人狼物語 三日月国


87 【身内】時数えの田舎村【R18G】

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【人】 親友 編笠

>>11
"ここに関しては覚えなくても大丈夫だ。こうすれば開くから"。

子どもの清和の旦那が、ドアの枠ごと上に持ち上げた状態で、
ドアの左下を蹴る。物理的に老朽化した鍵が跳ねて、
ガチャンと目の前でドアが開く。

俺もそれに倣い、ドア枠を持ち上げて同じ個所を蹴ると、
番号錠を無視してドアが開いた。
……ホンット。

「ただただ冒険の仲間に入れてほしかっただけのガキに、
 悪いことばっかり、教えてくれてんなっ……あの二人!
 おかげで、めちゃくちゃ助かったよこの野郎……!」

歯を剥いて、笑ってしまった。
こんなに愉快なのは生まれて初めてかもしれない。

俺たちが公民館に忍び込む理由だった『それ』の場所も、
もう俺にはわかっていた。
それは、"田舎"には絶対にあるものだ。
そしてそれは大人たちが用意に子供には触れられないように
普段は隠されているものだ。
でも俺は知っている。悪い年上のせいで、知っていた。

――俺は、
トランシーバー
をひっつかむと。
それを肩から下げながら公民館を出て、再び自転車に跨った。
(12) 2021/08/17(Tue) 21:14:26

【神】 編笠

――田舎には、その声を端まで届けるスピーカーが必ずある。
緊急時や災害時に、通信手段を持たない村には、
その声を村の端まで届けるその装置が必要不可欠だった。

だから俺たちにとってはそれは絶好の遊び道具で。
そしてこの村のその発信機は、トランシーバーの形をしていた。

これを勝手に持ち出したときが多分、
俺たちがこの村で一番怒られたときの記憶だ。

あのときは大声で言った俺の"
ちんこ
"が
村の端までエコーを伴って響き渡っただけだったが、
今度は違う――今度は明確な意図を以って、
そのスイッチが入れられる。

自転車をこぎながら、トランシーバーに口を当てる。

『……あー、テステス、こちら編笠晶。
 あー、悪ぃ、後で死ぬほど怒っていいから、
 ちょっとだけ話を聞いてくれ……』
(G5) 2021/08/17(Tue) 21:31:37

【神】 編笠

>>G5
この世界の意味を、理由を、真実を、
皆がどれくらい知っているかはわからない。
でもそれは、俺が伝えることじゃない。
そんなことじゃない、俺が伝えたいことは。

『……"
助けてほしい
"んだ。村の皆に』

ずっと言えなかった。たったこれだけのことを。
子どもだって言えるそれを、俺はずっと言えずに黙って俯いてた。

『人を探してるんだ。
 絶対に会いたいやつがいるんだ。
 そいつに、直接言葉を届けないといけない。
 でも、それは今の俺じゃできないんだ。
 そして一人じゃ、絶対にたどり着けないと思う。
 だから……ちゃんと言葉にして、
 この言葉に耳を傾けてくれるお人好しな誰かに。
 今度はちゃんと言うから……
"助けて"ほしいんだ
……!』

トランシーバー越しに、スピーカーから音が鳴り響く。
(G6) 2021/08/17(Tue) 21:33:04

【神】 編笠

『みんな知ってると思うけど、俺多分バカなんだと思う。
 一人でどうにかできるかもしれないなんて思って、
 子どものくせに背伸びして、大人の振りしてたら、
 少なくとも自分の事褒めてやれると思ってた」

母親が居なくなったとき、俺は泣かなかった。
卯波が、青嵐が、茜が居なくなったとき、
ずっとここにいてくれなんて言わなかった。
何処にもいかないでくれなんて誰にも言わずに我慢していた。

悲しいから、一人だから、寂しいから。
だから助けてっていう言葉を言わないことが、
孤独な自分が惨めにならずに済むための唯一の道だと思ってた。

でもそのために飲み込んだ涙のせいで、
俺はその先10年の涙を失った。
泣き叫べばよかったのに、追いすがればよかったのに。

俺とずっと一緒に、大人になってくれって、
――ちゃんと伝えればよかったのに。
(G7) 2021/08/17(Tue) 21:36:05

【神】 編笠

「だけど、俺はまだクソガキのままだってようやくわかった。
 ――何もかも間違ったあとで、
 自分一人じゃどうしようもないって分かって。
 だから……10年経った今こんなことを言うのは虫がいいけど。

 助けてほしい。

 ここから先、この田舎から出たとき
 俺は、人を探して歩こうと思うんだ。
 伝えたい言葉があるから、話したいことが、
 たくさんあるから……!
 でも俺一人じゃ全員を探し切ったりできないから、
 だから……もし俺がこの村の誰かに、
 ここから出て出会えたら――。

 もし知ってたら、そいつの居場所を教えてほしい……!
 どうしても会いたいそいつに、ここじゃない場所で、
 ちゃんと伝えたい言葉があるから……!!」

そして伝えたい言葉がある者がこの田舎にいるなら、
俺がそうやって架け橋を作るから。
もう出会えない人もいるのは分かってる、
でも今からでも遅くない相手に、伝えたい言葉が山ほどある。
(G8) 2021/08/17(Tue) 21:43:07

【神】 編笠

>>G8
自転車を漕ぎながら、
『そこ』に辿り着くことを願いながら、
伝えたい言葉を、編み紡ぐ。

「――ここで伝えることに意味がなくても。
 必ず会いに行くから。
 この言葉を、もう一度だけ伝えるために」

自転車が坂を昇る。

あいつがいるのは、絶対にここだ。
聞いているなら、絶対にこの境内にいるはずだ。

10年前に、ちゃんと言えなかったこの言葉を。
世界に閉じ込めてでも、伝えたかったこの言葉を。
(G9) 2021/08/17(Tue) 21:47:29

【魂】 編笠


「――卯波」
(_0) 2021/08/17(Tue) 21:47:53

【秘】 編笠 → 無敵の二人 青嵐


「――アオ」
(-21) 2021/08/17(Tue) 21:48:13

【人】 編笠

>>4:-96

「――アカネ」

トランシーバーを口に当てたまま。
自転車が、境内に、勢いよく突っ込んでくる。
大きく天を仰ぎ、息を吐いた。

随分と、遠回りしたし、
遅れてしまったけど。


――俺も、お前が……大好きだ


ちゃんと今度は。
この言葉を伝えに行くよ。

トランシーバーの電源を。――静かに落とした。
(13) 2021/08/17(Tue) 21:51:59

【魂】 あなた達の写真家 卯波

「もう少し、
 カッコつけて言えばいいのに」

いざ、境内に踏み入ってくるならば、
神社の枠の中にそれらを囲うならば、
卯波は、しっかりとその声に応える。

「俺……場違いだと思うんだけどなあ。
 いつも遅れて後ろをついていったり、
 急に先走ってどっかいっちゃったり。

 四人組って枠組みに相応しくないよ。

 それでも、俺の名前も呼ぶなんてさ。
 情けのつもりなのかは知らないけど」

そうして踏み出し、わずかに微笑んで。
意味がない写真をバラバラに引き裂き、

  わーっと、 
     風に乗せて
             遠くに散らした。
(_1) 2021/08/17(Tue) 22:06:11

【魂】 あなた達の写真家 卯波


そう。全部意味のないものだ。
それでも撮ってしまったものだから、
こうして、解き放ってあげる。

もう一度、皆を写真に収める日のために、
今、やっと、夢から決別する。

いくつもの写真は、
季節外れの白いカケラに成り果てて。

「でも。やっと気づいてくれたんだ」

そっと、手を差し伸べる。
届く距離にはいないし、ただのポーズだけど。
何度も示してきたから、もう一度。

「手を貸してあげる。
 俺だって、あちこち駆け回って、
 みんなを探しにいくんだもの。

 でも、これは競争ですよ。
 俺は、晶兄より先に見つけて見せる」
(_2) 2021/08/17(Tue) 22:11:49

【魂】 あなた達の写真家 卯波

「会いにいってあげて。
 ここでも。ここから帰っても。
 どんなに時間をかけても、絶対」

「その行く末を撮るのは俺なんだから。
 絶対、悲しい写真にはしないでください」

手を戻し、背中を向けて。
顔だけ振り向けば、何がおかしいのか、
にやにやとした笑顔を見せて、

「遅いよ、バカ」

と言い残し、走り去っていった。
(_3) 2021/08/17(Tue) 22:18:13

【妖】 無敵の二人 青嵐

「……おー………
多分俺今いい感じにエンドロール流れてたんだけど
もう出番な感じ?…しょうがねぇなぁ…」

響いた声の方向を見ながら愉快そうに笑う。
軽口の返事はないけれど、それでも心は満たされていた。

「田舎のいいとこその1、人が優しい。
その2、人も優しい。
その3、人たちが優しい。
っつーことで手伝ってやりますか。」

昔から、目立つのだけは得意だ。
だから、俺が目印になるから
―全速力で、走ってこい。

祭囃子の比なんかじゃない、
でっかい声でここだと叫びながら
皆をみつけて、お前も、見つけてやる。

「あ、でも見つけたら俺が満足するまで冷やかしの刑だな。」

笑って、
村を、山を、海を、
4人で駆け回ったあの日みたいに
俺もまた走り出した。
($0) 2021/08/18(Wed) 1:23:35

【赤】 君ぞ来まさぬ 百千鳥

 
「本当に、仕方ない人ばっかりなんだから」

ざあっと木立が戦いで、その向こうに誰かの声を聞く。
その声を代弁するように一人呟いた。

「人が何かを抱えられるのは両腕の数まで。一遍にはね」

「でも一つずつ順番に手に取れば、ほんとはもっと持てるはず」

「もう手放さないようにしなね、どっかの誰かさん」

形を保ったままの石畳を踏んで、背を向けた。
夢はもう手放した後、でも今から拾い集める事はできるから。

「──さ、行こう    。」
 
(*0) 2021/08/18(Wed) 2:50:44

【赤】 学生 涼風

「ねえ、待ってモモ」

 一人分の足音に、もう一つだけ加えられる。


 私は貴方を一人にした。
 貴方が心の内に何を秘めているかも知らないまま、招かれた者としての立場で夢を見てははしゃいでいた。

 だから、貴方を追いかけて傍に行こうとするのは今更遅すぎることなのかもしれないけれど。

「ねえ、モモ。これから君はどうするの?」

(*1) 2021/08/18(Wed) 3:02:03

【赤】 学生 涼風

「……編笠くん」

 小さな影を追う前に、聞こえてきた声の方へと振り返る。
 何もかもが遅いと言われても仕方がない。それでも、声をかけたくて。

「君は遠くから眺めていたことの方が多かったけれど。それでももし、許されるのならば。

 ……どうか私に、君を応援させてほしいな」

 勿論ここを出てからも君のことを手伝うつもりだ。
 伝えることの大切さは、もう痛いほど理解したから。
 貴方にも、後悔なんてして欲しくなくて。

 だから、そっと声を風にのせる。
 涼やかな風が、ふわりと流れていく。

「……頑張ってね」
 
(*2) 2021/08/18(Wed) 3:09:32

【独】 宵闇

──夢の終わりを告げる声が聞こえた。

ここに残ってと呼ぶ声も、誘う声も、
もう聞こえなくなってしまった。

「やっぱり、夢だったんだな」

自分でも驚くくらい覇気のない声が出た。
夜は明ける、夢はいつか終わる。

泡沫のように夜に溶けて消えていって
疲れることなんてなにも考えなくてもよくて
思い出だけを抱いて漂っていたかった
夢を、ずっと見ていたかった。

でも古民家<ピアノ教室>が本当はもう存在しないように
あの頃には、戻れないんだ。とっくに知っていた。

いい、夢だった。子供の頃に戻ったみたいで。

田舎への想いは消えたわけじゃない
男はずっと過去に囚われていたけれど
それは現実から目を背けたいだけだった。

──いい、夢だった。

だけど、それだけで終わらせるには胸中に悲しみが滲んだ。
夢だったけれど、胸に抱いた想いは本物だった。
(-22) 2021/08/18(Wed) 6:05:19

【独】 宵闇

──考えている。
──ずっと、考えていた。

祭囃子の音を遠くに聞きながら
人ごみの中をさ迷うように。なにかを探すように。

「どうして、俺だったんだろうな」

誰に届くこともない問いかけが夜の空気に溶ける。

彼になにか特別なことをしてやれていただろうか。
幼少の時のことをぼんやりと思い返す。
いつも自分勝手に振り回していた記憶ばかりだ。

好きになるなら、ルカのほうだっただろとさえ思う。
(-23) 2021/08/18(Wed) 6:09:03

【独】 宵闇

男は清和を、羨んでいた。
自分には、なんとなく言われてやっていた音楽くらいしかないのに
アイツはあちこち飛び回って、色んなやつに影響与えて
なんでもできて、風みたいだったし、光のようなやつだった。
あいつが光ならば、自分は、影。──いや闇かもしれない。
光にどこまでもついていく影ほど、近くはなかった。

男は清和のようになりたかったのだろうか。
だから意地なんて張って"プロになる"なんて宣言して。
たくさんの人間に影響を与えるような人間になりたかった。

でも、沢山の人間に向かう器用さはない。昔も今も。
挫折さえしそうな今だ。

だからいつも、子供の頃は近くにいてくれた御山洗を引っ張っていた。それでも嫌な顔ひとつしない、御山洗がいることで安心していた。差し出した手を、取ってくれる彼を。

ただの、自己満足だった。
(-24) 2021/08/18(Wed) 6:11:13

【独】 宵闇

ふ、と顔を上げる。

「……なんだ。さわがしいな。
 やっぱりなかなかやるね、小さいほうのアキラくんは」

──編笠の放送を聞いた男は、ひとり呟く。
がむしゃらに駆け回っていた青春時代を思い出して
少し胸の奥に火が灯るような気さえした。

俺もできるだけ手伝うよ、少年。と呟く

元の生活に戻ったら。この夢でのこと
なんならラジオで彼と彼女の盛大なるラブソングでも
青春ソングでも流してもらおうかと、笑う。
曲が書けないだなんて、言ってられないな。
少しはこの村で、年上らしいことをしてやりたい。

「俺も、後悔しないようにしないとな」
(-25) 2021/08/18(Wed) 6:17:16

【独】 さよなら 御山洗

聴こえてきた声は遠く遠く山の端まで響いてしまいそうなものだった。
この虚構の楽園の中で、それでも足掻いて、届けようという声がある。
まだ、追いかけているのだ。夢の中の残影を、思い出を。
靄の中に映り込んだ蜃気楼のような夏に、心を曝け出して。
彼らは現実に繋がり続けるための叫びを伝えようとしているんだろう。

「……敵わないな」

少しだけ吐息のこぼれたような笑い。あんなに真っ直ぐには、いられない。
だからこそ縁側に続く扉を明けて、澄み渡った空を見上げる。
せめても彼らの願いばかりは、見届けていたいと、そう思ったのだ。

……それは在りし日の自分が背を向けたまま不発弾の奥底に閉じ込めたものだから。
同じ道を、彼らが歩んでしまわないように。その背に続く路のないように。
夢の終りが早く、だれかの望ましいかたちで、訪れますように。
(-26) 2021/08/18(Wed) 14:58:22

【人】 未来へ 竹村茜

「……アキラ」

境内の裏、少女は懐かしい出来事を思い出すような 村に響く音を聞いていた。
あの頃は馬鹿な言葉を叫んではこっぴどく叱られたっけ。

「馬鹿だなあ、それじゃあ皆に聞かせてるみたいじゃん。
 男らしいってそういうことじゃないでしょ」

耳に届いた声は、夏の隙間を通り抜けて、さわやかな一陣の風のように頬を撫で。
少女は嬉しさと照れくさい気持ちで、胸がいっぱいになる。

(14) 2021/08/18(Wed) 17:01:00

【人】 未来へ 竹村茜

「……ありがと」


境内の裏から姿を見せた少女は、晴れやかに笑って。


「でも、その言葉……ちゃんと、会えた時にもう一度聞かせてよね。
 それで、皆の事探して―――今度こそ、"また会えたね"って言って、話をしよう。

 あたしも、手伝うから」

不器用で、こうするまで人に頼ることすらも出来なかった幼馴染に。
手を差し伸べて、笑う。

きっと見つけて、この手を取ってくれると信じられる。

また皆で。そして、貴方と一緒に未来を見たいから。
(15) 2021/08/18(Wed) 17:02:02
村の更新日が延長されました。

村の更新日が延長されました。

【人】 編笠

>>15 アカネ
少しだけ視線を逸らして、頬を掻いた。
卯波が踏み出し、アオが踏み出し、
アカネが目の前にいる。

「皆知ってるだろ、馬鹿なんだよ多分。
 だから、また馬鹿だなって笑ってほしいんだ。

 ……ここにいる俺は、
 村のどこにいたって聞こえる声しか出せなかったけど、
 世界のどこにいたって、また声を伝えようって思うから」

だからこれは、告白ではなく宣言だ。
今から何百回、何千回と繰り返し伝える言葉の、
覚えていないかもしれない最初の一回だ。

一番恥ずかしい思いをさせたら、
もしかしたら永遠に残るかもしれない。
その胸の高鳴りを抱いたまま、
いつか俺が来るのを待っていてほしい。
同じ空が続く、世界のどこかで。
(16) 2021/08/18(Wed) 21:35:15

【人】 編笠

>>15 アカネ
「ああ……任せろ。
 どこにいたって、どんな姿をしてたって。
 必ず見つけてやるから。
 自転車の後ろに乗せるから、皆に会いに行こう」

手を取る。差し伸べられた手を握ると。
そこには10年前に欲しかった温もりがあった。

「……ごめんな、アカネ。
 俺はお前を、
 卯波を、青嵐を。
 永遠に夢みたいな楽園にいさせてやりたかった。
 これは、掛け値なしに本当の気持ちだった。
 でも、どうやらそれは無理みたいだから――」

だから。

「――お前のいる"現実"を、
 夢みたいな場所にすることにした。
 今度は、諦めたりしねえから。
 ……アカネが味方なら、百人力だしな」
(17) 2021/08/18(Wed) 21:36:45

【人】 過去から 編笠

>>15 アカネ
ばあちゃんみたいに、全員を一気に集めるとかできないから。
だから俺は、一つずつ繋いでいく。
糸を編むように、繋げていく。
出来るかなんてわからない。何年かかるかもわからないし、
その間にほどけて行くものがあったとしても、それでも。
それが今の俺に出来る、精一杯の感謝と謝罪だ。

握ったアカネの手を引き、相手の背中を抱いて。
その耳元に頬を寄せ――。
……静かに、今度はアカネにしか聞こえない声で囁いた。

「――
だから"未来"で待っててくれ

 "10年前"から、一気に自転車ぶっ飛ばして。
 
必ずお前に「好きだ」って言いに行くから


だから今は、少しだけお別れだ。
青く、青く澄んだ空の下で。
伝えられなかった言葉を、静かに伝えた。

誰かが、微笑んでくれているのを感じながら。
(18) 2021/08/18(Wed) 21:40:07

【人】 未来へ 竹村茜

>>18 アキラ
あの頃触れなかった手は、ずっと大きくて温もりがあった。
夏の暑さとは別に、握った手が熱を持って存在を主張する。

「あたしだって、そうだったんだよ。
 婆ちゃんがいるこの夢にずっといたいって思ってた。
 そうあれば幸せだって信じてた。

 だけど、アキラの言う通りそれは叶わない 泡のような夢でさ」

それでも。

「"忘れてきたもの"が、あたしを―――皆を、前に向かせてくれたんだ。
 アキラや卯波、シュン達と未来に行きたい。
 そして、婆ちゃんに『あたしも負けないくらいオシャレになったよ』って報告したいから」

夢も叶えたよって。ずっと話せなかった分、目いっぱい。

(19) 2021/08/18(Wed) 23:53:14

【人】 未来へ 竹村茜

「……うん、うん。
 待ってるよ、皆より一足早く辿り着いたところに、あたしはいるから。

 だから、今度こそ―――
男らしいところ、ちゃんと見せてよね


くすぐったいような、耳元の声に頷いて。
そのまま、こつんと額をくっつける。密着した顔が、熱くて仕方ないけれど。
あの時のように、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

それ以上は、"未来"までお預けだ。

大丈夫、もう10年待つ事はないんだから。
待ってるよ、同じ空の下で。
(20) 2021/08/18(Wed) 23:57:52