人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【影】 傷入りのネイル ダニエラ

リヴィオ! いざや恩讐の碧落に絶えよ!
2023/09/26(Tue) 21:00:00

【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラ

悪人が嫌いだ。
人を踏みつけにして笑う悪人が嫌いだ。
嘲りも嫌いだ。
人を踏みにじり傷つけるそれが嫌いだ。
嫌い。嫌いだ。

がつん。


遂に響くのは硬い音。
握りしめた拳が貴方のこめかみを打つ音。
そこを殴られれば脳が揺れるはずだ。視界が揺れるはずだ。
襟首を締めあげた手を乱暴に離せば、背中や尻を打ち付けて椅子の上に落下するはずだ。

わかるわけがないだろう・・・・・・・・・・・
意味がわからない・・・・・・・・
「お前」
「何のために警察になった?」

それでも倒れることなど許さない。
貴方が項垂れる、或いは椅子からずり落ちて逃れよう・・・・とするなら、乱暴に右腕を掴んで引き上げる。
突然強く引かれた肩が嫌な音を立てたかもしれない。
しかし男には関係ない。
(-12) 2023/09/27(Wed) 14:52:08

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 法の下に イレネオ

強い衝撃に、頭が揺れて。
ちかちかと、視界が瞬いた。

「……づ、ぅ」

また喉から呻き声が漏れ。
それでも女は逃げようとはしなかった。
口元の笑みも、絶やさない。
たとえその肩が外れ吊られ激しく痛んでも、笑顔だけはその表情から消えなかったり

「…同じこと」
「ニーノ・サヴィアにも、聞かれましたあ」

どこまでしっかり発音できていたか、最初はよくわからなかった。
それでも、そんなものも悟らせないよう、可能な限り、努めて。

「ニーノ・サヴィア。分かりますよねえ。」
「逮捕されました。…あたしに
嵌められて
。」

――真実。


「…それでイレネオさんがこおした
5人
に」
「ニーノ・サヴィアは、…含まれますかあ?」

笑うしか取り柄のない女は笑う。
己の罪を告白する。彼は本当に、善良な警察だったのだ、と嘯いた。
(-16) 2023/09/27(Wed) 16:00:24

【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラ

ニーノ・サヴィア。
その名前は知っている。
五人のうちの一人だ。


しかし。
その言葉に、男の瞳は揺れなかった。
貴方は悪人である。
彼も悪人であった。
あれ・・ノッテマフィア家族・・と呼んだ。


「庇い合いか?」
「もう遅い。」
「今頃治療を受けているだろうな。」

実際それは必要で、男が進言したものだった。
罪人であろうと不当な扱いをするのはよくない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
病人に治療は受けさせるべきだ・・・・・・・・・・・・・・

さて、それを貴方がどう受け取るかはそちらの自由。脅しや冗句と聞いたかもしれないし、男の暴力によるものだと思ったかもしれない。

笑う貴方が不愉快だ。
余裕だと誇示して見せる貴方が不愉快だ
────誰かの顔が浮かんだ。


「含まれているよ。それがどうした。」
(-20) 2023/09/27(Wed) 16:56:16

【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 幕の中で イレネオ

――治療。と。
聞いて女がまず感じたのは、今まさに感じる自分の肩の痛みだった。

「……。」

ざわと粟立つような思考を鎮める。
笑って。隠して。悟られず。ずっとそうしてきたように。
あは、と声。
笑っている間は堪えられる。だから女は、まだ囀る。
女にはそれしかないだけで、決して余裕を誇示するつもりはなかったが。きっと、それは、皮肉と呼べる。


「ふふ。いいえぇ。」
「気になっただけですけどお。」

「それにしても」
「決めつけるんですねえ、庇い合い…。」
「取締法、そんなに信用できますかあ?おもしろおい。」
「あたしが自首するまで、あたしのことも捕まえられなかったくせにい」

「こんなことなら、自首なんかしないでもっと引っ掻き回せばよかったあ。」

くす。
きっと女の目論見は、大半にして成功していた。
聞かれたくないことには答えず、この法案がどれだけ
悪用
しやすいかを説く。
あとはこの笑顔を絶やさず堪えるだけ。頭のおかしな愉快犯が、単独でこれを行ったのだ。



女は笑う。笑う。笑い続ける。
何があろうと、仮令――その大事なマリーゴールドが、摘み取られようと。
(-36) 2023/09/27(Wed) 21:00:23

【秘】 幕の中で イレネオ → 傷入りのネイル ダニエラ

男は信じている。
自分の信じる、正義を信じている。
それは酷く盲目的な様だ。酷く独善的な様だった。
この世で正しいものはひとつだけ。それは法である、という排他的な思想。警察とはそれに従うものであるという圧倒的な従順さ。
それがこの男を構成するほとんど全てだ。
全く全て、ではなく。


瞳に浮かぶのは暴力への高揚ではない。単に苛立ち。誇りを傷つけられたことへの厭悪。

「お前のような人間を」
「一時でも警察仲間だと思った俺が、馬鹿だったよ。」

そこからは。
肉を撲つ音。
骨の軋む音。
貴方に器具を握らせる声。
共同作業・・・・だ。自らの爪を剥がさせたり。
それでも貴方は笑っていただろうか。
血と汗と涙に塗れても笑っていただろうか。

少なくとも、きっと。
男はきっと、笑っていたんだろう。
(-78) 2023/09/28(Thu) 10:13:19

【独】 摘まれた花 ダニエラ

果てなどないと思えるほど長い長い尋問の時間が、終わり。
ようやく牢獄に戻された女は、著しく消耗していた。

殴打の痕目立つ腫れた頬。
きっと衣服の下、見えない部分にもいくらもの痕がある。
外れた肩も治療こそされたもののまだ鈍く痛んだ。
ただ横たわることすら苦痛の中、女の頭の中はひとつのことでいっぱいだ。
それでも、考えないようにしているつもりだったのに。
大切な、ふたりの約束の証。


「……ぅ…」

熱くなった目頭から零れるものを堪えようとしたがそう上手くはいかなかった。
ひとつふたつと目尻から流れ落ちて髪を濡らす。
だけど我が身可愛さにただ黙っていることだけはできなかった。
こんな腐った法案なんかさっさと壊れてしまえ。
…あの様子では、その一助にすらなれたかすら怪しいものだ。
しかしその尋問のさなかだったこともあり、法案の出資者とされる人物の正体を今の女が知らないことは、不幸中の幸いといえた。


もうひとつ幸いがあるとするなら、
1番守りたい情報たちだけは守り抜くことができたことだ。
あとは多少騒々しさのある署内の様子に、
『祭り』の成功を感じとることができたなら、それも。
それにしたってやっぱり気分は最悪で、
その中でも見つけられる小さな安心に縋っているだけだ。こんなのは。
(-100) 2023/09/28(Thu) 18:20:54

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-102

頬つけた床を通して、足音が聞こえる。
その足音が牢の前で止まった時、女はその視線だけをそちらへ向けた。

乱視の眼鏡は歪んでしまっては掛けるだけ無駄で。
ぼやけた視界で茶色の髪を一瞥すれば、
その視界でその瞳の色まで判別なんてできるはずもなく
またぼんやりと視線を虚空に移していく。
…もしかして、またあそこに戻されるのだろうか。
ほんの一瞬そう過ったのは否めない。それだけ好き勝手いったしな、という納得だってそこにはあった。

だから、少しの間無音が続いたのには些か不審を抱いた。
もう一度、視線を向ける。こちらの方から声をかけてやろうかとすら思った頃だ。

視線だけでなく、顔ごとそちらへ向く。
言葉の中身自体は、本当に何一つ頭の中に入ってこなかった。
ただ聞き間違えるはずはないって。それだけ。


「……っ」

がばと起こそうとした身体は軋んであまりいうことを聞かなかった。
それでもその努力くらいはしようとして。

「…………ミネぇ…」

その言葉で決壊した。涙が流れたあとにじんと沁みる。

――迎えに来てくれた。本当に。
だけど、それがどういう意味を含んでいるか過ぎらない女でもなかった。
ただ、今この瞬間はそれより安堵の方がずっとずっと上回っただけで。
(-104) 2023/09/28(Thu) 20:02:17

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-109

ひらり、ぱさりと冷たい床に白い紙。
身体は痛いし指先に力は入らないしで散々だ。散々だけれど、今は全く最悪なんかじゃなかった。

「…うー。だいじょ、…」 
大丈夫じゃないけど。

「だいじょおぶう……」  
今は、大丈夫。


落ちる涙の隙間からそれだけをいう。
空気が触れるだけで痛み続ける指先だったけれど、単純にもその唇が触れたあとには少し痛みが引いたような錯覚さえした。

「…ん
。」

頷いた眼前。茶色の髪の下に咲くようなライムグリーンが映る。
約束のあかしがなくなっても、今はそれだけでよかった。
こうして本当に、傍にいてくれているんだから。

自分の手で拭えない涙をあなたが拭う。
そんな中、冷静になるのは状況の割に早かったように思う。
少しずつ、自分が本当に
警察のお姉さん
でなくなったのだという自覚も湧き始めていた。


「…ええ、と、」

追いついてくる。現実に。
まだまだ、それくらいじゃ追いつけていないことなど今の女が知る由もない。


「…護送、ですかあ。」
「わかりましたあ、よろしくお願いしますう」

そう笑う。本当の笑顔に、作り物の笑顔をかぶせて。
(-128) 2023/09/28(Thu) 22:44:26

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-131 >>-132

痛む身体を引き摺り、足取り重く。
それでも可能な限りしっかりと歩いた。
少し小柄な茶髪の後ろ姿にライムグリーンを重ねる。
それで、一瞬揺らいだ心を落ち着ける。

エリーの心などがもっと?


警察に潜入して2年。
あなたに会うのは殆どがあのモーテルだった。
だからではないが、多分女は知らなかったのだと思う。
乗り込んだ車。あなたの運転技術。
文字通りの痛い思いをした。…いやまあ、ちょっと響いたくらい。
「おー…。」なんて間の抜けた声も上がったと思う。別に怖くないわけではなかったはずだが。

「…ありがとお。」

運転手が変わり、一頻りの手当が終わるとだいぶ楽になった。
そうしてやっとへにゃと笑って、「ただいまあ。」って。

ともすればあなたの言葉を聞き終わるまでもなくやおらにその身体へとしなだれかかったかもしれない。
…決して聞いていないわけではないのだ。
ただそうしながら聞かないとまた不安な心地がしてしまっただけで。
(-140) 2023/09/29(Fri) 0:17:42

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

>>-131 >>-132 >>-140

何度か相槌をうち、一区切りのついた頃。
少し揺れる目が甘えるようにあなたを映した。
身体をゆっくり反転させると、首筋へときゅうと抱き着いた。
手探りの右手で、茶色のウィッグを一度むしり取る。

「……。」

少し身体が震えていた。回す腕からそれは簡単に伝わっただろう。
あの夜から先、ずっと我慢をしていたのだ。
そうやって我慢するのは得意だけれど、そこにあなたがいるのに我慢する理由が今どこにもない。

「あの…ねえ。」

そう口を開くのにも少しばかり時間をかけた。

やっぱり、もお、置いてったら、やだあ……


子どもが大人の顔して背伸びして呑み込んだ、…そのはずのものを吐き出して。
身体と一緒で震えた声がそう紡ぐ。
そうやって今はすり減った分を取り戻さねばならなかった。
その先にある不安に、きっと備えようとしていたのだ。
(-141) 2023/09/29(Fri) 0:18:30

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

>>-140 >>-141

「うん、」「おかえり」

何度言ったって別にいいはずだ。この先何度だって言う訳だし。
そうしてしなだれかかる貴女を、当然のように受け止めて。
その背に手を回して、二度、三度軽く叩く。あやす様に。
ウィッグ、結構高いんだけどなあ、なんて考えは
いつもなら口からからかうように出てたけど、今日はナシだ。

「……。」

温めるように、背中を擦る。昇った指を髪に沈めた。
尋問の形跡か、少しべとついたのを構わず、指で梳く。

「ん」

ほんのり上がる口角に、ばさりと揺れ落ちるライムグリーン。
解放された微かな汗のにおいが一瞬漂った。
髪から耳を、耳から頬を。腫れてない頬に指が流れる。

「……二度としない。だから、エリーも俺の傍から離れないでくれ」


囁く。真っ直ぐにミントグリーンを見つめ返す。
殆ど距離のない位置で、呼気を絡ませている。
――王子様の瞳にも、今は波が立つのが見えるはずだ。
その多くは喜びで、幸せで。だが他が0とは、言えなかった。
それでもせめて、この子の前では、他の全ては塗り潰そう。
この先にある大きなものに対して、少しでも……
約束通りに俺が支えて、約束通りに心を守る為に。
(-143) 2023/09/29(Fri) 0:44:54

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

>>-143

背から髪、耳、頬へ。
流れる指先に、くすぐったそうに身じろいで。
邪魔だなんて言い方は、ひと仕事した茶色髪に本当に悪いのだけれど、やっぱりこの鮮やかな色が女は好きで、好きで。

―――うん。


殆ど音だけで頷いて、微かな距離すら埋めていく。
欲しがり屋さんのお姫様が、その瞳を見て堪えれるはずもなかったのだ。
啄むように、1度2度。…後はもう、満足いくまで深くまで。
寂しかった分。怖かった分。そして、今の不安を塗り潰す分。

既に知っていること。察したこと。
潜入任務は完全に終わりになったこと。
脱獄は自分が手を貸せずとも成功したこと。
その上でなにか良くないことが起きたのだということ。
そしてそれが、あなた若しくはアレッサンドロ・ルカーニアに関わる何かであるということ。

それかもう、それすら関係ないくらいの世界の終焉か。
これすら絶妙に間違いでないのはきっと最終的に幸いすることになる。



いづれその覚悟ができた頃。
ゆっくりと顔を離して女は訊ねることとなる。

「…ミネ。」
「何があったか。聞かせて」

含んだ緊張の分、声が強ばった。
(-170) 2023/09/29(Fri) 7:02:07

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「―――」

1度2度。それから深く。深く……。
本音を言えば。永遠にこうしていたい。
薄汚れた痕を塗り潰して、
ずっと、ずっと、全部混ざり合いたい。
だけど……少なくとも、今はまだ、だめだ。これは、手当て。
この後に立ち向かう為の準備だから。
それでも求められる限り応え、何度だって撫でる。
だって、それだけ頑張ったんだ。少しは報われるべきだろ?
俺も一緒にさ。


やがて。 強ばった声を聞けば、もう一度だけ唇で触れる。
顔を離せば、その目に僅かに迷いを乗せ、静かに目を瞑って。
開いた時には、迷いは消えていた。
(-198) 2023/09/29(Fri) 17:43:54

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「俺は現場は見てないからチームからの報告書だ。あー、
 まず、ノッテファミリーのアジトでスーツケースが
 爆発したらしい。中身は花火で、けが人はナシ。その直後、 
 ……現れたアレっさんが、突然襲撃をかけた。単独で、だ。
 現場にいた5名に重軽傷を負わせた、命に別状はなし。
 そして直後アジト内に仕掛けた5つの爆弾を起爆。
 爆破によるけが人はないが、建物と設備が
 それなりに被害を受けた。当人はそのまま逃走、
 下水道に逃げ込んで以後行方を晦ませている……」

傍らに置かれていた二人分の着替え、
その片方のポケットから報告書を取り出して差し出す。

「……上からの指示としては『報復』だそうだ。
 その、……今回の法案の件にも関わりがあるから、ってな」

これは、あなたを案ずるように言葉を少し暈した。

「エリー。俺は、アレっさんを探すつもりでいる。
 報復なんかどうでもいいが、個人的な用があるからな。
 ……あのおっさん、絶対前から準備してやがったし、
 しかもこれ単なる裏切りじゃねーもん絶対」

そう呟いて、一度言葉を切る。
(-202) 2023/09/29(Fri) 18:00:08

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「……ここから先は、聞かなくてもいい。
 個人的な用を済ませる為にエリーにも来てもらいたいが。
 それに際して、多分、エリーにとって
 結構辛い事が起きる……と、思う。わからんけど。
 俺が勝手に思ってる辛い事が、
 俺が勝手に予想してる内容で、起きるかもしれんってだけ。
 ……でも、多分、そうなるし、俺は……エリーを
 泣かせるかもしれんが、内容も言うべきだと思ってる」

あなたにとって酷な事を伝える、とそう言っているらしい。
それでも、真っ直ぐに目は見つめたまま。
どんなに優しい嘘でも、あなたに嘘はつきたくない。

「聞きたくないなら、それを尊重する。
 ここから逃げて、全部忘れたいって言うなら、
 それでもいい。このまま車ぶっ飛ばして
 どっか別の国で生きるのもアリだ。
 俺はそれについていくし、最後まで一緒にいる。
 個人的な用だけ済ましたくはあるけど、
 エリーが行くなって言うなら、諦めよう」

「けど、俺の話を聞いて、俺のする事を聞いて、
 俺と一緒に行くって言うなら、改めて誓うよ。
 俺は、お前を全部から守ってやる。
 お前の心が痛い時、傍でずっと抱きしめてやる。
 お前の足が折れそうな時、必ず支えて一緒に立つ。
 ……どうする、エリー。」
(-207) 2023/09/29(Fri) 18:17:49

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌い続ける カンターミネ

最後に触れた唇と。呼ばれたその名前と。
多分それで本当に、心の準備は整ったのだと思う。
そうやって、ふしぎなくらい凪いでいた。

聞こえる言葉に背筋が粟立つ。
報告書の内容はすんなり頭へと入ってきた。

「そっか。」

無感動な声。
多分今まで聞いたことがないくらい冷ややかな。
それでいて、その口元だけは歪に
笑んでいる



「……ミネ」

しずかな声で促す。

「聞かせて。」


報告書を持つ手だけが不自然に震え。
合わせて紙がぱさぱさと揺れる音。
そうしてライムグリーンを視界に入れた女は笑い直す。
笑うのは得意だ。そしてそうしなければならないときは往々にして存在している。
今みたいに。
(-221) 2023/09/29(Fri) 20:54:24

【影】 摘まれた花 ダニエラ

…コーヒー豆の、香りがした。
ああそっか。
あの人は最初から、許してもらおうなんて思っていなかったんだ。
一番最初に腑に落ちたのはそのことだ。

――いってらっしゃい。幼子の声。
その後数日顔を合わせることもなく母は死んだ。
…同じかもしれない。ずっと同じように時が過ぎるなんてことないって知っていたつもりだったのに。
ばかだなあ。ほんとうにばか。
(&0) 2023/09/29(Fri) 20:54:48

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「っ…………エリー……」

恋は胸を締め付けるなんて聞いた事があるし、
今までだって同じ相手に何度かそうなった事がある。
でもこれは、きっとそうじゃない。ああ、つまり、
これは本当に、……きついな。

せめて、と。震える手を握る。笑うその顔に近付き、
額を合わせる。目を閉じて、名を呼んで、目を開く。
ミントブルーが少し滲んだ。

「エリー。……ごめん、言うな。」

少しだけ、強く握る。だって、……自分の手も震えている。

「……ファミリーから狙われたら、逃げられない。
 今は俺にも、他の誰にも見つかってないが、
 時間の問題だと思う。アレっさんもわかってるはずだ」

遠回しに言いたくない。
それは希望の芽を潰しながら歩くようなものだから。

「そのくせ、襲撃は中途半端だ。設備施設に損害?
 5人の負傷?アレっさんがやろうと思えば、
 下手すりゃこの地域半壊までいけるだろ。なのに
 『遠慮』してる。つまり裏切りは見せかけか、
 じゃなきゃ……必要な処置って辺りだ」

自分の中でも整理をつけないといけない。
そうじゃなければ、目の前の子も守れない。
(-228) 2023/09/29(Fri) 21:31:10

【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「それにこの前警察内で会った時、港を落ち着かせるよう
 頼まれたし、指揮してもいいとまで言ってた。
 メイドマンクラスの名前も出して使えとも」

つまり、完璧な港を扱う、用意周到で実力のある男なのに、
それを俺に渡す時点でもう、管理を投げたようなもの。
或いは、もうとっくに準備を済ませていた。

また、手を握る力が強まった。もう、唇の震えも隠せない。
(-231) 2023/09/29(Fri) 21:39:49

【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「エリー。アレっさんは、……死ぬ気だし、
 死ぬんだと、思う。殺されるのか、死ぬのかは、
 ごめん、わからない。でも、命を落とすと、思う」

「俺より付き合いが長いエリーがどう思ってるかは
 わかんないけど……俺も、あの人には結構世話になった。
 それに、エリーをあの人は世話してくれてたと、
 思ってる。……俺、親ってものの事は、正直言って
 全然わかんないから、間違ってるかもしれないけど、」

逡巡。迷い。口にしてはいけない、と思う。
でも、口にしないといけない、とも思う。

俺、アレっさんの事、エリーの親父さんみたいに思ってる。

 俺がこっちの世界に来てから何度も世話になって、
 カフェでバカ話して、なんだかんだ可愛がってもらって、
 俺も、アレっさんのこと親父みたいに思ってたのかも。
 ……アレっさんが、俺らの事どう思ってたかは、
 全然わかんないけど。もしかしたら、
 なんとも思ってないかもしれないけど、でも、」

「……俺達の親父が死ぬ前に、礼とか、文句とか、
 ワガママとか、色々。……言いたい。言っておきたい。
 すっげー辛いと思うけど、……言えないより、いいと思う」

「一緒に、言いに行かないか。中身はなんでも、いいから」
(-232) 2023/09/29(Fri) 21:41:26

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

「……うん」

震えた手と震えた手が重なる。
目を伏せた女はその手を持ち上げ、あなたの手に口付けた。

語る間、相槌を続ける。檻の中の言葉。預けられた荷物。
…事前に計画され準備は済んでいた。それは女の方が、きっとよく分かっていた。

「…うん」

そしてファミリーが彼を追うことだって。
面子にかけて逃がすわけにはいかないことだって。
頭の中で分かりきっていたことひとつずつ、言葉にされて形になって。

「………………うん。」

だから、そうやって。
ただ聞き分けのいい子供みたいに頷いて。

「…あたしは、」
(-244) 2023/09/29(Fri) 23:34:45

【影】 摘まれた花 ダニエラ

檻の中の言葉。渡された荷物。コーヒーの香りする紙片1枚。
…答えは出ているはずだった。
彼が自分を、どう思っていたかは知らないけれど。

…少なくとも。
(&1) 2023/09/29(Fri) 23:35:31

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

「……。」

言いかけた言葉を止めたミントブルーがあなたを映す。
それを口にする勇気のない意気地無しだった。
そうやって、やっぱり受け取ってばっかりだった。
そんな数年が、こういうときに、返ってくる。


「…言えるかな。」

そんなだから、あまり自信はなかった。
それが必要なことなのかも、全然判断できなかった。
ただ何が起きても隣にあなたがいてくれるなら。…逆にいえば、それしか確かなものはここになかった。


「…………
いく



それでも。
そうやって頷いたのは。
ずっと聞きたかったことが、ひとつだけあったのを、思い出したから。
(-245) 2023/09/29(Fri) 23:36:21

【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「……。」

言葉を止める姿をライムグリーンに映す。
互いを映し、認める姿。
きっとどちらにも――震える女が映っていた。
子供の頃からあんまり変わらない二人。
我慢する方と、しない方。
わがままを言えない方と、言える方。

頷くあなたの言葉に、こちらも頷いてみせる。

「言えるよ。エリーなら……言える。
 一緒に、言いに行こう」

勇気づけるように、あなたの手にくちづけを。
静かにしかし断言するその瞳には、あなたへの信が満ち。
もう、瞳に揺れはない。これはあなたの隣を行く。
(-248) 2023/09/30(Sat) 0:27:42

【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

「……よし、そうと決まればエリーは少しでも休むんだ。
 俺のチームが今、アレっさんの移動先を探してる。
 最新の機器でフル稼働でだぞ?楽勝で見つけてやる。
 見つけたらすぐ、かっ飛ばして現地に向かうからな。
 後はまあ、なんだ。……ノープランだ!はは……」

弱く笑うと額を離して、壁際に座り込む。
護送車の床は少し硬いが、持ち込んだ毛布が2枚。
1枚は床に敷いて、もう1枚はあなたに。おいで、と手招き。

「……なんとかなるよ。なんとか、する。
 俺が傍に居る。俺が支える。俺が守る。
 ……安心しろ、は無理かもしれないけどさ、
 ちょっとはマシだろ?それこそ、この毛布みたいに!」

へら、と笑っておどけたようす。傍らのラップトップには、
絶えず状況連絡の様子が流れ続けていた。
(-249) 2023/09/30(Sat) 0:44:57

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

…一緒に。
うん、とまた頷いた。

でも。言って、どうするんだろう。
それで、何か変わるんだろうか。
そう湧くのは女の場合、仕方がないことだった。
突然の喪失ならばとっくに識っていた。
それだって乗り越えてがまんしてきたはずだった。


だからこの場合、信じたのはやはりあなたの言葉だったように思う。
手当のされたこの手に直接口付けが触れずとも、そこには熱がともるようではあったから、それだけをただ、頼りにしていたのだと思う。

手招きに応じて、敷かれた毛布の上へ。
ぺたりと座り込んで、あなたへ手を伸ばす。
やけに控えめな甘え方だった。それでもそうできたのは、きっと幸なことだった。
横たわって、目を閉じる。いつものようにすぐに眠れそうにはない。
瞼の裏には、ずっと同じ人の顔が流れていた。
幼子が、いつだって心の中にいる。
でもその幼子は、『 』に甘えることだけが本当に下手くそだった。
(-286) 2023/09/30(Sat) 8:49:53

【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ

いつもよりずっと控えめな甘え方。
それはどうしても、何かを我慢するようにしか見えなくて。
心の内がじくりと痛んだ。

その手を取って、ゆるやかにいざなう。
引きずる事も、迎えに行くことも簡単だ。
でも、カンターミネは、出来ればあなたの意志で
傍へ来ることを選んでほしかった。
これが強制では、ただの自分のエゴではないと信じたかった。

横たわったその顔にかかる髪を、少し退けてやる。
いつもの寝顔と違う表情にまた、じくり。
小声で運転手に指示を出すと、向き直って。

「……、una regina fulgida e bella al pari d'una fata
 siede accanto alla culla tua dorata...」

少しでも。ほんの少しでも、今が穏やかであるようにと、
前と同じ子守歌Ninna Nannaを歌って、怪我のない箇所を撫でさする。

やがて、ラップトップの端末から通知が届くのだろう。
あなたを起こすまでの間、これはずっと傍から動かなかった。
(-314) 2023/09/30(Sat) 16:56:38

【秘】 摘まれた花 ダニエラ → 歌うのが怖くとも カンターミネ

いつかと同じ『子守歌Ninna Nanna』。
身動ぐように身体を寄せた。その身体は震えてもいなかった。
それでもやはり寝息となるには些か時間はかかっただろう。
一緒にハーモニカの音色を思い出せば、まるで、自分のやってきたことが返ってきたようですらあった。

…いづれ、女は夢に落ちる。
そのとき見た夢が幸せな夢だったのか不幸な夢だったのか、後になっても思い出すことはない。
呻くような寝言が誰かのことを呼んだ。
Madre.と。

あとはずっと静かなものだ。
あなたが女を起こすまで、女が目覚めることはなかっただろう。
(-338) 2023/09/30(Sat) 19:46:12

【独】 摘まれた花 ダニエラ

>>-372

目覚めてから車に揺られている間も、女はあなたの傍を離れようとしなかった。
どうして港なんだろう。
アジトに置き去りにした荷物のことを思うと、余計な期待をしないでもなかった。
しかし、まあきっと違うだろうなとどこかでそう感じてもいる。だからこれは余計な期待なのだ。


一度の仮眠を経て頭はだいぶスッキリとしている。
スッキリとしたからこそ、これからの意味を考え始めていた。
こんなに慌てなくたって、案外何とかなる我慢できると思い始めている。
檻の中のあの人に、自分が向けた言葉も思い出していた。
…あの人はあの時、本当に正直だったんだなと今なら思える。
それがこんなに早く来たことに勝手に傷ついているのはきっと自分が悪いと、納得する我慢できるだけの準備すら整っていた。
多分、このときには感じていた『不安』の意味が変わっていたのだと思う。
ずっとずっと、浮かぶのは、こんなことしてどうするんだろうって逃げるみたいな思考だったから。
…それが逃げだと自覚もある分、やっぱり損をしているのかもしれないけど。


「…。」

女は静かだった。目的地に着くまで、本当に静かなものだった。
それでいてずっと、意味を考えていた。
そんなものなく博打に出たってよかったけれど、博打には最近負けたばかりだから尚更に。

聞きたいことじゃなくて、████ことにしてしまったらどうだろう。
それに至ったのはきっと、車が目的地に到着する、本当にぎりぎりのことだった。
(-374) 2023/10/01(Sun) 5:48:38
 




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