…………きっともう時期 晴れるよ 、ニーノ。だからその時は、君がまた笑えるといいな」 直接的な言葉を伝えるには、場所が悪い。 あまりにも突拍子なく天気の話をするように見えるが、 まぁつまり、全部終わってここから出られるはずだと、 そうあって欲しいから、そう口にする。 何の確証もない……って訳じゃあない。 エルヴィーノが頑張っているんだ。 きっと、上手くいくだろう。男はそれを信じている。 あとはさすがにこの現状、放置するにはかなり宜しくない。 (-153) 2023/09/24(Sun) 13:20:01 |
【秘】 corposant ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ/* 面会やったー!ありがとうございます!! それではこちらの方から尋ねさせていただこうと思います。 こちらこそまたよろしくお願いくださいませね。 (-161) 2023/09/24(Sun) 15:12:58 |
【秘】 favorire アリーチェ → 暗雲の陰に ニーノ「私、"ダニエラの事を知りたい"なんて言っておいて…… "聞かなければ見逃す"って言われて…… ……守らなきゃいけない人たちの事が、過ぎって…… それを受けちゃったの。友達だから知りたいって言ったのに。 それじゃあ、友達より他を取ったって思われても、 怒って見逃すのを反故にされるのも仕方ないなって……」 けれどダニエラはそんな事を考えそうな人間だろうか? 恐らく、受ける印象は違うと思う。と、なれば、だ。 単純に嵌められただけの事を、変に女が感傷的に取っただけだ。 「あぁ、ごめんね……ぺ、ペンを? そんな、そこまでしなくても……怖かったわね……」 何とか手当をしてあげたくとも手元には何もないし、 血が止まっているなら何かをできる状態でないのだろう。 それでも歯痒そうに、痛みが走らないようにそっと手を包んだ。 「イレネオさん、怒る事あるのね…… それにもびっくりしちゃったわ。 ニーノがそんなに怒らせる事言うようには思えないけど…」 (-168) 2023/09/24(Sun) 15:37:33 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノそれは一般的な愛国心。 育った場所に対する自然な郷愁だ。 強い思想でもなんでもない、単純な愛着。 だから、貴方の言葉に揺れることもない。 「それがどうした?」 「別にいいんじゃないか。」 撫ぜられれば不愉快そうに手を退けた。 くるり。余裕を誇示するようにペンを回した。 乾きかけた血が固まって散った。 「出来ないから出来る人間がする。」 「俺はそのためにいる。」 「誰もが強く正しくあれるわけじゃない。」 「だから出来る人間がするんだよ。」 凪いだ瞳で言う言葉。 それは平素の男の姿にとてもよく似ていた。 そう、このテーブルが男のデスクであれば。 それは正に普段通りの姿、そのままだった。 男は正気だ。ずっと、正気のまま狂っている。 (-178) 2023/09/24(Sun) 16:27:43 |
【秘】 corposant ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ底の固いショートブーツが留置所の廊下を鳴らす。 一つに括った髪を揺らしながら、 瓶底眼鏡は並ぶ牢屋を一つ一つぼーっと眺めていた。 がつ、がつ、 がつ。 そうして大股ののんびりとした足音は、 貴方の牢の前で止まった。 「ニーノ」 牢の中にあるだろう貴方の姿に、 極めていつも通りの声を掛ける。 返答はあるだろうか。 (-189) 2023/09/24(Sun) 17:08:25 |
【墓】 暗雲の陰に ニーノ>>+29 黒眼鏡 「ど〜〜〜せちっちぇよオレは〜〜〜」 今からたくさん食べても貴方程にはなれないだろう。 終ぞ追いつくことはなかった悲しき現実だ。 払い除けないので座るまでは撫でまわされていたわけだが。 「 ッぃ、ったい! 疑ってません!手に響く!」肩を勢いよく叩かれきゃんと吠える。でもそこからすぐに腕の中だ。 すっぽり収まってしまうから、ああ本当に追いつくことは無かったなと再度実感させられる。 瞼を伏せた。 「……会った、泣かせちゃった。 あんな顔させたくなかったのに」 「にいさんなら泣かせなかったんだろうな」 燻る後悔ひとつ、貴方なら牢の中からでも安心させられただろうと。 #収容所 (+44) 2023/09/24(Sun) 18:09:24 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノ「ふぅん……そっか。 ありがとう、教えてくれて。 オレきれいなものしか見えてなかったみたいだから」 丁寧に教えてくれたことに眉を顰めはせず、いっそ感謝も告げた。 スプーンを運んでもらえればまた口を開けたり、としていただろうが。 「……子どもでも玩具でもないぞ」 駒鳥扱いされるとむ、と唇を尖らせる。 いや、食べさせてと頼んだのはこちらなのであまり文句は言えないけれど……。 「…………」 そうして謝罪の理由を聞けば、視線を一度その手にある器に落とした。 未だ男はこうして捕まった本当の理由を何も知らないまま。 ぐるり、一つ思考を回して。 「……"なんで"さ、もっかいするね」 言葉の中身に一つ踏み込む。 別に貴方を責めたいわけでもなんでもなかった。 ただ男は、これをしてこなかったことを少し後悔しているから。 「なんで知ってたのに、止めなかったの? 止めるほどのことじゃなかった?」 (-197) 2023/09/24(Sun) 18:10:39 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ落ちる笑い声に気が付けばはたりと瞬く。 それも直に笑みに変わったのは、貴方がそうやって笑ってくれたのを久々に見た気がしたから。 かつてよりも遠くなってしまったその背が、今このときだけはすぐ傍にあるようにと思えたから。 「じゅ……十年でがんばる! 頼りになるせんぱいたちはたくさんいるし! ヴィトーさんに早く見てもらうから! ぼ〜っともしないように、毎日一生懸命やります……」 書類仕事がどうにも得意になれずにいつもせんぱいに頼っているのは、とりあえず内緒にしておこうなんて考えながら。 男は今でもたくさんの愛情を周囲から貰っている、気付いている分も、気が付いていない分も。現にいま、貴方からも。 自覚が幾分あるからこそ躊躇いなく頑張れると形にできた、幸福なものだ。 「はっ……そんな時間? ヴィトーさんに判子押されたら困る……。 えっと、せんぱいと夜にご飯食べるから、それ終わったら真っ直ぐ帰ります!」 ぴょんと立ち上がって、それから敬礼だ、なんとなく気分的に。 こちらはまだ少しパンが残っているので、動き出すのはそれを食べ終わってからになるだろう。 「へへ、ヴィトーさん! 今日は時間くれてありがとうございました。 最近疲れてるみたいだから、もう少し落ち着いたらまた労わせてね」 できることはそう多くは無いのだけれど、ちょっとしたお菓子を作るとかマッサージとか……とりあえず労いの内容については考えておくとして。 貴方が夕暮れの公園を立ち去って行くのなら、男は笑顔のままに見えなくなるまで見送っていたことだろう。 小さなころ、遊んでもらった一日の最後にお別れしていたときと同じ。おおきくおおきく、手を振って。 (-198) 2023/09/24(Sun) 18:11:54 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → リヴィオ取調べをしないと貴方が明確にしたのなら、分かりやすくその瞳の色は安堵に染まった。 一歩開いた距離を見つめる、詰める術は牢の中からは存在しない。 貴方の語調はいつも通りに思えて、けれどそうではなかった。 元気がないなってそれぐらいはわかる、だって憧れているせんぱいのこと。 「…………」 そうして伝えられた、天気のことを言葉通りには流石に受け取らない。 指しているのはこの状況だ。 であるならば、その確信を此処で告げられる程の"何か"が貴方にあるのだとも、予想は付く。 男は取り巻く世界について多くを知らなかったが、相対する人の機微に対してはそこまで鈍くはなかった。 言葉はすぐに形を為さないまま、しばらく微笑みを見つめたまま。 直に。 「……リヴィオせんぱい」 「あのね」 一歩の距離を踏み込むことはやっぱり、今はできないんだろう。 きっと 場所が悪い のだ。それでもこうして此処へ足を運び。 明日の陽光を、その元にある笑みを望んでくれた貴方に。 「今でもさ」 尋ねるぐらいは、許されるだろうか。 「……次のこと、楽しみにしてくれている?」 (-199) 2023/09/24(Sun) 18:14:27 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ「……そう、だったんだ? でも、ダニエラさん怒るかなあ、そういうことで」 「というより見逃すって、アリーせんぱいなにかしてたんですか?」 知りたいと望む相手に、聞かなければ見逃すと伝え。 それで怒って何かの行動を取るのはなんというか、普段ならそう有り得ないことだろう。 恐らくは嵌められたのだ、……自分と同じように。 それを直接、指摘することはしないものの。 「あはは、オレもびっくりした〜。 ……ん〜、でも、怒られて仕方なかったかもです」 「イレネオせんぱい、マフィアのこと大嫌いだけれど。 オレ、マフィアに家族みたいに懐いているひといるから。 裏切り者だって思われても、仕方なかったなって」 手を包んでくれる、貴方の優しさが心に染みる。男は眦を下げた。 (-200) 2023/09/24(Sun) 18:16:03 |
【秘】 favorire アリーチェ → 暗雲の陰に ニーノ「……おこ、らないかな。でも、そうじゃないと……」 本当は薄々、女も理解しているのだ。 嵌められたのだと。自分がどうこうではなく、相手が裏切ったのだと。 でもそれを信じたくはない。言い換えれば逃避である。 自分のせいだと思い込むようにして、そうされた事に目隠しをしている。 「……ダニエラが、罪もないニーノを逮捕したのを知って。 それを伝えたの。伝えたら、普通は「じゃあ次は貴方を逮捕」ってなるよね。……それでも、どうしてそんな事をしたのかが聞きたくて仕方なかったの」 でもその答えを聞かなければ見逃すと言われて、結局この檻の中。 「……そんな事ないわ。違うよ、ニーノ。 裏切り者だ、って疑うのは仕方ない。 マフィアが嫌いなら尚更怒るのも仕方ないと思うわ。 それでも、だからと言って暴行するのが許されるはずはないわよ…… そこは、受け入れなくてもいいんじゃないかな。 ……何よりそれだと、私だってそうだから。 マフィアに家族がいるから、私も刺されても仕方ない?」 (-203) 2023/09/24(Sun) 18:29:35 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ昨日までは毛布に包まって蹲っていた男は、それでも今日になれば起き上がることも増えていた。 身体を冷やすのはあまりよくないから、今日も毛布に包まってはいたが。 ただ起き上がってもすることがあるわけではない。 壁に凭れ上手く動かない右手を、それでも動かせないかと無理に震わせていたところ。 「……ぇ」 不意に名を呼ばれて目を丸くして、そちらを見る。 ねえさん、が来ることまではまだ予測できたのだ。 けれど、貴方が来ることまでは予測できなかった。 「……ろ、ろーにい」 「なんで……?」 こうなる少し前、結局最後はそこに落ち着いた呼び名を口にしながら。 慌てた様子で駆け寄ればその顔を見上げる。 外傷はあまりなかった。異様に腫れて、甲に抉られたような傷口が開いた右手以外は。 (-204) 2023/09/24(Sun) 18:33:24 |
【秘】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ → 暗雲の陰に ニーノ「仕事の仕方はテオドロに教えてもらうのがいいだろうし、 息抜きの仕方はエルヴィーノに教えてもらうのがいいだろう。 リヴィオなんかはあれで細かなところにはいちばん目が行く。 同じ階級の人間でなけりゃ声を掛けに行くのは大変かも知れないが、 それでも声を掛けられる側は嬉しくないなんてこともない」 きっと頼っていいだろう、頼られて邪見にはしないだろう者たちの名を挙げていく。 細かな課は違うものの、課同士の連携は存外密に行われるものだし。 そうやって、ひとつひとつ頼れる先を増やして、彼が一人にならないように計らう。 それが功を成すのは――おそらく何もかも終わったあとになるだろう。 「そうか。皆と仲良くしているようでよかったよ。 また明日、これからも頑張るんだよ」 立ち上がって敬礼を返し、それから帰る子供を見送るみたいな言葉をかける。 町並みの様子は変われど、取り巻く環境は変われど。 夕日の照らすものは変わらない。 → (-215) 2023/09/24(Sun) 20:03:23 |
【秘】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ → 暗雲の陰に ニーノ「……最近疲れてる、か」 変わりゆくものは照らされなくなっていく。 手を首元に当てる。僅かに冷えた体温が、掌に返るだけだった。 この日の次に来る朝には貴方は在りもしないだろう罪に縛られ、 次には男が大嘘つきであると皆が知ることとなる。 貴方でさえ欺いたままにこれまでの人生を送っていた男は、 今は全く罪人らしく牢の内側に押し込められているだけだ。 貴方は優しく、傷つきやすいひとだから。 きっと本当のことなんて、何一つ知らなくともいいのだ。 (-216) 2023/09/24(Sun) 20:04:01 |
【秘】 corposant ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「心配だから来た」 「遅くなってごめん。もう少し早く来る予定だったんだけど」 声を聞けばほっとしたような表情で、 少し屈んで目線を合わせた。 仕事の合間に面会に来たのだとロメオは言った。 「ここって物の受け渡しは可能? うちの店のパン持ってきたんだけど、食えるかな」 「……………聞きたい事もあるし」 そう言って目を細め、右手の甲の有様を見る。 「お前が捕まったって聞いてびっくりしたんだ。 ホントにろくでもねえ法律だよ」 (-218) 2023/09/24(Sun) 20:22:44 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ愛国心など振り返れば抱いたことがなかった。 だからこそ男にとって、眼前の人が抱く肩書はあくまでその人の一部でしかなかった。 今もそう。だから隔たりは消えない。 「ぃ、」 ペン先が回ればまたくぐもった声が落ちて身体が跳ねる。 指先は退けられるままに離れることだろう。 その間にも注がれてゆく言葉を耳はまだ拾い上げ。 滲む視界に移る姿は普段と全く変わらなかった。 これがあの職場だったら、どんなに。 「……そ、ですか」 痛みが遠退いていたから少しばかり落ち着いていた鼓動は。 たったそれだけの刺激でまた煩く脈打ち始める。 覚悟の形をまだ知らない男が持つ限度など知れているものだ。 だからその恐怖にまた、飲み込まれてしまう前に。 「ねえ、イレネオせんぱい」 尋ねる。 これがきっと、最後の問い。 「…………オレって、警官、向いてるかな」 (-221) 2023/09/24(Sun) 20:37:27 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ男は貴方の様子を見つめていた。 どうにも全く何も気が付いていないと、そういうわけではないように思えたから。 ただもう少しと深掘りした内容を聞けばまず目を瞠って。 「……聞いて、くれたんですか? あはは……そっか、ありがとうございます。 こうしてアリーせんぱいが捕まっちゃったのは、心苦しいけれど…… なんだか、うれしいな」 それが必ずしも己の為とイコールにならなくても。 いなくなったことで貴方が気にしてくれていたという事実がうれしかったから。 そっかあ、ともう一度噛み締めるように呟いて、手を包んでくれる貴方の手をもう片方で撫ぜた。 で、ひとつ問いを投げようとしたのだが、その前に。 「…………」 自分の呟きに関し貴方が伝えてくれたことには、はた、と瞬いた。 「……たしかに、そうかも。 …………え?そうですね。 怒ったからって、暴行するのはよくないですよね……」 今になってちょっと怒りが湧いてきている。 とはいえ本人が目の前にいるわけではないので鎮めつつ。 「アリーせんぱいも、マフィアに家族が……いるんですか? 知らなかった……し、仕方なくないです!駄目!……だから。 そっか、そういうことだよなあ……」 (-222) 2023/09/24(Sun) 20:49:36 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ「謝ること、べつに……」 ないよ、と。 伝えながらもなんだかこわかった。 自分と関わりがあるところを見られて、貴方まで捕まってしまうんじゃないかということが。 そう恐れているくせに、どうにも。 「……パン」 ぐう、とお腹が鳴った。身体はどうにも素直なものだ。 恥ずかしくて若干視線を逸らしつつ。 「いいと思う……。 あ、でも、その、格子越しでいいから。 忙しくなかったら、あれ……あーんしてほしい。 手、これだから……」 左を動かせば右も動く仕様になっているので、もれなく何をしても痛む。 どうにもスプーンが上手く持てずに、食事が碌に取れていないゆえの空腹だった。 「オレが捕まったのは……あはは。 いると、都合悪かったんだろうな」 「ろーにいはだいじょうぶ?大変なこと起きてない?」 (-224) 2023/09/24(Sun) 21:02:31 |
【秘】 favorire アリーチェ → 暗雲の陰に ニーノ「だって、あんなの誰でも冤罪ってわかるわ。 よりによってこうして誰よりも素直で頑張り屋さんなのに、 なのに……あんな見せしめみたいに、って思って……」 困惑めいた怒りが沸き上がりそうになるも、 貴方が片手で手を撫でてくれるからそれもゆっくり落ち着いて。 「うん、よくないわよ。今度会ったら抗議しちゃわないと…… でも……ダメだけど、気持ちは少し、わからなくはない。 ここの人、マフィアに肯定的な人が結構多いから、 マフィア嫌いな人は居心地がよくないのかも、って少し思うわよね」 自分もマフィアについては比較的肯定派だから、 ほんの少し申し訳ない思いがない訳でもない。 最も、だからと言って傷つけられるのは困るのだが。 「うん、いるわよ。誰よりも……大切な人。 私が別のマフィアに襲われてた時も助けてくれた事があるの。 ……ニーノと同じ日に捕まっちゃって、酷く暴行を受けていたから、……だから、何とかしたかったんだけど……」 気付けば檻の中。こうなってしまっては待つしかない、と項垂れた。 (-227) 2023/09/24(Sun) 21:17:39 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 暗雲の陰に ニーノ「……はあ。 とある女の言葉を信用した」 「お前のことを好いていそうだった。 そして、例の取締法の悪意に晒されることを拒んでいた。 だから、こんな他人がやめろと言うより 態々ここに入れることで何か考えてることがあると思ったんだ」 9割ぐらい正直に話した。男が知ってる情報などこの程度だ。 本音を聞き出すことはできたかもしれなかったがしなかった。 ここまで言えばもしかしたら貴方は誰かに思い当たってしまうのかもしれないが、もう、やはり誤差だろう。 この純粋であった、されど真っ直ぐに理由を求める存在言われてしまえば良い。自分はそれに嘘などつけなかった。 「俺が謝りに来たのは、 牢屋の中は無事かと思ったら治安が悪い上に そんな手の怪我をすることを想定しなかったことだ。 こっち調べておけばよかったな、……まあ、女の頼みは断りきれんかったかもな。 ガキより美人を優先した、……こう言うと 俺は悪くないかもな 」そして急に開き直り始めた。女性ファーストであるので。 (-228) 2023/09/24(Sun) 21:21:15 |
【秘】 corposant ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ「だってもっと早く来たかった。 心細い思いさせるかと思って……」 そう言うロメオに怖がっているような様子は見えなかった。 看守を気にする素振りも無く堂々としていた。 「や、そうだろうな。待ってろ」 そう言って取り出したのは塩バターのフォカッチャだ。ベーコンも入ってるから腹に溜まるだろうと思い、バイト先のパン屋でちゃんと買ってきたものだ。 「ほら。あーん」 一口サイズに千切って、貴方の口へ運ぶ。そちらの咀嚼に合わせてそれを続けるだろう。 水分はパックジュースを持ってきたので、牢の間から差し込むからストローを吸ってくれればいい。 「ったくよお。いい加減にしてほしいよな。 もう警察やめちまえよ、お前」 「オレん周りもバタバタしてるよ。何とかやってるけど」 「……その手さ」 そうして、気になる事を尋ねようと。 「やられたろ。尋問か、拷問か……」「……同僚に」 「イレネオ。イレネオ・デ・マリアって奴か?」 ──潜めた声で少し踏み込んだ質問をした。 自分の持っている情報と嫌な予感を掛け合わせて、 知っている名前を一つ挙げ。 (-229) 2023/09/24(Sun) 21:30:54 |
【秘】 リヴィオ → 暗雲の陰に ニーノ怯えさせたい訳じゃない。 だから、何もしないよと一歩の線引き。 いつもならもっと、違う形を取っていたけど。 "いつも通り"はもうやめだ。 本当は憧れられるような存在ではないんだって、 知られてしまっても、もうそこを曲げるつもりはない。 伝えた天気の話、ちゃんと理解してくれたようだから 本当はもうこれで、立ち去るべきなんだろうが。 もう少しだけ、君の顔を見ていたい気分だった。 だから、君との会話はもう少しだけ続いていく。 その場から動こうとしないまま、 名を呼ばれて「なんだい?」と柔く問いかける。 怖がらせたい訳じゃ、ないんだ。 そうして問われた内容に、 普段は見せたことのない驚きを隠さない表情で君を見つめる。 そこにはきっと、動揺も含まれていた。 だって俺は、【A.C.A】のひとりだ。 …でも、 俺の本音で君に伝えても構わないだろうか。【A.C.A】なんて関係ない、本当の俺で。 緩く左手を握りしめ、一呼吸の後口を開いた。 「………あぁ、勿論」 「君と話す時間はいつだって、楽しいものだったからね。 次も、楽しみにならないわけがないだろう」 (-237) 2023/09/24(Sun) 22:40:04 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ自分よりも怒ろうとしてくれる、貴方のそんな姿に男は眦を下げた。 早々に牢に入れられてしまったから外の様子は何にも分からなかったのだ。 だからやっぱり、気に掛けてくれていた誰かがいるのはうれしい。 「ありがとう、アリーせんぱい」 「…………ねえ、せんぱいはさ。 人を騙すのは、騙されることは、受け入れられないですか?」 そうして先程形にしようとした問いを改めて声に載せて、尋ねた。 「ああ……確かにそうかもしれない、ですね。 それほどマフィアの人が良い意味で、日常に溶けた存在になりつつあるってことかもしれないですけれど。 ……昔にマフィアが権力を振るってたことは、事実だもんな」 そう考える思考はどこか、今までよりも俯瞰的な位置を保てているように思えて安堵する。 少しだけ視野が広がったような、いや、先程狭まっているのを自覚したばかりだから自惚れてはいけないけれど。 「……そう、なんだ? オレ、同じ日に捕まった人のこともよく知らなくて」 「でもアリーせんぱいは恩があるんですね、その人に。 無事だと良いな、……会えてはないですか?」 (-251) 2023/09/24(Sun) 23:21:17 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノ踏み込んだとして話してくれるかどうかは相手次第だ。 だから貴方の口が開きつらと言葉を並べてくれることが有難かった。 さて、その言葉が事実だとして信じるのであれば、矢張り此処に入れられた理由は悪意だけに染まっているように思えない。 思い当たる人物はいないわけでもないが、願望込みになるなと考えていたところ。 「……もう子どもじゃないって言った」 「別にルチアーノさんのこと悪いなんて思ってないし。 思ってないけど、なんか……にいさんの部下だな。 すぐに女性がどうのこうの……」 何かしら思うところがあったのか、もんにゃりと言葉を濁したりなんだったり。 一先ずはそう、感謝が先なのでと遅れてそれも形にする。 「教えてくれてありがと。 痛い目見ないとわからないこともあると思うし、手は気にしないで。 にしても、なんだかなあ」 「…………オレってそんな、悪意に弱そうに見えるのかな……」 知らない人の前の方が吐けることもあるので、つい漏れてしまった。 後からそれを繕うように「スープ……」などとねだりつつ。 「でもちょっと喋っただけでも、あれだね。 ルチアーノさん……良い男ってやつ、感じる」 (-252) 2023/09/24(Sun) 23:23:48 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオさらっと形にされたこの身と心を案じる言葉には目を瞠り。 今の状況も相まって妙に染みて、つい涙腺が緩みかけた。 どうにもここに来てから壊れてしまったように思える。 脳裏に掠めるのはバーカウンター、それから子守歌が聴こえた帰り道。 ぬくもりにふれたいな、と思った。 「……あーん」 色んな心を感じて漏れ過ぎない様に言葉を選んでいる間、気が付いたら口元にパンがやってきている。 なので大人しく口を開いて食せば知っている味だった。塩バターのフォッカチャ。シンプルでいて小麦の香りがふんわり、おいしい。 パックジュースも水分として時折、ストローからこくんと飲みつつ。 「あの、ありがと」 「警察は……あはは、本当にそうなっちゃうかもな」 全部ひっくるめての感謝を伝えた後、眉を落として笑む。 そうしていた表情が──貴方の問いかけで軽く青褪めた。 だってまさかその口から名前が出るとは思っていなくて。 すぐに答えは返らず、けれどその態度が解を示している。 思い出す、甲に走る熱い痛み、唇に触れた感触。 「……なんで、しってるの?」 そうしてようやくの言葉は、問の形を為していた。 (-255) 2023/09/24(Sun) 23:27:36 |
【秘】 favorire アリーチェ → 暗雲の陰に ニーノ「わた、しは……騙すのと、騙される、事は、」 言われてはじめて考えたかのように押し黙る。 きっとダニエラの事を言われているのは、何となくわかる。 「騙す、のは、良くない事で。 だから、私が騙されたと主張するのは、…… ……その子を、悪い子って扱っている、みたいで、……」 伏し目がちな視線はこの感情を馬鹿げたものだと思っている事の裏付けにならない。小学生並みの理論だ。 貴方に尋ねられ、こうして自分の感情を言葉にして、ようやく自分の考えていた事がどれだけ幼稚か理解したかのように俯いた。 「牢が違うもの。情報も入らないだろうし無理はないわ。 ……会えたわ。でも、酷い拷問に遭っていて、…… それなのにまだ頑張ってくれるって言っていた…… だから、一刻も早く法案が撤回されて、無実の人が解放されて欲しいと思ってるし、ニーノがこうして無事なのには安堵したわ。いえ、穴はちょっと開いていたけど……」 本当に痛々しい、とばかりに口元に手をやるけれど、拷問の末と言う訳ではない所が唯一の救いだ。 (-257) 2023/09/24(Sun) 23:42:05 |
【秘】 corposant ロメオ → 暗雲の陰に ニーノ口に運べば、ちゃんと食べてくれる。それで少し安心した。 物も食べられないくらい弱っていたら、 どうしようかと思っていたのだ。 食べられるなら食べてくれた方がいい。 牢の中に入れるのならば、今すぐ抱きしめてやりたい。 それでもそれは許されないから、 貴方が解放されたらうんとそうしてやろうと思った。 「いいよ。来たくて来た」 「オレんとこのパン屋で一緒に働くか? それとも他の職場も紹介できるところはあるけどな」 それも楽しいな、とも思う。 勿論警察のまま頑張れるなら一番だが、こんな事があったのだ。 そう出来ない事情はあっても仕方がない。 「…………はあ。ビンゴか」 重たい溜息。 「センパイが世話んなった事があるらしくてなあ。 その話を聞いて、そういやここにそいつも捕まってたと思ってな」 「イヤーな予感がしたんだよ。 まさかとっ捕まった身で他の奴らに手は出してねぇだろうなって」 「なあ、お前だけか? それともここにいる奴ら、皆やられてんのか」 (-258) 2023/09/24(Sun) 23:53:34 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 暗雲の陰に ニーノ「もっと食って背を伸ばせ。 背筋は伸ばして歩幅を大きくしてゆっくり歩け。 足は跳ねないように踵から、視線は真っすぐから振らさない」 子供らしいといわれているのを気にしていそうな貴方への指摘だった。一瞬わからないかもしれないが。 スープを一口与えて、また、一口と。 「ま、勝手に心配しに来た。マシそうでよかった。 男でピーピー泣いてたらどうしようかと。 どういたしまして、俺も礼を言われることじゃないんだがなあ」 俺は、犯罪者だぞと。悪い男とは言わないが。 「小さい頃からあいつに引きずられていたからな。 お前の歳ぐらいのときには別のやつといたが、 ずっとあいつを見てきてたよ。 嫌なところが似て、最後まで似れなかった」 「おかげでいい男だろ? あんな無頼漢より俺を真似しな。 いや俺もやめておけ、それでも本当にあの喧嘩っぱやい馬鹿老害を真似して育たないでくれ」 (-277) 2023/09/25(Mon) 2:12:18 |