【人】 因幡 フウタ― 回想。ある夏の日か ― [「ふうふになろう」と理恵に告げたあの夏の日ののち、 こんいんとどけを書く為に、二人して文字の練習に取り組んだ。 じゅうしょとやらが長くて割と苦戦した体感だったが、 マスターにはそう長くはかからなかったか。 どちらにせよ届を正式に出す前に、理恵を嫁に迎えた気持ちでいた。だから入籍前だったかもしれないけれど、仕事仲間に再び町で会った際、] 「りえちゃん?は元気?あの同郷の子」 理恵は俺の妻じゃが。 「え??あれって冗談だったんだろ? お前が言ったんじゃん。 りえちゃんだって親戚だって……」 そっちが冗談じゃ。 理恵にもからかわれたんじゃろ。 [ふ、と小さく笑う己に、男は珍しいものを見る目を向ける。 あまりにも堂々と返したおかげか、訝しむ事もなく男はこちらの話を信じた様だ。へぇぇぇぇぇと頷いた男の目がきらきらと輝き出すと、何だか面倒な事になりそうでくるりと踵を返した。 しかし腕を掴んで回り込まれた!にげられない! そして どこかで聞いた事がある様な質問攻めが始まった!] (10) 2020/12/25(Fri) 19:01:17 |
【人】 因幡 フウタ男「Q:食事はどちらが作るのですか?」 亀「A:……ばあちゃんが作ってくれるが。ばあちゃんの家の近くに住んどるんじゃ。でも俺も料理を覚えようと思う。その……理恵には長生きしてほしいしな」 男「長生きって(笑) 理恵ちゃんどこか悪いのか?」 亀「(寿命差の話はわからんよな……)えっと……あいつ小さくて細いじゃろ。だからちょっと心配なだけじゃ」 男「なるほど。 (親族付き合いの話は複雑な事情があったはずだから……) Q:夜の生活はいかがでしょう?」 亀「A:夜?夜は寝とるが」 男「じゃなくって!すぐヘバるってマジなのかよ!」 亀「……?まぁ、寝つきは良い方かもしれんが……」 男「じゃなくってえ!理恵ちゃんと寝てないのかよ!」 亀「い、一緒に寝とるが……」 男「それを詳しく聞かせろよ。 理恵ちゃんとのセックスを! 」亀「せっ……くす?……何じゃっけそれ……」 男「セックスはセックスだよ! エッチだよ性行為だよスケベだよ交尾だよ!」 亀「!!……な、なんで教えんといかんのじゃ」 男「聞きたいだけだよ興味本位だよ」 亀「き、聞かせん!何を言ってるんじゃバカなのか、理恵が可愛いなんて何でお前に教えんといかんのじゃ……(プチパニック)」 男「へえぇぇ、ほー、へー、ふーん(ニヤニヤニヤ)」 亀「な、なんじゃ……」 男「いいや?仕方ないなー、今度ゆっくりまた聞かせろよ」 亀「だから、教えんと」 (11) 2020/12/25(Fri) 19:01:31 |
【人】 因幡 フウタ[浮いた話を一切してこなかったからか、たった一言で男は満足そうだった。 己は愚かにも、口走った言葉に気付いていなかったけれど] 「ちなみに膨らんでた腹はマジで子供? ……………俺不謹慎な事言ってる?」 [店では膨らんでいた腹の事を思い出した男はその話題を出したが、次に見た時には引っ込んでいた事も思い出した様で、失言をしたかもと流石に青ざめた。 腹とか子供の話を持ち出されてざわ、と小さく胸が渦巻いたが、] あれは本当に脂肪じゃ。 [辛気臭くならない苦笑を返すと、男が噴き出す。 この微妙な空気を一緒に笑い話に変えてくれた男に、 心の中でそっと感謝した。**] (12) 2020/12/25(Fri) 19:01:46 |
【人】 因幡 理恵[「つまらん遊べ」と抗議する。] ……あまり亀のままでいると、湯冷めで冬眠するぞ! [いらいらと足踏みしながらザバァと亀を持ち上げて、「そんな桶水速攻冷えるぞ」「理恵には『どてら』着せるくせに」とぶぅぶぅ文句を垂れつつ、わしわしと甲羅を拭いたこともあっただろう。 「そんなに亀でいたいなら風呂でなれ」「亀の姿ならあそこでも二人で入れるじゃろ」と文句を言ったこともあるが、恒温動物にとって心地の良い水温に亀(変温動物)を突っ込むと煮えるらしい。ままならない。 別に亀だろうが人だろうが好きな格好でいれば良いが、亀になるとどうしても水に近づく。 兎、水、嫌い。] (15) 2020/12/25(Fri) 20:39:35 |
【人】 因幡 理恵── 木枯らしが吹く頃 ── [人間の巣は快適だ。雨でも水が吹き込んでこない。ちょっと漏る時はあるが、土の巣穴に比べりゃ全然。 あるばいとを転々としては多少の金をおばあちゃんに入れる。大した稼ぎにもなってないはずだが、何しろほとんど使わないのでとりあえず貯めている。少しずつ増えていく数字よりも、通帳の方がよっぽど美味そうで魅力的だ。 食い物はその辺の雑草でも全然いいのだが、一緒に暮らすうちにフウタが料理をし始めた。人間の食い物美味いし大歓迎。豚汁の豚をひょいひょいよけながら、湯気の立ち上る汁をすするのは、畳をかじるのとはまた違った良さがある。 あと、ちょいちょい料理酒を盗めるのも最高。 台所に立つ男の周りをちょろちょろと動き回っては、「まだできんのか」「今日の飯はなんじゃ」「おでんか? それおでんじゃろ?」「からしはいらんぞ」「どれ貸してみろ、味見してやる」「よし酒を足そう」気まぐれに手伝ったりもする。これはお手伝いです。] (16) 2020/12/25(Fri) 20:40:15 |
【人】 因幡 理恵[腹が膨れて温かい肌に身を寄せれば、寝つきは夏よりも格段に良い。 夏はくっついててあつかったのもあるかも。(「お主熱すぎるぞ亀のくせに!」「もっと冷たくならんか!」) 寄り添ってぷぅぷぅと寝息を立てていれば、その腕が伸ばされてふっと目を覚ました。] ……フウタ? まだ夜じゃろ? [夜行性の兎だが、フウタやおばあちゃんと生活するうちに、夜は寝ていることが増えた。緩んだ腕の合間から、寝ぼけ眼のままフウタを見上げたが、焦点が合う前に頭を抱え込まれ、温かい胸に押し付けられた。頭上から「寒い」と簡潔な理由が降ってくる>>6。 押し付けた額は、ちょうど心臓の真上にあった。性能の良い耳が、とく、とく、と鳴る鼓動を拾う。その間隔は、くっついているうちに少しずつゆっくりになっていく。 大きな体に包まれながらその音を聞いていると、ふとしたいたずら心が湧いた。 抜け出すことは敵わなくとも、腕ぐらいは動かせる。フウタの寝間着の合わせ目を広げると、胸板に唇を寄せて、ちゅう、と吸い上げた。鮮やかに散る赤は、夏祭りの時はうまくつけられなかった印。体を重ねるたびに上達して、理恵の首周りとお揃いの痣が、フウタの体のあちこちにある。 痕をぺろりと舐め上げると、舌先を滑らせた。ほんのりと寝汗の味を感じながら、なぜかオスにもある不要な先端を軽く唇で食む。抱え込まれた力が緩んでいれば、挑発するようにフウタを見上げた。] ……なら、温まる方法があるぞ。 [「どうする?」と形だけの問いかけをしながら、さらに合わせ目を押し広げた。] (17) 2020/12/25(Fri) 20:41:23 |
【秘】 因幡 理恵 → 因幡 フウタ[人間の体とは便利なもので、様々な体制ができる。兎の時は後ろから乗られる形しか知らなかったが、欲望に貪欲にできた体は、どの体位にもあっという間に馴染んだ。 同じ相手を何度も求めてしまうのは、多夫多妻制の兎からすれば信じがたいことだ。 何気なく兎仲間に話したらぶっちゃけ引かれた。 けれど、理恵からしてみれば別に異常なことでもなく、ただ触れたいと思う相手がいつもフウタなだけだ。 フウタを組み敷いて、そそり立つ彼を受け入れれば、体重の分深く届く。自分の意志で動けるのも、この体制の良いところだ。悦に震える体で、荒い息遣いに時折高い嬌声を交えて、夢中で彼を求めれば、見上げる視線と交錯した。] (-2) 2020/12/25(Fri) 20:42:16 |
【秘】 因幡 理恵 → 因幡 フウタ[肌寒くなるにつれて、フウタはこの目をするようになった。 その視線の意味は読み取れなくても、酷く胸がざわついてしまう。 不調を露にするのは人間の特権だ。 弱っていると知られたところで、厳しい自然では襲われるだけ。 治療が受けられないならば、不調はできる限り隠した方がいい。 その理屈は、理解ではなく兎の本能によって刻まれていた。 だからなのか、なぜなのか。 自分でもわからないが、彼の視線の理由を尋ねることもなく── けれど、彼の頬に手を添えて、彼の切なげな色をそのまま瞳に映して、見つめあうこと数瞬。 堪えきれずに唇を寄せ、──間に合わず。 唇同志が触れるか触れないかのところで限界を迎え、ぎゅっと目を瞑ると、小さく痙攣した。] (-3) 2020/12/25(Fri) 20:42:51 |
【人】 因幡 理恵[そんなこんなで迎えたクリスマスは、存外に楽しかった。 飯が上手くて。 午前の配達の間は別行動をして、夜からはちょっと贅沢な食事を 輪っかの形に彩られたリースサラダから、星型ハムをひょいひょいどけて、口いっぱいに新鮮な葉っぱをもっしゃもっしゃ頬張り、「それはなんじゃ?」「鳥か。いやいい、いらん」「その分ケーキ食う」なぜか真っ赤な鼻と角を生やしたフウタからサラダを奪い、その代わりにローストチキンとハムを押し付けてみたり。甘くてふわふわの生クリームでひげを作っていたら、おばあちゃんから「三太さんみたい」と言われたので、「三太て誰じゃ理恵は理恵じゃ」と返す。 あとすぱーくりんぐわいんもなかなか美味い。] (18) 2020/12/25(Fri) 20:43:57 |
【人】 因幡 理恵[気分よく夜更かしして油断していたら、フウタが布団を取り出そうとしたので慌てて押しやった。 押し入れに隠した包みは、まあ別にその時渡しても良かったんだけど。タイミングを見失なったまま、布団を敷く係を引き受けること数日か。背伸びをしては布団を取り出し、フウタが近づこうとするたびに足をダンダン鳴らして追い払った。]** (19) 2020/12/25(Fri) 20:44:14 |
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