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![]() | 【秘】 けだもの イレネオ → また、歌う カンターミネごぶ。 泡立った音。 男の鼻から再度の血液が滴る。滑らかに流れ落ちるその様は明らかに異常だった。そして。 「ぉ」 「え゛、」 次いで喉元でぐるる、といやな音。 ぼた、ぼたと雪崩れ落ちる吐瀉物が男の口元を、喉を、服を汚した。傍にいたか、或いは組み敷いた貴方のことさえも。 貴方とこれは同じ。同じけだもの。同じ囚人同士。これとて碌な飯は食っていないのだろう、水っぽいすえたにおいが広がっていく。 綯交ぜの感情で滾る瞳が貴方に向く。 そのぎらつきは憎悪に似ていた。 ────けれど、それだけ。 男の身体は、そのまま。落ちる。 回線のショートと失血による意識レベルの低下。 貴方を捕えた手にだけは未だに力が籠っていたが、 この状況ではどうにか外すのは難しいことではないはずだ。 (-202) 2023/09/24(Sun) 18:21:00 |
![]() | 【墓】 また、歌う カンターミネ>>+45 ニーノ 「ちょっとじゃなくてしっかり心配しろ。 こっちは拷問受けた乙女だぞ」 乙女らしいので、もっと心配しろと文句をつけた。 こっちも大概身長は低いんだけども。 「あー痛ぇ。俺は休憩するから、 そこでおにーちゃんと話してな〜」 ひらひら、手を振って歩いていく。 #収容所 (+47) 2023/09/24(Sun) 18:24:37 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 幕の中で イレネオ表情、いや目を見ればわかる。 これは睡眠薬じゃない! 「クソッタレ!なんで違うモンが混じってんだよ!!」 自分の薬ならここで止まっていただろうに。 だが、この効果なら。余程薬物に耐性でもないなら。 突っ込んだ拳の表面を削られながら、握りを強くする。 一滴、一滴。男に流し込む。恐らく、あなたが嫌う血と共に。 掴まれた腕が嫌な軋みを上げる。 もう数秒遅ければ粉砕骨折、下手すれば腕を失くしていた。 幸い、そうはならなかった。ヒビは間違いなく入っているし、 代償に酸性の強い体液やらはかなり浴びる事になったが。 それでも、やっと終わる。人間が床に落ちた音。 饐えたにおい。どろどろだ、血だのなんだので。 だが、ともあれ、なんとか。この場は一旦、鎮静した。 (-206) 2023/09/24(Sun) 18:58:17 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 幕の中で イレネオ「……はぁー……」 最悪だ。汚されるのは勿論、傷だらけで。 さらにこのけだものは、下手すれば自分の話は聞いていない。 聞いてたとして覚えているかも怪しいもんだ。 だから、ここで見逃せば絶対復讐に来るだろう。 だが、ここで本当に全部を潰せば警察殺しだ。 自分の人生がメチャクチャになるのはどうでもいいが、 自分の周囲を巻き込むとなればそうもいかない。 つまり、選択の余地がないのだ。見逃すほか、ない。 最悪の一言に尽きる。せめてこのけだものが人間に戻った時、 死んでない事を天秤にかけて、頭を働かせるのを願いつつ。 「おい!見てんだろ!失血と怪我!指の切断! まだギリギリ壊死しないで済む!神経系が終わる前に とっとと拾いに来い!下らない喧嘩で死なせんなバカ共!」 カンターミネは、それ以上男を痛めつけなかった。 正直な話、両手両足くらいは破壊しておきたかったが。 『天秤』を考えると、或いは、己の正義として、 人間として、そうする訳にはいかなかった。 ガンガン!扉を蹴り、職員を呼ぶ。尋常ならざる呼び方をすれば、流石に駆けつけてくるだろう。千切れた指を男の傍に置いて、やってきた職員に捕まりながら処置を指示する。 まだ指は繋がるはずだ。リハビリは必要だろうけど。とにかく、自分よりそいつに輸血と感染治療、指の処置を。そう、ある程度必死に伝えて、ようやく、カンターミネはこの部屋を後にする権利を得た。 「……なあ、このニオイで歩くの流石に不味いだろ。 バケツの水一杯でいいからぶっかけてくんね?」 そんな言葉を呟きながら、けだものと別れた。 (-207) 2023/09/24(Sun) 19:09:36 |
カンターミネは、自分に出来るだけ天秤を平行にした。 (c21) 2023/09/24(Sun) 19:12:25 |
カンターミネは、バケツ一杯の水を浴びながら考える。 (c22) 2023/09/24(Sun) 19:14:19 |
カンターミネは、絶対退所祝いの前に、温泉に行ってやる。 (c23) 2023/09/24(Sun) 19:14:41 |
![]() | 【独】 また、歌う カンターミネ「あー」 ふと、収容所の壁際に寄りかかり。 「そういや、そうだったな。 エーコが万一捕まった時の事を考えると、」 先にやりあったけだものの顔を思い浮かべながら。 その唇と舌の蹂躙にまた、怒りを燃やしながら。 「あいつ、殺しとけばよかったかな?」 ああ。あいつが余計な事をしたなら、その時は。 俺以外に手を出す卑怯な奴だったら、その時は。 ネロ辺りと一緒に、本当の尋問を教えてみるか。 そんな考えを、……かぶりを振って、打ち消した。 お互い様、そういう事にしたんだから。一方的に。 (-210) 2023/09/24(Sun) 19:26:21 |
![]() | 【墓】 また、歌う カンターミネ「は〜ぁあぁ〜〜〜」 でっかいためいきを落とす。 「帰りてぇ〜……風呂入りてえ〜…… 情報聞きてぇ〜………………」 仕事中毒な女は午後からの検診に備えて 大人しくしている。やりあった結果受けた傷、 そういうもののちゃんとした処置をやっと受けられるのだ。 その診断の結果。 右拳咬傷、右前腕にヒビ、肋骨二本にヒビ、 鼻軟骨骨折、後頭部軽度切傷、他内出血多数。 まあ、相手よりは軽傷だけど、それなりにボロボロで。 「……え、何その棒。あっまさかあれ?鼻の骨折? いや知ってるよ待て待て待てそれ突っ込むんだろ? 突っ込んでぐりぐりやって骨の位置整えるんだろ? 待てってそんなん絶対痛いじゃんいやうんわかるよ 今の内にやらないと不味いってのはわかるが待っ」 それらの治療の結果、尋問中より大きな歌が響いた、とか。 (+48) 2023/09/24(Sun) 19:53:42 |
![]() | 【独】 また、歌う カンターミネ「……はあ?」 思わぬ《情報》に女は耳を疑った。 看守の噂、じゃなきゃ収容室の噂だ。 ダニエラ・エーコが『自首』した、と。 その正体こそA.C.Aであった、と。 それを聞いてこの女はと言えば。 「ほんとにおてんばだな……俺のお姫様は。 ……尋問、されるんだろうな。 ……いや〜〜〜〜尋問されないでくれねえかな〜〜〜〜」 大変自己中心的に、そんな風に呟いていた。 ぬあー、と頭を抱えた時に、肋骨が軋んで痛かった。 (-238) 2023/09/24(Sun) 22:43:12 |
カンターミネは、自分の身体のにおいを嗅いだ。まだ臭い気がする。 (c26) 2023/09/24(Sun) 22:56:39 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「……。」 檻の中。 冷たい壁に背を預けて、女は静かに座り込んでいた。 膝を抱えて。まるで、幼い昔の頃みたいに。 「…… ミネ… 」だとすると思い出すのは、どうしてもその名前で。 …そしてあの日に交わした約束のことで。 そっと後ろの壁に振り返り、こん、こんと。 …m.i.n.e……モールス信号。縋るみたいに、拳で刻む。 (-267) 2023/09/25(Mon) 1:00:32 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ刻む音。響く音。ここは牢獄で、隅の区域だ。 この区域に、檻はあなたのと隣のを合わせて二つしかない。 執行チームの全員が捕まっただとか、自首したとあれば、 これ以上人は増えないものの、それらの処理に追われ 署内の状況は想像するに大変な事となっているのだろう。 であれば、大人しい女の監視に裂く手が余ってるか、と 言われると、そこまでの暇はない訳で。 結果として見逃されたモールス信号に、 同じように壁を叩く音が隣の牢から聞こえるのも、 ある意味では必然に思われた。 さて、壁を叩く音はと言えば。 トン、トトトン、トン、トントン。 ……T.U.T.M.……? モールスにしては意味のない羅列。 これはどちらかというと、おふざけのノックのような。 「今時モールスはないだろ、モールスは」 (-293) 2023/09/25(Mon) 3:40:25 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ気の抜けたような声が、隣の牢から返ってくる。 幻聴、だったかもしれない。 「あと普通に今利き手の拳が痛いから勘弁してくれ」 幻聴にしては、はっきりと、いつもの声だ。 「ここ数日の俺は運が良いのと悪いのを 交互に繰り返してる。今は運が……どっちだろうな」 署内は今、猛烈に慌ただしい。拘留中の者同士が、 どんな関係かなど、最低限しか考慮されない。であれば、 収容所以外では誰との関わりも口にしてこなかった女が、 収容所ですら徹底してその名前を出さなかった故に、 隣の牢に偶然収監されてもおかしくは、ないだろう。 或いは、これこそ『天秤』なのかもしれないが。 「それで。自首、したんだって?『A.C.A』さん」 そんな声が続く。声音は……どうだろう、 怪我のせいか、内容のせいか、少しか細い声に思えるか。 ため息とともに、牢の壁を伝い、少しでも傍へ、と 廊下側の格子に寄りかかるような音が聞こえた。 貴女なら、わかるはずだ。か細い声には、 からかいの色が乗っている。怒ったり、 落胆しているような様子は、ない。 (-294) 2023/09/25(Mon) 3:51:19 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ当然、返事の期待はしていなかった。 世の中はそう甘くないのだから、そんなことが起きるのならそれこそ月並みに奇跡とでも呼ばなければならないだろう。 そんなことを思っていたから、壁が鳴った時は自分の耳を疑った。 …声が聞こえた時は、もっと。 それが現実だと受け入れるより前に、ぐ、と目頭が熱くなるのを覚える。 「…言い出したのは、ミネだよお。」 それも堪えて、 本当は堪えきれなかった分を一筋溢れさせ、 女の声音はいつも通り。「あははー。署内に激震走る、だよお。」 「…証拠握られちゃってえ、仕方なくう。」 それでも逃走という手段だってあったものをそれには触れず。 ついでいうなら、その 証拠 が何であったかにも、女は触れはしなかった。「これから尋問らしくてえ。」 「…やったことお?言えばいいらしいんだけどお」 「……。」 「………… ごめんねえ。ミネ。 」そのままの調子で言葉を続けていた女だったが。 あなたの声音に責められずとも。 どうしても、そう零れてしまった。 (-306) 2023/09/25(Mon) 7:28:55 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「そりゃそーだ、ハハハ」 返す言葉も、いつも通り。しっかり笑った明るい声。 本当は泣きたいくらいなんだけど、俺は王子様だからな。 「走らないでほしかったな〜、激震。 大方俺の装置が見つかったんだろ?しくったなー。 緊急用のフェイクも用意しとくんだったぜ、 次からはバレないようなのを作るよ」 返すのは当然のように、あなたではなく 自分の落ち度と次を思う言葉だ。 やれ次はプラスチック製にする、だとか、 もっと小型化か、じゃなきゃ大型化して 街中に配備するかだなー、だとか。 そんな風にしていたけれど、尋問の話と、 零れた言葉を聞けば歌は途切れた。 ▼ (-388) 2023/09/25(Mon) 17:05:11 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「……。あのな、"エリー"。 尋問についての注意もしたいんだけどさ、 それより先に一個だけ言わせてくれよ」 カンターミネがあなたをそう呼ぶのは、 決まってあなたの傍に居ると決めた時。 「ここまでよく頑張ったな。偉かったぞ」 こん、こん。撫でたり、抱きしめたりする手は届かないから、 その代わりにせめて自分を伝えるように。 壁をノックしてみせる。少し骨に響いたけど、 まあ、もう処置はしてあるから問題はない。 本当は、ここからが山場なんだろうけれど。 でも、絶対に言っておきたかったから。 ここまで走って、走って、走り続けた君に。 「……なあ。ありがとう、エリー。 お前が頑張ってるって知ってたから、 俺も頑張れたんだ。……あと少し、頑張ろうぜ。 そんで、終わったら、そうだな。温泉行って、 美味い物食って……あとは、式の予約でもするか?」 最後のは少し冗談っぽく。 だけど、まあ、結構本気で。 (-391) 2023/09/25(Mon) 17:06:49 |
カンターミネは、こういうのフラグっぽいから言いたくはなかった。 (c27) 2023/09/25(Mon) 17:08:09 |
カンターミネは、でもさあ!しょうがなくね!?自分に言い訳をしている。 (c28) 2023/09/25(Mon) 17:08:47 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「あははー。ミネのせいじゃないよお。」 それそのものは事実だと女は思う。 きっとどれだけ小型化しても、あの盗聴器はバレていた。 それは女が甘かったからだ。 非情でいられなかったからだ。 歌声に耳を傾けながら、申し訳ないような、それでも間違えたことはしなかったような、複雑な気持ち。 どっちつかずの蝙蝠は、その心までついにふらつかせてしまったのだろうか。 …そんなことはない、と女はまだ断言ができた。 (-406) 2023/09/25(Mon) 18:34:56 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネだから、歌声のその次に聞こえたその言葉は少しばかり効いた。 …一瞬、言葉に詰まっただけの時間があったように感じるなら、それは気のせいではないだろう。 「……あたしは、」 「でも、…ミネたちを、守れなかった……」 俯いた顔が小さく告げる。ぎりぎり、あなたに届いたろうか。 それはここ暫くずっと胸に刺さっていた棘で、痛んでいたけど見て見ぬふりした棘だった。 「…あは。でもお、うん。」 「だからねえ、…まだ、頑張れるよお。あたし」 「まだ終わってないからあ、…頑張るんだあ」 困った時、女はすぐに笑ってしまう。 だけど今は多分それで正しかった。 …ここで頑張らないと、今度こそ、本当に守れなかったことになってしまう。 (-407) 2023/09/25(Mon) 18:35:24 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「そんでえ、温泉行ってえ…」 「美味しいもの食べてえ…」 「…あ。」 「アレッサンドロさんにい、困らせたお詫びにコーヒーいれてもらうことになってるからあ」 「ミネも一緒に、飲んでえ…」 いつかと同じように、あなたの語った夢をなぞる。 「…式場はあ。」 「やっぱり、海の近くかなあ…。」 「…うん。そんで、ケーキの美味しいとこお。」 「それでねえ、またミネに」 「ぎゅーってしてもらいながら、寝るんだあ…」 ――うん。冷たいひとりきりの檻の中、薄く笑んで頷いた。 そんな未来のためなら、まだまだ。頑張れる。 「ぜえんぶ、付き合ってもらうからあ」 「覚悟しててねえ、ミネもお。」 咲くような、明るい声。 マリーゴールドの爪に、この日も静かに口付ける。 (-408) 2023/09/25(Mon) 18:37:17 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「……。」 小さく告げられた言葉に、続く笑いに、 こちらははっきりと間が空いた。 ふっ、と小さく吐く息の音。届くかは、少し怪しい。 「少なくとも、俺の事はちゃんと守ってくれてたよ。 だって傍に居てくれたじゃないか、ずっと。……今も!」 「ふふ、いいな。退所祝いにメシ食いに行く時、 そこにアレっさんも呼ぶ予定だったし。 エリーもそん時一緒に行くか?ついでにその場で アレっさんに言って腰抜かさせようぜ、 『俺達、結婚します』ってさあぁ!」 けらけら、笑う。海の近くかあ、なんて声。 「三日月島ってのもありだよな、そうなると。 知ってるか?あの島の鐘は音がいいんだ。 前休暇の時に行って聞いたのがよくってなあぁ…… やーでもケーキも、ってなるとアレっさんの 港の近くもありだよな〜。報告の時に相談するかあ。」 「勿論ですとも、俺のお姫様。いつでも、どこにでも。 お傍に居ますよ、俺は。なんせ王子様だからな」 けらけら、声音に幸せを乗せて。運んでから、 少しだけ真面目なトーン。 (-415) 2023/09/25(Mon) 19:30:32 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「……エリー。俺も尋問は受けた。イレネオ、だっけか? あいつだ。まあ幸い、相手は尋問の素人だったからさ。 ちょっとした怪我と、嫌がらせを受けただけで済んだ」 内容については、今触れる必要もないだろう、カットして。 「でも、もし尋問のプロが相手なら、エリー。 なるべく、隠すのはやめてくれ。 俺の情報なら何を言ってもいいから、 間違っても意地を張って何も言わないような事は、 しないようにしてくれ。頼むよ」 ほんの少しの間をおいて、ため息を吐く。 「……尋問する側からすれば、黙ってる奴は…… いいおもちゃなんだ。頑丈で、そのくせ、 黙ってるのが長い程、あとでよく啼く。やりたい放題して、 プライドも肉体もボロボロにして、情報も貰える。 いいことづくめのおもちゃでしかない。 だから、言えと言われたら、俺の事を言ってくれ。 他に守りたいものがあるっていうなら、それでもいい。 けど、せめて俺に、少しでもエリーを守らせてくれ」 カンターミネは悲しげに歌う。それは、『経験則』だ。 無論――する側、の。 (-416) 2023/09/25(Mon) 19:38:19 |
![]() | 【秘】 門を潜り ダヴィード → また、歌う カンターミネぶらぶらと広義の街歩きを続ける中、貴方の経営するモーテルの近くに差し掛かる。 主のいないそれはいつもよりもひっそりと眠りの中にあるように思える。 貴方の鼻歌が聞こえず、高笑いもなく、妙な踊りもない。 押せば鳴るテディベアにいいなあ、と言ったのは数日前のこと。 それから顔を合わせられていない不思議な先輩のことを思うが、今は警察に近づくこともできない。 というわけで、貴方が戻ってきたときのために端末にメッセージを残しておいた。 『先生へ お怪我はありませんか? あれば、痛みを眠って忘れようとしないでくださいね。 しっかりと休んで、ご飯も食べて、野菜も食べてください 無事に戻って来られたら、先生の歌が聞きたいです』 別にここからいなくなるつもりもないし、捕まるつもりもない。 ただなんだか、書いておきたい気分だったのだ。 (-427) 2023/09/25(Mon) 21:46:44 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「……。」 「…ふふー。…うん。それでえ、ミネもずっと」 「あたしの傍にいてくれたあ。」 ずっとずっと。昔から。今も。 心細い現実をこうして笑えているのは、あなたがそこにいてくれるから。 「アレッサンドロさん、びっくりするかなあ。」 「……。また、なんかたくさん高いものくれそお。」 それもたくさん。容易に浮かんで、また笑んだ。 するり、するりと小指を撫でて。 「ふふー。やったあ。」 「うれしいなあ。…王子様」 「 だいすき 」とくとく、自分の鼓動の音を聴く。 そうして真面目な声音には。 「…んー?…ふふ。」 小さな笑顔を、ひとつ。 女の中では不思議と、あなたの言葉を聞く今も、緩やかな空気が過ぎる。 (-429) 2023/09/25(Mon) 21:57:46 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「Quando si ama, anche i sassi diventano stelle.」 ささやかな声がいう。 「ありがとお、…ミネ。」 「ちゃあんと、覚えとくよお。」 「ミネが、あたしを守ろうとしてくれてること」 「でも、ねえ。」 「ミネたちのためじゃないと、あたし頑張れないからあ」 「…ミネたちのためだから、頑張れるんだあ、あたし。」 ダニエラ・エーコは、ノッテの一員だ。 だけどそのことを知る人間は殆どいない。 それでもノッテのために、――あなたたちが逮捕されたあとも、頑張れたのは。 あなたたちの“家族”を、守りたいと思い続けたから。 「…だからあ、ミネはあ」 「挫けそうなとき、あたしの心を守っててえ」 「ミネのためならあ、石も星なの。苦しいことも苦しくない。」 「…それよりミネを売る方が、あたしはもっと、苦しいなあ。」 女は歌う。静謐で神聖な、愛の歌。 「…そおいうのは、だめ?」とちいさく、その歌は続いた。 (-430) 2023/09/25(Mon) 21:58:44 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 門を潜り ダヴィード端末はきっと、今は警察に押収されている事だろう。 であるならば、そのメッセージが本人に届くのはまだ先の話。 しかし、それを読んだ時の『先生』は 送った今この瞬間でもありありと浮かぶだろう。 『ははぁん。故郷で待つ子供みたいな事言ってるな。 そこまで言われちゃ歌わない訳にもいかないなあぁ? 精々リクエストを考えておくんだな、アッハッハ!』 そんな風な言葉と共に、にやける顔が。 果たして本人が帰って、或いはメッセージが返ってくるまで、 あと何日かかるやら……。 (-434) 2023/09/25(Mon) 22:21:00 |
![]() | 【秘】 また、歌う カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「そ、いつでも、な。……しかしアレっさん、マジで山ほど 送ってきそうで怖いな。金使わせまくって隙をつくか……」 碌でもない事を考えつつも。 「その言葉だけで頑張った甲斐があるよ、俺は」 「……、……あーあ」 全てを聞いて、そう返して、自身の髪を指先で摘まむ。 今は少し、薄汚れてくすんでるけれど。 その汚れの向こうに、確かにあなたが好きと言った色がある。 死に物狂いでやり合った時、怒りの奥にあなたが居た。 ああ、つまりこれもまた『天秤』か。 誰も信じないとは言ってるけれど、 ノッテの、家族の情報をくれてやる気はしなかった。 馬鹿みたいな意地の、似たようなふたり。 「……そんな風に言われたら、俺は何も言えないじゃんか。 ずるいよなー、エリーはさあぁ〜……」 ふうっ、と息を吐いて、声音には前向きな諦めの音。 「わかったよ。ずっと、支える。傍で、守る。ただし! 必ず無事で帰ってきてくれよ?俺の星が石に戻らないように」 「二人で、星を見続けられるように。また、夜を過ごそう」 女は歌う。貴女と共に歩む、愛の歌。 「約束だ」そうやって、改めて二人を結びつけるように。 (-452) 2023/09/25(Mon) 23:28:00 |
カンターミネは、歌う。何度でも。 (c32) 2023/09/25(Mon) 23:29:42 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → また、歌う カンターミネ「…えへへ…。」 どうやらこれは、ずるいらしい。 覚えておこう。なんてこれはしたたかな部分。 「…うん。」 「ずっと、いっしょ。あたし、忘れないよお。」 「…ミネはね、どこにいても傍にいてくれるのお。」 目を閉じればいつだって。 瞼の裏には鮮やかなライムグリーン。 まどろむような心地で、女はあなたと歌を歌う。 「あとちょっとがんばってえ」 「無事で帰って、またミネのモーテルにお泊まりするのお」 「…あれ。結婚するなら、もうお泊まりじゃないかもお?」 けたけたと控えめな笑い声。 それでまた少しだけ気が晴れて、 「…帰ってくるねえ、無事に」 「やくそくう。」 甘えるような、声がする。 (-469) 2023/09/26(Tue) 0:06:38 |
![]() | 【秘】 あなたと共に カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「そっちこそ頑張れ。負けんなよ?」 「もしボロボロになっても、全部受け止めるからな!」 くすくす、笑いながら歌を交差させる。 「ん、じゃあ俺は無事に迎えるよ。約束だ。」 甘やかすように、声を返す。 しばらくはそうやって二重奏をしていた。 それで二人の歌が落ち着いてきた頃に、ふと。 「……そういや、ペネロ……違った、えー…… アメリアか。アメリアがこの前見舞いに来てさ。 『友人からの伝言』を伝えてくれたよ」 「近く、"祭"があるんだとさ。"一緒に行く"か? 行くんなら、その時迎えに行くけど?」 (-472) 2023/09/26(Tue) 0:19:52 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → あなたと共に カンターミネ二重奏の先。 挙げた名前に、覚えはなかったけれども。 「…あー。」 「 ……よかったあ。ちゃんと届いたみたいでえ 」その内容で、誰だかわかった。 安堵の声が、小さく落ちる。 「んん。そおだねえ。お祭りはあ」 「警察のお姉さんにはあ、なかなか縁がないからあ。」 ――この先も、それを続けられるかはさておいて。 「上司さんの許可が出ないとお」 「難しい…と、思うなあ?」 許可が出る、ということはきっとそういうことなのだろうから。 あの人の場合、そうとも限らないような気もしはした。 (-480) 2023/09/26(Tue) 0:40:55 |
![]() | 【秘】 あなたと共に カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ「ま、警察のお姉さんまで一緒に祭やってたらな…… "クビ"になってたら喜んで誘いに行ってたんだけど」 白馬の王子様というより、子供を攫う魔王のような事を言う。 「……ま、上司に会ったら軽く聞いといてみるわ。 俺一人だけで祭に行くのも寂しいから。 ダメだった時は〜……そうだな。 モーテルで待ってるよ、仕事が終わって帰るのを」 割と好き勝手やってたしな、あの上司殿。 声をかけるタイミングもまあまああるだろう。 ダメならダメで、別にいい。 「……エリーに、汚れたのを綺麗にして貰いたいし」 ぼそ、と欲塗れの言葉を落として、息を吐いた。 「……そろそろまた牢の入れ替えの頃かあ? 収容室でも散歩してくるかな……どうせ待ち時間だしな」 きっとそこで上司に話でも聞く事になる。 伸びをひとつ、痛っ!と零しながら時間まで、 他愛ない話なんかをして過ごすだろう。 (-484) 2023/09/26(Tue) 0:59:51 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → あなたと共に カンターミネ「んー、うん。わかったあ。」 「…上司さんに、もし会ったらあ…」 「……。」 「いや、やっぱいいやあ。自分で言うからあ。」 拗ねたような声音。 お怒りだろうか。真偽は不明。 「んー?ふふ、まかせてえ。」 「 …お仕事、早く終わらせて帰るからあ 」あ。新婚さんみたい。 “汚れ”の意味は…その時聞こう。そうしよう。 「そんなのあるんだあ…」 そしたらお隣じゃなくなるのかなあ。 それは少し名残惜しかったけれども。 …女の方も、これから戦いが待っているわけで。 それまでの時間は和やかに過ごす。 入れ替えか、女が呼ばれていくまでは。 まるでここが、牢屋なんかじゃないみたいに。 (-486) 2023/09/26(Tue) 1:19:02 |
![]() | 【墓】 歌い続ける カンターミネ「……なるほどよくわかった。 どうも今月、俺は運が向いてない」 SNSどころか物理的な音声となって署内を駆け巡る噂に がああ、と頭を掻きむしる。拷問吏との会話を思い出して、 やっぱり俺は賭け事なんかしなくて正解だと思った。 ――だから信用出来ないんだ、どいつもこいつも! (+78) 2023/09/26(Tue) 16:34:40 |
![]() | 【秘】 歌い続ける カンターミネ → 傷入りのネイル ダニエラ全部の言葉をひとつひとつ並べて、 たからものの箱に入れておきたい所だが。 生憎、時間はそれほど優しくはないらしい。 やがて看守がやってきて、どちらかを呼び出す頃。 「んじゃ『またな』、エーコ。」 看守になんて俺だけの名前は、あげない。 再会の約束はたったの3文字で。 二人分の星見の石室を、後にした。 (-572) 2023/09/26(Tue) 16:41:27 |
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