【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐「――っ」 バシィン! と。 背中を打擲する音が、高らかに青空に響いた。 手加減も何もないまっすぐな活は、 今何より自分に必要なもので――。 いつか俺のやらかしたことにこうやって、 お前がぶん殴ってくれる日もちょっとだけ願っている。 ――今頃になって気づいた。 アカネに言われ、夕凪の姉さんに言われ、アオに言われて。 何もかもが欲しかった。 失ったものを取り戻したかった。 この場所に永遠に保管して、大切に守っておきたかった。 でも、本当にそう思うなら。 ――迷わず言葉にして伝えるべきだったんだって。 (-9) 2021/08/17(Tue) 3:45:32 |
【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐気合が入った。熱が入った。 いつだって『編バカ』に火を入れてくれるのは『アホ嵐』だ。 どんな冒険だって乗り越えてきた無敵の二人が。 ――10年の時を経て、再びここにある。 「……よし。 ありがとな。 やっぱり、最初に相談するなら、お前だと思った」 倒しておいた自転車を立てて、再びそれに跨る。 「……結果がどうあれ、必ず報告にはくるから。 ……だから、そんときは、笑い飛ばしてくれよ」 そしてそのために。 今お前が地球上のどこにいたって。 ――また遊びに誘うから。 自転車の上から、ビシッと指さして。 「 ……おう、任せろ、アオ! 」そして再び、ペダルを前傾姿勢で漕ぎ出して、発進する。 ――目指すは、アカネの元へ。 (-10) 2021/08/17(Tue) 3:46:50 |
【置】 さよなら 御山洗カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。 霧がかった道が晴れていくように、頭の中の夢が色を失って消えていく。 そうだ。俺には、帰るべき場所なんて無い。迎え入れる親族はない。 親父の実家がどうなっているのか、今の俺に分かる筈もない。 夢の中の居処ががらんどうのようなのは――会うべき人がいないからだ。 「……俺は。もう、帰る場所なんて無かったんだな」 最初は本当に只々、昔過ごした場所を懐かしむひとつの郷愁によるものだった。 少年期を過ごした場所は何よりも大切なもので、自分を作り上げた愛おしいものだった。 だけどもう少しで、その外で生きてきた時間に追い越されて塗りつぶされてしまう。 消えゆくまま、過ぎゆくままに。その前に、もう一度だけ帰ってみたかったな、と。 自分が置き去りにしてきたこの村というものに、会いたかったのだ。 でも。その輪郭を思い出すほどに、俺は別のものを蘇らせてしまった。 夢が終わったのにも関わらず、胸を焦がす思いと心を失ったような空隙が消えない。 ああ、そうだ。帰りたいという思いは過剰に増幅された不自然なものだったとしても。 長らく患ってきた恋は決して誰かに煽られたせいではない、ほんものだったから。 夢が終わりを迎えたって、時間が過ぎ去ったからって、目が覚めるように消えるわけじゃない。 (L2) 2021/08/17(Tue) 4:44:50 公開: 2021/08/17(Tue) 4:45:00 |
【置】 さよなら 御山洗ふと、この痛みを負うことになったきっかけを瞼の裏の景色に思い出す。 十五年前。親父と母さんが喧嘩をして、三人で遊びに行く約束を反故にしてしまった。 両親は色絡みの揉めがあったわけではないが、生き方に無視できない隔たりがあった。 父は昔ながらの考えの人で、此処で働き母にもそれについてくることを望んだ。 母は先進的でそれに馴染めず、度々仕事の都合での不便を緩和しようと打診していた。 そうした話し合いが不定期にあることで、お互いへの不満が爆発することもよくあったのだ。 機嫌を悪くした二人に挟まれ、その日は外に遊びに行くことが出来ず閉じこもっていた。 そんな時。部屋の中で蹲って過ごしていた俺に、手を伸べたのが翔だったんだ。 こっそりと家の中に入ってきて、遊びに行こうと笑って。 思えば向こうからしてみれば、時間になっても来ないから迎えに来ただけだったのだろう。 大した意味もなければ勇気が必要なわけでもない、ほんの些細な行動だ。 けれども。それが、まだ子供だった俺には、何より喜ばしい救いだった。 自分に伸べられた手と同じくらい、こいつに与えられるものがあればいい、と。 それは独り善がりの思いでしかなくて、ただ子供ながらに抱いた望みでしかなくて。 そんなものが、どうしようもなく焦がれる想いになって、今の今まで心の中を占めている。 村を離れて、自分の人生を得て、恋人を持って、別れて、それでもまだ燻る熱が。 ――少年期が終わろうとしている。 (L3) 2021/08/17(Tue) 5:03:57 公開: 2021/08/17(Tue) 5:05:00 |
【置】 さよなら 御山洗カチカチと、いつしか時計の針が進む音を克明に聞いた。 水を吸った服をまとっているかのように重たい体をずるずると動かす。 夏の盛りにも関わらず、薄ら寒い感覚が背中をゆっくりと降りていった。 帰ってこなければ、この夢の中に呼ばれなければ、こんなに胸の苦しさを覚えずに済んだのに。 腫れた瞼から流れた涙が、皮膚を引きつらせてぴりぴりと痛み走る。 鉛のように重たい体を動かして浴衣に袖を通す。少し調整すれば見栄えに問題はないだろう。 薄灰色の浴衣は、まだひょろっとした子供だった頃に比べれば印象も変わって見えるのだろう。 十年。十年の時が過ぎ去って。 それはどんなに飾ってまばゆく見せたところで、思い出のものとは何もかもが違うのだ。 鏡の中に立った男は、山の中を走り回って三人だけの秘密を埋めた、あの頃の子供ではない。 終わらせなければ、夢の終りが訪れないのなら。 もう少しだけ見えない誰かに付き合えば、目が覚めてしまえるだろうか。 遠くに祭りの喧騒を聴いて、届かない手を思う。 (L4) 2021/08/17(Tue) 5:15:10 公開: 2021/08/17(Tue) 5:15:00 |
【秘】 無敵の二人 青嵐 → 親友 編笠「アキラは俺のこと買いかぶり過ぎ。 …って言いたいけど、嬉しいな、やっぱ。」 お前の隣はいつだって心地がいい。 似て無さそうで似てる二人だからか はたまた無二の友だからか。 きっと、そのどちらもなのだろう。 「おう、待ってる。 …別に、報告じゃなくてもいつでも来いよな。」 お前が来るか、俺が痺れ切らして行くか、きっとどっちかなのだろう。 その時は、またいつもみたいにバカやって、騒いで遊ぼう。 後先考えない俺のこと、今度はお前が止めてくれるよな。 俺達の冒険は、まだ続くのだから。 啖呵を切ってから勢いよく自転車を漕ぎ出した親友の背を いつまでも、いつまでも見ていた―――――。 (-11) 2021/08/17(Tue) 5:51:29 |
【独】 無敵の二人 青嵐「……おー、もう見えねー。 はは、俺のとこにもあんなチャリ飛ばして来たんかな。」 すっ転ぶなよーと口にしながら、 もうすっかり見えなくなった親友の事を思った。 俺は多分、まだ冒険の道半ばで これからもどんどん色んな事が起こるんだろうし その度に悩んだり傷ついたりするんだろうけど それでも、きっと大丈夫だと思えた。 お前がいるなら、どんな嵐でも、どんな大雨でも 俺たちは越えていけるのだろう。 (-12) 2021/08/17(Tue) 6:08:03 |
【独】 無敵の二人 青嵐空を見上げる。 きっと、もうこんな事は起きないんだと思う。 なんの因果か、神様の悪戯か、 それは分からないけど。 決して悪いだけのものではなかった。 だけど、いつか夢からは覚めるものだ。 俺の夢もそろそろ御終い。 ああ、どうか 青い嵐 <かれ> 彼の愛する人たちを励まし、 迷った彼らの背を押しますよう――。 その為なら、 青い嵐 <かれ> あなたの元にやって来るのです。 だって、それが、青嵐瞬の――唯一の願いだから。 ・ ・ ・ 青嵐…青葉のころに吹く、やや強い風。 瞬…またたきするひま。ごく短い時間。(一瞬、瞬間) (-13) 2021/08/17(Tue) 6:35:34 |
【独】 一人 卯波結局のところ、真正面からぶつかったり、 追いついた背中を押したりしているうちに、俺は誰の横にも並び立つことはなかった。 晶兄にはどうしても勝てなかった。 それに誰の一番にもなれなかった。 茜ちゃんの一番は晶兄で、 晶兄と瞬兄はお互い一番で、 ずっと、二番以下の一ノ瀬卯波。 四人でひとつなのに、 四角形の中にはいないんだ。 「だから、女の子らしくなんて、 願っちゃったんだろうなあ……」 時任の兄さんを思い出す。 夢の中でもあの人のように振る舞えたら、また何か違っていたのだろうか。 いや、結局のところ晶兄への嫉妬があった限り、何かが変わったわけじゃあるまい。 (-14) 2021/08/17(Tue) 10:04:21 |
【独】 一人 卯波一ノ瀬卯波がいなくても、 みんなはきっとうまくやっていける。 俺がいない間も、みんなは、 各々の人生を問題なく歩んでいける。 そんな自分の心の声に負けるのが癪だ。 誰かの一番になれなくったって、 俺がみんなを等しく一番に愛したらいい。 みんなの人生の一番綺麗な部分を、 切り取るのはいつだって俺にしたらいい。 “卯波は写真を撮るのが一番上手な子だった” それだけは、誰にも負けない、 確かで大切な事実なのだから。 晶兄との勝負だって、負ける気がしない。 (-15) 2021/08/17(Tue) 10:12:32 |
【独】 あなた達の写真家 卯波愛する友人たちが立ち止まるたびに、 押し寄せる波 ≪かれ/かのじょ≫ 例え呼ばれずとも、鬱陶しがられても、 夕焼け色の瀬 ≪かれ/かのじょ≫ 一ノ瀬卯波の夢はまだ形を得たばかりだ。 皆の人生の何処にでもついていって、 大切な時間の中に、一員として身を滑り込ませる。 茜色の空の下 、嵐の中、 傘を編む人へ 、波は漣漣とする。 それが、一ノ瀬卯波の思う、幸せだ。 (-16) 2021/08/17(Tue) 10:21:29 |
卯波は、皆の写真を撮った夢を、現実にする。 (a5) 2021/08/17(Tue) 10:27:25 |
卯波は、たった一人だけの。 (a6) 2021/08/17(Tue) 10:27:49 |
卯波は、あなた達の写真家だ。 (a7) 2021/08/17(Tue) 10:27:55 |
一人の、あなた達の写真家 卯波は、メモを貼った。 (a8) 2021/08/17(Tue) 10:38:45 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 数年前、夕凪たちがまだ、大人になる前のこと。 よく、みんなのことを思い出しては話をしました。 「これって、あ。卯波か、可愛いなーちっちゃくて」 「卯波くん? ああ、ひとつうえの子たちと結構遊んでた子だよね。 可愛かったなあ、たくさんじゃないけど覚えてるよ」 「なーんか誰かに似る気がするんだよね、兄さんとかじゃなくて。 それこそもっと上の兄さんとかからとか?」 「好きな人のまねをしたいって奴? どうなのかな。 案外自分らしく自分の武器で戦う子かもしれないよ、男の子だもんね。 会えたらどんな趣味が増えたのか聞きたいな」 (-17) 2021/08/17(Tue) 12:07:59 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「茜ちゃん見た目結構変わったって聞いたんだけど、夕凪はみた?」 「ううん、みていないよ。茜ちゃんって、竹村茜ちゃんのこと? 昔は、小さいみんなと混じって遊んでた子だよね。 見た目――は黒っぽかったと思ってるんだけど、変わったんだ」 「なんか最近の若者らしくなったって母さんが言ってた。 女って本当に変わるよな、――夕凪が珍しいくらい」 「私も変わったよ? ほら、えっへん」 「……???? どんな風に変わったか気になるな……。 ちょっと構いたくなるような子だったから」 (-18) 2021/08/17(Tue) 12:09:27 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン……風鈴の音が鳴ります。 「あ、こういう木のよじ登り方添木くんにおしえてもらったな」 「時々私をのけ者にしていたやつね? 女はってすっごく悔しかったんだから。 夜凪だけ特別扱いされてたんじゃないの?」 「僕からみたら夕凪だけ特別扱いだよ。 そういうんじゃなくってさ、男同士の……秘密っていうか。 欲しかったわけ! そういうの教えてくれた兄さんだったよ」 「そんなロマンで小さい頃の私を拗ねさせていたのなら、 添木くんにあったら一発入れたいわ? 髪の毛の色かわってちょっとびっくりしたけど……」 「あれは僕もびっくりした……黒ってなんかしまっていいよね。おとなっぽい。 でもーおそろいの色好きだし、僕たちはこのままがいいな」 (-19) 2021/08/17(Tue) 12:11:50 |
【独】 陽は落ちぬ 夕凪チリーン…… 「嘘つきって言うと、花さんの事を思い出すね」 「私、花さんのこと好きだったからあんまりその噂信じていなかったの。 だけど、みんなが言うならやっぱりそうだったのかしら」 「それは、あの周りの人しか知らなかったかもしれない。 僕たちは少し離れていたから。……でも、嘘を作ってどうしてだと思う?」 「隠したいものがあるからかしら? 言いたくないことの代わりに言うとか。 そういうのが当てはまるような気がするわ」 「僕は、―――そうだね。黙っていたい。 本当のことを言わなければ伝わらなくてすむから、かな」 「難しいことを言うわね夜凪、でもね。 お話ししていたら、黙っていてもわかるわよ。 あなたのことも、嘘つきさんのことも」 (-20) 2021/08/17(Tue) 12:13:53 |
陽は落ちぬ 夕凪は、メモを貼った。 (a9) 2021/08/17(Tue) 12:40:21 |
【神】 影法師 宵闇【4日目 『不発弾』処理】>>4:G39 >>4:G37 何かに呼ばれるように、誘われるように足を運んだ先。 記憶違いでも、夢でもなかったらしい。神社の大樹の近く、清和と百千鳥がなにかを掘り起こすのを見て、男は確信した。 「よう」 浴衣姿だった。祭りに行く予定だったのだろうか。 その服装には似合わないギターを手に持っている。 「もう少し遅れてくるべきだったかなー……」 掘り起こすのは骨が要りそうだったから。見た目通り細身の男は力仕事は得意じゃない。それにあの時一体何を入れたのか、男はおぼろげにしか覚えていなかった……おそらく。一体どんな爆弾が埋まっているのか、恐ろしさ半分、好奇心半分だった。 (G1) 2021/08/17(Tue) 15:51:54 |
【神】 影法師 宵闇>>4:G67 鬼走【3日目 夜時空】 「いいんですよ。実際本当に人を愛せたかというと怪しい」 探していた。この何かが足りない気持ちを、満たしてくれる何かを、誰かを。 夢でも見ている「そう見えますか」と笑い交じりに聞き返す。 けれどふいに伏せた目は憂いを湛えていた。 「俺、は。そうだ、ずっとさ…… ここでの生活……いやこの田舎の風景。 ──アイツらのことを考えて、曲を書いてたんだ。 けど、それだけじゃあ"売れなかった"」 都会に出てきた頃は夢を両手いっぱいに抱えていた気がする。 離れてしまっても、どこかで聴いてくれると願って。 そうだ、音楽が、好きだったんだ。 あの日々が、そうさせてくれたんだ。 「メジャーデビューした時の曲なんかさ。 ただ大衆にウケそうなきれいごとを並べて いや、売れることしか考えてなかった……それだけの曲さ」 こんなこと、自分の曲が好きで聴いてくれる人間が聞いたら 石を投げられそうだ。 「最初は嬉しかった。途中からなんだかそれが苦痛に思えてきた」 「俺ってもしかして向いてないのかも」 紫煙と一緒に、軽い調子で弱音を吐いた。 (G2) 2021/08/17(Tue) 17:43:10 |
【神】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>G1 宵闇 【4日目 『不発弾』処理】 「……あ、翔兄!」 遅れてやってきた男の声にぱっと顔を上げて、 続く言葉に非難の声を上げた。 心からの、というよりはやはり軽口じみたものだけど。 「サボろうとしない!もう随分遅れてきてるんだから!」 (G3) 2021/08/17(Tue) 18:38:11 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>@1 >>@2 夜長 「会いたいよ、夢から覚めてもずっと」 どこか憂鬱そうに笑う。 それでもその言葉は本心からのものだった。 「…この夢は、ずっと楽しかったよ。 だから続けていたかった。それこそ夢のような話でも。 もう会いたくない人なんて一人だって居るわけない。でも」 「だからお別れが寂しいんだ。」 楽しい時間はいつか終わってしまう。 夢は覚めれば色褪せてしまう。 そんな当たり前の事が嫌で仕方ない。 嫌で仕方ないのに、過ぎた事になれば熱は冷めてしまう。 愚かなくせしてまた明日、を愚直に信じる事もできやしない。 そんな自分が何よりも嫌で仕方なかった。 (8) 2021/08/17(Tue) 18:55:32 |
【見】 天狼の子 夜長>>8 百千鳥 【祭りの終わり】 こっくり、頷いた。 「さみしいのは、俺も」 「この夢にいた人、みんなみんなで、こうして一緒に集まるという のは、とても難しかったと思う。夢でもなければ、本当に。 特に俺は、ほとんどが話に聞いただけの人たちで」 「……ああ、モモチには今言っておきたいな。 最初は俺も分かっていなかったが、 俺は父さんでなく晴くんなんだ」 雪子と和臣の息子の、小学2年生の晴臣。そう説明される。 「晴臣」と直接言えないので、少しややこしかったかもしれない。 「俺は、本当はここに来たことがない」 夢から覚めたら、会いにいける人には直接会いに行きたいから。だからその時にか、もしくは雪子さん伝手に、この夢にいたのは和臣でなく晴臣だと伝えるつもりだった。 けれど夜長は、百千鳥に対してはなんだか大人の皮を被っていたくなかった。いやそれよりも、晴臣として今話したかったが正しいだろう。 夜長本人も、それは自分の中で形になってはいないが。 「家族揃って来るのが一番だったと思うが、そうはなって いなくて。家族の中で誰かひとりだけというのなら、 俺でなく雪子さんがいた方が良かっただろう」 「でも、俺がここに来たことを、母さんは喜んでくれる」 (@3) 2021/08/17(Tue) 20:46:23 |
【見】 天狼の子 夜長>>8>>@3 百千鳥 【祭りの終わり】 「……言いたいことがまとまらないな」 夢から覚めて、すぐには会いに行けないのを知っているから。だから今、目の前のさみしいをどうにかしたいのに。どうしたらいいのかわからない。夜長は知っていることしか知らない。 聞いたことがないことは、知らないことだ。 「モモチは、こうしてお別れでさみしくなるくらいなら、 はじめから夢を見なければよかったと思う人ですか?」 だから聞いて、知っていることを増やしたい。まとまらない言葉からでも、何かこぼすことがあれば、そこから知れることがあるのと思っている。 あなたのことが知りたい、そう素直に思った。 (@4) 2021/08/17(Tue) 20:47:41 |
【人】 親友 編笠砂利道を、上り坂を、道なき道を、下り坂を。 息を切らせてペダルを踏んで駆け回る。 居そうなところ、思いつく場所を片っ端から自転車で周り、 小一時間もしたところで、強烈な『違和感』に気づく。 流石に、思いつく場所は全部探し終えた。 ――ここまで、どこにもアカネが居ないのはおかしい。 額から滴る汗を掌で拭いながら、 高く登る太陽を仰ぐ。汗が出るのに、喉が渇かない。 そうだ、都合のいい世界で、ここまで都合が悪いのは、 なんらかの作為があるはずだ。 考えろ。 考えろ、考えろ、どんなに探しても探しても、 アカネの元にたどり着けないことの意味を。 「っ、はぁ……はぁ……!」 ▼ (9) 2021/08/17(Tue) 21:00:04 |
【人】 親友 編笠>>10 そこにたどり着くと、 ――自転車を叩きつけるように置いて、 流石に全力で漕いで来たので膝に手をついて長く息を吐いた。 その俺の隣を――子どもの姿の―― "添木の旦那"と"清和の旦那"が追い抜いていく。 汗に塗れた顔で、その後ろをよろよろと追いかける。 子どもの添木の旦那が、公民館の番号錠に手を掛ける。 それは、この村での記憶の"残像"だ。 "この村のカギの番号、全部頭に入ってるんだ。" 嘘吐けよ。子どもの頃は、間違いなくそう思ってたけど、 どこに侵入するにも番号錠をすぐに開けてた姿を覚えている。 だから――添木の旦那が言ってたそれは、 案外誇張なしで本当だったのかもしれない。 それを証拠に、俺が教えてもらった番号に錠を合わせると、 "見事に鍵は開かなかった"。 ……そうだった。俺たちが特に悪さをした大抵の施設の鍵は、 ある時期を境にドアの鍵を無意味なものにした添木の旦那のせいで 片っ端から取り換えられてたんだった。 本当、つくづく思い通りに行かせてくれねぇあの旦那! ▼ (11) 2021/08/17(Tue) 21:09:33 |
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