情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新
【赤】 鬼 紅鉄坊[ これ程までに声を上げ身に触れても、目一つ開けず反応も無い千 暮らしの中健康的に変わった筈の肌は、また白くなってしまった。 取り戻してしまった記憶が、 目前で大切なものを喪う悲劇が三度目であることを理解させる。 戦慄く唇、震える身体。 かっと見開いた紅の目尻に水が溜まっていた。 喪いたくない、喪いたくない、……喪いたくない。 直ぐ其処にある終わりの前で、 尽くす手も見つからず、それでも諦められない鬼は ──やがて、気づきに至る。 ] (*19) 2021/07/02(Fri) 2:30:57 |
【赤】 鬼 紅鉄坊[ 血 山の獣の命を啜り得てきた、潤沢な 六尺の身体を動かせる程のそれが! 鬼は笑みを浮かべていた。 それは日常の中、千の隣で時折緩んだ表情とよく似たもの。 抱くのは村人への憎悪ではなく、愛した者を守れる喜び。 常軌を逸した思考に至っても、鬼は花嫁の愛した鬼のままでいる。 ] (*20) 2021/07/02(Fri) 2:31:15 |
【赤】 鬼 紅鉄坊待っていろ、千 [ 上向きに千を横たえ開いた大口は、無論彼に牙を剥きはしない。 持ち上げた自らの逞しい腕の、太く血管が流れる手首へ ──鋭い犬歯を突き立て、一気に噛み切った。 ] ぐ……っ [ 堪らず漏れる呻き声。 躊躇いの無い自傷行為は外敵に与えられるのとは違う痛みを齎す。 それでも、止まることは無い。 顎を持って口を開かせ、押し当てるように傷口を触れさせる。 その喉に鬼の血が流れ込んでゆく。 ] (*21) 2021/07/02(Fri) 2:31:33 |
【赤】 鬼 紅鉄坊生きろ、未だ死んではならない どうか目を開けてくれ……、私の元へ戻ってきてくれ [ 急激な失血とこの場に漂い続けている濃厚な血の芳香 この人間を喰らえと、足りぬものを補えと叫ぶ本能。 その一切を無視し抗いながら、 鬼はひたすらに血を注ぎ、呼び掛け続けた。 ]* (*22) 2021/07/02(Fri) 2:31:47 |
【赤】 鬼 紅鉄坊…………ああ、ああ、嗚呼 [ いつしか降りていた闇の中、全ての変化を捉えることは 視界からも余裕からも叶わなかったが 知性の光が一つ紅に灯る瞬間を、その目は間近で視た。 それは鬼から言葉を奪い取る程の光景。>>*27 あれ程苛み続けていた痛みと食欲が、今は全く感じられない。 ] お前は、助かったんだ 今はそれだけ分かればいい [先程までの姿を想えば、戸惑う千に記憶がないことは察せられる。 しかし今は多くの説明はせず、掌に齎される感触をただ受け入れた。 背にしていた壁に千を抱えたままで寄りかかり、 力を抜いて腰を落ち着かせ、それから。 ] (*31) 2021/07/02(Fri) 2:36:50 |
【秘】 鬼 紅鉄坊 → 吸血鬼 千愛している 全て捨てて、共に旅立とう ────二人で自由になろう [自分を取り戻した日、いつか伝えると決めた言葉を告げた。 予定より早くなったが、今こそその時。 奪われかけた命を、二度と喪わぬ為に。 ]** (-165) 2021/07/02(Fri) 2:37:14 |
【人】 紅鉄坊男が二人、何かを話している。 息を殺し足音を潜め近づき、様子を覗っているが その内容が聞き取れる位置に来ても、意味がよく分からない。 こんな寂れた資料館なんかに、強盗が入ったというのか。 どれ程建物が新しく見えても、金があるわけがないだろう。 大昔は山ばかりだったという、過疎化の進んだ田舎町だが 夜遅くだって、いくらでもコンビニやガソリンスタンドがあるのに。 自分から見て正面に開け放たれた窓、左右に展示物が置かれている 差し込む光により、それを眺める男達の輪郭が浮かび上がる。 一人は黒い短髪の大柄な男、青緑色の上着越しにも筋肉が分かる。 もう一人は脱色したのか白い髪の小柄な男で、やけに着込んでいた。 (106) 2021/07/02(Fri) 23:07:44 |
【人】 紅鉄坊侵入経路は明確だが、窓に鍵を忘れていたのだろうか。 今までそんなことは一度も無かったし、 警報装置が起動していないのも奇妙だ。 だが、凶器の類は見当たらない。 懐にあるとしても、こちらは直ぐに然るべき場所へ連絡が出来る。 何が目的かは未だ検討も付かないが、 その現代社会を舐めた行いをすぐ後悔することになるだろう。 踏み込み、彼らを手持ちのライトで照らしながら叫ぶように言った。 (107) 2021/07/02(Fri) 23:07:57 |
【人】 紅鉄坊驚いたように両者の身体が反応し、こちらへと振り返った。 そして、そして──……これはなんだ? 続ける言葉も思考も足も、何もかもが停止してしまう。 自分は休憩室の机に突っ伏して、居眠りでもしているのか? そう思ってしまう程、信じられないことだった。 (109) 2021/07/02(Fri) 23:08:22 |
【人】 異形 紅鉄坊男達が一瞬で、まるで普通の人と思えない姿に変わったなどと。 奇特なコスプレイヤーという言い訳すら出来ないじゃないか! 勇敢な警備員ぶろうとしていた筈が、腰を抜かして座り込む。 大柄な──より異形が強い方が何か弁明する言葉など、 耳にも入らないどころか、必死に距離を取ろうとしてしまう。 その時、小柄で白い方が動いた。 一歩、一歩。この状況など意に介さないような軽い足取り 目前まで近づいて、屈んでこちらを紅い片目が凝視した。 男達はどちらも片方しか目が開いていなくて、 紅色をしていることも同じらしい。 補い合うように左右対称のそれの意味を考えてしまったのは、 恐ろしさでついに後退ることも出来なくなった現実逃避なのか。 (111) 2021/07/02(Fri) 23:09:03 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新