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【秘】 苧環のつぼみ 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「健人先輩。少しだけお時間よろしいですか?」 不意に。朝や夜の寮の部屋、 あるいは放課後とか、その辺り。 自然に二人きりになれるときに、呼び止める。 忙しいのであれば後でいいです、なんて言い含めて。 (-34) 2021/10/31(Sun) 23:06:46 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「世良ぁ、怪我したから看てくれぇ」 ぽんと背中を叩く感触。 振り返れば同学年の放送部の女が立っていた。 言葉通り、いたるところに打ちつけたアザがある。 「いやぁ、色んなとこにぶつけちまってなぁ 保健室は大変そうだから、世良のとこきちまったわ」 けらけらと笑いながら、袖の裾を捲ったり。 (-85) 2021/11/01(Mon) 1:47:05 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠夕も過ぎて、洗濯物や真っ黒くなった靴下を洗濯室に放り込んできたあと。 一日の疲れを綿に染み込ませるようにシーツの上にごろりと寝せていた、 洗いたての頭をゆっくりと起こした。 「いいよ。ちょっと休んでから勉強しようと思ってたところだし。 なんか気になるとことか、あったか?」 日中の騒動を通過してなお、努めて態度は平静に。 体育祭を待つ、選手でもない一人の生徒のあるべき姿だ。 (-156) 2021/11/01(Mon) 18:04:33 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜「うわっ。どんなぶつけ方と重さしてたらそんなことになんの。 見せられるとこだけでいいから、教えてくれ」 驚いたのは背中の手より、みるからに転げ回ったかのような痣の様子だった。 ちょっとやそっとじゃないだろう怪我の仕方を、一度は茶化してみた。 渋々ながらに痣の上にひとつひとつ手をかざし、或いは指でなぞる。 布の染みが浮いて取れるみたいに、うっ血した色素が肌色にかえっていく。 骨身に響くみたいな打ち身の痛みも、じきに収まっていくことだろう。 ひとつひとつ、治療を施して。そんなふうにしてるとどうしても言葉が途切れる。 ほんの一瞬生じただろう何気ないずれが、息を詰まらせてしまった。 一度飲み込もうとした疑念を、まだ遠いほうから投げかける。 「……なあそれ、聞いちゃダメなやつなの?」 (-157) 2021/11/01(Mon) 18:12:49 |
【人】 遅れて来た 世良健人今日は、談話室は静かだ。 少し早すぎるような雪景色に、そうじゃなければ人の心に寄り添って。 体育祭ばかりでいられなくなった学内の関心を表すように、なんだか人も掃けてしまっていた。 勝手に運び込まれたソファはちょっと古びていて、けれども寛ぐには十分だ。 誰もいないのをいいことに、何度か座面で腰を跳ねてみた。少しくたびれている。 (100) 2021/11/01(Mon) 18:20:31 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「いえ、大したことじゃないんですけど」 いくら平静を保っていても、仕草から滲むものに、 身体の疲れも心労もピークだなあ、と、 気遣いながらもそのそばまで来て。 ・・・・・・・・・ 「───楽して強くなれる薬に、興味はありますか?」 はっきりと、その言葉を浴びせた。 僅かに申し訳なさが顔に浮かんで。 でも、譲る気のない、確固たる意志ものせて。 それが意味することとは、ただひとつだ。 (-159) 2021/11/01(Mon) 18:47:50 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠なんとなくその意味をまだ飲み込みきれてなかったのは、 それが後輩そのものに対するなんの根拠もない信頼のためだったのだろう。 意図を掴みきれていない。けれども真剣な話なのはわかっている。 のそりとマットレスからげっ歯類みたいに垂れてた腕を、そっと引っ込めた。 「……今までずっと、考えてたんだけどさ。 それってなんか、意味あるのか。なんにも意味は、ないんじゃないか」 質問からは少し的を外していた。はっきりとした回答になっていない。 その前口上のように、ぼんやりとした問いが投げかけられて天井に吸い込まれていった。 「たとえば、可愛くなりたいってやつが、どんな言語でも読める異能をもった。 たとえば、生まれつきの病気を持ったやつが、空を飛べる異能を持った。 たとえば、孤児院育ちの子供が、誰よりも早く走れる異能を持った。 それって、意味あんのかな」 (-161) 2021/11/01(Mon) 19:00:20 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「…………0ではないですね」 天井に完全に消えていく前に、 けど、たっぷり息を吸い込んで、そう答える。 無条件の信頼を寄せているのはこっちだって同じで。 だからこそ、迷いもいくつか生じてくるもので。 「海外のファッション雑誌を読んでかわいさを。 病気のなかでも空を飛ぶ利便性と楽しさを。 独りでも、ずっと走っていける力を。 ……能力を得るならば、 どんなに回り道でも目標への道はできる」 「そう思うんです。 そう思う、けれど」 (-162) 2021/11/01(Mon) 19:07:00 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「今行く道が合ってるかどうかなんて、 行けるところまで行ってみないと分かんないんですね」 嫌いな異能を手にして、陸上を選んだのも。 異能や人脈を生かして、薬騒ぎに関わったのも。 いつか何か、胸を張れる、 気持ちのいい『成功』を得られると信じただけ。 それだけ。 「だから、今の俺は、これしかできないんです。 今この瞬間は……役目を果たすことしか」 (-163) 2021/11/01(Mon) 19:09:21 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「……そうだな。きっと回り道でも、力をくれる。助けてくれる。 "特別な力"にはそういう希望があって、選択肢をくれるもんなんだと思う。 でも言葉は直接自分の容姿は劣ってると思うものに自信をつけてくれはしないし、 空を駆り続ければ生まれつきの心臓の病はより酷くなるかもしれないし、 走り続けても両親も居場所も、手にすることができるかどうかはわからない。 整形したほうが早いとか手の届く範囲のお洒落で良いって言うやつもいるだろうし、 異能に頼らなければもっと長く好きなことを続けられたかも知れないし、 自分の居場所を見つける手立ては、立ち止まったほうが見つかるかも知れない」 それは貴方の言葉に対する否定になるのだろうか。それでも止めなかった。 向ける目は鋭さなんてなかった。曖昧に、夢想し続ける。有ればよかった未来を。 たらればばかりの言葉は、きっと貴方の理想とする気持ちのいい成功とは程遠い。 マットレスの上に座り直した。長い足を床に投げ出して、いつもと少しだけ逆転した目線。 → (-164) 2021/11/01(Mon) 19:24:40 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「この異能(ちから)があってよかったって思うこともたくさんあったけど。 別に、これだけが人生の頼るものじゃない。寄り添ってくれるわけじゃない。 無作為に与えられた特別な異能(ちから)だけが、未来をくれるわけじゃない」 ぎち、と爪が手首の裏を擦り傷のように裂いた。指を触れる。傷はなくなった。 何の意味もないことを、何の意味もないパフォーマンスのように見せた。 確固たる拒絶ではない。けれども涎の垂れるような渇望でもない。 リノリウムの廊下に伸びる輝きの先に、報われるものがあるはずだと、 きっと誰もが、探している。 「御旗の将来の夢って、何?」 それは異能でなければ、叶わないこと? (-165) 2021/11/01(Mon) 19:25:21 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「俺は……」 敵わないな、なんて顔の隅々に書いてるみたく。 心に閉じ込めたもの、全部曝け出すにはもう、 頑張り過ぎたと言っても“過言”ではないと思う。 もういっか。呟いた言葉はその表れ。 「結局のところ、みんなに肯定されたとき、 それを素直に飲み込めるように、 自分のことを誇れるようになりたかったんですよ。 健人先輩が心配して、気を遣ってくれるのに、 自分が鬱屈としていたら……申し訳が立たないです」 後輩の憧れも。悪友の好意も。仲間の信頼も。 その全部を背負うには、この背中はあまりにも薄汚い。 ▼ (-167) 2021/11/01(Mon) 19:39:00 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人目指したのは、 地続きのリノリウムの世界の外なんかじゃない。 タータンを走る、あとわずか追い付かない、 眩いスポットライトを浴びる誰かのその先。 「俺の異能のこと……聞いて、くれますか?」 ヴェールの如く秘密を包んだ暗闇はきっと邪魔だ。 隠し通すという報われない努力は、もうやめにしよう。 (-169) 2021/11/01(Mon) 19:44:55 |
【人】 遅れて来た 世良健人>>+23 談話室 竹村 「おぉおうゎ」 跳ねた体は危うく後ろにひっくり返るところだった。 幸いソファの重量がしっかりとしているので、怪我をする心配もない。 人に、それも後輩に見られた気恥ずかしさを、唇を尖らせてごまかして、 ついでに買ってきていたフルーツ大福をがさがさビニール袋から取り出した。 「……なんか童心に帰る機会ってのもないなって……」 苦しくもそれ以上でもない言い訳をぽそぽそこぼす。 人のはけた談話室はそれでも封をし直したお菓子があったり、人の気配を残していた。 (119) 2021/11/01(Mon) 20:02:39 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「単純に、疑問だったんだ。騒ぎ起こしたり、引きこもったり。 力が強くなることで得たり残ったりするものもあったんだろうけど。 俺、そういう騒動の中にいたやつのこと知らなくて。何を、してみたかったんだろうなって」 窓の外に降り終わった雪の照り返しが少しだけ残っていた。 単純にやりたかった、やりたくなかった、望んだ力だった、そうじゃなかった。 そんな、言い切れる話じゃなくて。 弱い異能も強い異能も、知らない薬の手助けも、その人の全てじゃなかっただろう。 「この暴走に、関わってたんだなって思った。 でもさっき聞いた感じじゃ、何かいいものがあるはずだって言い方だったろ。 なんとなく、騙して言ってる感じじゃあないよなあ……って。不思議だったんだ」 例えば何か恐ろしい陰謀の為に生徒たちが普段と違う行動をした、とか。 そんな風に一面的に結論づけるにはどこか不都合で、だからこの数日、気にかかっていたのだろう。 自分のことより、周りのことの方がよく気にかかった。 この違和感は完全には消えないだろう。だって子供達はいつも惑っている。 だから。目を閉じて、開いて。言い切ってしまえない胸の内に、耳を傾けることにした。 「うん。俺も、答えを出すまでは。 ちゃんと黙って、聞いているから」 (-173) 2021/11/01(Mon) 20:15:40 |
【人】 遅れて来た 世良健人>>+24 談話室 竹村 「くそ、マジで油断してた……もうちょっと頼れる先輩のイメージでいたかった」 大してフカフカというわけでもなんでもないソファは、 それでも食堂の少し固いイスとも教室の木椅子とも違う。 寮暮らしだとフカフカで寛げる場所というのは案外限られてくるのだ。 しっかり地についた膝に肘を立てて頬杖をつき、不服そうな顔を向こうにそむけた。 「竹村、体育祭なんか出るんだっけ。水泳部? この様子だとけっこう大変だよな、何やるにしても」 (121) 2021/11/01(Mon) 20:36:32 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「交通事故に遭って数日寮に戻らなかった日、あったじゃないですか」 血相を変えた先輩にいろいろ聞かれて、それでも押し黙ることしかできなかった情けない自分までの、今でも鮮明に覚えてる一連の思い出。 「ある女友達と遊びに出かけてて。 よくある、踏み間違えによる急加速で、車が一台猛然とこっちに突っ込んできたんです。 無我夢中でその子を突き飛ばして、自分はそのまま壁との間に」 ぺち、と手を叩く。 噛み締めるように深呼吸を挟んで。 「目が覚めたときには病室のベッドの上で、医者には、異能のおかげで特に後遺症はないなんて言われて。 酷い目にあったし、つくづく世を呪ったけど。 好きな子を守れたし、ついでに生きてるし、この異能も捨てたもんじゃないなって思ったんですよ」 眩しそうに窓の外を見やる。 大したことのない光が、少し足を動かせば届くそれが、とてつもなく遠くにでもあるように、目を細めて。 「それでさ。 お見舞いに来た彼女の一言目が、」 (-177) 2021/11/01(Mon) 20:53:56 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「勿論無茶苦茶な語弊があったと思いますよ。ピンピンしてるのが信じられないほどの有り様だったんでしょうね。 そう、そこからです。ただでさえ好きじゃなかった異能に、絶望的な負の感情を抱き始めたのは」 ひたすら、暗い笑みを浮かべている。 でも今は、信頼が勝るから。言葉を紡ぐのを止めたりなんかはしない。 「俺の異能(ちから)は。 “御旗”の名が示す通り。 『某不快害虫の身体能力を得る』もの。 うざったいほど足が速くて、高く跳べて、気持ち悪いくらい生命力に満ち溢れている、最高なほど───最低な異能」 故に。常に自信が足りず。 故に。人の目に努力を晒すことがなく。 故に。スポットライトを浴びる誰かが、とてつもなく羨ましくて、仕方がなかった。 自分は、どうあっても、地を這う暗がりの嫌われ者の烙印からは逃れられないというのに。 ▼ (-179) 2021/11/01(Mon) 20:55:26 |
【秘】 紫の苧環は咲く 御旗栄悠 → 遅れて来た 世良健人「薬の実験に関わったのは、本当に何となくです。 持ち掛けられて、断る理由もなくて、 とんとん拍子で、加担することになって」 「まあ多分。変えたかったんですよ。今の自分を。 今もずっと陸上を続けてるのだってそうです。 薬をあの手この手で人に与えるのも、そう。 最大限、ちからを活かせる場で、 俺は凄いんだぞってことを見せつけたかった。 暗がりから眩い人たちを捻じ伏せて、 そうしてやっと、 自分は多少は異能を、自分を誇れる気がしたから」 でも、と続けて。 「結局、健人先輩。あなたには異能を使わず、正面から話してみたくなっちゃいました。 迷わず走り切れって助言してくれた人が、いたのに」 (-181) 2021/11/01(Mon) 21:03:13 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「おぉ〜……」 視覚的にも、感覚的にも、癒えていく様に声が漏れる。 まるで魔法みたいだなと思いながら、その手を見つめて。 間が空いたところに、かかる疑問。 予想はしていたその質問に、どう答えようかと。 「んー……人にぶつけられた、かな? 私の異能が異能だから、気をつけなきゃいけねぇのは私だ ……ま、それよりも優先せねばいかんことがあったんでな 見た感じでは、私だけみたいで良かったよ」 怪我をしたのは。 (-200) 2021/11/01(Mon) 23:20:55 |
【人】 遅れて来た 世良健人>>+26 談話室 竹村 「季語ないじゃん。キャッチコピーにすんな、もう……」 これには参ってしまった。夕焼け色の髪が項垂れる。 そのまま、放置されていてもなんとなく抵抗の薄い飴玉の袋なんかをくしゃくしゃと手の中に収めて、持て余したりしている。 「二刀流かあ、大変だろ。どっちの練習にも出たりしてさ。おまけに雪だし。 例年ギリギリ雪の季節は免れてた気がしたけど、今年は気象も恵まれなかったかなあ。 俺は、マネージャーだし。みんな危なっかしくてベンチの中からじゃなきゃ見てらんないの」 練習メニューの一部にはきちんと参加している分、体作りの部分では選手たちにもひけはとっていない。 それでも実際に動いたならば、日頃から体を追い込んでいる選手たちには劣ってしまうだろう。 もっともらしい言い回しをしながら、ギザギザの袋を弾いている。破ればイチゴの香りが浮き上がった。 (166) 2021/11/02(Tue) 8:58:35 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠「……なんでそんなこと、言ってしまったんだろう」 見も知らぬ誰かの心中なんてわかるわけはない。声は小さかった。聞こえなくてもいいように。 きっとはずみで出た言葉に、字面以上の驚きなんてのはないのだろう。 誰かに好かれる人であるなら、どこかに希望を持って想像したいところだけれど。 それ以上に、目の前の彼が負っただろう心の傷の深さの方が、ありありと想像できてしまった。受け入れ難い言葉だろう。 「それは何かを変えてみたいと、思うかもな……俺だって、きっとそう思う。 誰かに懐疑的に思われた異能を自分だけは愛して抱きしめるなんて、できない。大人になれば違うかも知んないけど」 モラトリアムの中に揺蕩う自我に強固な自信を持って、胸を張るのは難しい。一人で立つのはとても厳しい。 臆面もなく自分ならどうしただろうなんて考えてみて、同じような帰結に辿り着いたんじゃないかと、納得した。 立ち上がって改めて目の前の少年の姿を見て、けれどもその姿が立派な誰かではなく少し背で勝った後輩であることに、頷いた。 「機会があったからって掴めたかどうか、俺にはわからない。御旗はすごいよ。 まあだからって見方が変わるわけじゃないんだろうな、って思った。そんな簡単な話じゃないだろうから。 ……俺も、自分の異能をなんだこの、って思ったこともあったから、もっと衒いもなく受け入れられたらってのは、わかる」 → (-239) 2021/11/02(Tue) 9:12:27 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 紫の苧環は咲く 御旗栄悠なんとなく自分の頭の上に手を置いて、それから同じ高さのままで御旗の頭の上に手をかざしてみた。 5センチメートルの差異があって、それは成長期の変化を伴っても大きな差はない。仕草そのものは、ともすれば不遜だっただっただろう。 けれども目の前の少年が急成長した誰某かではなくて同室の御旗栄悠であることを認めて、ふっと息を吐いた。 「どんな結果になるかわかんねえけど、薬の話受けるよ。 ただ、必ずしもその結果は教えられないかもって事だけ、約束してもらっていいか。 たぶん俺のなりたい姿には届かなくて、情けない姿を見せると思うから」 (-240) 2021/11/02(Tue) 9:16:35 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜「ん〜〜……そうか。 守屋は目立ってるし、なんだ。人に対して積極的だからな。 相手が怪我してないなら良かったとは手放しには言いづらいけど、気持ちは軽いわな」 少なくとも納得済みの結果に見えるし、自慢げな話でもないようだから口をつぐんだ。 若干の抗議と不満は息遣いに漏れ出すけれど、無神経に言葉を重ねるほど世話焼きなわけでもない。 見える範囲の傷を治しきってしまえば、歩いていて誰かに咎められるような見た目ではなくなるだろう。 「体育祭、ちゃんと出来んのかな。なんか立て続けに問題あって、教師に咎められなきゃいいけど。 なんかもう少しの間、あちこちで変わったことが起きるような気がすんだよ」 (-241) 2021/11/02(Tue) 10:17:55 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「目立ってる、か 君に言われるとこそばゆいものがあるね ……ん、と……どうもありがとう、助かったよ」 自分自身の腕を見直して、君の手際の良さを褒めよう。 可愛い女の子に頼られた方がよかったかな? 付け合わせにそんな軽口でも。 「……あぁ、問題ねぇ 君にも話は届いているんじゃない? 御旗クンとかから いやぁ、どうなるのかねぇ」 かちゃり。 眼鏡を両手でかけ直す。 じっと、あなたの顔を見つめて。 「────君なら、心配ないのかな?」 (-242) 2021/11/02(Tue) 10:39:09 |
【人】 遅れて来た 世良健人>>+40 談話室 竹村 少しくしゃくしゃになったビニールの中に鎮座する、稚気の表れみたいなぼんやりした模様が凹凸で表現された赤い飴を見た。 これを、と傾けて示し確認したけど、そうでないのなら余った飴の袋から探せばいいはずなのだ。 ちょっと考える合間があってから、ソファから乗り出してイチゴの匂いを近づけた。 「ほら。 ……怪我を治したからって怪我した事実が消えるわけじゃないんだ。 見えない後遺症が残らないかどうかまで保証できないし、本番でトチッたらスコアに響くだろ。 練習も本番も、怪我するようなやり方するなよな」 (168) 2021/11/02(Tue) 11:41:01 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜「御旗? ああ……最近、早出でもあんまり出る時間合わないんだよな。 同室だけど、サッカー部の朝練より早く部屋出てるっぽくて。夜しか話せてない感じ」 薬について持ちかけられるのは、夕方を過ぎてからのこと。まだ、健人はその話を聞いていないようだった。 どこか的を射られていないような顔をしながら、自分の手をじっと見る。今しがた怪我を綺麗に治して見せた、手品のような手のひら。 「守屋は自分の異能が本当に効いてるか、不安になったことってあるか?」 (-246) 2021/11/02(Tue) 12:13:10 |
【秘】 朧げな陽光 守屋陽菜 → 遅れて来た 世良健人「……あぁ、そうなのか 彼もかなり練習熱心なようで、 その頑張りが実を結ぶことを願っているよ」 いつぞやに贈った言葉を思い出す。 前を向いているといいなと。 「……? どうしたんだい急に? 私は、そういった不安を感じたことはないなぁ むしろ効きすぎて困ってるくらいだ」 にひひと笑いながら、手をひらひらと振ってみせる。 さて。 「世良は、そういう風に思うことがあるのかな? ……今しがた、私を綺麗にしてくれたのに?」 (-250) 2021/11/02(Tue) 12:42:31 |
【秘】 遅れて来た 世良健人 → 朧げな陽光 守屋陽菜「あいつ、頑張り過ぎるからなあ。早寝早起きのが調子いいみたいだけど。 子供って本当は八時起きでも早過ぎるらしいって知ってる?……いや、高坊が子供かはわかんないけど」 朝日と共に起きるのが推奨される昨今、それは人間という動物が自然に会得するリズムとは異なるものらしい。 守屋を見る目は少しだけ眩しそうだった。嫉妬というには遠過ぎて、憧れというにはすぐそばで。ああいいなあと、自然と願うもの。 健人の掌は綺麗だった。年頃の男子にしては擦り傷ひとつなくて、皮膚は柔らかくて滑らかだ。外遊びを知らない子供のように。 「俺はたぶん、自分にはできないことがあるのを知ってるから不安になるんだと思う。 たとえば寒さに強い異能の持ち主が深海に潜れるわけじゃないし、 たとえば温泉を掘り当てられる異能の持ち主が、火山のそばにいても平気じゃないように。 どっか近しい現象なんじゃないかと思っても、そこまで広く手を繋がせてはくれないみたいに。 近しいからって、できることがあるわけじゃないのを知っている。 だからかな、あんまり信用してないのかも。 努力して上手くなること、勉強して得られることと、全然違うだろ」 (-260) 2021/11/02(Tue) 14:46:44 |
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