【人】 書生 茅[漸く開いた視界に、天狗さまの姿を見止める。>>13 夜陰に目が慣れただけではない、はっきりと見える姿に青年自身が違和を覚えることは無いが、その言葉の意味もよくわからぬままに、ふにゃと溶けたような笑みを返す。 天狗さまの醸し出す空気が、青年には何故だか心地よくて、とろとろと、そのまままどろみそうになる。] 大丈…夫、 [触れようと差し伸ばされた掌に自ら頬を寄せるようにしたのは、撫でられたら気持ちよさそうだと思ったからで、側に置いてもらえたらいいなぁって思ったのは、打算も何もない、勿論村のことなんて微塵も頭にない、ごくごく素直で純粋な願いで、 そう、本当に、忘れていたのだ、この瞬間まで] (26) 2021/06/22(Tue) 23:18:42 |
【人】 書生 茅――――本当に馬鹿な子だよ、 [さわり、頭蓋の内側をなでるような声に、瞬く。 それは聞き覚えがあるような、無いような、そんな声。 否、声自体には聞き覚えがある。 けれど、その声音には聞き覚えがない、というような。] (27) 2021/06/22(Tue) 23:19:05 |
【人】 書生 茅本当、馬鹿な子、 [ざわり、と、背筋を寒風が吹き抜けるような錯覚を覚える。 聞き慣れた声、聞きなれない声音。 それはいっそ、聞き知らぬ声の方が、よっぽどましだったかもしれない。 だって、あの人が…お嬢さんが。 こんな、冷たい声で笑うなんて、そんなこと、あるはず……] ――――あっはははは!!! あはははははは ァハハハハ ハハ アハ、ハハハ…… [誰かの、誰の、嗤い声が、木霊する。 木霊する。 ] (28) 2021/06/22(Tue) 23:19:23 |
【人】 書生 茅 あ……嫌……… [脳みその内側で、ガンガンと響く嗤い声が煩くて、突き刺さって、 青年は涙目になりながら両の耳を抑える。 なんだ。なんだこれ。 分からない。 天狗さまを見やる。 頬を撫でようとしてくれたはずの天狗さま、 目があったか合わなかったか、割れるように痛む頭にその姿は判然としなくて、 けれど多分、原因は天狗さまでないことだけは、漠然と知れて。 本当なら、天狗さまの妖術を真っ先に疑うべきなのかもしれないけれど、とてもそんな気にはならなかった。 どんなに強く強く両耳を抑えても、響く声は止まらない。] (29) 2021/06/22(Tue) 23:19:44 |
【人】 書生 茅しかしお前、大丈夫なんだろうね、あれは、 化けて出たりしないだろうね、 しっこないわ、好きで身代わりになったんだから 第一あんた、アレが理解しているとでも本気で思ってるのかね、 分かるわけないさ、だってあれは、 根っからの、阿呆なのだから!!!! [ ゲラゲラ、げらげら。 なんだろうこれは、何なのだろう。 多分これは、聞こえちゃダメな奴だ。ダメ、ダメなのに、 聞かない術が、わからない。 ] (30) 2021/06/22(Tue) 23:19:59 |
【人】 書生 茅 や……なに…なん……、なん…だ、これ…… [ぼろぼろと、溢れだす涙が止まらない。 痛い、 痛い。 痛い。 頭が、耳が、抑えた掌が、いいや何よりも、 胸が痛い。 がやがやと、雑然と、嗤いながら交わされる会話の全てが聞き取れずとも、 その内容の総てが理解できずとも。 分かった。 分かってしまった。 つまり、嗚呼。そう。 俺は、きっと。 利用されていたのだ……と。 青年は初めて、 ヒトの悪意 を知ってしまう。] (31) 2021/06/22(Tue) 23:20:21 |
【人】 書生 茅[愛していた、あの村を 愛していた、あの村の人たちを 愛していた、村長さんもその家族も 愛していた、お嬢さんのことだって だから、耐えたのだ 例え満足な衣食住がなくても 例え不出来さに鞭を与えられても 例え覚えのない罪を責められても 例え 例え…… 彼女の為に命を差し出すことになっても。 見返りを求めてはいけないと、村長さんは言った けれど、見返りではないけれど、 ただ、ひとかけらの情を返してもらえたなら、それだけで…… それだけで。よかったのに―――――!] (32) 2021/06/22(Tue) 23:20:36 |
【人】 書生 茅[青年を、嘲笑う声がする。 無駄だと知りながら、青年は両の耳を強く強く抑える。 痛いのが身体なのか、心なのか、なんだかもう分からなかった。 多分はじめっから分からなかった。 痛いのが愛しいだなんて、誰が言った。 痛いのは、嫌だ。 いやだ。] 俺はただ…… 居場所が欲しかった、だけなのに…… [嗚咽の隙間に小さく小さく呟いた。**] (33) 2021/06/22(Tue) 23:21:27 |
書生 茅は、メモを貼った。 (a2) 2021/06/22(Tue) 23:21:53 |
【秘】 天狗 → 書生 茅[常ならば、天狗の妖力は毒として人を染め上げ変えていくだけのものだ 結果として異形となることはあれど、元が人である以上「妖力は使えない」 だが、本当に極稀に、人に妖力が「移る」ことがある、それは その「ヒト」が、心から天狗を、そのすべてを受け入れた時] (-31) 2021/06/23(Wed) 1:19:17 |
【人】 書生 茅[ヒトの身に、天狗さまの妖力は過ぎたものだった。 だから青年の身体はそれに見合わんと、変わらんとするのだが…まだ、まだ。足りない。 巡る妖力が暴れ、扱いを知らぬ青年は振り回され……遠くの声を、音にならぬ声までを拾ってしまう。 いっそ、憎めたらよかった。 憎むには、愛しすぎた。 呪えたら、よかった。 呪うには、情が湧きすぎた。 生まれついての化生であれば、こんなにも青年を苛むことはなかったろう。 ヒトで、なければ。 ヒトで、なくなれば。 ざわりと、青年の背中で黒い靄が渦巻く。 欲しいなら、奪えば良い けれど青年の欲しかったものは… 欲しかった、ものは……] (70) 2021/06/23(Wed) 20:15:37 |
【人】 書生 茅[気づけば重ねられた唇に、瞬き一つ。 奪うような口づけではない。 少しだけ吸われ、腕の中に囚われる。 いつの間にか、頭蓋の内側で響いていた声が、幕の向こうのように遠のいていた。 自然、解放した耳から、『青年の為の言の葉』が滑り込む。] 『お前の居場所』 『お前はワシの嫁じゃ』 『ここに居れ』 『何処にもいくな』 (72) 2021/06/23(Wed) 20:17:20 |
【人】 書生 茅[腕の中で青年が伸び上がり、天狗さまの頬を両手で包んで口を吸う。 その言の葉一つ一つも喰らわんとする様に。 伽藍堂の心臓を、温かいもので埋めたくて。 飢え切った雛鳥は、いくらでも餌を求めて嘴を開く。 ちゅちゅ、と唇を重ねる内、『要らない』声が遠のいて、消えた。 代わりに青年の背中に、黒い翼が揺れる。 天狗さまのそれと比べればずっと小ぶりで、飾りみたいなものだけど。 瞳の色は落ち着いた朱に変わる。] (73) 2021/06/23(Wed) 20:18:37 |
【人】 書生 茅 嫁、なら… 一緒に暮らして良いの? [何度も唇を啄んで、ようやく満足した頃青年は小さく問うた。 あんたのとこに、居ていいの? 捨てられることはないと確信したからこそ、口にできた問いだった。 これから先、天狗さまが与えてくれるものが無ければ、どうにも青年は生きていけそうになかった。**] (74) 2021/06/23(Wed) 20:18:53 |
【人】 書生 茅[強請るままに与えられる幸福を、あんたは知っていただろうか?>>77 飢え続けてきた者にとってそれは、とてもとても信じられないような恵みだった。 合わせた唇を何度でも、吸うことを赦し、吸ってくれる、だからそんな、甘えたことも口にできたのかもしれない] ふふ…… 共に、うん、そう、共に暮らすもの、 [一緒に居たいって、言われた言葉にまた悦びながら、寄り添っていると、背中の『存在しないはずの場所』に触れる感触に、驚いてびくりと身を跳ねさせた。] え? …え?? [指摘されて初めて存在を知った小さな翼を、はたはたと羽ばたかせる。 動くなら、これも身体の一部ということだろうか? どう見ても、ヒトの身体の一部ではないけれど ] (83) 2021/06/23(Wed) 23:55:22 |
【人】 書生 茅 あぁ…うん…… [問われ>>78、しょん、と翼が垂れる。 暫しの間をおいて、ぽつぽつと語るは『聞こえるはずのない声』の話。 聞いただけではきっと、幻聴か何かだと思うのが普通だ、 けれどそれが幻聴でないことは、天狗さまだから分かってくれること。 青年自身も理屈抜きにそれが真実であると確信していた。] 腐れ…… [行き所を無くした想いを持て余していると、天狗さまが代わりに言葉にしてくれる。>>79 そうか。 腐ってる のか。青年は、ヒトだった。 今はもうヒトなのか分からないけれど。 それでも“ヒト”への情が一朝一夕に無くなるものでもない。 けれど、そうか。 腐っていたのか、彼らは。 ならば他を腐らせる前に、 『切り取らねばならぬ』 。] (84) 2021/06/23(Wed) 23:55:55 |
【人】 書生 茅 え? いや…別に…… [助けたいか、問われて初めて明確に気づく。 青年にとって、あの村は最早『どうでも良い』こと。 だってもう、青年は居場所を手に入れた。 いつまでも、しがみつく必要もない。 天狗さまが、笑っている。 人の悪い笑み、けれどそれも、嫌いじゃない。 だから、青年も笑みを返す。 く、と小首をかしげて見せ。] 何? 良いコト? [それとも 『悪いコト』 ?どちらでも良かった。 天狗さまが、青年にとって悪いことを、考えるはずもないので。**] (85) 2021/06/23(Wed) 23:56:17 |
【人】 書生 茅[純粋で無垢だった心についた染みは、和紙に落とした墨汁のごとく、黒々として、広がってゆく。 『あの村は潰してかまわんか』>>86 問われた言葉に、それは無邪気に笑ってみせた。] いいよ! [今まで気づかなかった、否、目を背けてきたあらゆる『悪意』に気がつけば、それはもう、青年にとっては文字通り騒音に他ならない。 それに…… 語る天狗さまの言葉>>87を聞く内、背中の小さな翼がぱたぱたとはためく。 それは恐らく、『ごきげん』のしるし。 ヒトでなくなることに、躊躇は無かった。 だって、嫁にしてくれる。 ずっと、側を許してくれる。 他ならぬ、あんたが。 そして、最後の最後、思い出したように問われた内容に、声をあげて笑った。] (103) 2021/06/24(Thu) 20:06:57 |
【人】 書生 茅 茅、と申します。 不束者ですが…… 末永くよろしくお願いいたします。 [なんて、わざと三つ指ついてみたりなど。 天狗さまの婚姻は、きっとヒトのそれとは違うだろう。 けれど、“ヒトだった”青年が、本当にヒトを捨てる前に、最後に行う“ヒトの真似事”だった。 そして、“ひとでなくなった”青年が、本当にヒトを捨てて最初に行うのはきっと……] ねぇ、天狗さま。 眷属にしてもらったら、俺でもできるかな? [あの村を、潰してしまうことが、って。**] (104) 2021/06/24(Thu) 20:07:16 |
【墓】 書生 茅[あ、と開けた口で、指先を咥える。 ちゅうと吸い上げては、傷口を舌先で刺激する。 痛いかな?とか考える余裕もなく。 もう少し、もうちょっと、 甘露 が欲しくて強請るように、吸う。]ちゅ……ちゅぷ、 [ざわざわと、翼の先が震える。 こめかみが、熱っぽく脈打つような気がする。 はふ、と吐息を零した。 漸く満足したころ、咥えていた指を返すが、その表情はどこかとろんとしていた。 ふるふるっと全身を震わせると、一度開いた翼がするすると背中に収まって、肌表面の刺青のような描画に収まる。 それからまたひとつ身震いすると、するすると黒い糸がどこからともなく肌の上を滑り、墨色の着物となって青年の身を包んだ。] あは……どう? [おそろい、なんて、馴染んだばかりの妖力で編んだ着物を自慢げに見せ**] (+3) 2021/06/25(Fri) 0:15:56 |
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