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【人】 六鹿 賢斗[ 僕には、可愛い妻がいる。 結婚して6年。 僕たちが大学を卒業するタイミングで 結納と結婚をしようと、話していた人。 熱海の老舗旅館の女将になる人物として、 彼女は申し分なかった。 容姿端麗。才色兼備。 両親に紹介した時も、すぐに認められた。 とても、愛おしい人だよ。 ] (1) 2020/09/01(Tue) 12:43:08 |
【人】 六鹿 稀[ 六鹿 稀。 静岡は熱海。 創業300年を誇る老舗旅館 美鶴荘現女将。 彼女は、支配人である六鹿賢斗の嫁として この場に入ってきた。 まさか、彼女も嫁いで5年目で女将になるとは 考えてもいなかったが、試行錯誤、日進月歩で 賢斗を支えながら宿経営を頑張っている。 そんな彼女には、賢斗に秘密にしていることがある。 それは……………… ]* (2) 2020/09/01(Tue) 12:50:59 |
【人】 六鹿 賢斗[ 稀と初めて会ったのは、大学の授業。 真ん中あたりの席にいた、肌の白い女の子。 惹きつけられて、隣の席に座っていた。 勿論、話しかけたのは僕の方。 話しかけた時の彼女はとても、驚いていた。 しかし、大学に友達がまだできていなかった 稀にとって、僕が声をかけたのは、 ある意味転機だったらしい。 僕らが仲良くなるのに、 時間はかからなかった。 稀は温泉巡りが好きな都内出身の女の子。 熱海の温泉を就職するまで沢山楽しみたくて こっちのほうの大学を選んだらしい。 週末は温泉巡りを2人でして、 告白したのは出会って1ヶ月くらいの話。 ] 稀、僕と付き合ってほしい。 (3) 2020/09/01(Tue) 13:10:37 |
【人】 六鹿 賢斗 [ めちゃくちゃ、あのときは緊張した。 薄手の着物を着ていた彼女の手を握って、 別れ際に告白。 1ヶ月くらいで、と言われたら 元も子もないけれど 他の男に盗られる前に 振られても友達でいたかったから。 でも、彼女は少し驚いていたけれど、 首を縦に振ってくれたことを覚えてる。 大学では洋装、私生活では和装なんて、 ギャップがとてもいい。 そこから、 僕たちは恋人として過ごし始めた。 ]* (4) 2020/09/01(Tue) 13:17:28 |
【人】 宮野 利光[ あの人の俤を待ち、探して焦がれ、 夢を貪り彷徨っているうちに ゆらり辿り着いたこの土地に 大層立派な宿が建ちましたのは 今からほんの300年ほど前のことでした。 個の肉叢などとうに朽ち果て あぁあの世とか言う極楽浄土には やはり行けぬままであったなぁとぼんやり 花の色が移ってゆく様を眺めているが常 消えつ浮かびつする斑な記憶の中で 時折浮かぶ、 (6) 2020/09/01(Tue) 13:29:44 |
【人】 宮野 利光[ なによりも大事なはずの女子の亡骸を この目にしながら共に死んでやることも出来ず ようよう腹を切って死んだのは出奔してから 幾年も経ってからという為体。 弔いもないままに ふうわりと漂うだけの亡魂に成り果て 負うて川を渡ってやると言った あの日の契りも叶えられず この愛しい名の宿に縋るように ただただここに居るのです 同じように可憐な ]*何代目かの女将に出逢うまでは。 (7) 2020/09/01(Tue) 13:32:05 |
【人】 六鹿 稀 [ 夫と出会ったのは運命と言えるだろう。 大学で声をかけてきた人が、 優しい彼でなければ、多分熱海から距離を置いた。 温泉が好きだった彼女。 美鶴荘には、流石に行ったことがなかった。 老舗旅館は泊まるだけでお金が飛ぶ。 故に彼女は 日帰り温泉巡りを楽しむ性分になっていた。 ] 私でよければ、よろしくお願いします。 [ 5月のある日曜日。 次の日からまた学校と言う夕暮れ。 告白の答えを出したのち、 彼の唇が、彼女の唇に重なった。 ゆっくりと離れた彼を見つめながら、 彼女の体は、温泉あがりとは違う、 火照りを感じていた。 それから、山あり谷ありで 夫婦になる運びとなった。 ] (8) 2020/09/01(Tue) 13:49:23 |
【人】 六鹿 稀 [ 時が過ぎて結納の日。 老舗旅館 美鶴荘はとても広く、 隣に並んでいた彼の手を 不安でギュッと握ってしまった。 自分が、この旅館の女将として 将来切り盛りしなければならないのかと、 重圧を感じていたから。 ] …………え、? [ 六鹿 稀。まだこのときは唐草 稀。 見えてしまったかもしれないけれど、 そんな噂を聞いたことはないから、 見間違いだろうと思いながら、 廊下を六鹿家と唐草家で歩き進めるのだった。 ]* (9) 2020/09/01(Tue) 13:55:30 |
【人】 宮野 利光[ いつもは静かなこの宿が いつになく賑やかな。 例えば春の穏やかに暖かい風が 優しく辺りに満ちているような そんな日のことでした。 何事かとふと目をやれば、 心なしか誇らしげに見える様子で 歩を進めるこの宿の跡取り息子と その隣には少し不安げな顔の女子。 ぼんやりした頭ではありますがそれでも、 ああ祝言をあげるのかと悟ることが出来ました。 後ろにその家族と思わしき面々が それはそれはにこやかに歩く様が 見えたからでもありました。 ] (10) 2020/09/01(Tue) 14:26:31 |
【人】 宮野 利光[ なにやら胸にちくりと棘が刺さるような 妙な気も致しましたが、 それならばなおのこと。 幸せそうな空気に触れるのも良いと、 美しく控えめな和服のその女子に するり近づいて見たのです。 ] (11) 2020/09/01(Tue) 14:33:15 |
【人】 宮野 利光[ 魂消る思いがして息を飲みました。 そんなはずはない、と頭ではきちんと わかっているのですがそれでも 擦れる声を抑えることは出来ずに。 ] [ つう、と視線が合うたような気がしたのは、 都合の良い思いでしたでしょうか。 ]* (12) 2020/09/01(Tue) 14:36:48 |
【人】 六鹿 賢斗[ 彼女と付き合い始めてから、 いろんなことを考えるようになった。 いつ、自分が老舗旅館の跡取りなのかを 伝えるのか。 いつ、彼女とひとつになりたいと 伝えるのか。 考えることは沢山ある。 だからだろうか。 いつも彼女のマンションにお邪魔してるとき、 時々それで怒られていた。 ] 稀、お宿は好き? [ 偶に、こうやって怒られながら 質問を投げかけて、 稀の悩む姿をみていた。 ]* (13) 2020/09/01(Tue) 14:38:13 |
【人】 六鹿 稀 [ 結納のあの日。 稀は、春先ということで 白に薄桃の桜が裾にある着物を選んでいた。 何故彼女がこれほどまでに着物を所有しているのか。 それは、彼女の実家が呉服屋だからだろう。 初めて、彼の両親に会ったときにも、 呉服屋の娘ならば、大丈夫だろうと 両親公認の付き合いになったことを覚えている。 ] しっかり、働けるのかしら…… [ 結納に駆けつけたのは、両親と弟。 小さく呟いていた言葉を、 誰かに聞かれたような。 しかし、隣の彼も誰も彼女に反応を示さない ] ………………? [ 代わりに、誰かが誰かの名前をささやいた。 この宿と同じ名前を。 もし、本当にいるのならば、 また会うことになるのだろう。 ]* (14) 2020/09/01(Tue) 14:48:49 |
【人】 六鹿 稀 [ 彼が家にいるときは、よくくっついてくた。 かといって、付き合って最初の頃は 何をやるわけでもなくお昼寝をしたり、 テレビを見たりするだけだった。 しかし、時折難しい顔をして、 何も言わなくなってしまうことがあった。 そんなとき、彼女は彼に対面で抱きつく。 ] 賢斗さん、聞いてます? [ 特に何も話していなかったけれど、 こういうと、彼の意識がこちらに戻って、 ごめんね、と言うのだ。 そしてまた、質問が飛んでくる。 ] お宿は好きだけど、それが…何か? [ 温泉が好きなのだから、当たり前に宿も好き。 そんなこと、毎週末温泉巡りを 一緒にやっていた彼が知らないわけがない。 どうしたのだろう、と不思議に思って 彼の頬を撫で、顔を近づけるのだ。 ]* (15) 2020/09/01(Tue) 15:01:16 |
【人】 宮野 利光[ 可憐な彼女にとても良く似合う、 白地に薄桃の桜が咲いた着物は控えめで それでいて質の良いものだと 一目で見て分かります。 いつか二人で見たあの桜が、思わず閉じた 瞼に色鮮やかに浮かんでは消えて この歴史ある宿に嫁いで、 上手く働けるかと案ずる小さな小さな声が 己の耳に触れれば、 ] 困ったことがあればなんでも言え、 助けてやるぞ、と言えれば良いのですが… [ と、知らず知らずのうちに 困ったような笑みと共にそう呟いてしまうのでした。] (17) 2020/09/01(Tue) 16:11:56 |
【人】 宮野 利光[ それからと言うもの、彼女を見かけては ついと近くに寄ってしまうのです。 花を生ける彼女を見掛ければ、そうっと 起こす風で切られた茎を纏めてみたり、 掃除をする姿を目にすれば、 雑巾を静かに畳んでみたり、 散りゆく桜の花びらを目にした時には、 ふわりと舞うそれをそっとつまんで 彼女の肩に乗せてみたりしたこともありました。]* (18) 2020/09/01(Tue) 16:15:28 |
【人】 六鹿 賢斗[ 質問に対して、稀は首を傾げながら答えた。 そんな彼女も可愛くて、 また今度話すね、とだけ返した。 ] どういうところに就職したいとか、 今のところ考えはある? [ 対面になれば、軽く口付けながら。 もし彼女が、まだ何も考えていないと 言ってくれるのなら、話を切り出そう。 そう思いながら、 柔な彼女を抱きしめる。 ]* (19) 2020/09/01(Tue) 17:56:14 |
【人】 六鹿 稀 [ 結納の後、彼女は少しでも慣れるために 美鶴荘で働き始めた。 勿論、右も左もわからないから まずは仲居から。 ありがたいことに、若い人が多めで、 彼女は可愛がられていた。 ] あの、…このお宿に、………… 幽霊が出るなんて、お話聞いたことは……? [ ある日の休憩時間。 彼女は意を決して、先輩仲居たちに聞いた。 すると、彼女たちは首を縦に振った。 聞いてみると、お客と従業員と、 様々な人が見たことがあるということだった。 人によっては、優しく扱われただとか、 何かを手伝ってもらっただとか、 悪さをする幽霊では無さそう。 ] そう、よね…あの時に聞こえた声が、 本当なら……うん…… [ 彼女は、それから何度か不思議なことに 出会っていた。多分、彼女の成長を 見守ってくれているのだろうと思うと、 特に嫌な気分にはならなかった。 ] (20) 2020/09/01(Tue) 18:14:58 |
【人】 六鹿 稀 [ 2年目過ぎた頃、稀は賢斗と一緒に 新しい旅館経営について 話を詰めていた。 というのも、輿入れした後間髪入れずに、 彼の両親が近いうちに引退したいと 決意表明をしていたから。 ] 今のご贔屓様を蔑ろにする ということにならないかしら…… [ コンセプトをそのままにしつつ、 新しい風を入れようと思い、 言ってみれば隠れ宿で 乱交パーティーを催すという おかしなことをやろうとしていた。 代替わりのときにあわせて、 パーティーを開くついでに、 その色を顕著にさせたいと。 ] (21) 2020/09/01(Tue) 18:33:08 |
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