人狼物語 三日月国


212 【身内村】桜色のエピローグ✿

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【人】 火澄 七瀬




 「 七瀬が瀬名を好きになったら、
   貴女は不思議に思うでしょう? 」


 ぴたりと刃を自身の胸元にあてたなら、
 泣きそうな顔で微笑みました。


 *********
(22) 2023/05/11(Thu) 17:58:47

【人】 火澄 七瀬




 神様が、言ったのです。
 この世界には存在できる人数が決まっているんだと。

 人口密度とかそう言う話はなくて。
 この世界が許容できる魂の数。

 ただ、たまにあるそうです。
 ひとつの魂がふたつに分かれて生まれてくることが。
 彼らは双子として世界に受け入れられて、
 健やかに育てられます。

 それでも、期限は決まっていました。
 
 
 
(23) 2023/05/11(Thu) 18:27:32

【人】 火澄 七瀬




 「 十で神童、十五で才子
      二十過ぎれば只の人。 」


 …… そんな言葉を、聞いたことはありますか?>>0:1

 
 
(24) 2023/05/11(Thu) 18:27:39

【人】 火澄 七瀬




 神の子として見逃されるのは、齢14までの話。
 15歳を迎えた魂は、別々の人の子として数えられます。
 そして許容量を超えて溢れた魂を、
 世界が許すことはありません。

 ──── そうなれば、どうなるのか?
 消えるのです、人知れず。
 存在が、痕跡が、人々の記憶から。
 まるで最初からいなかったかのように。

 …… 決して珍しい話ではないそうですよ。
 私達が認識できていないだけで。
 今日もどこかで、存在を許されなかった誰かが、
 人知れず消えているのかもしれません。
 
 
 
(25) 2023/05/11(Thu) 18:28:05

【人】 火澄 七瀬




 「15歳の誕生日を迎えたら、お前の妹は消えるよ。」




 …… だから半年前の雨の日。
 神様が私に声をかけたのは、
 ほんの気まぐれだったそうです。
 男かも女かも、日本語かどうかもわからない
 脳を揺さぶるような、不思議な声でした。

 私が何をしても、しなくてもいい。
 成功しても失敗しても構わない。
 単なる愉快な見世物なのだと、
 かの存在は、笑いながら言いました。
 
 
 
(26) 2023/05/11(Thu) 18:29:04

【人】 火澄 七瀬




 与太話だと笑い飛ばすことも出来ました。
 いいえ。そうするべきだったのでしょうね。
 なのに、私はどうしようもなく理解してしまいました。
 それは確かに神様で、その話は真実なのだと。

 実の妹への想いを抱えて不安定だった私の精神は、
 あの瞬間。どうしようもなく狂ってしまったのです。

 別に私が消える側でも構わないそうです。
 それでも世界の天秤は、問題なく釣り合うから。
 そうですね。選択肢がそれしかなければ、

 ………… きっと私も、間違えなかったのに。

 

(27) 2023/05/11(Thu) 18:29:59

【人】 火澄 七瀬




 しかし神様は悪意たっぷりの顔で、
 楽し気に代わりを提案しました。
 まるでそれが本題だというように。

 天秤を釣り合わせるために求められたのは、
 大切な肉親二人分と、大切な他人一人分。>>1:0

 それらを殺すことができたのなら、
 私も妹も、どちらの存在も許してくれるそうです。

 
     ………… 肉親は元より、大切な他人と聞いて。
     私は、貴方しか思いつけませんでした。
 
 
 
(28) 2023/05/11(Thu) 18:30:34

【人】 火澄 七瀬




 なのに私は貴方を殺せないばかりか、
 愚しい勘違いをしていたのです。
 あのバレンタインデーの日が来るまで。
 瀬名の隣にいるのは、私でなければいけないと。>>1:19
 瀬名の望みも私の隣にあるのだと。
 何とも都合の良い夢を見てしまっていたのです。


 でも、そうではなかったのだと。
 今の私は知ってしまいました。>>15



(29) 2023/05/11(Thu) 18:31:01

【人】 火澄 七瀬




 ごめんなさい。お父さん、お母さん。
 私は車のブレーキに細工をして、
 貴方たちを殺してしまいました。
 死ぬ必要なんてなかったのに。

 ごめんなさい。禎光。
 私は貴方が大切でした。
 でも貴方のことを殺そうとしました。

 ごめんなさい。瀬名。
 …… 馬鹿なお姉ちゃんで、ごめんね。
 
 

 
(30) 2023/05/11(Thu) 18:31:10

【人】 火澄 七瀬




 間違えてばかりでした。せめて最後は正しい選択を。


(31) 2023/05/11(Thu) 18:31:15

【人】 火澄 七瀬




    「 …… もしも、やり直せるのなら。
      どうか今度は間違えないように。 」
 
 
 
(32) 2023/05/11(Thu) 18:31:34

【人】 火澄 七瀬




 刃を煌めかせたのなら。
 ひらり。
 開け放たれた扉から飛び込んできた
花びら
が、


 
      雨ではない露に濡れ、地に落ちました。**



(33) 2023/05/11(Thu) 18:33:44

【人】 水面 禎光

 *****
 
 
 「 うん、ありがとう
   ああ …… 傘は僕が持つよ 」
 
 
 七瀬を瀬名と間違えたフリをした、あの日。>>2:24
 ひとつの傘の下で何気ない会話が続き ────
 七瀬だと気付いている事は、言えずじまいだった。
 
 " 何気ない会話 "。
 人格の違いは感じ取っているものの
 普段から同じように接しているのだから
 たとえ瀬名が七瀬であっても、違和のないやり取り。
 
 
(34) 2023/05/11(Thu) 23:57:29

【人】 水面 禎光

 
 
    見分けのつかない他の人みたいに
     どっちでもいい ≠フではなく
 
    優劣なんてつけたくないほどに
     どっちも大切 ≠セからだと ────
 
 
 接し方を変えない理由を
 綺麗な言葉で並べるなら、そういうコトだろう。
 
 
              ─── 簡潔に言うなら ?
 
 
(35) 2023/05/11(Thu) 23:57:32

【人】 水面 禎光

 
 

         どちらかに踏み込むと
         3人で居られなくなりそうで 怖い

 
 
(36) 2023/05/11(Thu) 23:57:36

【人】 水面 禎光

 
 
 彼女が広げた薄紅色の傘。
 もう自分は七瀬だって自白しているようなモノだけど。
 
 
 「 七瀬の歌声…… 声楽だっけ?
   昨日も僕の家まで響いてきてたけど 本当に綺麗だね
   瀬名はやったりしないの? 」
 
 
 この日の僕は 悪戯心が増殖していたのだろう。
 瀬名と誤認したフリをしつつ、" 何気ない会話 "を。
 
 
 *****
(37) 2023/05/11(Thu) 23:57:40

【人】 水面 禎光

 
 
 会話の内容までは届かないけれど、
 別の部屋にいる七瀬と瀬名の声を遠くで感じながら。
 僕は今、書斎で誰かの日記を開いている。
 
 書き手の一人称は"私"。
 どうやら両親を亡くしたらしい。 >>0:0
 なにかに陶酔しているのだろうか ─── >>1:0
 " 対価 "とか、" 神様 "といった言葉が見てとれる。
 
 日々を綴ったにしては あまりにも話が突飛しすぎて。
 日記形式で なにか物語でも創作していたのだろうか ?
 
 
(38) 2023/05/11(Thu) 23:57:43

【人】 水面 禎光

 
 
 僕は、際限なく高まっていく鼓動を抑えるべく
 第三者が感じるだろう疑問を必死に浮かべた。
 
 
        ─── 心の奥底で 茶番だと知りながら。
 
 
(39) 2023/05/11(Thu) 23:57:49

【人】 水面 禎光

 
 
 覚えのある筆跡。
 両親が死んだ日付。
 以前からこの家に出入りしてたであろう動作。
 
 そして罪の告白。未だ釣り合わない天秤。
 
 
 全てが ひとりの人物を指し示していたとしても ───
 
 
(40) 2023/05/11(Thu) 23:57:53

【人】 水面 禎光

 
 
 日記を読み終えた時、
 書き手に感じたのは 
狂ってる
 
 
 嗚呼、でも僕も 人の事を言えないのかもしれない。
 " 大切な他人一人分 "。
 
 もし、僕の事だとするならば ────
 恐怖よりも前に 
嬉しさ
が先にやってきたんだから。
 
 
(41) 2023/05/11(Thu) 23:58:04

【人】 水面 禎光

 
 
 七瀬と瀬名。
 生きることの楽しさを教えてくれた、ふたりの天使。
 キミ達に出会うまでは死んでいるようなモノだったよ。
 
 すぐにお姉ちゃん風を吹かせたがる七瀬も
 対等じゃないとすぐにヘソを曲げてしまう瀬名も
 僕にとっては どっちも大切なんだ
 陳腐とも、不誠実とも思わない


           ──── どっちも、愛してる

 
 
(42) 2023/05/11(Thu) 23:58:07

【人】 水面 禎光

 
 
 瀬名を救うために七瀬が狂ったのなら。
 
 そして真実であれ、虚構であれ
 賽は投げられ、もう取り返しがつかないのなら ───


      よろこんで" 大切な他人一人分 "になるさ
      七瀬と瀬名の未来のために
      僕も一緒に 狂っていたい

 
 
(43) 2023/05/11(Thu) 23:58:11

【人】 水面 禎光

 
 
 「 七瀬! 違うだろ!! 」
 
 
 ふたりがいる部屋に戻った時、
 視界に飛び込んだのは 自身の胸元に刃を当てた七瀬の姿。
 その刃は僕に向けられるべきじゃなかったのか?
 僕は全力で駆け寄り、刃先を掴むべく手を伸ばす。
 
 少しでも七瀬が怯んだのであれば ──
 迷い込んだ花びらを鮮やかに染めたのは
 僕の手のひらから零れ落ちた紅だったろう。**
 
 
(44) 2023/05/11(Thu) 23:58:17

【人】 火澄 七瀬




 「 ありがとう。お願いするね。 」


 そう言って手渡した薄紅の傘は、>>34
 思いのほか高くまで上がりました。

 …… 私の幼馴染は、いつの間にか
 随分と背が伸びていたようです。

 出会った頃は、男女の身長差が顕著になる前。
 禎光が病弱だったこともあってか、
 そこまで差は無かったように思います。
 
 
 
(45) 2023/05/12(Fri) 10:56:40

【人】 火澄 七瀬

 


 歌を褒められれば、気恥ずかしさはありましたが。
 嬉しい気持ちもありました。
 
 姉である手前、あまり表には出しませんが。
 私は案外単純なんです。
 先程のつまらなさは、
 くすぐったい物へと変わっていました。

 思慮深く、他者を配慮を欠かさない禎光は、
 いつだって私達の欲しい言葉をくれるのです。
 
 
 
(46) 2023/05/12(Fri) 10:56:57

【人】 火澄 七瀬

 


 …… ただ、少し困ってもいました。

 瀬名の意見。>>37
 予想して答えることはできたでしょう。
 私達はずっと隣にいた双子なのですから。
 それでも、私が決めていいことではありません。

 すっかり禎光の手の上で転がされていること。
 気付かぬまま、私はうんうんと悩みました。
 
 次第に明るくなっていく遠くの空を見ながら。
 結局私が言えたのは、
 当たり障りのない言葉だけでした。
 
 
 
(47) 2023/05/12(Fri) 10:57:09

【人】 火澄 七瀬

 


 「 …… やるかは、わからないけど。

   いつか禎光も含めた3人で。
  
   一緒に歌えたら、楽しそうだとは思うよ。 」



 *****
(48) 2023/05/12(Fri) 10:57:17

【人】 火澄 七瀬




 飛び込んでくる何者かの気配。
 思わずびくりと肩を震わせた頃には、
 その顔は、思いのほか近くにありました。

 刃を掴む手のひらからは、
 紅の鮮血が滴り落ち、花びらを濃く染め上げます。

 それが誰なのか。
 今さら確認するまでもありません。
 
 …… ひとりとひとりだった私達は、
 貴方と出会ったことで、

 さんにん、となったのですから。
 
 
 
(49) 2023/05/12(Fri) 11:29:17

【人】 火澄 七瀬




 思わずナイフを取り返そうとしましたが、
 しっかりと刃を掴んだ指は、
 私の力ではびくともしませんでした。


 「 ……禎光。 」


 あんなに小さかったのに。
 あんなに身体が弱かったのに。
 

     そこにいたのは
     立派に成長した、ひとりの男の子だったのです。
 


 
(50) 2023/05/12(Fri) 11:30:52

【人】 火澄 七瀬




 違うだろ。>>44


 「 …… ああ、私は、
   最後まで間違ってしまったのですね。 」


 ナイフの代わりに、貴方の言葉が胸を貫けば
 歪んだ顔から、涙が溢れ落ちます。

 ええ、そうです。
 きっと貴方が正しいのでしょう。>>46
 この場で愚かなのは、私だけなのです。

 それでもせめて、最後くらいは。
 貴方を殺せなかったこと。
 それだけは正しかったのだと
──── 信じたかった。


 
 
(51) 2023/05/12(Fri) 11:32:43