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【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラああ、ムカつくムカつくムカつく!!! 何でもかんでも知ったふうなあの顔が!! 怖がってなんて、…………、オレをコケにしているのか!? アイツはあんな顔をしたか? あの、腹を空かせて常に眉を下げていたアイツが! 何がアイツを変えた……!? 「怖がってなんか──ない!」 それを証明するためにリーパーは、 そのままあなたをバルコニーから突き落とそうとし── ずるりと、チャンドラを抱えたまま手摺から落下した。 ⇒ (-69) 2021/10/25(Mon) 1:04:04 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラ「……っ」 夜の風が真下から吹いてくる。 中庭に留まる名も知れぬ鳥が飛び立つ。 「ぁ……」 幾多の人間の命を手折った殺人鬼は その時、茫然としていた。 「(死──、)」 「(ぬ)」 (-70) 2021/10/25(Mon) 1:05:17 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー「────」 高いバルコニーの上。 わたしの足から地面の感覚がなくなった。 だけどわたしはやっぱりこわくなんてなかったわ。 (-75) 2021/10/25(Mon) 3:28:29 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー何がわたしを変えたのか。 忠告の言葉。ビスケットの味。 あたためてくれた手。草原の思い出。 あなたの1番最初のお友達。 あなたにとって皮肉なことに。 同じ色 の声を持つあなたの協力者。そして、何より─── ──日が沈む。月が昇る。 待宵館に、夜がくる。 わたしたちの時間。 わたしたちは夜ならば、 何だって、できる 。 (-76) 2021/10/25(Mon) 3:29:03 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザーどんなに衝撃を覚悟しようとも、しなくとも。 あなたの身体は地面に叩きつけられることはない。 わたしがそうはさせないから。 きらきらと、月の灯りを纏いながら。 あなたの身体は重力を忘れる。 わたしがそうさせるから。 「こわがらないで」 わたしはあなたにもう一度告げる。 月の灯りを身に纏っては、あなたの手を取りながら。 ──空を飛んだこと。あなたはあったかしら? 蜂蜜色の髪が、大好きな、大好きな、夜風に揺れる。 (-77) 2021/10/25(Mon) 3:29:38 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 浮遊想 テラ「──……そう」 ほとんど吐息のように、わたしは零す。 いま、わたしを見てくれているわよね? ……でないと嫌よ。 でもそっぽを向かれたような、 そんな気 はしなかった。あなたはきっと、わたしを見てくれている。 わたしもきっと、あなたを見つめている。 「そうね、悪い男だわ。 そんなあなたに捕まったわたしは、愚かな娘かしら?」 わたしは目を細めてそう言った。 でも、仕方がないとは思わない? だってわたしは月だもの。 地球に惹かれてしまうのは、どうしようもないことよ。 (-78) 2021/10/25(Mon) 9:04:10 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 浮遊想 テラそれなのにあなたは、わたしのことを太陽と言う。 はみ出しもののわたしは、それを嬉しいと思う。 でも、悪いことだとは思わない。 だってそれがわたしだもの。 あなたにとっての太陽でいたいと思うのが、わたしだもの。 「……テラ」 あなたの両手が私の手を包む。大きな手。 わたしからあなたに触れられないもどかしさは感じるの。 でもあなたが触れてくれるから、それが嬉しくもある。 そんな風に思わせる、この気持ちがなんて言うものかわたしは知っている。 夜空に浮かぶ月に手を伸ばしても、届きはしない。 それでも手を伸ばすのは、月に触れたいと思うのは。 (-79) 2021/10/25(Mon) 9:10:10 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 浮遊想 テラ「 わたしも、テラのことが好きよ 」透明の言葉は聞こえない。 でも、あなたがなんて言ったのか、分かった気がした。 気がしました。気がしただけかも。 それでもわたしはこの言葉を、取り下げたりなんかしない。 (-80) 2021/10/25(Mon) 9:11:09 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラ「(ああ、終わる)」 「(こんなにも、呆気なく)」 「(馬鹿げた生涯は──……)」 「……──?」 逆さまの地面に見えたのは、 チープな灯りで彩られた造り物の空──ではなく。 正真正銘の夜空だ。 リーパーのの視界が一回転する。 畏ろしいほどに大きな、まんまるの月がカットインする。 同じいろの光が散らされたあなたの瞳が、リーパーを見ていた。 「……っ、空? 飛んでるッ……?」 リーパーは少女の身ならぬ膂力を持つけれど、 魔法なんか使えない。それはおとぎ話の中にあるもので。⇒ (-89) 2021/10/25(Mon) 21:45:21 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラ……ならばきっと、今。少年は、おとぎの国に居た。 あなたと空を泳いでいる。 夜を舞い、滑って、 いつかゲイザーが焦がれたワルツを踊るように。 (-90) 2021/10/25(Mon) 21:46:00 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラいつも興奮状態にあるリーパーは、 混乱すれば、一周まわってひどく冷静になっていた。 空を飛ぶだなんて。 これじゃ、敗走することもできやしない。 夜の匂いがする。 「……なんで……、」 「なんで助けてるんだよ」 「オマエを殺そうとしたオレなんかを……」 (-91) 2021/10/25(Mon) 21:46:56 |
【秘】 浮遊想 テラ → 夜の一族 チャンドラ「 こういう時、なんて言ったらいいのかわからないね 」「 うれしいことには間違いないんだけど、 それだけでいいのかなぁって言うか、 もっとなんか言えない?って思うんですよ。 ……う〜〜〜ん、カッコつかないなぁ〜〜〜 」「 や、テラってば兎にも角にも臆病者で。 あ? ん、ん、んー 」テラ テラ テラ 。口の中で何度か呟かれました。自分を指した時の、空っぽの音が出ませんでした。 「 ……テラはテラかぁ 」呟きの後、ぐい、あなたの手は強い力に引かれます。 テラがあなたを抱き締めます、抱き締めます。寒くは ないです、冷たくもないです。動くのにはちょっと不 自由かも。誰かに抱き締められていたら、当然ですね。 「 君がテラをテラと言うから、テラは怪物じゃないテラだ 」「 君がテラを、怪物って言うわけもないもんね 」囁き声は、どこか震えていました。 “そうじゃなかったら”という、 臆病な心からではありません。 ただの嬉し泣きの手前です。 (-93) 2021/10/25(Mon) 21:57:34 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー「………ふふっ」 驚くあなたの声を聞いたわたしは笑っている。 ──空を飛んだこと、なかったわね。 やっぱり普通はそんなに経験しないことなのかも。 昼の民はみんな、昼は空を飛んでいるのかもなんて思ったこともあったのだけれど。 箱入りの、そんな考えを改めたわたしは、今もあなたの手を引いている。 それなら少し、お散歩しましょう。 せっかくだもの。ふたりで夜空を踊りましょう。 (-96) 2021/10/25(Mon) 22:38:19 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー結果としてそれは、あなたの敗走を遅らせる要因になるのかもしれない。 でもわたしはそんなこと、知らないもの。 だからもう少し、星と月の照らす夜を滑る。 「……なんで?」 その言葉にわたしはまたくすりと笑う。 そう、殺そうとしたわね。 でもだからって見殺しにするものでもないでしょう? それに──── (-97) 2021/10/25(Mon) 22:39:13 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー月の煌めきを身に纏い、わたしたちは夜空を駆ける。 「お友達になりたいの」 飛んだ軌跡が星屑のような尾を描く。 わたしたち、夜の一族には見慣れた光景。 「言ったでしょう? あなたの事、これから知っていきたいの。 お友達になるのが1番手っ取り早いと、そう思わない?」 それなのに、死んでしまったらそんなこともできない。 わたしはわたしのために、あなたを助けたわ。 「───勝手なこと、言うでしょう? わたしって、そういう人なの」 あなたのお友達にだってそう。 突然友達になりましょう、だなんて言ったわ。 これじゃあ教育係も頭を抱えてしまう。 でもわたしは、そんなわたしをやめられない。 (-98) 2021/10/25(Mon) 22:40:49 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 浮遊想 テラ ───テラ。 あなたはそれを、色んな意味のある名前と言った。 あなたはそこから敢えて、怪物を見出した。 それをわたしは、あなたらしさだと言ったわ。 嫌いなのかしら。自分のこと。 人と違うから? 寂しかったから? 例えそうだったとしても。 ───それでもわたしは“テラ”が好き。 不意に、手を引かれた。 手を包んでいたあなたの手がなくなって。 代わりに私は身体の自由がなくなって。 既視感というのはこのことかしら。 だからわたしは直ぐに分かった。 わたしは今、テラの腕の中にいる。 (-100) 2021/10/25(Mon) 23:29:29 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 浮遊想 テラ「ええ、テラ」 冷たくはない。寒くもない。 どこかあたたかくすら感じる気がする。 気がするだけね。 わたしはそんな、あなたの胸に頭を預ける。 「あなたはあなた。わたしのあなた。 わたしだけのなんて言わないけど、それでもわたしのあなたよ」 あなたの声が震えるのを聞いたからか、わたしにも分からない。 でも気付いたら、私もあなたの背に手を回していた。 ……うそ。本当はわたしもしたかっただけ。 「だからこれからも───よろしくね、テラ」 わたしはあなたを抱き返す手に、きゅっと力を込めた。 (-101) 2021/10/25(Mon) 23:31:26 |
【人】 夜の一族 チャンドラ>>シトゥラ 夜が来て、わたしはあの時の使用人を探す。 あなたに会いに行くために声をかけた使用人。 見つけた時、怒られた。 どこに行っていたんですか、って。 わたしが笑ってただごめんなさいと謝ると、使用人は何とか許してくれた。 そうしてわたしは彼と一緒にやっとあなたの部屋を訪れる。 部屋の扉を叩く、ノックの音。 「───シトゥラ。チャンドラよ」 ……あなたにも、怒られるかしら。 (55) 2021/10/26(Tue) 0:27:15 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラきっとあなたの言葉を聞いたのならば、 リーパーはひとつだって頷かない。 殺そうとされたら、見殺しにするし。 どうして自分のことを知ろうとするのかも、わからない。 あなたの論理ひとつだって理解しようとしない。 魔法使いと夜空を跳ぶ。 あなたの輪郭はきらめいて、 どこか浮世離れしたうつくしさがある。 少年のリーパーは、それひとつで── 一目ぼれしてしまいそうだった。 今、ふたりは対等だ。同じ高さで夜を駆ける。 「…………、」 「……ハッ。マジで勝手だな」 「オマエが妙になってから……。 オレの話、ぜんぜん聞きやしないし!」 それはこの殺人鬼も同じだ。 ⇒ (-103) 2021/10/26(Tue) 0:39:56 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラ……怖さは不思議と、無くなっていた。 死の恐怖を通り過ぎて、奇妙な光景に囲まれて。 リーパーはなんだか笑えてきたのだ。 月の魔力に諭されて。理解不能を、許容する。 月の魔力に酩酊して、饒舌になる。 ああ、わかった。 心の奥底の欠落に気付いてくれたから。 手を差し伸べてくれるあなただから。 あなたのような性格だから。 ──聖なる月の色と、影に生きる血の色。 そのふたつは交わらない。 ……その振る舞い、言葉遣い、指先の仕草ひとつまで。 彼女が信じがたいまでの善人であるのは明白で。 だからこそ、殺人鬼のリーパーとは釣り合わない。 ⇒ (-104) 2021/10/26(Tue) 0:40:46 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラだからリーパーは、べっと舌を出す。 差し伸べられた手を払い除ける。 「バーカ! オマエの言うことなんて聞いてやらねー!」 「オマエと友達になんて、なってやんねェよ!」 「知らなくたっていい。オマエがオレを知る必要はない。 バカはバカ同士仲良くしてな! ゲイザーとチャンドラで!」 ……それは、話の発端── チャンドラとゲイザーが、友達になることの許容だった。 ⇒ (-105) 2021/10/26(Tue) 0:42:40 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラあなたの柔和な笑みが少年を見つめる間際、 リーパーはふいと顔を逸らした。 僅かに、たじろぐ。頬が赤いのは、興奮のせいだ。 「オマエはなんだか気持ち悪いから……。 殺すのはまた今度にしてやる!! 降ろせ!!」 あばれている。 (-106) 2021/10/26(Tue) 0:43:29 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザーこどものように、舌を出して罵るあなた。 わたしは振られてしまったらしかった。 「あら。ゲイザーとわたしのことは、認めてくれるのね」 あんなに拗ねていたくせに。 くすりと笑って、わたしはありがとうと告げる。 でもあなたに許可を取る必要、本当はないのよね。 「でも嫌われてしまったみたい。 困ったわね。こういうときはどうすればいいのかしら」 あなたが暴れたところでわたしはあまり困らない。 どちらかというと困っているのは、嫌われているところからお友達になる方法がすぐに浮かばないから。 (-107) 2021/10/26(Tue) 1:34:39 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザーわたしは別に嫌われたからと諦めるつもりはない。 でも嫌われているのだから、姿を見せると不快かしら。 不快な思いはしてほしくないのよね。 「まあ、いいわ。ええ、降ろしてあげる」 降ろさないという選択肢だって勿論ある。 友達になってもいいと、苦し紛れの言葉だろうと言質をとってしまうまでは降ろさない。 それくらい、わたしはしてもいいのだけど。 「 今日のところはね 」お世辞にも行儀がいいとは言えない言葉をささめいた。 そしてわたしはくすくすと忍び笑い。 降ろさなくてもいいのだけど、また次がある方がずっといい。 (-108) 2021/10/26(Tue) 1:36:36 |
【秘】 夜の一族 チャンドラ → 死神 ゲイザー中庭に向けて、ゆっくり少しずつと降りていく。 軌跡を描く星屑が、まるで夜空へ昇るよう。 地面までもうすぐというところで、わたしはあなたに尋ねることにする。 そんなに難しい問いじゃない。 「空の旅、楽しかったかしら?」 最後にこの答えさえ聞けば、その答えがどうであれ、わたしはあなたを地面に下ろす。 でもそれまでは、顔を逸らしたあなたの頬を見つめながら、いたずらっ子のように笑っていた。 (-109) 2021/10/26(Tue) 1:36:59 |
【人】 夜の一族 チャンドラ>>@34 シトゥラ ほら怒ってる。 当然だったわ。わたし、約束を破ったもの。 「……ごめんなさい」 さすがに笑いながらとはいかなかった。 あなたには心配をさせてばかりだもの。 そうして、借りたレシピノートを両手に抱え、わたしは広間に誘われる。 使用人にありがとうと別れを告げて、往来多い広間でレシピを広げた。 「……いろいろ考えたんだけど。 これがいいわ、わたし」 広げたページに乗っているのは ガレット・デ・ロワ 。寒さと空腹で今にも倒れそうな中、あなたたちが食べていたお菓子。 邪魔をしてはいけないと、あのときは声をかけなかったけど、余りにも楽しそうな姿だったから、記憶に残っていた。 (57) 2021/10/26(Tue) 2:31:04 |
【人】 夜の一族 チャンドラ>>@38 シトゥラ 一緒に食べたい人。 幸せを手に入れるチャンスを与えたい人。 その言葉にわたしは思い浮かぶ顔を上げる。 お礼を伝えたい人。優しくしてくれた人。 あなただって、その輪の中にいる。 「呼べるような人……いるわ。 でもシトゥラ。せっかくなら、わたし──」 「 食べたい人みんなで、このお菓子を食べたいわ! 」わたしは両手の前で手を打った。 自然と笑顔がこぼれ落ちる。 「でも作るの、大変よね。手伝うわ。 手伝わせて頂戴。シトゥラ」 わたしが料理をしたことがないのは、あなたには伝えたことがある。 でもこどもにだってできるお手伝いもあるはずだ。 (72) 2021/10/26(Tue) 21:14:46 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラリーパーは自身に選択権があると思っている。 この夜空で、絶対はあなたにあるというのに。 そして、夜の絶対者は彼を簡単には諦めてくれないらしかった。 それでもリーパーは否定する。 「ハッ! ……いいぜ」 「何度だって、オレに『友達になりましょう』と誘えばいい」 「何度だって、オレをどこかに連れ去ろうとすれば良い」 「オレは、……その度に何度だって。 そんなオマエの魂胆をめちゃくちゃにしてやる!」 ⇒ (-110) 2021/10/26(Tue) 21:21:45 |
【秘】 死神 ゲイザー → 夜の一族 チャンドラ──リーパーは、心底では、 あなたのことを決して嫌ってなどいない。 寧ろ、魅入られてしまった。一目ぼれしてしまった。 リーパーは本当に美しい花は、鑑賞に留めることこそが。 最も尊い愛し方なのだと思っている。 ⇒ (-111) 2021/10/26(Tue) 21:25:00 |
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