──悠凛の部屋──


[額に当てた手を振り払われたわけじゃない。
悠凛がすっと身体を退くのがわかった。
でかい図体の俺を室内に入れるためだ、仕方ない。]


　このドアはオートロック？

[施錠を確認して振り返り、悠凛を抱きしめようとした。
すっぽりと腕の中におさまってくれると思ったのに。
またすっと身体を逸らされたのは気のせいか。
不自然な程じゃないけど……ほんの少し寂しい。

ヒート中って機嫌も悪くなるのかなぁ、などと
明後日の方向に思考が飛んだ。>>97]

　ヘェ、綺麗にしてんのな。

[と呟いたものの、生活感が薄い部屋。>>98
まぁ“長期オフ”しか使ってないならこんなもんか。

ああ、でも。そういう時でも勉強してるんだ、多分。]


　本とBD、随分あるね？皆、役作りのための？

　すごいな……神宮啓ならこれ位読むよな。
　あ、『Inherit the Stars』がある。

　それにあの時のシャトル！

　俺昔、吸血鬼と人間が恋した映画見たんだよね。
　吸血鬼が恋人を化け物にしたくなくて
　人間のままにしておくんだ。
　でもそれだと二人は時間の流れが違うからさ。
　楽園を求めて宇宙に旅立つことを選ぶ。

　それのに似てると思った。
　このシャトルの模型、近代的だけど、
　デザインにちょっとゴシック入ってる。

[聞かれてもいないことをペラペラしゃべる。
……ダメだ、悠凛が全然乗ってこない。]

[俺はライトグレーのジャケットのポケットに
両手をつっこんだ。
両側に、小さな贈り物が一つずつ入っている。

悠凛に促されるまま、ソファに座った。]


　あ……

[やっと悠凛が触れてくれた。>>100]
憧れ続けるその髪に、手が伸びそうになったが。]


　そんなに元気ないんだ？

[ふわり…と立ち昇る芳香があの夜よりも強い。
戸惑って、はた、と手を留めた。]


　あ、いいよ。ちょうど暑かったから。
　
　じゃあ、お前の分もなんか淹れてくるわ。

[寒気なんかしない？ホント大丈夫？
そう言って立ち上がり、ジャケットを脱ぐ。

悠凛の上にふわりとそれをかけた。*]