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(n0) 2022/08/14(Sun) 23:11:34 |
(n1) 2022/08/14(Sun) 23:12:25 |
(n2) 2022/08/14(Sun) 23:27:45 |
【人】 糸 海鳴神社の鳴く音よ 波の音と混ざりあえば ここではない世界へと誘う 提灯の色に気をつけて 赤は この世 、黒は 隠り世そこは禁じられた宴の席 素顔を見られてはいけないよ 顔を覚えられてしまうから 名前を知られてはいけないよ 連れ戻されてしまうから 願ってはいけないよ その願いは叶ってしまうから (2) 2022/08/14(Sun) 23:48:38 |
(n4) 2022/08/14(Sun) 23:50:33 |
【人】 闇崎 宵稚― 序 ― [安物の軽自動車でも、窓を開けていれば 潮の匂いを感じるのは然程難しくない。 茹る暑さは都会よりマシだし、ある程度風に流され ドライブするには最高の夏と言えよう。 けれど今の俺にとって。 夏なんて、季節なんて、どうでもよかった。 この時期に帰ってきたのは偶然だった。 耿耿と反射する海の光の粒と、 ラジオのノイズが呼応して、パーソナリティは俺の気分とは裏腹に陽気な声で次のナンバーを紹介する。] (3) 2022/08/15(Mon) 0:44:59 |
【人】 闇崎 宵稚『――それでは本日ラストナンバー! 今年の夏のミュージックランキング第一位!』 [ラジオから流れる音楽に興味がないわけではない。 爽快なトランペットとギターがメインのポップス。 歌うのはデビューしたての若手アイドルグループ。 突発的な人気を掻っ攫うには十分なヒットチャート。 青く爽やかな歌声が右耳から左耳へ筒抜ける心地は、 今の俺にとっては寧ろ不快感に近い。 故郷の潮の匂いだけが、感情を誤魔化している。 曲が終わり、パーソナリティがトークに入る。 その言葉を遮るようにして、俺はラジオのスイッチを 切り、以降ただ黙ってハンドルを握っていた。] (4) 2022/08/15(Mon) 0:45:38 |
【人】 闇崎 宵稚「…………」 [途端に静まり返った車内には、 窓から通り抜ける風の音が小さく響いている。 車の速度を少しだけ緩める。 波の音が聴きたかった。 ] (5) 2022/08/15(Mon) 0:47:17 |
【人】 闇崎 宵稚「…………」 [すぐ物足りなくなって、速度はさらに遅くなって。 安い駐車場を見つけては、適当に停める。 村の中でも都市部に近いこの海浜公園は、 殆ど入り口で、村の中とは言い難い。 都合のいい観光地――海水浴場だった。 今なら叔父叔母に連絡する事は可能だろうか。 あの人達に会うだけなら。 僅かに、憧れる未来を想像して携帯を取り出す。] [……でも、 万一、復縁でもしていたらどうしようか。 会わせる顔が無いのは自分の方だ。] (6) 2022/08/15(Mon) 0:50:43 |
【人】 闇崎 宵稚「………………いや、」 [そんな事、あるはず無いか。 心の中の否定が声に漏れ、目を伏せる。 携帯を雑にポケットに突っ込んで、 軽く荷物を纏めて車を降りて、愛用のサンダルに履き替えた。 砂浜を歩くなら此方の方が楽で良い。] * (7) 2022/08/15(Mon) 0:51:51 |
【人】 闇崎 宵稚[少し歩けば、寂れた防波堤が見える。 漁師の船は既に仕事を終えて静かに並んでいた。 普段なら閑古鳥の鳴く干物屋に、珍しく客がいる。 地元の人間じゃないと直ぐに理解出来たのは、 若い真っ白いワンピースの女と、 これまた若く派手な茶髪の男だったから。 あんな奴ら、興味本位か冷やかし以外で 田舎の干物屋なんかに来るものかと、内心呆れた。 旅先の旅館で食べた刺身が美味しくて、つい 干物を土産にと思う気持ちは理解出来なくもないが。 この地元が嫌いというわけではない。 寧ろ、それなりに愛していると自負している。 だからこそ正直に言って、 海鳴はつまらない田舎村だと断言できる。 >>n3 唯一誇れる神社も、鳥居を見れば それ以外に珍しいものがあるかと言われれば、無い。 つまり、あのカップルの目的といえば さしずめ浅い縁結びの噂を聞きつけたのだろう。] (8) 2022/08/15(Mon) 0:53:59 |
【人】 闇崎 宵稚[…あのカップルが、この辺を歩くのに、お守りと 干物購入だけで用事を済ませるとは思えない。 緩慢な動きで空を見上げる。 害とすら思える陽光に目を細め、項垂れる電線に 明かりのない紅白の提灯が道に連なっている。 それをみて、ようやく合点がいった。] (10) 2022/08/15(Mon) 0:55:18 |
【人】 闇崎 宵稚 ………、……。 [元気でやってるのかな。 海を凝望しそんな思考に行き着く。 叔父叔母より、両親より、顔が見たいと望むのが、 アイツになることは、もはや自然とさえ思えた。 ポケットにしまっていた携帯を取り出して、 メッセージの電話帳を下へ、下へとスクロールする。 もはや思い出せない人物達の間に、 鮮明に思い出せる人物の名前を見つけては。 不格好に文字を入力、しようとして。 ……何を、今更と。 再び躊躇ってしまうけれど。] (13) 2022/08/15(Mon) 1:00:19 |
【人】 闇崎 宵稚(……大丈夫) (大丈夫、だよな?) [あんなに話した筈の幼馴染に、親友に、 妙に緊張する意味が、自分の中で噛み砕けずにいて。 ――否、客観的に見ればそれも当然といえば当然だ。 このメッセージどころか、高校卒業以来、 それこそ縁が切れたかの如く顔を会わせていなかった。 唐突に声をかける不安だけで心境を上塗りし、 勢い任せに数件メッセージを送っていた。] (14) 2022/08/15(Mon) 1:03:45 |
【人】 闇崎 宵稚[…なんて当たり障りない言葉なんだろうか。 俺が著名人なら詐欺を疑われてもいいレベルだ。 しかも、言葉が続かず。 ──反応も怖くて。 それ以上送る事ができなくなっていた。 こんなに俺は言葉のでない奴だったっけか。 学生時代は、もう少しまともに振る舞えてたと。 ……そうであったと、自負していたのだけれど、 その記憶すら、曖昧になっている気がした。] (16) 2022/08/15(Mon) 1:06:52 |
【人】 闇崎 宵稚(……返事が、なかったら、) (それは、それで。…・・いいか) [今日一日、空虚を抱いて過ごすつもりだった。 予定通りに、事が進むだけだ。 何もなかった、メッセージなんて送ってなかった。 ただただ、旅路の果てに故郷に戻ってきただけ。 自身の胸中を騙して、過ごせれば良い。] (17) 2022/08/15(Mon) 1:07:31 |
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