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![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット絡められた指に視線を落として、訥々と語られる内容を呑み込んで。 答えのない道を、共にぐるぐると回る。 居場所がない。 帰るところが無いなら、外へ行く理由も希望も無いのだろう。 『居場所があれば、』 『バットくんは』 『外へ行こうと思えますか』 もう18になる少女は、青年より先に施設からいなくなる。 18歳までしか、施設にはいられない。 だから青年もいつか外の世界に放り出されてしまう。 その時に帰る場所が無ければ、青年はどこで生きていけば良いのだろう。 "病気のこども"。 "病気の"こども。 穏やかな青年に似合わない侮蔑をなぞった色が夜色に溶けて。 歳よりも幼さを残した顔貌に寂しさを浮かべて。 『居場所がないのなら』 『私が居場所になっては駄目ですか』 友人が抱える荷を少しでも持ってあげられるだろうかと。 外に誰か一人でも、拠り所になる人がいれば。 あなたは、眩しさに瞼を閉じずにいられますか。 (-93) 2022/05/01(Sun) 17:09:55 |
![]() | 【赤】 高等部 ラピス「………」 普段より少しぎこちない笑みを見留めて。 ほんの少し心配げに眉を下げたけれど、すぐ戻る。 今はトットに任せよう。 『それではまた、明日のこの時間に』 (*33) 2022/05/01(Sun) 17:30:12 |
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ラピスは、夕方頃、一人で中庭を散歩している。 (a17) 2022/05/01(Sun) 18:46:12 |
ラピスは、ベンチに腰掛けてひと休み。すとん。 (a18) 2022/05/01(Sun) 18:47:01 |
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![]() | 【赤】 高等部 ラピスがたがた、かたん。 椅子を一脚、教卓まで持ってきて黒板の前に置く。 背が足りない分の踏み台代わりだ。 いつも持ち運んでいる小さな黒板は、机の上でお留守番。 それに乗り上げて、チョークを握る。 普段使っている精々ノートくらいのサイズの黒板と比べたら、教室のこれは何倍も大きい。 目一杯使ったら、どれだけの量を書けるだろう。 それがちょっとわくわくして、口角が持ち上がる。 ここには仲間以外は誰も来ない。 大人だって。 誰にも何も言われず好きにできる。 (*40) 2022/05/01(Sun) 20:00:55 |
![]() | 【赤】 高等部 ラピス「………」 かつ、かつ。 最初はゆっくり。書き味を確かめる。 軽やかに響く音を転がして。 「………」 かつかつかつ。 少しずつ速く。思考と筆記を同速に。 とうとうと文字が流れて。 ───────────。 段々と速く。文字が思考を追い越していく。 流れるままに動くままに書きたいままに吐き出すままに書いて重ねて引いて塗って叩いて。 Water (H2O) is a polar inorganic compound that is at room temperature a tasteless and odorless liquid, which is nearly colorless apart from an inherent hint of blue. It is by far the most studied chemical compound and is described as the "universal solvent"and the "solvent of life". It is the most abundant substance on the surface of Earth and the only common substance to exist as a solid, liquid, and gas on Earth's surface. It is also the third most abundant molecule in the universe (behind molecular hydrogen and carbon monoxide). Whisky or whiskey is a type of distilled alcoholic beverage made from fermented grain mash. Various grains (which may be malted) are used for different varieties, including barley, corn, rye, and wheat. Whisky is typically aged in wooden casks, which are often old sherry casks or may also be made of charred white oak. (*41) 2022/05/01(Sun) 20:03:34 |
![]() | 【赤】 高等部 ラピス「………………」 吐き出しきった後に残ったのは、緑が殆ど見えなくなった板。 椅子に乗っても手の届かない部分だけ、綺麗な面が顔を覗かせている。 長く息を吐く。 こうすると、頭の中に空白ができる。 一種の思考整理だった。 随分と磨り減ったチョークは新しいものに替えておき。 黒板消しを上からかけていけば、書くのに要した時間よりずっと早く黒板は元の姿を取り戻した。 椅子も元の位置に戻せばおしまい。 何食わぬ顔で、小さな身体は教室を後にした。 (*42) 2022/05/01(Sun) 20:04:26 |
![]() | 【独】 高等部 ラピス「………………」 夕暮れの傾いた日差し。 オレンジ色に染まった中庭で、ぼんやり風に当たっている。 遠くには森があって、緑が段々と黄昏の色を宿していく。 あの奥に行ってしまえば、暫く戻ってこれなくなる。 "神隠し"が、起こる。 その正体が何なのかよく知っている。 今日連れて行かれるのは──、 「………」 幼い彼らの顔だとか。 気難しい表情を浮かべる実習生の顔だとか。 困ったような表情をした後輩の顔だとか。 いろんなものがまた頭に浮かんでしまって、よくない。 どうにも落ち着かなくて、黒板の隅から隅までチョークを擦り付けて塗りつぶす。 短くない時間、ただそれを続けていた。 (-117) 2022/05/01(Sun) 20:18:17 |
![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バットあなたが考える間、ずっと手は重ねられていた。 その下にある温度を直接は感じられないままで。 二人で参考書とノートを囲んで、小さな授業を開いているときを思い出す空気。 噛み砕いているのを待つのは嫌いじゃない。 きっと青年が動物と戯れているときに感じる安らぎと同じだと信じている。 交わす言葉の中で、青年の心の一端に触れた。 ほんの少しだけ絡んだ指先。 そこにあるのは期待なのではないかと思った。 思いたかった。 上からもう一度大きな手を掴まえる。 大きさが違いすぎて、此方が縋るみたいに見えてしまったけれど。 ぐっと、下から真っ直ぐに深い色の眼差しが見上げる。 『一緒に行けないと思っているから』 『外には行けないと思っているから』 『神隠しが起こる森に、近づいているんですか』 (-123) 2022/05/01(Sun) 21:01:01 |
![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 月鏡 アオツキ「………」 緩く首を振る。 謝るべきはあなたではないと思ったから。 優先されるものが何かわからないほど、子どもでもなかったから。 鉱石特有の滑らかな感触が指先に伝わるだろう。 ことり。 机と触れ合った部分から、作りものみたいな硬い音がする。 指先が触れた部分から、慮る気持ちが沁み込む。 目を閉じてその言葉を反芻した。 『ありがとうございます、先生』 『誰か一人でも自分の味方がいると知っていれば』 『きっと私はまだ頑張れます』 治ることを望んでくれる人がいるのなら。 見守っていてくれる人がいるのなら。 『病気を治して外に行こうって、指切りをした子もいるんです』 『だから、大丈夫です』 (-137) 2022/05/01(Sun) 23:58:49 |
![]() | 【人】 高等部 ラピスすんすん、匂いにつられて小動物が現れた。 といっても偶然鉢合わせてしまっただけなのだけれど。 お菓子作りの道具が横に並んでいるのを目に留めたが、深く尋ねることもない気がしたのでお辞儀で挨拶するに留まった。 寮の厨房は何人かで使えるから、空いたスペースで手鍋に牛乳を注いで火にかける。 「♪」 マグカップとスプーン、蜂蜜の瓶を用意してあとは待つだけ。 小さな身体はこういうときに他人の邪魔にならなくて便利だ。 他には、たまに野いちごの入った小瓶や、お菓子を作る手つきを目で追ったりしたくらい。 ホットミルクを作るだけなので、実習生より早く厨房からはいなくなるだろう。 (41) 2022/05/02(Mon) 2:30:45 |
ラピスは、『あの■■■野郎、ケーキにだけは素直ってか……』とは幸い考えていなかったようだ。 (a21) 2022/05/02(Mon) 3:07:28 |
ラピスは、部屋に戻るときに共用スペースのメモを見た。 (a22) 2022/05/02(Mon) 3:07:47 |
![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 月鏡 アオツキ同室者と交わした約束。 見守ってくれる大人たち。 それらがいるなら、大丈夫だと思えた。 『声も病気のひとつです』 『中等部に入った頃に。』 それまでは普通に発話ができていたことを記録で知っているかもしれないし、実際に見たことがあるかもしれない。 『またお話をしたいです』 『私もアオツキ先生のお話が気になりますから』 『先生のご病気は治ったのか、とか』 かつてこの施設に居たのなら、同じように何かを抱えていた筈だと。 ペンを走らせている間に自分も黒板にかつかつ、チョークを走らせる。 『今日はありがとうございました』 始めと同じようにお辞儀をして。 何もなければそのまま空き教室を後にする。 (-182) 2022/05/02(Mon) 11:51:20 |
![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット「………………」 こくり。 未だ話さなければならないことはきっとあるのだけれど。 青年にも考える時間が必要だとわかっていたから、今は頷いた。 ゆるく絡んだ指と肩に掛かる重みの分くらいは、青年を支えられていると思って。 いつだって自分を傷つけないように思い遣ってくれる青年が、報われる日が来てほしかった。 『これからたくさん考えましょう』 『一緒に、たくさん悩みましょう』 『バットくんが納得できる"いつか"を見つけましょう』 ゆっくり、あなたの歩む速度で構わないから。 あの森で起こることは、"神隠し"ではないことを少女は知っていた。 今日誰が居なくなるのかも、少女は知っている。 そういう役目を持っているから。 私はわかっているのに、それを止めてあげられない。 ▼ (-214) 2022/05/02(Mon) 19:56:38 |
![]() | 【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット離れがたい手をゆるりと解いて、立ち上がる。 座っているあなたとはこれで丁度目線が合うくらい。 いつもより困った顔を少しでも誤魔化したくて、日に背を向ける。 日差しが顔に影を落とした。 『森は危ないから気をつけてください』 『今日は、特に。』 胸のあたりに掲げた黒板。 それだけしか、文字にはできなかった。 (-215) 2022/05/02(Mon) 19:57:38 |
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