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【人】 書生 茅[茅という青年は、善良さを絵に描いたような性質を持っていた。 同時に、愚直で一途、つまりは一歩間違えば阿呆が服を着て歩いているようなものだった。 残念なことに、彼の周囲の人間は彼ほどに善良ではなかったので、茅という青年は大小様々損をしていたのだが、その善良さ故に、それが誰かの悪意によるものだということに全く気付くことが出来なかった。 まぁつまり……阿呆だったのである。] お嬢さん、お嬢さん。 助けに来たよ。 [囁いて青年は、古びた小さなカギを揺らして見せた。 盗みと呼べるような行為をしたのはこれが初めてだったものだから、心臓はばくばく言っている。 けれど構いはしなかった。 青年にとってこのお嬢さんは命の恩人で、どうにかして救いたい相手だった。 お嬢さんだけじゃない。 あの村の人たちは皆、青年にとってはとても大切な人たちだった。 だって、行き場のなかった青年を拾って、労働を与え、屋根を与えてくれた。 決して頭の良くない青年を、捨てずにおいてくれたのだ。] (45) 2021/06/15(Tue) 23:04:23 |
【人】 書生 茅[ あぁやっと来たの、遅かったじゃないの。 責めるお嬢さんの声が、気丈に突っ張ってるみたいで、青年はつい、ごめんよ、と返す。 山奥の洞窟の中、質素な敷布の上にお嬢さんは座っている。 白無垢を纏ったお嬢さんは、とても綺麗だった。 つい見とれかけて、また急かされる。 早くして、山神さまが来たらどうするの。 数年に一度、嫁を要求する代わり、山麓の村を守ってくれるという山神さま。 今回はうちの村の番で、年頃の娘といえば、村長の娘であるお嬢さんしかいなかった。 もうしばらく前からそれは決まっていたことで、お嬢さんはひどく泣き暮らしていたのを、家に置いてもらっていた青年は知っていた。 青年は、考えた。 いささか足りない頭で必死に考えた。 考えた。 誰かが言っていた。 嫁と言っても要はただの生贄だろう、娘でなくても良いだろうに……と。 閃いた。] (46) 2021/06/15(Tue) 23:05:10 |
【人】 書生 茅 ごめんね、お嬢さん。 ちょっとだけ、触るよ。 [洞穴の中に穿たれた楔、そこからつながる鎖の先、武骨な足かせが、お嬢さんの白くてきれいな足を縛めていた。 薄暗い洞窟の中、灯りを忘れた青年は、たどたどしく指先で鎖を辿る。 その先に、足かせを見つけると、また指先で鍵穴を探す。 何で灯りを持ってこないのよ、どんくさいわね そう責めるお嬢さんにまた、ごめんよ、と返す。 村長さんが置き忘れたカギを目にした瞬間、それを誰にも見つからないようにって懐に隠して、ここまで持ってくるのに精いっぱいで。 他のものは、すっかり忘れてしまったんだ。 赦してほしい。 外はまだ明るさの残る時間。 お嬢さんの帰る路は、きっとまだ見えるから。 かちゃり、錠が解けた音がした。] (47) 2021/06/15(Tue) 23:05:32 |
【人】 書生 茅[足かせの外れたお嬢さんは、ふ、とひとつ笑った…きっとほっとしたのだろうと、青年は思う。 背を向けた青年の後ろで、お嬢さんは着替えて身なりを整えた。 声をかけられた青年が振り返ると、敷布の上に脱ぎ捨てられた白い打掛と、角隠しが目に入る。 手を伸ばした青年を、お嬢さんは黙って見守った。] ……どうかな? [花嫁衣装を身に纏い、冗談交じりに問うた青年に、お嬢さんは何も言わずに匕首を手渡した。 それは、『嫁入り』を前に、村長さんからお嬢さんに贈られたはずの、うつくしい小刀だった。 わかるわね、 お嬢さんは問うた。] (48) 2021/06/15(Tue) 23:05:53 |
【人】 書生 茅 わかるよ、 [青年は答える。 けれど青年は知らない。 山神さまへ嫁ぐ娘に、親が持たせる餞の風習。 その『意味』を、青年は知らない。 せめてその最期が、苦しいものでないように。 知らないから、 『なるほどこれで山神さまを斬ればよいのだな』 などと思っている。たかだが1尺にも満たない刃で、一体何が斬れるというのか。 残念ながら青年は、善良故に阿呆なのだった。] (49) 2021/06/15(Tue) 23:06:25 |
【人】 書生 茅[お嬢さんに促されるまま花嫁衣裳に身を隠した青年は敷布に座る。 その足首に、足かせが嵌め込まれた。 ちゃんとしておかないと、ばれちゃうものね、 お嬢さんに言われ、なるほどと頷く。 乙女と比べれば幾分太い足首に、鉄の足かせが食い込む痛みは飲み込んだ。 じゃあ、と洞窟を後にしようとするお嬢さんの向こうに、沈みゆく日の光が漏れる。 影法師が、消えた。] お嬢さん。 ……どうか、幸せに。 [ただ、生きて欲しいと願った。 その願いをそっと、口ずさむ。 お嬢さんには想い人がいることを、青年は知っていた。 誰でも良いならお嬢さんじゃなくたって、俺だって構わないだろうと、そのくらいの気持ちだった。 そしてあわよくば、 生贄など要求する神さまなんて殺してしまっても良いだろう? と。そんな、ごくごく単純な考えだったのだ。**] (50) 2021/06/15(Tue) 23:07:22 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a7) 2021/06/15(Tue) 23:09:09 |
【人】 書生 茅[その馬鹿>>88がここに居るとは、まさかまさか山神さまでも知らぬことだったろう。 安心して欲しい。 青年本人には馬鹿の自覚が微塵もない。 ……いや安心できる要素どこにもないな。 日暮れから暫く、風を叩く翼の音>>87に、ふと俯いていた顔を上げる。 乙女らしく淑やかに座ることなど思いつきもしない青年は、枷の嵌め込まれた左足首を抱えるようにして、半ばあぐらをかいていた。 せっかくの白無垢にも皺が寄って台無しもいいところである。 ただ、時間が経つにつれずきずきと痛む、枷のはまった足首が気掛かりだった。 撫でたところでまるで意味はないのだが。 上げた視線の先で、何かの気配が蠢く。 ギリギリまで正体を隠して相手を引きつける…などと知恵を回したわけでもないが、幸い薄暗がりの中、角隠しに隠れた顔は見えづらかったらしく。 また恐怖でこそないがその気配に息を呑めば声の一つも溢れることはなく。 近づいた気配が灯した灯りに、刹那、目が眩む。 けれど、その持ち主の輪郭が、僅かに脳裏に焼きついた。] (133) 2021/06/16(Wed) 18:13:31 |
【人】 書生 茅[人型、をしていた。 翼こそあれ、多少(?)己を上回る体格であれ。 人型ではあったから。 青年の残念な脳みそは、相手を『ヒトに準ずるモノ』と認識した。 認識するのと、身体がバネのように跳ね上がるのはほぼ同時だった。 ばさり、羽織っていたのみの白打掛が、行燈の灯りに翻る。 角隠しが転がり落ち、青年の顔が露わになる。 比較的整った顔立ちとはいえ、明らかに『男』の顔だ。] わぁぁぁ! [殺気など、込めたことも無い青年の喚きは、威嚇にすらならない。 ただ煩いだけ。 けれど灯りを受けた鳶色の瞳は、ただただ勢いだけで、決意ひとつに煌めく。 『山神さま』を、弑すべし。 からん、と匕首の鞘が転がる音がして、剥き身の刃を手に、無我夢中に斬りかかった。 馬鹿正直もここまでくれば阿呆としか言いようがないと言うくらい、真正面から。**] (134) 2021/06/16(Wed) 18:15:52 |
【人】 書生 茅[青年とて、『人』に刃を向けたことなど生まれてこの方一度もない。 命の取り合いをしたこともなければ、『隙』が生まれた所で気づくはずもなく。>>161 ただ、やたらめったらに振るったのみ。 それでも青年は本気だった。 本気で 『山神さまを弑する』 が己の使命と信じていたし、それは誰に強要されたものとも思っていなかった。この愚直な青年に、カギひとつとはいえ盗みなど成功し得る要素などひとつもないというのに。 本気で、その刃が届くと信じていた。 だって青年は知っていた。 『刃物は肉を断つことができる』と。 だから、 『刀があれば、敵を斬ることができるのだ』 と。その切っ先が、『山神さま』の肌を薄く裂き、そこから散るはずの血の色が、何色なのか、確認する暇すら無く、いつの間にやら逆に小刀を握りしめた手首を囚われていたのは。 青年からすれば、本当の本気で青天の霹靂で、何が起こったのかまるで分らずに目を白黒させた。] (193) 2021/06/16(Wed) 23:22:04 |
【人】 書生 茅 え…っ……え? [相手を斬る気だったのか、刺す気だったのか、それすら定かではないような手つきで匕首を鷲掴むように握りしめたまま、そのびくともしない手首を見やる。 そして、投げられた問い>>162に瞬きを一つして、『山神さま』を見やってまた、え?と間抜けな声を零した。 ここに来てもまだ青年は、『圧倒的な力量差』というものにまるで思い至らず、狐に化かされたような心持になっている。] え…… いや……村長さんは…俺には何も、頼まない… [混乱したままに、答えになるような、ならないような言の葉を口にする。 村長さんは、俺にあらゆることを教えてくれた。 どうすれば、よそ者の俺が村に居ることを赦されるのか。 つまりはどうすれば、村の人たちの為になれるのか、教えてくれた。 俺にはむつかしくてよくわからないことは、文字通り身体に叩き込んでくれた。 村長さんは、俺には何も頼まない。 けれど。] (194) 2021/06/16(Wed) 23:22:39 |
【人】 書生 茅 俺は…… あんたを、 斬 [びくともしない手首を引き抜こうと、身を捩る。 足元でじゃらりと鎖の音がして、また少し、足首に枷が食い込んだものだから、少しだけ奥歯を噛んだ。 それでも…それでも……! 泣き暮らしていたお嬢さんを、思い出す。 数年前、記憶もないままに路傍に転がっていた俺を、可哀想だからと拾ってくれたお嬢さん。 お嬢さんが『山神さま』へお嫁にやられて、お嬢さんに救われた俺がのうのうとしているわけには、どうしたって行かなかった。 俺はまた、匕首を握りしめた掌に、さらに力を込める。*] (197) 2021/06/16(Wed) 23:23:33 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a16) 2021/06/16(Wed) 23:26:51 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a17) 2021/06/16(Wed) 23:27:20 |
【人】 書生 茅[無謀の一言で片付けられるものなのか、この暴挙。>>206 青年はといえば、片手で捻って済むほどに力無き者であったことが却って(ひとまずは)青年の命を長らえせさせていることに気付かぬまま、うぅ、と唸ってみせる…本人は威嚇のつもりだ。 なお、後をつけるなんて考えもつかぬ青年が何故洞穴の場所を知っていたか。 ]そんなものは、花嫁行列とは名ばかりの付き添いに、大してありもしない荷物持ちに『志願』すればお嬢さんが喜ぶと、村長の妻である人に教えてもらったからに他ならない。 それが、こんなところで役に立つなんて! で……きる! [ とうに殺している。 山神さまの言葉に、きっと嘘はない。 事実、山神さまに嫁いで行ったお嫁様は幾人か知れないのに、たった一人も帰っていないのだから。 山神さまが、 殺 してしまったに違いないのだから。本能が青年の胎の底を震わせるが、それを飲み込んで、それでも青年は吠えた。] (250) 2021/06/17(Thu) 19:23:56 |
【人】 書生 茅 しっ…ぱい… [阿呆のように、繰り返す。 失敗。考えてもみなかった。 かといって、成功した後のことを考えていたわけでもない。 実際、この足首を縛める枷の鍵は、お嬢さんが持っていってしまった。 仮に山神さまを弑すること叶ったとして、それを知らぬ村の人が、青年を迎えに来ることは決してない。 ただ…帰れぬことは、誰かが示唆していた気がする。 誰だ。誰だっけ。 その時に疑問の一つも抱かなかった青年は、思い出すことすら叶わない。 ただ…失敗は、だめだ。 ダメなのだ。 青年は、はっとする。] (252) 2021/06/17(Thu) 19:24:41 |
【人】 書生 茅 だめ…だ、 ダメ、 お嬢さんには、想い人がいるんだから、 [だから、仮に失敗したとしても、山神さまをここに足止めしなくては。 お嬢さんが、隣の村へ駆け落ちするまでは。 勿論青年は、そのお嬢さんの想い人は本当は同じ村の中にいて、今現在祝言を上げようとしていることなど知りもしない。 そして、『余所者』である青年は、かつて村に告げられた制約>>62も、『山神さま』の本当の恐ろしさも、何も知らないのだった……だって誰も、教えなかったのだから! だから、青年の考える『山神さま』の報復は、本来嫁入りするはずだったお嬢さんを拐いに行くくらいのものだったし、そこに青年自身の命運だってまるで考慮はされていない。 そう、阿呆なのである。 **] (253) 2021/06/17(Thu) 19:25:10 |
【人】 書生 茅[『山神さま』の笑み>>258に、ぞわりと背筋が総毛立つ。 なんだか、そう、なんだかよくわからないのだが…… ヤバイ。 と、いうことだけは、分かった。 『山神さま』はその気になれば、どんなに残酷な事でもできるのだと。 それは例えば村ひとつを滅ぼすとかいうような。 そういう類のことを、本能が漸く悟った。 けれど、『山神さま』が重ねて問う。 村は助けたいか、 お嬢さんを助けたいか。 単純な思考回路はごくごく簡単な答えをはじき出す。 そんなのはもちろん、助けたいに、決まっている。 青年はその善良さ故、相手の言葉を疑うということを知らなかった。 だから、『なるほど山神さまのいうことを聞けば、助けてもらえるらしい』とそのまま理解した。] (271) 2021/06/17(Thu) 23:12:45 |
【人】 書生 茅[助けたい、と。 こくりひとつ頷いた青年に、『山神さま』は、薄い笑みを見せる。>>258 嫁の身代わり、という単語にも、一拍の間をおいて、こくりと頷く。 嗚呼、そうか……―――― 嫁の代わりに、喰われれば良いのだな、 と、思い至る。 青年は、“そう”言ったことにはとんと疎くて、 疎すぎて、 『山神さま』の言葉の意味が、半分もわからなかった。 否むしろ、ほとんどわからなかった。 ただ、『嫁のかわりに』という以上、嫁の代わりなのだろうと。 つまりは生贄として命を捧げよと、そういうことなのだろうと。 阿呆の自覚のない青年は、わからないくせに分かったつもりになる。 つまり、 『死ね』 (272) 2021/06/17(Thu) 23:13:08 |
【人】 書生 茅………ァ、 [何の意味もなさない声が一つ、かすれて零れ落ちる。 分かっていたはずのことだった。 そう、分かっていたはずだった。 だって俺は、あの村にはきっと帰れないことを、漠然と知っていた。 それはつまり、ここで死ぬという事だった。 どうしてそうなるのか、過程についてはまるで分らなかったが、結果だけは知っていたはずだった。 どうして目を背けていられたのだろう。 視界が滲み、白く染まる。 けれど、でも、比べるまでもなかった。 片や村の人たちの命。 片や俺一人の命。 そんなの、天秤秤に載せるまでもない。 だから、答えなど、初めから…… ぐぅ、と喉元を、熱い塊がせり上がる。 けれど、吐き出すモノなんて、何もなくて。] (273) 2021/06/17(Thu) 23:13:59 |
【人】 書生 茅 わか……った。 [暫くの間の後、青年は俯き、細く吐息のような答えを口にする。 掴まれた手首も、枷の食い込む足首も、ずきずきと痛む。 痛みすらどこか、愛おしく感じられた。 脳裏に描くは夕日に向かって洞穴を後にした背中。 どうかどうか、幸せに生きて欲しい。 それは、 憧憬 に似た想いだ。その為なら…俺。 何も、怖くないよ。 って。 強がりを胸に、顔を上げる。] (274) 2021/06/17(Thu) 23:14:25 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a23) 2021/06/17(Thu) 23:17:27 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a25) 2021/06/18(Fri) 8:28:06 |
【独】 書生 茅/* ところでさみぃさん???枷取るの忘れたでしょそうだね???僕は枷ついたままでも良いんだけどね??? よーし、枷ついたままにしよーっと(わくてか (-82) 2021/06/18(Fri) 18:00:04 |
【独】 書生 茅/* ところでだいちさんにしては頑張ってると思いません? 何をって、相方に即堕ちしないことですね(そこ さみぃさん相手だと開幕2ターン以内で堕ちたりするからさ…(めそらし でもね、だいち知ってるんだけどね。 茅くんって、堕ちるってターンを踏まずにいきそうなんだよね(どこに (-83) 2021/06/18(Fri) 18:01:40 |
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