【妖】 生贄 セレン何も……今、何も知らないぼくのまま、 あなたを殺してあげるなんて嘘を言えないから。 [ 狼を撫でる手指はきっと震えていて、 堪えたものを溢す音は傍らだけに響く小さな声で。 吐息を混じらせ寝台から滑り落ちた。 目の前の化け物と称する綺麗な主に苦く笑い、 傷の残る掌を差し出すことはもうせずに。 胸の前で緩やかに振って去ることを知らせつつ ] ($8) 2019/04/13(Sat) 3:52:51 |
【妖】 生贄 セレンここにぼくの居場所がないことは分かってる。 だから、教えてくれる時がくるまでか、 それとも貴方がぼくに価値がないと思う時まで。 ここに……いさせてください。 ほんの少しの間だけでもいいから、 ひとりぼっちじゃない夜を過ごす夢を見てみたい。 [ 要らないと告げられることに怯えはあるけれど。 この双眸も、髪も、特別なものだと説いた古城の主へ。 泡沫だと知る夢から醒める日までの願いを託し、 そっと撫で、狼を誘い、裸足は扉へと滑らかに歩んで ] ($9) 2019/04/13(Sat) 4:20:23 |
【妖】 生贄 セレン……おやすみなさい。 紅茶を飲んでくれて、ありがとう。 [ 扉を開けて振り向き、頭を下げる。 寒さに強張る表情を髪で隠して、悟られないように。 部屋に戻る帰り道は狼任せで先導を任せ、 あとに続く足音はぺたぺたと音を立ててゆっくりと。 上着を借りたままだったと気付いてももう遅く、 それに包まれるようにして誂えられた部屋へと戻る ]** ($10) 2019/04/13(Sat) 4:27:31 |
【妖】 生贄 セレンねぇ [ 囁きを灰色の狼へ落とす。 狼を恐れることなく寄り添いながら双眸は遠くへ、 居場所のない城の中を歩く足音も、消えそうな程に儚く。 言葉を理解するとは知らないまま、 部屋へ辿り着くまでは問いの言葉を宙に浮かせていた。 勿論、狼を部屋から追い出すことなど在ろうはずもなく、 招き入れ、クロゼットの前へと歩きながら ] ($21) 2019/04/13(Sat) 18:15:35 |
【妖】 生贄 セレン化け物だから殺すだろうって…… ニクスさまはぼくがそう思うって考えたのかな。 [ それとも生き残るためになら、だろうか。 生き延びるために何でも―― 想像し得る限り、どこまでもする心算だった。 齟齬は恐らくそこなのだろう。 贖罪のために殺されることを望んだ彼と、 この手で誰かを殺すことまでは浮かばなかった、 世間知らずで無価値だった己との、絶望的な差 ] ($22) 2019/04/13(Sat) 18:17:00 |
【妖】 生贄 セレンもしぼくが彼を殺せて、ひとりになって。 それからきみはどうなっちゃうの……? [ 古城の主が消えたと知れれば大人が群がり、 そこに富があるならそれを得ようと、 贄の代価とばかりに奪いに来るのは想像に難くない。 居場所がない子供など大人にとって無力なものだろう。 けれど村の悪辣さを知り得なかった夜の怪物に、 それを知らせることなどはしないと決めている。 眼と、声と、たったそれだけ。>>$11 それだけが誰かに似ているらしい我儘な生贄に、 あんな忠告をする優しい主には決して。>>$16 どうでもいいと投げ捨てられるならともかく、 これ以上、塵であっても彼の重荷となるのを避けるために。 少なくとも、今それを伝えても意味がないのだと、 忘れられないと溢した想いの重さを知れば当然で>>$19 ] ($23) 2019/04/13(Sat) 18:20:40 |
【妖】 生贄 セレン森に帰るのかな。 それともあの人が死んじゃったら、 きみも死んじゃったりする……? [ 借りた上着を脱いで皴を伸ばし、 衣装掛けに吊るして選んだ夜着は一番シンプルなもの。 バスローブも脱ぎ捨て夜着に袖を通して、 それでも未だ夜の空気は冷たくて小さく震えながら] ($24) 2019/04/13(Sat) 18:21:47 |
【妖】 生贄 セレンおいで。名前を、あげる。 終わりまでの間だけだけど、きみの名はね…… [ 柔らかな寝台へ滑り込む。 燭台の灯はつけたままベッドの隅に寄って、 狼を空いた場所へと誘って、その首に腕を巻き付けて。 毛皮に顔を埋めて無防備に瞼を閉じた。 人ではない気配も、鋭い牙も恐れないどころか、 その感触に安堵の息を漏らし、稚くくすくす笑う ] ($25) 2019/04/13(Sat) 18:23:03 |
【妖】 生贄 セレンクー、とかどうかな。 ぼくが唯一、触っても逃げなかった犬とおんなじ。 [ 牧羊犬と一緒にされては狼も堪らないだろうけれど、 過去で唯一の癒しだった存在と重ねて瞼を閉じて ] ($26) 2019/04/13(Sat) 18:32:17 |
【妖】 生贄 セレンクーが喋れたらよかったのに。 そうしたら、もっとあの人のこと知れたかな。 ぼくが、殺す勇気を持てるくらいまで。 [ 湯に溶かした薔薇の香を漂わせ、 狼の毛皮に顔を埋めて瞼を鎖し溢れる何かを堪えながら。 眠れそうにもない夜を、取り留めのない会話が続く。 不安を少しずつ埋めるかのように。 過去を遡り語る独白は殆どが傷痕でしかないけれど、 少しだけ救いがあるとしたら同じ生贄の子たちとの交流で。 狼の呼気が寝息と重なるのは陽が月を熔かす夜明け前。 変わり者の子供の話に到ろうとして、眠りに落ちた ]* ($27) 2019/04/13(Sat) 18:33:03 |
【妖】 生贄 セレン[ 陽に透ける金の髪。 生贄の意味も知らない子供の目の前で、 柔らかな髪を風にそよがせて微睡む誰か。 眩くて、遠い、鈴音を知っていた。 誰もが厭った異色の瞳で見ても、 ただ笑うだけだった変わり者の子供。 売られた時から捧げられるためだけに生かされて、 順番をただ待つ子供の中ではただひとりだけ、 陽のように暖かく、眩かった誰かの夢を ] ($29) 2019/04/13(Sat) 20:50:39 |
【妖】 生贄 セレン……ああ、でも。 [ 夢だと知るふわふわした感覚の中、 眩い誰かは唇を動かして己の記憶を刺激する。 彼女がおかしそうに綴った言葉を艶やかに。 何故か忘れるべきだと塗り潰していた思い出を鮮烈に。 “ わたしたち おんなじね ” 何が、同じだったのだろう。 祝福されたかのような暖かい髪の色。 空を映す瞳を持つ彼女が順番を迎える日に、 届かないと知りながら手を伸ばし聞いたことがあった。 笑い方を――心の動かし方を。 周りの全てから気味悪がられてひとりきりの子供に、 悪戯げに同じだといった、その真の意味を ] ($30) 2019/04/13(Sat) 20:54:18 |
【妖】 生贄 セレン[ ―――彼女の答えは聞けなかった。 自ら探せと言い残し、 順番を迎えた彼女が消えたあとはまたひとりきり。 名か、境遇か、それとも他の何かだったのか、 存在感だけが残ってその幻想は夢で語りかけてくる ] ($31) 2019/04/13(Sat) 21:01:28 |
【妖】 生贄 セレン“ 大切なものは、なに? ” [ 幻想が織る、未来と過去と願望と拒絶の狭間で。 掴めそうな何かに無意識に手を伸ばす ] ($32) 2019/04/13(Sat) 21:12:07 |
【妖】 生贄 セレン ― 翌日 ― [ 陽が窓から差し込んで暫く。 目許を濡らす舌に身動ぎを幾度か繰り返し、 漸く眠りから浮かんだ意識で陽を眩しげに見る。 眼が痛かった。 寝際にカーテンを引いた記憶がなく、 差し込む陽光に目の奥まで刺された痛みに蹲る。 無意識に伸ばした手で目を覆えば少しは楽で、 見守る狼に手を伸ばし頼りながら起き上がり、 カーテンを引いて光を弱め、そこで漸く息を付く。 淡い光源でなければ傷める眼は相変わらずで、 こんな瞳のどこが特別なのか己では理解できない。 陽で傷めるだけでなく焼かれてしまう主との差は、 自分で思うよりかは深刻なのだろうとは思うけれど ] ($33) 2019/04/13(Sat) 21:17:13 |
【妖】 生贄 セレン[ 誂えられた服に着替えて、 その上に外套を羽織ってフードを目深に。 髪も瞳も隠すそれは如何にも陰鬱そうだったが、 今まではこれが己にとって身を護る盾だった。 いまも、きっとそう。 ] きみもお腹がすくよね、 ありがとう、夜に一緒にいてくれて。 [ 扉を開けて狼の自由を促して、 用意されていた靴を履いて己も部屋を出る。 空腹が胃を痛ませるが今更そんなものには慣れていた。 麺麭のひとつやふたつ城の食料から貰っても怒られまい。 主にとってこの身体は殺されるまで継ぐモノで、 その価値が失われる日がくるまでは生かして貰える ] ($34) 2019/04/13(Sat) 21:19:25 |
【妖】 生贄 セレン[ 足は自然と、空腹の訴える先ではなく。 広い城内でまだ点在する空き部屋のひとつ。 鍵のかかっていないいくつかの部屋は、 過去に訪れた子供たちの部屋でもあっただろうから。 確かめたかったら探して見せろと>>$11 まるで突き放すような彼の言葉通りに。 ひとつひとつ、扉の中身を確かめて覗いていく。 男、女、それぞれに価値を見出され、 捧げられ続けた子供たちの、僅かに残る痕跡を。 辿り着く先がどこかは既に知っている。 これは時計の針が鍵となる部屋の向こう側にある答えを、 覗く勇気が出るまでの梯のようなものだろう ] ($36) 2019/04/13(Sat) 21:31:04 |
【妖】 生贄 セレンクー、……ぼく、ね。 [ 狼がいてもいなくても話し相手など彼だけで。 背後に語り掛ける言葉の抑揚はなく、感情を殺したまま ] 誰かが死んでもどうでもいいものだと思ってた。 ……でも、きっと、違ったんだね。 ($37) 2019/04/13(Sat) 21:38:48 |
【妖】 生贄 セレン[ 人を殺したことがないから違うと諭す彼が、$13 己に殺してほしいと願う裏腹さに瞼を半ば閉じて。 薄暗い部屋に馴染んだ視界は灯がなくとも部屋を見る。 あてがわれた部屋と間取りはそれほど変わらず、 家具も片付けられているだけの痕跡の消された部屋。 ここにはなにもない。 子供たちが残した何かがありはしたけれど、 衣装棚の隅に宝物のように隠された金貨が1枚だけでは、 何もしることはできないと苦笑して ] ($38) 2019/04/13(Sat) 21:57:19 |
[1] [2] [3] [メモ 匿名メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新