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【独】 吟遊詩人 フェリックス手に持っているリュートも、 身を包む深緑の外套も、変わらず。 〈吟遊詩人 フェリックス〉は、 数百年に渡り、歴史の端に、その足跡を残している。 あるいは、後世。または変わり者は、 その詩人の名を聞いて、 思い当って調べれば、 彼をこう形容しただろう。 (-10) 2021/12/19(Sun) 1:54:21 |
【見】 不死の詩人 フェリックス「さあて………。」 リュートと外套。 それだけを携えると、それなりに荷が置かれた部屋を眺める。 あるいは、硝子職人の少年が作ってくれた花瓶。 あるいは、花屋の少女から購入した花。 あるいは、厄介な呪いの品を購入し、祓った寝所。 くすりと微笑み、背を向けた。 「行くとするかあ」 (@0) 2021/12/19(Sun) 1:57:38 |
【独】 不死の詩人 フェリックスその詩人が姿を見せるのは、 決まって、物語の在るところである。 (とはいえ、それは、彼が詩にそれを残すからなのだが――) そして彼が度々残すのは、 華々しい喜劇。 そして、語られざるべき、悲劇のどちらか。 つまりは、この詩人が目的をもって訪れる場所は、 そのどちらかに見舞われる――、という逸話もあった。 (-12) 2021/12/19(Sun) 1:59:19 |
【見】 不死の詩人 フェリックスヨルムガンドは、 予想外だった。 「どちらかといえば、悲劇にて終わると思っていたのだが。 これでは、緩慢に幸せになっていくほかないだろうな」 ひとりごちて、宿の部屋を出る。 それから、魔女に「暫く出るよ」といつものように声をかけて、数百年前に手に入れた古い精霊石を渡す。 魔女はためつ、すがめつ。 ゆっくりと微笑んで、 「せいぜい頑張んな」と声をかけた。 「そちらも。また百年後に来るよ、元気で、”キティ”」 遥か年下の女性に微笑みかけて、 静かに宿を、いつものように出ていく。 (@1) 2021/12/19(Sun) 2:03:05 |
【見】 不死の詩人 フェリックス道端を歩く。 パン屋の少女が頬を赤らめて手を振ってくれば、 笑顔で会釈する。 このパンも食べ納めになると思うと、 少々硬かったり、焦げたパンも惜しく感じる。 「人が勝ちえた、僅かな勝利。 尊いものだが、詩にしてもどうにも映えない。 やれやれ、だ。商売、あがったりだな」 往来を鼻歌交じりに歩く。 太陽が眩しく、雲間から差し込んでいる。 「本当によかったなあ」 悲劇であれ、喜劇であれ。 それを語り継ぐ。 魂の衝動だ。 彼らが悲嘆の海に沈んでも、 きっと自分はどこかで、 それを笑顔で語っていただろうから。 (@2) 2021/12/19(Sun) 2:06:36 |
【見】 不死の詩人 フェリックスあとは、恨みを買った貴族連中に見つかる前に、 早めに立ち去るだけだ。 少々、コネを使って無茶をしてしまった。 まあ、姿を消したものを追うほどでもあるまい。 「配達屋には悪いことをしたが、まあ」 配達屋には、届くように「配達」を頼んである。 「すまん、もう行く」 と書いた手紙。それから、幾何かの金貨を同封。 彼があの封筒を開けた時、 どんな顔をするかだけは見ておきたかった! (@3) 2021/12/19(Sun) 2:08:24 |
フェリックスは、くっくっく、と喉を鳴らして笑った。 (t0) 2021/12/19(Sun) 2:08:28 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>5 オーウェン 「……………」 「おやぁ?」 わざとらしく振り返り、微笑んで首を傾げる。 「オーウェン!いや〜〜〜、奇遇だな。昼食を食べに行こうと思ったところだ。どうかな?ところで、俺からの封筒」 相手が手にしている。 間。 「………話が早いことで」 両手をあげて観念した。 「だがまあ、こうして無事終わってしまってはなあ。お前さんも、遠くまで行くのは大変だろう?俺なりの、気遣いという奴だったんだがなあ」 (@4) 2021/12/19(Sun) 2:25:13 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>7 オーウェン 「報酬を渡されたのに見逃すわけにはいかないとは、これいかに?」 愉快そうに笑いながら、 引き裂かれる手紙に「それ、紙だぞお」と面白そうに、呆れたように言う。 まだまだそれなりに高いものなのに。 「そうかな?お前さんほど、俺は色々はしてないさ。 詩人とは、あくまで外野で見守るだけの存在だ。 観劇をして、後は1人で編纂するのみ。 お前さんは、れっきとした俳優だったぞ」 片目を瞑り、顎を撫でながら、 「劇的な展開にはならなかったようだが。浴場でも」と、 それらしいことを口にする。 「やれやれ……。構わんがな。俺が次に行くのは、 アウズンブラだぞ?」 ――『アウズンブラは、すべてが白に染まる。』。 そんな逸話を持つ、常に白い灰が降り注ぐ場所。 ミスガルド帝国、エムブラ聖王国、ムスヘル共和国。 覇を競う三雄の接するそこは、 戦時級魔法の傷跡により、未だにそんな呪われた場所となっていた。 最近では、随分ときな臭い噂もあるぐらいで――。 => (@5) 2021/12/19(Sun) 2:40:42 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>7 オーウェン 「だからな。気乗りはしなかったのだ。お前も危険な目には合いたくなかろうよ。」 「俺だってな、短い間とはいえ。ともに暮らした者を考えなしに危険に晒す気はない。 俺が行くのは、必ず危険な場所となるだろうよ。 英雄譚か、悲劇か。 それが噂される場所にしか行かんよ」 (@7) 2021/12/19(Sun) 2:43:11 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>8 オーウェン 「世界の何もかもがお伽ではないが、 世界の何もかもを、お伽として語ることはできる。」 ふ、と目を細めて、笑みを少しだけ潜めた。 「それが、どこまで行っても俺達詩人というものさ。 ……流石に、往来で言うのはまずいんじゃあないか?」 ポロロン、と静かにリュートを鳴らす。 あなたが魔法の力を感じ取ることができるなら、 これは「認識阻害」と気取って言うこともできるし、 〈ガヤガヤそわそわにする魔法〉とも言える。 他人から、これは取り留めのない雑談にしか聞こえなくなる。 「…………怖い男に捕まってしまったなあ」 溜息交じりに、少し困ったように言った。 腕を組んで、空を仰ぐ。 大鷲ははるか高く、 空の先へと消えていく。 => (@8) 2021/12/19(Sun) 3:06:57 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>8 オーウェン 「ま、そこまでいうなら、頼もうか。ただまあ、荷物として箱に詰められるのはちょっとな。そこまで送り届けて貰うことにしよう、普通に。 ――ちなみにな、弾圧が盛大に始まった時、実はお前も俺も、入るのは〈棺桶〉の予定だった。葬儀屋に伝手があってなあ。それを運び出すのは、そんなにうるさくは言われないのさ」 笑顔を戻して、肩を竦めた。 「生きたまま堂々と出られるんだから、楽しく行こう」 => (@9) 2021/12/19(Sun) 3:09:21 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>8 「それで? 船かな、海か。それとも、馬車か? 路銀はあるとも、任せたまえよ。 君を信頼して、あえてこう言おう。 厳しい道のりだろうが、 若さゆえの勢いと、 身の程知らずと、 そして。雄々しい魂の輝きを俺は頼ろう――」 => (@10) 2021/12/19(Sun) 3:13:29 |
【秘】 錆鉄御納戸 ミズチ → 不死の詩人 フェリックス──朝を迎えるよりも前のこと。 ミズチはフェリックスの姿を探していた。先送りにしていた情報工作依頼の報酬の話をするためだ。事は一先ず、少なくともミズチにとってはつつがなく終えられていた。首輪も外れ、晴れて自由の身である。 さて、あなたの姿は見られるだろうか。 (-20) 2021/12/19(Sun) 4:37:30 |
【見】 不死の詩人 フェリックス>>9 >>10オーウェン 「どうやらお前さん、無用な恨みを買っているようだからなあ。 衛兵連中だって、通報されれば捕まえざるを得んよ」 くたびれた様子の衛兵が遠目にも見える。 それはそうだ。 捕まえたところでいいことがあるわけでもなし。 気苦労の方が多い衛兵もいただろう。 「ご機嫌取りだよ。殴られると、当代の『俺』の顔がきずついて可哀想だ」 ▼ (@12) 2021/12/19(Sun) 16:00:00 |
【見】 不死の詩人 フェリックス (@13) 2021/12/19(Sun) 16:00:08 |
【独】 不死の詩人 フェリックス ――「期待してる!」。 愚かな子供だ。 数世紀を生きる『私』からはそう見える。 安寧を捨てて、刺激を求める。 ヒトの愚かな性としか言いようがない。 ようやく、ここは人が住まうに相応しい場所になったというのに。 (-24) 2021/12/19(Sun) 16:01:08 |
【独】 不死の詩人 フェリックスだが、もし、もしも、だ。 これが偽りではない言葉だと、信じたなら。 "愉快な物語を見届けるために、平穏を投げ捨てられる"のならば? (-26) 2021/12/19(Sun) 16:01:46 |
【独】 不死の詩人 フェリックスそれは、『私達』と同じだ。 我が名は詩人フェリックス。 旧き不死鳥の呼称と同じく、 灰から蘇り、どこにでもいて、どこにでもいない不死の詩人。 魂と記憶と詩を継承する、詩を紡ぎ続ける無限機構。 何人もの『フェリックス』が紡ぎ続けてきた、人類史を愉快に見守るこの旅路。 観劇者が二人と現れることは無かった。 が、こうして、隣にそれが現れたのならば―――― (-27) 2021/12/19(Sun) 16:04:31 |
【見】 不死の詩人 フェリックス (@14) 2021/12/19(Sun) 16:05:52 |
【見】 不死の詩人 フェリックス (@15) 2021/12/19(Sun) 16:06:23 |
【秘】 不死の詩人 フェリックス → 錆鉄御納戸 ミズチとなれば夜だろう。 フェリックスは自室にいた。 戸を叩けばあなたをゆっくりと迎え入れる。 少し憂鬱そうにも見える顔で、葡萄酒を傾けていた。 とはいえ、深刻でもなさそうだが。 「やあ、ミズチ。どうやら、あの悪趣味な首輪は外れたらしいなあ」 (-28) 2021/12/19(Sun) 16:07:56 |
【秘】 錆鉄御納戸 ミズチ → 不死の詩人 フェリックス 部屋に足を踏み入れたミズチは、平時となんら変わりない様子だった。心身ともに無事と言って問題ないよう。 「ああ、一息付ける程度には落ち着いた。お前の方に今時間はあるかフェリックス? 報酬の話をしに参上したのだが」 そうした表情をしていることは見て取れても、ミズチはその真意は大抵わからない。ひとりで黄昏れたい気分だったりしたら、また日を改めてでも問題ないのだ。ミズチの方は。 (-29) 2021/12/19(Sun) 18:01:01 |
【秘】 不死の詩人 フェリックス → 錆鉄御納戸 ミズチ「勿論だとも。ま、本当は無理に貰わずとも……。と思っていたのだがなあ。こうして出向いてもらったからには、貰っておこうか」 なんてな、と笑いながら、部屋に招き入れた。 それから「酒の方も問題ないんだったか?」 と尋ねながら、杯をもう一つ取り出して葡萄酒を薦めた。 「明日にはここを出ようかと思っていてな。少し、思い出を懐かしんでいたところさ」 (-30) 2021/12/19(Sun) 19:47:31 |
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