![]() | 【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ少年は、勢いよく振り向いた。サレナは、揺れた濃紺じみた髪を間近でまじまじとみてしまう。 彼は、どこかぎこちなく、狼狽の色が見える。>>18 「では、これにて」>>20 逃げるように焦るようにその場を去ろうとした少年は、改めて地面にめり込む。 サレナは、少年を慈しむように心からの笑みを浮かべて、手を差し伸べる。 少年は、サレナの手を取るのか、取らないのか。 そして、取るならば、血の気の通っていない冷たい手に、何を思うだろう。* (21) uebluesky 2025/07/03(Thu) 22:27:08 |
![]() | 【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌーー時は変わり、これは、サレナが人形だった頃 人形技師の、レオ・オベールは、人生を賭けて等身大の作品を手掛けていた。 人形の名は、サレナ・アントワーヌ。 「さあ、目を開けてごらん」 優しい囁きに反応して、サレナのまつ毛が揺れる。 レオは、顔を覆うほどの白髪まじりの髭を蓄えており、傍目には表情が分かりづらいが、この時ばかりは、息を呑むのが分かった。 (22) uebluesky 2025/07/04(Fri) 7:13:52 |
![]() | 【人】 人形技師 サレナ・アントワーヌ奇跡が起きた。 サレナは、まるで人間のように、瞳を開ける。 初めて認識する外界に、少し戸惑いながらも、目にも鮮やかに色が飛び込んでくる刺激を楽しむ。 サレナは、庭の中にゆりかごにすわっていて、周りには色とりどりの花々が可愛らしく顔を上げている。 視線を上げると、どこまでも透き通って高い空が広がっている。 山々は、すべからく紅葉し、青い空とのコントラストが綺麗だ。 (23) uebluesky 2025/07/04(Fri) 7:14:09 |
![]() | 【人】 今宮 水芭膝をしたたか打ち付け、 痛みが表情にでないように精一杯繕いつつも、 ばつの悪さについ目の前の相手の反応をうかがいました。 膝立ち姿のさえない私に、彼女はふっと口元を緩めます。 それは嗤笑でも朗笑でもなく、 包み込むような慈愛の笑みでした。 (24) 榧 2025/07/04(Fri) 12:32:38 |
![]() | 【人】 今宮 水芭この人形然とした女と、微笑むという行為が、私の中でなかなか結び付きません。 何者をも射貫くように思えていた透き通るような瞳は、今は優しげに細められ、さらにその奥に何らかの興味が躍っているようにも思えました。 彼女は手を差し伸べます。 やはり抜けるような白さですが、それは朝日を受けた柔和な白ではなく、海の底で仄白い内紫貝が闇に浮き出るような、妙に不釣り合いな白に思えました。 差し出された手を掴めば、何処か知らぬ処へ誘われてしまう。そんな予感が、私の伸びかけた前髪を吹き抜けました。 (25) 榧 2025/07/04(Fri) 12:47:18 |
![]() | 【人】 今宮 水芭そして彼女に連れ去られた先は、グリム童話に出てくるような凍えた洞窟だった── そんな光景を幻視したのち、彼女が手を差し出したのは私を立ち上がらせるためだ、と当たり前の事実に思い至ります。 自分の膝は相変わらず、腑抜けています。 (26) 榧 2025/07/04(Fri) 12:57:02 |
![]() | 【人】 今宮 水芭ひとつ溜息が漏れました。 意を決し、差し出された手を取ります。 庭下駄で地面を踏みしめて踏ん張るあいだ、彼女の手の上に少なからず体重をかけていた気がします。 女に対する態度としてまったく情けないことですが、こと彼女に対しては、そのようなことを気負う必要が無いことは、分かっていました。 「ありがとうございます」 起き上がって着流しの裾を払うと、改めて彼女に向き直りました。目の高さが近づき、その玻璃のような……いえ、本物の水晶の瞳を見つめ返しました。 (27) 榧 2025/07/04(Fri) 17:08:02 |
![]() | 【人】 今宮 水芭知ってしまえば不思議と、驚きもなく受け入れている自分が居るのでした。人らしからぬその掌は、夏らしい日差しの下でひんやりと心地よく、すべすべとしていました。 そして、かくいう私の握り返した掌も、きっとつめたいことでしょう。* (28) 榧 2025/07/04(Fri) 17:14:27 |
村人の勝利、全ログ・ユーザー名が公開
終了日時:2025/07/05(Sat) 22:00:00