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【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー「女の嘘を、うまく受け止めてくれるのがいい男の条件でしょ」 あんなにも広がっていた視界が、丘陵や木々、建物と、次から次へ防がれていく。 ついには空までも狭くなって、逸らし続けた視線が横を向いた。 「あなたはいい男だし。 こんなこと、あなたにしか話せない」 またうそをつく女は、周囲をちらと見まわして。 「……」 「この後の予定とか、聞かないの?」 ふ、と。 ウォータープルーフのリップが、窓越しの灯りを反射して歪んだ。 (-18) 2022/08/17(Wed) 21:44:10 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「そうね。……死にたくなんてない。 けど、そんなこといったって、 覆いかぶさってきた男はやめてくんない。 出してすっきりして、そのあとでしか優しくはしてくれない」 スカートが揺れ過ぎないように──内側の拳銃を見とがめられないように──棚を物色しながら、落ち着いた駄菓子の雰囲気には似合わない下品な冗句を口にする。 「けど、死ぬ寸前まで男をいい気分にさせてやるのもね。 しゃくだし。 ……まあ、覚えておく。ありがと」 へえ、ニホンね、と。 分かっているのかいないのか頷きながら、いくつかを手に取って。 「ガキが好きそうなの、どれだと思う? これ、なんか味がよくわかんない」 クレームなのかどうかわからないことをいってくる。 (-20) 2022/08/17(Wed) 21:49:34 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニーあなたのすべてを知悉したかのようなそぶりに、目を細める。 けれどにこり、ともう一度、笑みを浮かべ直す。 「今日は安くするつもりだったのに」 あなたが車の外を回っているあいだ、 そんなことを呟いてもまともに聞こえるはずもないのに。 ぽつりとそう、冗談をいって。 「ありがとう」 開かれた扉から、しばらくぶりの石畳に足を下ろす。折りたたんでいた身体を思い切り伸ばして、折り目のついたスカートを手の甲で何度か伸ばした。 「分かってる。旅行は早めに。明日また行くから。 ──、……あなたも気を付けてね?」 一応、とつけくわえたのは、もしかして照れ隠しだろうか。 それともこれも、あなたの便宜をはかるためのうそだろうか。 扉を開くあなたの手に、細く、白く、柔らかな指を重ねて、そのままじゃれつくように体を寄せた。 「次きたら、サービスしたげるから」 それではとてもすまないようなおねだりをしておきながら、それですませる気だろうか。 (-49) 2022/08/17(Wed) 22:39:44 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ”昼行灯” テンゴ「………。 思ったより優しい店主さんみたい」 朗々と紡がれるあなたの言葉に。 女はその風貌には似合わないどこか子供っぽい様子で何度か、驚いたように瞬きした。 そこからじわり、と緊張の色が解けて、可笑しそうな笑みが広がっていく。 きつめのメイクの下の、どこか幼く明るいその顔が、 いろいろなもの取り払った彼女の――それを本当の、というのは、いささかロマンチズムに過ぎるが─顔なのだろう。 「年長者の言うことは聞くようにって、いつも言ってるし。 ガキ扱いしないでよ」 棚に置かれた、コインのかたちの小さなチョコレートをつまんで、いぶかし気な様子を隠さずに矯めつ眇めつ眺める。 「男で…16だったかな? 甘いの食べるけど、好きかどうかは知らない」 ガキというほど、ガキではないが。 「……いいの? じゃあこれとこれ」 試食なんて言われると、どこか楽し気に結い上げた髪を揺らした。 (-64) 2022/08/17(Wed) 23:09:02 |
【人】 小夜啼鳥 ビアンカナイト・バー「Pollo Nero」の3階、従業員用に与えられた狭苦しい部屋 はあ、と漏れた息が、窓ガラスを白く染めた。 「こんな時も仕事か、あのガキ」 ビアンカ・ロッカは、育ちが悪い。 男性を喜ばせる仕事をしている以上、好まれる立ち居振る舞いというものを技術として身につけはしたが、こうして独り言ちるようなときはそれなりに口が悪くなる。 肩越しに振り返る。 二人で分けるにはキリがわるく七枚、皿の上に並べられたブルスケッタ。 バターでソテーしたきのことベーコンを、チーズといっしょにバゲットのうえに乗せただけ。 家庭料理と呼ぶにも手軽すぎる皿の脇には、ミルクとレモネートが入ったグラスが置かれている。 「………さっさと荷物も、纏めさせないといけないのに」 がん、と爪先で、窓の下の壁を蹴る。 窓硝子がほんの少し揺れて、そこに映った不機嫌そうな自分の顔を揺らした。 「はー……」 こつん、と。窓枠に額を押し付けて。 「ガキは嫌い……」 そのあともずっと、ブルスケッタがすっかり冷えてしまうまで、人々が行き交う通りを、見下ろし続けた。 (5) 2022/08/17(Wed) 23:59:32 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → ショウダウン ヴィオレッタ「ふふ、言ってみるもんね。 期待しておきましょうか──…」 どこかはしゃぎながらの様子は、疲労と不安の裏返しだろうか。 だとしても、その笑顔は何もない場所から湧き出てくるようなものではなかった。 なぜか不安げな猫のように部屋の壁際を伝って歩き、引かれた椅子にちょこん、と座る。 荷物を傍らに丸めて置きながら、 背もたれに体を預けるように首を伸ばして、キッチンに立つあなたを見──目を細めて、悪戯っぽく笑う。 「モテそ〜」 多分、あんまり、何の意味もない言葉だ。 メニューについて尋ねられれば、すぐにその猫のようなにやにや笑いを引っ込める。 顎に指をあて、 「肉ー。どっちでもいい。お任せで。 おお、ほんとにすごい…… ……お店みたいって言った方が嬉しい? それとも、お嫁さんみたい〜、のほうがいい?」 その意味がないような、冗句のような口調の問いは、どうしてか笑いもせずに。 (-79) 2022/08/18(Thu) 0:13:10 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ「死にたくは、ないけど」 「……」 溜息。 はあ、と。細く、長く、絞り出すようにして。 「ああ、もう、いいや。 あのね、」 「借金は、いつでもいいから」 「さっさと出ていきな」 腰に手を当てて、あなたを見下ろす。 ――不機嫌そうな顔を作ろうとして、 すぐに、 しょうがないなと、困ったように笑って。 「…女のお願い。 ちゃんと聞けるようのが、いい男だよ」 「ヴェルデ。……あなたの質問に、答えられない。 私、あんたよりもずっと、ずうっとばかだから」 「どう答えたらいいか、わかんないんだ」 ↓[1/3] (-86) 2022/08/18(Thu) 0:54:52 |
ビアンカは、あの日のヴェルデに手を伸ばした。 (a0) 2022/08/18(Thu) 0:55:04 |
ビアンカは、あの日のヴェルデの頬に触れた。 (a1) 2022/08/18(Thu) 0:56:23 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ↓ 「――……あと、串焼きが冷めるから、 さっさと離して?」 どうやら、お話をそこで終わり、にしたいらしかった。 がん、と。 (-88) 2022/08/18(Thu) 0:57:35 |
ビアンカは、あの日、ヴェルデの足を思い切り踏んづけた。 (a2) 2022/08/18(Thu) 0:58:22 |
【人】 小夜啼鳥 ビアンカPiPiPiPiPiPiPi..... 冷めたブルスケッタを、皿からひとつ。 指先で抓みあげて口に運びながら、やかましくなり始めたを取る。 「……はい、【Pollo Nero】。 なぁに? 今日も休むの? あんたね、マジでバカなの? 生理は一月に一回──…」 電話口の向こう、従業員のひとりがなにごとか喚いている。 それを聞くたび、 「……」 ビアンカは、口許に笑みを浮かべて。 「……」 浮かべて。 「……… あ、そう 」 (6) 2022/08/18(Thu) 1:02:14 |
ビアンカは、ブルスケッタが乗った皿を壁に叩きつけた。 (a3) 2022/08/18(Thu) 1:04:17 |
【人】 小夜啼鳥 ビアンカ硬質な音が、劈くように響き渡る。 べしゃりと汚らしく壁に張り付いたキノコのソテーが、ぼたぼたと不快な音を立ててカーペットの上に落ちた。 「…………」 胸を抑える。 ぎりぎりと指が鎖骨の間に食い込んで、そうしたって抑えきれないくらいに肺が何度も不規則に膨み、胸を内側から圧迫する。 「……、……、……」 ――何度も、何度も。 砕け散った皿を、のろのろと片づけながら。 ビアンカは、口許を笑みのかたちにゆがめた。 そうすること以外、なんにもできなかった。 (8) 2022/08/18(Thu) 1:06:35 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデずっと面倒だったしうざったかった。 さっさと目の前から消えてほしい。 「生意気なガキ」 ああ、ガキは嫌い。 あなたのついた悪態に、なぜだか、嬉しそうに眼を細めて、 にんまりと笑って。 ↓[1/2] (-124) 2022/08/18(Thu) 13:23:18 |
ビアンカは、あの日。 「知ってる」 と、笑って。 (a4) 2022/08/18(Thu) 13:23:30 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ↓ 「あんたさ、まだそんなの読んでんの? 一回読んだら、もう終わりじゃないの?」 いわれたとおり手を離したのに。 はい、と──あなたに、手を差し伸べた。 あなたがその手を取れば、ゆらゆらと手を引いて歩き出す。 たよりなく、細く、非力な手で、ゆらゆら、と。 [2/2] (-125) 2022/08/18(Thu) 13:24:57 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 暗殺屋 レヴィア夜の海の如く暗い店内を、夜光虫のような間接照明がささやかに照らしだす。 扉が開いたのを見て近づいてきた店員が、 ビアンカの名前を聞いて顔に笑みを張り付けた。 あなたがこの店の業態をどこまで知っているかは分からないが、 営業用のスマイルが店頭にまだ並んでいるくらいには、 しっかりとした店のようだ。 「少々お待ちください」、との言葉とともに、入り口から少し区切られた位置の椅子を進められる。 背の低い仕切りでも、沈み込むほどに柔らかな椅子に腰を下ろせば周囲から視線を隠すだろう。 そこに座ったとしても、座らなかったとしても。 さほど待つことなく、ひとりの女が店の奥から姿を見せる。 モノトーンのフリルワンピースに、薄暗い中でも目立つ明るめのメイク。 細長い足が、ゆったりとした歩幅で近づいてくる。柔らかいカーペットに足音は吸い込まれて、衣擦れの音だけがいやに目立った。 その女は、一瞬あなたの全身に視線を走らせて──それから顔を見て、にっこりと笑った。 「お待たせしました。 ビアンカです、……はじめましてだよね?」 (-126) 2022/08/18(Thu) 13:34:44 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー触れ合った体温が、鼓動が、吐息が。 香水のように互いの身体にまとわりついて、きっと暫くは残り続ける。 そう信じるかのように、もう一度頬を摺り寄せて。 「はい。またね」 車の窓越しに、恋人のように微笑む。 バック・ミラーに自分が映る限り、そうして振舞う。 あなたの前であるかぎり。 ↓[1/2] (-141) 2022/08/18(Thu) 18:01:41 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー↓ 「………またね」 太腿には、ごつごつとした金属の感触。 女だって、ホルスターをさせば――いつでも銃がそこにある。 [2/2] (-142) 2022/08/18(Thu) 18:02:01 |
ビアンカは、「またね」と繰り返した。 (a11) 2022/08/18(Thu) 18:02:26 |
【人】 小夜啼鳥 ビアンカかつ、かつ、かつ。 石畳は今日も、リズミカルに音をたてる。 女は今日も、傘を片手に街を歩いていた。 かつ、かつ、かつ。 かつ、かつ かつ 。ときたまよろめいて、こけそうになりながら。 目許を覆い隠すほどの濃いアイシャドウを、燃え盛るすい星のように曳いて。 眸だけは真っ直ぐに、前を見る。 かつ、かつ、かつ。 ビアンカはこの街で、石畳がたてるこの音が好きだった。 それ以外は、みんな嫌いだった。 (18) 2022/08/18(Thu) 18:04:40 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 暗殺屋 レヴィア「かわいらしいお客様。 見惚れちゃった」 女は荒事の経験があるようには見えなかった。 あえかに裾を抑えて、向かいの席に座り、あなたの言葉を笑顔のままに聞いている。 ポケットに手を入れた所で、女は表情を――すくなくとも表向きは──変えることもない。 「あらそう? 残念」 白粉は、感情すらも塗り固めるのか。 口紅は、青ざめた血色を塗り重ねるのか。 人形のように精緻で可憐なあなたのかんばせに比べて、 漆喰を押し固めたようなその顔はなんと醜いことだろう。 ただ、あなたの動きを目だけで追って。 ↓[1/2] (-146) 2022/08/18(Thu) 18:36:29 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 暗殺屋 レヴィア↓ 「――……」 差し出された紙幣に、視線すら落とさない。 ただ、どこかけだるげに持ち上げた手で口許を抑えて。 「私、人に金を貸したことなんてない。 何かの勘違いでは?」 女は笑顔の上に笑顔を重ね、コケティッシュに小首をかしげた。 「あら失礼、何か飲む? ノン・アルコールのほうがいいのかな。 レモネードとかおすすめだけど」 掌をあげる。カウンターの向こうで、従業員が背を向けてなにがしか準備を始めた。 [2/2] (-147) 2022/08/18(Thu) 18:38:39 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ多少は、生来の顔立ちもある。 けれどやっぱり、その美しさは作り上げたものに違いない。 だから女は、自分が美しいなんて本当は思っていなかった。 ただ、それが価値あるものであると誇り、 引き金に指をかけ続けなければ、 生きてこれなかっただけだ。 「ふふ」 「ありがとう、あなたといるとお姫さまになったような気分」 「こう見えて、女の子だからね──……」 虚ろな言葉がうわ滑る。 ただ一夜の夢のように、かたちのないものばかりを織り上げて共有する。 それが恋だとしたら、この世界に確かなものなんて何もなかった。 それが恋でないなら、この世界に美しいものなんて何もなかった。 「愛されるのも、褒められるのも好き」 すきよ、と。 女の唇は、濡れたように艶のあるリップを纏う。 かつん。高く鳴る靴音が、あなたの視線を朝靄のように曳いた。 ↓[1/2] (-164) 2022/08/18(Thu) 20:01:46 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 家族愛 サルヴァトーレ↓ 本当に聞き間違いであったかのように、女はその歩幅にも、姿勢にも、一切の違いを見せなかった。 ただ、あなたの語る陳腐な言葉に。 「だといいけど」 笑う。 「もし、私の大切なものがなくなったら、 私とても悲しいわ。 トトー、守ってくれるよね?」 水平線の向こうで輝く太陽のように、にんまりと笑った。 [2/2] (-165) 2022/08/18(Thu) 20:02:08 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → どこにも行けない ヴェルデ「それでいーの。 あんたには、時間があるんだから」 大きな、けれど小さな手をぎゅう、と包むように握る。 ゆらゆらと揺れる手は、水面で揺れる揺り籠のようだ。 ざわざわとした雑踏が波濤となって、ふたりだけの揺り籠をぐらり、と揺らす。 だから、ビアンカは前を歩く。 打ち寄せる波を、自らの身体でうけるよう。 「ばかは何もしないやつのこと。 バカはマジでバカだから、何もしないくせに文句ばかり。 いい、ヴェルデ。 あんたは、」 「■■■■■■■■■■■■■■」 ――その言葉は、どうにも言いづらくて。もごもごと、不明瞭になってしまった。 (-167) 2022/08/18(Thu) 20:06:11 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 暗殺屋 レヴィア「そう。 わざわざ来てもらって悪いなあ」 あなたの背後で、笑みを含んだような声。 がちゃり、と。 バーの入り口が、外から締まる音がした。 カウンターにいる従業員が、トレイに乗せたレモネードをビアンカのもとに持ってくる。 皮を細かく切り刻んだ、たっぷりのレモン汁が入ったレモネード。 そのトレイの上には一緒に、 銃身を僅かに切り詰めて9mmパラベラムをたっぷりと詰め込んだ自動拳銃が乗っていた。 ↓[1/2] (-170) 2022/08/18(Thu) 20:14:15 |
【秘】 小夜啼鳥 ビアンカ → 暗殺屋 レヴィア↓ 「おい」 「それ、いつ受け取った」 「 て めえが殺ったんじゃ ねえだろうな──」従業員はただの素人。 ビアンカもまた、訓練された動きにはとても見えない。 彼女がトレイの上から拳銃を掴むのを、あなたは黙って見ているだろうか。 (-171) 2022/08/18(Thu) 20:15:42 |
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