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【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「奪うだなんて、面白いことを言うんだね、君は。僕の心はもう君のものだって言うのに!」 「……奪わなくたってあげるさ。君になら、なんだって」 甘い。 甘い。 酷く、甘い。 言葉を吐く口元は、柔和に弧を描いている。 「僕はね、ドニ。君たちを愛してる」 「だから大切な人も、ものも、全部あるのさ。ここにね」 わかるかい、と瞳が問いかける。言い聞かせるように覗き込む。アメジストの双眸は君から目を離さない。君だけを見据えて逃がさない。 触れた頬から男の体温が伝わる。周囲の空気は冷えているわけではないのに、その手はなお熱い。肌の下には、確かにあたたかな血が巡っているのだろう。 「……なんて顔をするんだい」 眉を下げて目を細めるそれだって、一つの笑みの形ではあるのだ。 俯く君の顔を、さらりと流れた髪が少し隠した。それを丁寧に分ける男の手つきは、怒られて隠れてしまった子どもを探す親のそれに似ていた。 「まったく君は、僕を捕まえておくのが上手いね。今夜は少し話したら帰るつもりだったのに」 「君が君でいてくれて、僕がどんなに嬉しいか────」 (-418) 2022/08/23(Tue) 16:19:30 |
【秘】 花で語るは ソニー → ザ・フォーホースメン マキアート上がる嬌声を呑むように、背筋を伸ばして首筋や顎に何度もキスをする。 自らの手を受けてこうも反応してくれる、相手がとても愛おしく感じる。 快楽を分け与え合い、熱を交換するだけの作業でこれだけ胸の内が満たされるのだから堪らない。 触れ合いたいと、そう願う。そんな行いの甘やかな優しさが、男は好きだった。 肌の感覚さえもが邪魔するような焦れったさに、抑えきれない己を宥めるように肺から息を吐く。 「……かわいい」 懇願する言葉さえも、どうしようもなく歓喜を呼び起こすのだ。 深く吐き出した息でそれに返事をして、相手の陰茎からするりと落ちるように手を離す。 僅かに濡れた手で二、三自分の陽物を扱く。少しの興奮でも十分に固くしていたのだから、 準備のために掛かる時間だってそう長くはない。足と指とで引っ掛けるように渡してゴムを手に取る。 封を開け、自分のものにするするとかぶせる。薄いゴムの擦れる音が響いた。 片手で照準を合わせ、揺れる相手の体をそっと誘導するように下ろさせる。 指が抜けてもまだ平時のように締まりきっちゃいないのだろう後孔に指を添えて、 角度を合わせて相手の尻をゆっくりと下側に導く。亀頭が包まれて、く、と喉を鳴らした。 はじめはなじませるように奥までじわじわと挿入していって、姿勢であったりも含めて落ち着かせて。 深く深く、息をして。軽く呼吸を整えてから添えた手で誘導するように腰を動かす。 ベッドの上だったならもっとあちこち構えもしただろうけど、今は一点集中でお預けだ。 「は、ぅ……あったかくて、とろとろしてる……どう、……気持ちいい?」 (-419) 2022/08/23(Tue) 16:19:44 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ/* いい感じの紫の宝石調べようと思ったんですけど アメジストの石言葉、「誠実」「心の平和」「真実の愛」らしい ぴったり (-420) 2022/08/23(Tue) 16:28:03 |
レヴィアは、店のカウンターに猫のぬいぐるみが二つ、新たに並んでいる。鎮魂歌が鳴り響く。 (a47) 2022/08/23(Tue) 17:20:14 |
【秘】 陽炎 アベラルド → 家族愛 サルヴァトーレ自分には、それが本当にどこまでも、どこまでも甘く感じて。 本当に許された気になってしまう。いや、許しているのだろう。 自分は責めて欲しいのだろうか。受け入れて欲しいのだろうか。 それすら考えるのが怠惰になるほど、貴方に与えられるものが甘くて。 絡め取られている気分になる。 スノーホワイトの髪が貴方の手に分けられて揺れる。 なんだか少し恨めし気な視線が、その間から覗いた。 けれどその表情は、薄く笑んで。 「変われないのは得意だからな」 「……お前の心が俺のものなら」 「付いて来て貰うよ。……地獄まで」 一つ、深く息を吸い込んで。 「明後日。迎えに行く」 「いいかな」 そう伝えた。 あの路地に、夜に来てくれないかと。 そう伝えて、また、手を握る。 「サヴィ。……悪いなぁ」「よかった」 貴方にしてもらったように、手首にキスをする。 「お前の命を貰えたら、俺は何にも寂しくないよ」 「俺と一緒に居てくれるんだ」「よかった……」 (-421) 2022/08/23(Tue) 17:45:35 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → 愚者 フィオレロ「好きにしろ。それだけ俺は買っているつもりだからな。」 言質を取ったと言われても、男もこの時は全くもって意識はしていなかった。貴方がそんな願望を持つとも知らなかったし、後に起こる事だって知る由もなかったから。 「俺が変わる、か…そうなる時は、この昼行灯の火が消えた時くらいだろう。お前さんが心配することは何もないさ。」 「無茶をしない約束は出来んぞ。俺は今でこそ顧問だが異国人である以上反感を持つ輩も多い。それにノッテの連中は血の気が多いだろう?全く、忙しい事この上ないという奴だよ。」 顧問としての仕事と、組織内での自分の立ち位置を守る作業と、どうにもやることが多いのだと肩を竦める。 実際、何かと理由をつけて殺そうとする動きは度々あったから、男は誰にも言わなかったが密かに刃を振るってきた。 (-422) 2022/08/23(Tue) 17:58:06 |
テンゴは、駄菓子屋のシャッターを降ろした。さあ、もう幕引きだ。 (a48) 2022/08/23(Tue) 17:59:06 |
【秘】 花で語るは ソニー → 墓場鳥 ビアンカまだ、朝も明けたばかりの早い時間のうちだった。 花屋に顔を出して、草木の準備をしながら電話を取る。内容は、娼館からの伝達だった。 ソニーが努めているのは何も知らない表の店ではなく、裏稼業のものとのやりとりもある店だ。 資金洗浄の窓口であったり、連絡役との伝達だったり。仕事に事欠く立場ではない。 だから直接組織の人間から店に対して連絡が来るのだって、不思議な話ではなかった。 「……カテナ? なんでこんな時間にウチに……」 電話先の女性の声は、まくし立てるような速さで喋る。焦っているようだった。 従業員の一人が、不穏当な話を小耳に挟んだということ。 まだ、組織の方との橋渡しとして顔役を請け負っている女性と連絡が取れていないこと。 不安を掻き立てるような噂の実際が、確認出来ていないということ。 焦燥のせいか脈絡もなく前後してまとまらない話を、頭の中で整理して、 息を、呑んだ。 宥める言葉もそこそこに電話を切り、店主に短く事情を説明して店を出る。 通報とどれだけ前後したのやら。いずれにせよ朝の街はまだ、呑気な風景を広げているだけ。 ひょっとしたらこの街の中で何人かが消えたということも、耳にしてはいるのかもしれないけれど。 死んだマフィアの人間のことなんて、市井は気にしてやくれなかった。 花の積まれていない配達車を走らせ、目撃情報を精査して。 その間に、通報された下半身の話も耳に入り、車が通ったのだろう道筋を精査する。 ひとりきりで探しているのでよかった。みっともない顔を誰かに見せずに済んだから。 最終的に車を走らせた先は街の漁場、何度か訪れていた埠頭のすぐ傍。 おそらくは、きっと。"使いで"のない上半身は、下半身よりひどい状態なんだろう。 探し出してやっと対面した頃には、元の形を想像するのも難しいのかもしれない。 それでも、ジャケットで包んで、震える手で、持ち帰った。 ……誰にも見せず、荼毘に伏そうかと。そう、わずかに頭をよぎった。 (-423) 2022/08/23(Tue) 18:03:02 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → ”復讐の刃” テンゴ「気になったもので。 俺は――料理好きのおてんば女がな。 親から言いつけられた許嫁だった。 それでもまあ愛着はわいててな、お嫁さんになって娘を生むんだだとかずいぶんな夢を持ってたよ。 まあ結婚する前に両親共々殺されたんだけどな」 あとで調べたら親が厄介な産業スパイだった。 相当な被害を食らわせられたマフィアからの報復、 男ははそこにたまたま居合わせなかったガキだった。 「お前はいいな復讐する気力があって。 俺の方は抜け殻みたいになっちまったよ。二度は起こしたくねえ」 (-424) 2022/08/23(Tue) 18:04:25 |
【秘】 花で語るは ソニー → 墓場鳥 ビアンカ/* お疲れ様です。諸々連絡が遅れてしまい申し訳ありません。 上半身についてなのですが、ひとまず提示のあった漁場で発見することにしました。 あともう一往復で終わるとは思うのですが並行して確認したく、 ・上半身はどんな状態でしょうか(これはロールで返答いただいても構いません) ・他の方々に見せず、こちらで処分することは可能でしょうか (想定される今後の話もあると思いますので、誰かに渡す予定があれば従いますし、 ふつうにクリスティーナのところに持ち帰るのでも構いません) 手が空いたときにでもご返答いただければ幸いです。 (-425) 2022/08/23(Tue) 18:06:30 |
【置】 ”復讐の刃” テンゴ【***】 昼行灯 :昼に灯る行灯のように、役に立たない者を指すテンゴは昼行灯だった。 顧問であり、異国人である以上、敵は多い。 故に役立たずを演じる必要があった。 役立たずを危険視する奴はそういない。 嫌悪することはあっても。 ただ、役立たずに大役は務まらない。 黙らせるのには色んな手を使った。 口八丁を使った事もあれば、威圧したこともあった。 だけれど、男は、ノッテ・ファミリーを愛していた。 大きな恩義の為だけに、男は生きてきた。 義理堅い東洋人。 それがこの男の本性。 昼行灯の火は、一度消された。 そして、その火種はもう、ない。 『昼行灯の火は、二度と、灯らない――』 (L5) 2022/08/23(Tue) 18:08:08 公開: 2022/08/23(Tue) 20:55:00 |
【秘】 ”復讐の刃” テンゴ → デッド・ベッド ヴェネリオ「ほう、そりゃあかわいげのある女だな。しかし、そうか。お前さんもだったのか。」 「元気なものか。それしかもう縋るものがなかったんだ。後を追う事も出来ない。彼女にしてやれるのはそれだけだと。それに、なぁ…俺は母国ではイタコって奴の家系でね。」 「いわゆる、死者をその身に呼んで会話するって言う役割を担う一族だった。だからか、死んだその時の情念を拾ってしまう事がある。その時も、彼女の無念が聞こえた。」 「なら応えてやるしかないだろう?幸運にも、俺は剣を嗜んだことがあった。流石に真剣を握ったことはなかったが、ノッテに頼れば御覧の通りだ。」 (-429) 2022/08/23(Tue) 18:16:49 |
ストレガは、ベッドの上で銀色を撫でている。 (a49) 2022/08/23(Tue) 18:31:47 |
【秘】 無風 マウロ → Niente ラウラ当然、返事はないし。 手に伝わる温度も、生者のそれではない。 形を整えるようにしたのなら、前髪から手を離して。 ふと、少し離して置かれていた 遺留品のショルダーバッグに目を向ける。 赤黒いものがこびりついて、元の色を覆い隠してしまっているそれに手を伸ばす。 「……何が好きだとか、何を持ち歩いてるだとか」 「結局、一度も聞いたことなかったな」 中に手を入れて、布に包まれた何かに触れる。 引き出して、開いてみれば。それは、"自室に置いていた写真立て"。 やっぱりこいつが持っていたのか、と視線だけを一度ラウラに向けて。 リカルドの手紙と、部屋を見た時からなんとなくわかっていた。 それがどういった意図だったのか、それまでは分からなかったけれど。 後ろの留め金に違和感を覚えて、フレームを外してみる。 変わらず入ったままの、3人の写真と、 見覚えのないメモ。 青年は黙って、そのメモに1枚ずつ目を通していくだろう。 (-430) 2022/08/23(Tue) 18:48:03 |
【秘】 狡兎 ツィオ → 冷たい炸薬 ストレガ【アジト】 「一瞬、天使に知り合いがいたか考えてしまったな」 このタイミングで、この勢いで声を掛けてくる相手に、 それ以上の稚気を発揮する度胸はなかった。 「何かな、ストレガさん。 今の俺の耳に入れておきたい情報だっていうんなら、 きっと有益な情報なんだろうなと思うから、 是非聞かせてよ」 ――それ以上に、 今齎されてようとする情報を無下にするほど愚かでもない。 こちらも、若干充血した目で答えた。 (-431) 2022/08/23(Tue) 18:49:49 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 名もなき医者 リカルド「寂しそうだったからに決まってるだろ。 立派な俺たちの家族を放っておけるか」 「面倒を見てくれるやつもいなくなるし」 お前たちがおいていった宝だぞ。 他のファミリーに持っていかれたらどうする。 「それに逆だ、お前が待つんじゃない。 俺が待っててやるから、行ってこいっていってるんだ」 聞こえもしない叫びに返しながら優しく撫で続ける。 やっぱり素直なくせにこういうときは駄々っ子だったなお前は。 「今から聞かせる子守唄はねえが、贈り物をしてやる」 (-432) 2022/08/23(Tue) 18:53:28 |
ヴェネリオは、" "に" "を落とした。 (c32) 2022/08/23(Tue) 18:54:51 |
【秘】 デッド・ベッド ヴェネリオ → 名もなき医者 リカルド「隣にいてくれてありがとう、あえてよかったRicardo。 欲しかったら俺の姓でも偽名に使っていい。 Venerio Firmaniが信頼した一番の部下、 ゆっくり待っててやるから、地獄の底までついてこいよ」 信じてるぞ、そう最後につぶやいて。 俺の 悪い勘 が当たらなければいいな、と、貴方の前髪をあげて額に顔を近づけ冷たい熱を触れさせた。 (-433) 2022/08/23(Tue) 18:55:45 |
【秘】 Niente ラウラ → 名もなき医者 リカルドゆっくりと、頷いて。 さ迷っていた視線はまた貴方に。 感情とはままならないものだ。 だからこそいつかに捨ててしまった。 それでも探していたのは──ノッテのおかげ。 抱くそれぞれの"好き"が。 同じである必要などないのだろう。 近くなった答えに、心が軽くなったような気がした。 その答えが相手と同じものでなくとも。 それが独りよがりと呼ばれても──ラウラの答えを探そう。 頭を撫でていた手が下りて、背に回れば。 僅かに首を傾けて。 口を開く前に──引き寄せられた。 大きな腕の中におさまる女は、目を見開く。 そのままほんの少し顔を歪めて、その背に腕を回した。 貴方達は不器用だ。とても不器用で。 それでもその中で欠落した者に多くをくれた。 そんな貴方達の幸せを願っていた。 …願っている。 叶わないことばかりでも、ずっと。──ずっと。 「…………"さみしい"です ね……」 (-434) 2022/08/23(Tue) 18:56:39 |
【独】 デッド・ベッド ヴェネリオ/* ここで、テンゴ。まさかの 骨噛み くん!?そんな、そんなことがここでわかることはあるか? きかね〜〜〜わこんなこと。だからロッシから情報もらってたんかお前!! (-435) 2022/08/23(Tue) 19:01:43 |
【独】 デッド・ベッド ヴェネリオ/* ヴェネリオとロッシとは実質マブ。(半分妄想) いやまじでなんか、サービスの秘話もらっちゃったよな。 お問い合わせはして、仲良くてもいいって聞いてたけど。 あれCVついてたよ。CVついてた〜〜。勘違いオタクしちゃお。イメージカクテルつくって飲んでるやつ。 いや、あれなかなかやばいやつだったな。 (-436) 2022/08/23(Tue) 19:04:10 |
【秘】 冷たい炸薬 ストレガ → 狡兎 ツィオ枕詞に敷かれたものはこの男のいつものことだ。 それに、目を見ればどういう状態かくらいはわかる。 故に反応もなしに、周囲を見回して。 「繰り返すが他言無用だよ。危険かもしれないから。 つってもマウロにはもう伝えたけどね……」 誰もいないのを確認すれば、小声で。 「あんたの"兄弟分"からの伝言。 『無理をするなよ』とさ」 「偶然とはいえ、あたいが動いてやったんだ。 あんな資料までわざわざ作ってね。 いいかい、妙な事して無駄にすんじゃないよ。 あたいが言ってる事、わかるね?」 じろ、と睨むような目つきで釘を刺した。 (-437) 2022/08/23(Tue) 19:09:52 |
【秘】 愚者 フィオレロ → 永遠の夢見人 ロッシ「ああ、そう言う……お気遣いなく。 ……ないんですか。本当に驚くくらいお変わりなくお若くそのままですね、ロッシさん」 まるで貴方だけ生きてるみたいだ。 なんて、思うのは魔法の様だと常日頃から思っていたのもあれば、案外ロマンチストな側面があるのもある。 「話したい、話したい、なぁ。 多分あるんでしょうけど、喉元で止まっているのは……動揺してるんですかね、俺。……」 暫しの沈黙──貴方が文字を描いたとしても、物理的な音はならないが──が続くとしたら、貴方は拾い集めた質問を投げかけてくれるだろうか。 このまま待って男が口を開いてもこの男からは曖昧な言葉しか引き出せないだろうが、互いに黙り合うならこちらが切り出して話し出しはする。さて、どちらになるだろう。 (-438) 2022/08/23(Tue) 19:23:00 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニーいつも海辺を通るたびに耳にする海鳥の声が、空々しく埠頭に響く。 港に身を寄せ合うようにして停泊する小型の漁船の一艘。 その舟艇に引っかかるように、彼女だったものは漂っていた。 いつも外出する時は結っていたはずの髪はばらばらに解けて、波にさらわれた海藻のように髪の毛だけが水面に浮いている。 朝早く動く漁師たちが騒いでいないところを見れば、まだ放り込まれてそれほど時間もたっていないのだろう。 絶望の中に希望を見つけることにどれほどの意味があるかは分からないが、 幸い、死体の状態は水死体としてはそれほどひどいものではなかった。 衣類はない。両手首はダクトテープで何重にも締め上げられ、いつも気を使っていたネイルは根本から剥がれ落ちていた。 全身の肌は、悍ましい程に白い。そこかしこに痣や煙草を押し付けたような痕があり、右腕はあらぬ方向に曲がっている。 腹部から電動の工具かなにかで荒々しく寸断され、血や内臓はほとんどが流れ落ちてしまったようだ。 その顔だけが、まるで武装するかのように施された耐水性のメイクが意地をはるように残る。 歯のいくつかが折れ、左頬が醜くはれ上がってはいたものの、少しだけ、見慣れた顔色をしていた。 内蔵を損傷するような負傷を何度も負ったせいか、鼻や口元にはどろどろとした血のかたまりがこびり付いている。 血の気の失せた唇を、どす黒いルージュが彩っているようで。 そのありさまは、不器用な娼婦の死に様、そのものだった。 海鳥たちの声が、悍ましさすらもなく埠頭に響く。 力の抜けきった顔の中で、瞳だけが力いっぱい閉じられている。 ――死の間際、彼女はどんな顔をしたのだろうか。 ↓[1/3] (-439) 2022/08/23(Tue) 19:28:06 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー死体を引き上げるならば、まず目に入るのは乳房の間に書きなぐられたメッセージだろう。 『女の穴で金稼ぎする、名誉ある男たちへ。 下だけあれば続きができるだろ? 返しておくよ、チャオ。 ↑下も不良品だ、9mmを一発挿れたらもう壊れた!』 ビアンカ・ロッカの直接の死因は、下腹部に打ち込まれた弾丸による大量出血とショック死だったという。 下半身にも、同じメッセージが描かれていたらしい。 それは彼女とファミリーを、著しく侮辱するメッセージだった。 ――そんなものを生前書かれたなら、もっと怒りちらしていただろうから、 きっとそれは彼女が死んで、物になったあと描かれたのだ。 ↓[2/3] (-440) 2022/08/23(Tue) 19:29:59 |
【秘】 墓場鳥 ビアンカ → 花で語るは ソニー/* お疲れ様です、ご配慮ありがとうございます。 上半身はこのような状態です。 処分していただくのも問題ありません。店の娼婦たちはみな見つかったら教えてくださいとは言いますが、彼女たちには埋葬の伝手などもないので結局はファミリーに泣きつくことになるでしょう。 ほかは、ご自由に。 なにとぞよろしくおねがいいたします。 (-441) 2022/08/23(Tue) 19:31:43 |
【秘】 花で語るは ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ非常灯だけが病室を照らす、深夜を回って明星さえ落ちてしまった宵の内。 足音を立てずに歩くのも、人のいない間を縫って歩くのも得意だった。 けれども朝になってしまえば、何かがあったというのは知られてしまうのだろう。 何処かで誰かと交戦をして、手傷を負った体からは長い間隔で血が滴っている。 死ぬことは出来なかった。死ねないだろうとは思っていた。 それでもどうしても今、此処に来なければならないと決めて、足を踏み入れた。 既に冷たくなって久しい体は、生きて笑っていた時とは同じようにも違うようにも見えた。 乏しい明かりの中に横たわる貴方の傍に立って、見下ろして。何も言えずに佇んでいた。 もうあと一歩もない場所に貴方が居る。だのに突き放しさえ、してくれやしない。 自分以外に動くもののない部屋の中で、しばらく自分の心臓の音だけが聴こえた。 幾許か振動にも似た音の鳴った頃にやっと動いた手が、かすかに貴方の指先に触れた。 熱のない感触をたしかめた瞬間、肘を伝って肩まで震えた。ひどく、恐ろしかった。 死んだ人間に触れるのだなんて初めてでもなんでもないのに。 「、ふ」 少し喉が動いただけ。ちょっと呼吸をしただけだったのにも関わらず、たったそれだけで、 それまで抱えていた何もかもが崩れ去ってしまったかのように、瞼の内から涙が零れた。 痕跡を残すヒットマンだなんて、その有り様としては失格だ。 誰にも知られず、悟られずにこの場を後にすべきだった。そのはずだった。 けれども溢れて顎まで伝う涙を拭うことさえ忘れたように、寝台に手をついて。 まだ夏の気温の下、死体の置かれた部屋はもっとずっと管理されているだろうか。 どちらにせよまだ死後硬直の緩解しない指先を握る。蝋のような感触だった。 「先生、」 → (-442) 2022/08/23(Tue) 19:48:34 |
【秘】 天使の子供 ソニー → デッド・ベッド ヴェネリオ喉から溢れ出した音は涙声のせいで不鮮明だった。耳のある者が居たとて、聞き取れやしなかったろう。 ほとんど崩れ落ちるように、白いシーツを握り込む手に体重が掛かった。小さく寝台が揺れる。 行き場を失くした涙が落ちて、床に僅かな血が溜まり始めてそれでも尚、何も起こらない。 動くものはない。誰一人。自分以外は、何も。 堰を切ったように泣きじゃくる顔はひどいものだったろう。息をするのも苦しいほどだ。 泣いて、泣いて。そのせいでやっと、凍りついた喉が開いた。吐いた息は全て嗚咽に替わった。 「……先生、なんで、……置いていかないでよ、頼むよ…… オレを傍において、連れて行ってよ。どうしたら、よかったんだ……」 あの日、貴方に最後に会った日。本当は貴方を殺すつもりだった。又は、殺されるつもりだった。 貴方が最後に見るものが自分であればいいと思ったから、もしくは、逆ならばいいと思ったから。 幼稚で独りよがりで、相手の都合など何も考えてやしないろくでもない考えだ。 けれども本気でそう考えるほどには、誰が死ぬかもわからない状況下で追い詰められていた。 耐えられなかった。ほかの誰か、何かに貴方を奪われてしまうことが。居なくなることが。 固まったままの指を何度も握り直して、手を添える。いつか握り返されたときのように。 そうすれば、熱を移せばまた動き出すのじゃないかと試すように何度も、何度も。 手の中でろくに動きもしない関節を包み込んで、頬を寄せて。指先に口付けた。 思慮深い頭の働きなど、もうほとんどしてやいないのだろう。泣いて酸欠の頭では手一杯だった。 ただ、目の前の貴方がもう二度と動かないことを受け入れられないように触れ続けた。 それだって稚拙で弱々しく、自分のことばかり考えているのがわかるような行動だ。 けれどもそれ以上の何にも踏み出せない、馬鹿馬鹿しいほど些細なものだ。 「何も、手に入らなくったって、いい。もう望んだりや、しないから。 生きて、あってくれるだけで、……それとも、オレが、殺せなかったから?」 結局は貴方にとって満足の行く終わり方だったのだとしても、男には伝わらなかったから。 ただ勝手にこうして己の不足を責めて、苦しんで。動かない体に、瞼に唇を寄せて。 生きている間に伝えられなかったものを今更に語るように、乾いた唇にも、同じようにした。 (-443) 2022/08/23(Tue) 19:50:22 |
【秘】 エースオブ―― ヴィオレッタ → 郵便切手 フラン>>フラン あなたのそんな覚悟には気付かずに。 あなたのそんな想いにも気付かずに。 フォークを置いて、手の中の鎖へ手を伸ばす。 しゃら、と小さな音を立ててネックレスを持ち上げて、 困ったように、笑う。 「素敵なお守り、ですね。 ですが……少々。受け取り辛いですね」 二度。そうたったの二度だ。彼と話したのは。 礼として受け取るには重すぎて、 想いとして受け取ることはできない。 くるくると回る翠玉。 その裏に刻まれた名は、自分のものではない。 それを見て小さく頷く。 ……私を誰かと重ねたのですね、きっと 苦笑とも溜息ともつかない吐息を零して、 そっとあなたの手の中に戻した。 「こちらはあなたの大切な方へ、差し上げてください。 今でなくても、いつか」 鎖を零した手をあなたの手に重ね、微笑む。 今度はあなたへの気遣いと感謝を込めた笑みには 僅かな寂しさの色が混じっていた。 (-444) 2022/08/23(Tue) 19:50:55 |
【秘】 狡兎 ツィオ → 冷たい炸薬 ストレガ「ああ。成程……。 ストレガさんも一枚噛んでたわけだ……」 それは、実は自分にとっては初耳だった。 実は自分は、状況に棹を挿していただけで、 流れ自体は他の誰かが作ったものだ。 面白そうに顎に手をやって。 「そうだな……。 それに対して言えることがあるとするなら……。 『自分の口で言いに来い』かな……」 至極楽しそうに、 釘を刺された部分で指で弄んだ。 「ありがとう、ストレガさん。 最高に面白い情報だそれは」 (-445) 2022/08/23(Tue) 19:55:18 |
【秘】 冷たい炸薬 ストレガ → 狡兎 ツィオ「あたいは部下から聞いて面白そうだったから 見に行っただけ。結果酷いもんだったけどね」 だからあんたが何の話をしてるかは知らないし、 探る気もない。そう零した。 「どうせ放っておいても明日には這い出てくるだろうよ。 じゃ、確かに伝えたんであたいは帰る。 あたいは無駄が嫌いなんだ、無駄にすんなよ」 ストレガはそう言って、去っていくだろう。 (-446) 2022/08/23(Tue) 20:00:20 |
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