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【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド身をよじるのではなくほんの少し離す。小突くのではなく指で突く。それだけなのだから君も甘いものだ。確かにそこにある信頼を受け取って男は目を細めた。 男の髪は年齢にしては柔らかい。薄い色は加齢や疲労のためではなく生来のものだと君は知っている。むしろ愛する家族に囲まれていて、健康的に艶めいているようにすら見えた。 再会した頃はこうではなかった気がする。 「そんなことを言ったって」 撫でる手を捕まえ、今度は手首にキスを。 「君は素敵だよ、ドニ。どれだけ変わったって、一目で君だとわかるくらいに」 出会ったのは高校生の頃。 少年期の一年は長い。どころか一月でさえ。彼らは一つの春、一つの秋で驚異的な変貌を遂げて成長する。ぴかぴかの顔をして入学した少年少女は、卒業する頃にはそのかんばせに大人の片鱗を宿しているものだ。 当時のふたりにそう関わりがあったわけではない。少なくとも密に連絡を取る仲ではなかった。そんな時期を越して五年以上の空白があった。それでも彼は君を見つけ、君は彼を見つけた。 『運命的だと思わないか?』 男が君を口説いた最初の文句は使い古されたような言い回しで、それでも妙に似合っていたものだ。 変に草臥れたような雰囲気と整った容姿のアンバランスさが古き良き常套句を体現したようだった。疲れているのかと君が問うていたなら、彼は素直に答えていただろう。「まさか。むしろ健康になったくらいだ────」 ▼ (-227) 2022/08/22(Mon) 10:24:27 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「僕が代わりに言ってあげてもいいけどね」 手を撫ぜてくっくと笑う。面倒くさいと言いながらも心を否定しない君の様子を愛おしんでいるらしかった。ほら見ろ、と言わんばかりに。 「それじゃダメだろう。君だってあの子の笑顔を見たいはず」 「あの子だって、君から言ってほしいはず────」 よく笑う男だった。 その全ては家族への愛に満ちていた。揶揄うことこそあれ、馬鹿にしたことなんて一度もなかった。 手が手を撫でている。あやすように、宥めるように、 引き留めるように。 「墓でも掘り起こしに行くかい。付き合うよ」 「気が済むまで、僕が周りを見ていてあげる」 もちろん君は、そんな形での報復は望まないのだろう。 けれどほんの少しでもそれを望むなら、きっと男は言葉通りにした。 手を引いて墓場に向かい、或いは朝が来るまで、君が妨げられぬように守ったはずだ。 ひとえに、君への愛ゆえに。 (-228) 2022/08/22(Mon) 10:36:26 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ/* 現実逃避でスプシ見てみんな可愛いねしてた みんな可愛いねフフ ヴェルデくんとソニーくん身長1センチしか違わん フフ ソニーくんちっちゃ ちっちゃ なあ ほんまに24歳か? (-261) 2022/08/22(Mon) 15:41:15 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー君が何者であれど。何処に所以を持てど。如何な秘密を持てど。 男は君を愛しているのだ。 かつて敵対組織の庇護下にあったとしても、いつか男の傍を離れていくのだとしても。今君が家族であるのなら、それだけで男は君の全てを愛しただろう。これはそういう男だった。 そしてそれを、君が知らないはずもなかった。 それでも告げなかったのは見栄だったのか、怯えだったのか、或いは信頼だったのだろうか。 そのいずれだったとしても、きっと。 それを男が知れば、眉を下げて言ったのだろう。 「そうか。僕が足りなかったね」────…… 君が弱音を零せば、男は朝まで君を抱いていた。 君が涙を零せば、それが止むまでに頭を撫ぜた。 君が一言呼べば男はどこまででも駆けつけたし、 君が袖を引けば何をしていても振り向いたろう。 君が傷だらけだったなら男は自分の肌を切り取って与えただろうし、 君が渇くなら、飢えるなら、その肉を分けることさえ厭わなかった。 ほんの少しでも求めたのなら、きっと全てに応えてくれた。 受け入れるのではなく能動的に、何もかもを与えてくれた。 全て夢物語だ。何一つ叶わなかった。 男は愛することだけは何より得意で、 隠しごとを見抜くことは苦手だった。 ▼ (-264) 2022/08/22(Mon) 16:29:28 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー「十分だよ、よく頑張ってる」 預けられた体温をしっかりと受け止めその背を抱く。 上背のある男に対し、君は長身とは言えない。どうしたって目線を合わせるには君が顎を上げるしかなくて、けれどその差は抱き締めるのに都合がよかった。 知った手が髪を撫でる。首筋、耳から頬、背中。落とされるキスは慈しむそれであり、労いの意味も込めて。 「ああ、もう……」 「トトーだってば。それじゃ他人行儀じゃないか」 毎度の嗜めるような声音。 「一番に、自分の身体を大切にね。君がいなくなってしまうのが一番寂しい」 「何か欲しいものはないの? 何かあげたいな。それとも、久しぶりにドライブでも行こうか」 (-265) 2022/08/22(Mon) 16:32:57 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 墓場鳥 ビアンカ「煩わしいようなら、僕が面倒を見てあげようか」 きっと君は頷かない。 「出て行きたくなれば、勝手に出て行くさ。寂しいけど」 つい、と細めた目を街路に走らせる。鋭いものではなく、懐かしむような色をしていた。 寂しいよ、というのは男の口癖のようでもあった。誰かが巣立つ時、彼は決まってそう言う。心からの祝福を贈り、与えられる限りの贈り物を与え、最後の抱擁と口付けをして、眉を下げてはにかんで。 寂しいよ、寂しいね、寂しくなるね。 いつだってその口の端には、家族に対する愛慕が滲んでいた。 幼げな仕草を見て緩めた頬は、同じ形。 「なら、この誓いは僕の胸に秘めておくとしよう」 「……ああ、そう」 男の歩幅は広く、歩みは遅い。それは君が足を速めてなお、いや一層、緩慢になったように見えた。 「楽しい時間は早く過ぎるね。残念だ」 こつ、こつ。 君のそれより幾分低い音が鳴って、止まって。 「じゃあビアンカ、約束通り、夜に」 「オルサキオットのチョコラータを買ってくるよ。みんなで分けるといい」 (-270) 2022/08/22(Mon) 17:24:14 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ君は聡い。淀みなく紡がれる言葉に、危うく感心するところだった。少し目を見開いて、それからウインナーの先を齧る。そうしながら黙って君の言葉を聞いている。 君は聡い。 それは子どもには不要な聡明さだった。 そうあらねばならなかった道程を思う時、男はいつも少し、眉間に皺を刻むのだ。 子どもは無償の愛に溺れていればいいものを。 何の不安も知らずに笑っていればいいものを──── 金の髪が陽の光を弾く。 よそ見をした男の煙草がそれを焦がさないように、さりげなく押し返して歩いた。 滔々と流れゆく君の言葉に耳を傾けて、その言葉を聞いた。 眩しさに目を細めたのは、きっと昼時の明るさのせいではない。 ▼ (-275) 2022/08/22(Mon) 18:08:18 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → どこにも行けない ヴェルデ「……ああ」 「そうか。……大きくなったね」 口にした言葉はなんだか滑稽でもあった。 君が本当に幼かった頃を、男は知らない。せいぜい季節が二回りした程度の時間は、長い付き合いとは言い難い。 それでも男はまるで赤子の頃から知っているような手つきで君に触れたし、生まれた頃から傍にいるような慕わしさで君の名を呼んだ。 「そう言ってくれるなら何よりだよ、ヴェルデ」 君はまだここにいる。 君もいつか大人になる。 それがとても嬉しくて、 同時に少し寂しいのだ。 (-276) 2022/08/22(Mon) 18:16:31 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「そうかな? 僕は元々こうだろ」 己の過去と比べられる度、男はいつもそう言った。 隠すような仕草はない。誤魔化すような違和感はない。本人が、心からただそう信じている────そんな風に。何もおかしなことはないというように言った。 今も昔も、この男の笑顔は変わらない。 ……こうも振りまくものだったかという疑問が残るけれど、作っているようにも見えないはずだ。 愛撫にも満たない触れ合いで親愛を示す。男は君を抱くことに遠慮しなかったが、そう毎度そればかりを好む性質ではなかった。今日は気分ではないのだろうか、ずっと生ぬるい触れ合いを続けている。 「Bravo.」 手を撫でていた手が再び頭へ。そうやって何度も、何度も、刻むように示す。目を細めながら、君の言葉を聞いているのだ。 冷静な君の言葉。 死体と言えど、いや死体だからこそ、それは相手のものである。マフィアの所有物に、プライドの象徴に、安易に手を出すものではない。誰だってわかっている。 わかっていて、男は口を開く。 「うん」 開いて。 力を込められた手首に視線がつ、と動いた。君の視線をなぞって、もう一度手首に。 「……」 君は口を開くだろうか。 それとも、こちらが先に? (-291) 2022/08/22(Mon) 20:10:02 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルドいくら触れ合っても傍にいても信頼しあっていても、心の中の全てを知りあうことは出来ないのだ。 だから、必要以上に詮索しない君の姿勢はきっと賢い。そうしていればきっと、不要な疑いや争いが生まれることもなかった。 男は君を真っ直ぐに愛している。 結局、それだけはどう足掻いても真実なのだ。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 男は君の目を真っ直ぐ見ている。 男は君の声を真摯に聞いている。 「……」 「どう」 「だった かな……」 それが、 初めて、乱れた。 それでも。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 ▼ (-348) 2022/08/22(Mon) 23:44:16 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルドほんの、束の間。 束の間の、空白。 すぐに、消える。 消えて。 「どうしたの、ドニ。……怖いことがあったのかな」 「聞かせて御覧。僕に教えて?」 いつも通りの元通りだ。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 男は君の目を真っ直ぐ見ている。 男は君の声を真摯に聞いている。 (-349) 2022/08/22(Mon) 23:44:57 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド揺れる瞳も、震える腕も、男は静かに受け止めていた。 濁流のような言葉も、それでもまだ震える声も、男は静かに受け止めていた。 いて。居て。 君の言葉が途切れた頃、ようやくその頬に手を伸ばす。それから。 色の薄い唇を、君のそれに重ねた。 時が止まったように感じたかもしれないし、与えられる人の体温が不快だったかもしれない。 或いは、それとも。 離れたのは君が拒んだからかもしれないし、男が自分からその身を離したからかもしれない。 或いは、それとも。 どうあれ男は君に口付け、それから微笑った。 「随分と熱烈な告白をするじゃないか。誰に教わったの?」 「妬けるな、少し」 笑っている。 それは、少し。あまりにも。 「僕は死なないよ、ドニ」 ────滑稽だった。 人はいつか死ぬ。いずれ死ぬ。必ず死ぬ。誰だってわかっている。ここじゃ子どもだってそれを知っている。 それなのに男は、心から信じているように言うのだ。当たり前のように言うのだ。まるで陳腐な映画の主人公のような朗らかさで。 「君たちを愛しているから」 男の言葉はいつも甘い。 ────甘い。 ▼ (-386) 2022/08/23(Tue) 10:41:55 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「だからね、ドニ」 咲う。 「欲しいならいつでも言えばいい。いくらでもあげる」 酷く滑稽で、愚昧だ。 思えば男には欲があまりなかった。 食欲だとか、性欲とか、そういったものは人並みにある。辛いものは苦手で甘いものが好き、なんて選り好みはするし、ワインだって赤よりは白が好き、だと零すけれど。何かを欲しいだとか、足りないだとかと、強請ることはなかった。 ただいつも与えた。際限なく与えた。 与えられるものをいつも探していた。 欲しいものなんてなかったのかもしれない。 彼の瞳に淀みはない。 彼の言葉に影はない。 彼の表情に澱はない。 彼の行為に毒はない。 ただ、愛だけがある。 (-387) 2022/08/23(Tue) 10:44:15 |
サルヴァトーレは、家族を愛している。 (c30) 2022/08/23(Tue) 10:45:48 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド/* こんにちは。 続きを送る前に、時系列の確認だけしてよろしいでしょうか。 こちらが話しかけたのは一日目ですから、現在の時間軸は 【一日目:夜】 であると認識しております。死亡は 【三日目:夜】 ですから、少し時間が空くと思っていて(この晩はひとまず平和に終わって)よろしかったでしょうか。もうこのまま殺すという感じなら、話し始めたのも三日目だということにしてもいいかと思います。 (-408) 2022/08/23(Tue) 13:30:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 花で語るは ソニー男は家族を愛している。 愛する家族を、この世全ての残酷さから守りたかった。 降りかかる痛みを一つ残らず取り除いてやりたかった。 そうするにはきっと愛するだけではきっと足りなかったのに、 こんなところに繋ぎ止めておくのは一番の間違いだったのに、 男はそれでも愛だけを与えて、与えて、与え続けた。 それしか知らないように。 それだけが呼吸のように。 祭りの活気が地上から立ち上る。熱となって空気を揺らめかす。陽光が周囲に金色を振り撒く中、柵の極近くで隙間なく身を寄せ合う二人の姿は、どこか接吻にも似ていた。 「もちろん、僕のソニー」 いつだって、彼は君を愛おしんでいる。 「あそこは少し、僕には狭いんだけど────」 「いいよ。少ししたら車を回そうか。それとも、今日もお仕事?」 我儘にも満たないそれに少し笑った。首筋に空気が通って震える。長い指が髪を撫ぜる。愛してる、囁きが降る。 この温度を、君はいつまで覚えていられるだろうか。 いつまでも、彼は君を愛おしんでいる。 (-413) 2022/08/23(Tue) 15:13:36 |
【秘】 家族愛 サルヴァトーレ → 陽炎 アベラルド「奪うだなんて、面白いことを言うんだね、君は。僕の心はもう君のものだって言うのに!」 「……奪わなくたってあげるさ。君になら、なんだって」 甘い。 甘い。 酷く、甘い。 言葉を吐く口元は、柔和に弧を描いている。 「僕はね、ドニ。君たちを愛してる」 「だから大切な人も、ものも、全部あるのさ。ここにね」 わかるかい、と瞳が問いかける。言い聞かせるように覗き込む。アメジストの双眸は君から目を離さない。君だけを見据えて逃がさない。 触れた頬から男の体温が伝わる。周囲の空気は冷えているわけではないのに、その手はなお熱い。肌の下には、確かにあたたかな血が巡っているのだろう。 「……なんて顔をするんだい」 眉を下げて目を細めるそれだって、一つの笑みの形ではあるのだ。 俯く君の顔を、さらりと流れた髪が少し隠した。それを丁寧に分ける男の手つきは、怒られて隠れてしまった子どもを探す親のそれに似ていた。 「まったく君は、僕を捕まえておくのが上手いね。今夜は少し話したら帰るつもりだったのに」 「君が君でいてくれて、僕がどんなに嬉しいか────」 (-418) 2022/08/23(Tue) 16:19:30 |
【独】 家族愛 サルヴァトーレ/* いい感じの紫の宝石調べようと思ったんですけど アメジストの石言葉、「誠実」「心の平和」「真実の愛」らしい ぴったり (-420) 2022/08/23(Tue) 16:28:03 |
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