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【憑】 虹色カンタビレ サアヤ「ベアトリス、ごめ、こんな事なるなんて、 ボク、思ってなかったから…。 でも大丈夫、ボク、あいつ信用してないから、 ボクが乗っ取られることは、無いよ…?」 ふーっ、ふーっ、と痛みを逃すために息を長く吐き出した。 焼きついてるだけじゃなくて、ボクのお腹は本当にはらんでしまったように膨らんでてさ。 「だから褒めて、ベアトリス。 …姫様に、怪我も治して、もらって…。」 意識が途切れそうだけど、そんな自分を奮い立たせて意識を保つ。 姫様。姫様に会えばなんとか。 ──ああ、そんな時。 (21) 2023/10/25(Wed) 22:29:27 |
【憑】 虹色カンタビレ サアヤおとが、きこえた。 なかまのおと。ボクの仲間の。 だからぼくはそれに応えるように。 鍵盤をポーン…と叩いたんだ。** (22) 2023/10/25(Wed) 22:30:02 |
【人】 純真アンサンブル リッコ啓介の盾は間に合ってくれた。 さしずめ今の啓介は私だけのナイト…ってところかな? それに笑みを深めて。 「無茶はしないで…死なないでね。 啓介に死なれたら私、悔やみきれないから。」 (23) 2023/10/25(Wed) 22:30:29 |
【人】 純真アンサンブル リッコそう囁くと、音が聞こえた。 なかまの音だ。ピィンとまた爪弾くと、互いの音が共鳴していく。 それは遠くにあっても他の皆にも聞こえ始めただろう。 世界中のどこまでも響いて届くように。** (24) 2023/10/25(Wed) 22:30:59 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ本来ならばこんな初夜になるはずではなかった。 華かな婚儀の後、王宮の寝室で。 きっと二人は結ばれたであろうに。 初めての行為は女性に負担が大きい。だから、ユスターシュはチアキローズを闘わせたくないと考えた。 事が急を要していようとも、だ。 しかし彼女はーーユスターシュの提案には首を横に振った。 待っているなど嫌だと。 「……知っている。思い出した。 洞窟で熊と対峙した時も、 貴女は俺に援護や防御の魔法をくれたから。 だが、貴女の身体はーー。」 (25) 2023/10/25(Wed) 22:47:15 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ傷つけたのは己である。ユスターシュは唇を強く噛む。 彼女の決意を変える言葉を持っていない。 「……どうやら俺が恋をしたのは 戦乙女(ヴァルキュリア)であったようだな。 姫よ、貴女に従おう。 俺はどうすればいい?」 ウンディーネは黙ってやり取りを見守っている。彼女が考えるように、ユスターシュに対する強い想いから味方をしているのだろうか。* (26) 2023/10/25(Wed) 22:47:36 |
【見】 不良少年 滝沢啓介 「無茶しねえよッ!それよりこいつ、 どうしたら倒せるんだ!? キリがねえぞッ!」 盾なんか使った事がない。なんとなく振り回すだけでどこまで対応出来るのか。 その間に彼女は仲間と連絡を取ったようだ。 これでなんとかなるのか? そんな油断から気が弛んだ。 枝が子供の一人にヒュッと飛ぶ。 「あぶねえッ!」 盾では間に合わない。啓介は飛び出して、子供の前に立ちはだかる。 その腹部に向かって太い枝は一直線に向かいーー ぐさり、と。 身体ががくんと揺れた。焼けるような痛みが走る。貫かれて啓介は呻く。 鮮血が飛び散った。 「ぐあッ…!」* (@6) 2023/10/25(Wed) 23:01:12 |
【人】 爽快ブラスト チアキ「──ありがとうございます。 ユスターシュ様は…もし妨害が起きるなら それを止めていただければ…。」 何せ、私が。いえ、私たちが今からやることはほんとうに正しいかわからないのです。 何もならないかも知れません。 今、なかまたちがどうしているかもわかりません。 ただ、一縷の望みをかけてそれを行う時。私たちは無防備になってしまうのです。 だから私は胸の上できつくマントを巻いて留めるとそうお願いしながら魔具を展開させました。 (27) 2023/10/25(Wed) 23:07:50 |
【人】 爽快ブラスト チアキおとが。 音が、聞こえます。 だから私はそれに合わせて気持ちを鎮め、ドラムを叩き始めました。 タン、タッタタン、タン、タラララララララ…。 タン、タッタタン、タン、タラララララララ…。 タン、タッタタン、タン、タラララララララ…。 それは皆に整列を促すようなものでした。 それは一糸乱れぬ更新の始まりのようでした。 魔力が、音が、あたりに広がっていきます。 私を止めるためか、それとも耳障りだと感じたのか、精霊たちが襲ってくることもあったでしょう。 でも私は傷つこうとも、ドラムを叩くのを今はやめませんでした。 (28) 2023/10/25(Wed) 23:08:18 |
【人】 純真アンサンブル リッコ姫様の音が聞こえ始める。 私は呼吸を整えて魔力を高めていく。 サアヤの音と合わせられるように。 啓介の血の色に顔が歪んだ。 駆け寄り、彼を庇って私の背中に枝が突き刺さる。 けほ、と血を吐きながら、それでも──。 (29) 2023/10/25(Wed) 23:08:59 |
【憑】 虹色カンタビレ サアヤみんなの音が聞こえ始める。 ボクは喉を湿らせ魔力を整え始める。 か細い声でも、共に唄えるように。 たとえこの命潰えても、ボクがボクらしく、生きていけたと誇れるように。 (30) 2023/10/25(Wed) 23:09:24 |
【人】 純真アンサンブル リッコ人は迷わずに生きることはできない ただひたむきに生きる為だけに生きるのでは無いから 太陽を目指し天へと伸びる木々のように 迷いなく生きていけたならと願いながら (32) 2023/10/25(Wed) 23:13:26 |
【人】 爽快ブラスト チアキああ それでも私たちは生きている この世界を彩る様々なものと共に だから私たちは歌を歌う あなたたちと共にあることに感謝して (33) 2023/10/25(Wed) 23:14:36 |
【独】 爽快ブラスト チアキ (-1) 2023/10/25(Wed) 23:20:51 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリスベアトリスが初めてサラマンダーを召喚したのは、双子の弟であるユスターシュが無理矢理に連れ去れた時であった。 アイツら、赦せない! 怒りに燃えるベアトリスに誰かが囁いた。 ーー力が欲しいのか? それに力強く頷いて答えた刹那に、小屋が焔に包まれた。 メラメラ燃える建物の中にいるのに、熱くはない。 むしろ抑えられない怒りの方が熱く感じるぐらいだった。 ミュジークの騎士達と幼いユスターシュはこの光景を外から眺め、ベアトリスは焼死したと判断したのである。 まさか、彼女が精霊使いとして覚醒したとは知らずに。 ベアトリスが自身の力を自在に使えるようになり、宮廷魔術師に上り詰めるまでを詳しく語る必要はないだろう。 生き別れた弟を取り戻す。 それだけのために、必死に這い上がったに過ぎないから。 地位や力を得るために。 だが、ベアトリスは今、力を失った。精霊サラマンダーはサアヤの胎内に取り込まれたから。 (37) 2023/10/25(Wed) 23:27:24 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリスあまりの光景に真っ青になり涙を溢す。血濡れの上にカエルみたいに腹を膨らませたサアヤが無事には見えないから。 「馬鹿ッ…なんで、なんでこんな無茶を。 貴女が、貴女が傷ついてまでこんなッ…」 褒めろと言われたが口から出るのはそんな言葉だ。一体彼女はどうなるのか。サラマンダーを使役出来ないベアトリスの魔力に治癒能力はないし。 「嫌よ、サアヤお願い、 死なないでッ…」 必死にしがみつく。冷静ではないから、ユスターシュを呼んで水の精霊の癒しを使うなどは考えられない。 その時澄んだ音が響いた。 魔力の波動。 何が起こるのか。* (38) 2023/10/25(Wed) 23:28:15 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ精霊たちは暴れ狂っていた。 海は荒れ船を転覆させた。 山では地鳴りが起きて土砂崩れに多数の人が巻き込まれた。 暴風が看板や木々をなぎ倒し、怪我人が多数ーー ありとあらゆる自然の災害が人々を襲う。 人間にはなす術もない。 彼女は何をするつもりなのか。 素肌にマントを纏った戦乙女は凛とした御姿にて立つ。 リズムが刻まれた。 魔力を放つ楽器が輝きを放つ。 「姫ーー危ないッ」 すぐに敵と化した精霊が襲い来る。屋上に降ってきたのは無数の雹だ。それはまさに弾丸のようなスピードで、チアキローズを狙っている。 (39) 2023/10/26(Thu) 7:50:47 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「ウンディーネ、ウォーターバリアをッ」 ユスターシュの叫びにウンディーネは応える。水の膜がチアキローズとユスターシュを包む。 しかし雹はいくつかバリアを突き抜け、二人を傷つける。 それでも彼女は演奏を止めない。 「くっ…!」 ユスターシュの剣技はこのような敵には全く役に立たない。 (40) 2023/10/26(Thu) 7:51:10 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス何処からか響くドラムにサアヤが応えた。 鍵盤を必死に叩いている。 しかし、彼女は見るも無惨な状態であるし、息も絶え絶えだ。 「サアヤッ、サアヤ無理しないでッ! このままだと、貴女はーー」 顔はもうお化粧が崩れてぐしゃぐしゃだ。ベアトリスは子供のように泣きじゃくる。 彼女が必死に闘っているのだけは理解できたが、もしこんな状態で演奏を続けたらどうなるのかーー また、母体の中のサラマンダーは、どうなっているのか。 (41) 2023/10/26(Thu) 7:51:45 |
【見】 不良少年 滝沢啓介枝は深々と刺さり背中まで貫通、啓介を深く傷つける。 だがそれでも、啓介は必死に里津子を護ろうとした。 「里津子、頑張れ…ッ!」 歌声が音楽に重なる。 それは緩やかな川のように流れ、満ちていった。 逃げ惑い、恐怖に震えていた人々はその美しい音色に聞き入り立ち尽くす。 共に歌いだしたのは小さな少女であったかーー 歌声は集まり大きくなっていく。 (@7) 2023/10/26(Thu) 7:52:22 |
【見】 不良少年 滝沢啓介 ーー産めよ、増えよ、地に満ちよ。 奇跡がそれに応えた。 突然広がる青空。雲は真っ白、清々しいほど澄み渡った空に巨大な虹が出現する。 イーリスの力が発動したのだ。 七大精霊の威厳を示すような虹に、精霊たちは戦きながら思い出す。 人との穏やかな暮らしを。 元は、一方的に使役されるのではなく共存していたことを。 ピタリ、と海の荒れが、暴風が、地鳴りが止まった。 チアキローズたち降り注いでいた 雹もなくなった。 動物園で人々を襲っていた樹木は、しおしおと枯れてしまった。 歌に寄せられた沢山の人の願いが叶えられたのだ。 まさに奇跡。 まさに祝福。 だがーー大いなる見返りは、それに見合う犠牲を伴う。 かつて願いを叶えたドローイグの人間はそのまま破滅した。 猫が日々の平穏を願う程度なら犠牲も少ない。だが、精霊たちを鎮めるほどの力はきっと、何か大きなものを欲するだろう。 例えば、人の命。 (@8) 2023/10/26(Thu) 7:53:02 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「……雹が止んだ。あの虹はーー。」 ユスターシュとチアキローズは屋上にいる。頭上には抜けるような青空、そして覆い被さるような虹があった。 ただ、呆然とする。 ウンディーネがポツリと呟いた。 『イーリスの力デ、精霊たちは 治マリマシタ。デモ… キット、良クナイ事が起キル。』* (42) 2023/10/26(Thu) 7:53:55 |
【人】 焔の魔術師 ベアトリス美術室の窓からも巨大な虹は見えた。 今は放課後、本来ならば日が落ちてくる時刻だ。しかし空は青空、である。 精霊たちの反乱をベアトリスはまだ知らない。サアヤを抱き締めた。 「サアヤ…ッ!お願い、生きて!」* (43) 2023/10/26(Thu) 7:54:33 |
【見】 不良少年 滝沢啓介青空に驚いたのは人間だけではなかっただろう。檻の中の動物たちも、巨大な虹に見入る。 そして啓介は。 変身が解ける。腹の傷を手で抑えるも、出血が激しい。 そのまま膝を地に着いた。 暴れていた樹木が枯れていくのにホッとするが、視界はぼやける。 「里津子?どこだ、なんか スゲエ寒い、身体が寒い… りつ、ーー…」 うつ伏せに倒れる。その真下の地面は啓介の血を吸って赤く、赤く染まっていく。* (@9) 2023/10/26(Thu) 7:55:10 |
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