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【人】 火澄 瀬名小粒の雨が髪を濡らしました。 七瀬の広げた傘が花咲きます。 倣って広げた薄水色は、 曇天に馴染んむ私の心のようでした。 「 …… 別に、私がどこに出入りしたって、 七瀬には関係ないでしょ。 」 決して賭博所や怪しげな店に出入りしてるわけでは…… あーー、怪しげな店くらいはあるかもしれませんが。 それを言うとまた面倒なことになるので、 今は黙っておくことにしました。 (53) 2023/05/06(Sat) 1:12:47 |
【人】 火澄 瀬名兎にも角にも、七瀬の何かあるとすぐに お姉ちゃん≠フ顔をするところに、 私はいつだって納得いっていない顔を返すのでした。 一緒に生まれたのに。ずっと隣にいたのに。 ほんの数分の差が何だっていうのです。 私だってもう他にも、 自宅townや怪しげな店townくらい ひとりで行けるのですから。 ** (54) 2023/05/06(Sat) 1:14:39 |
【人】 水面 禎光彼女達が個々を認めて欲しいのか、同じでいたいのか。 それは 長年傍で見てきた僕にも分からない。 言葉の口調を変え、今だって咲かせた傘は違う色。 その一方でお姉ちゃん≠フ顔をすれば 妹≠ヘ不満を目いっぱい含めて反発する。 どう扱われたいのか、なんて聞いたところで無意味だろう。 数式や化学式のように整然とした解を 彼女達自身、持ち合わせていないと思うから。 (55) 2023/05/06(Sat) 5:26:22 |
【人】 水面 禎光「 ねえ、瀬名 ……傘貸してくれない? ほら …… 僕、病弱だからさ 」 ぽつ、ぽつと雨が地面を濡らし始めれば 僕が視線を向けたのは、傘に隠れた七瀬の表情ではなく いつの間にか空を覆っていた灰色の雲で。 彼女達が傘を持っていたから どこかで雨が降るんだろうとは思っていたけど、 天気予報を知らない僕は 当然傘の持ち合わせがない。 僕がどちらかの傘に潜り込んでもいいけど、 背の高い僕が1本借りて 同じ背丈の彼女達が相合傘をするのが一番濡れないだろう。 (56) 2023/05/06(Sat) 5:26:26 |
【人】 水面 禎光 ちなみに ─── 今の僕は、彼女達が思うほど病弱ってわけでもない。 引っ越してきた当時は まだ少し入院もしたけど 友達≠ニ外で過ごすようになってからは 少しづつ体力もついてきて、 中学では普通に体育の授業もこなしている。 "身体が丈夫じゃないから無理をさせないように"って 僕と遊ぶとき、彼女達の母親が何度も釘をさしていたから きっと今でもその印象が強いんだろうね。 自虐ネタとして冗談に使える程過ごせるようになったのは 紛れも無く、彼女達のおかげなんだよ。 (57) 2023/05/06(Sat) 5:26:29 |
【人】 水面 禎光僕は、半ば強引に瀬名から薄水色の傘を借り受けると 押し込むように瀬名を七瀬の傘の中に入れようと。 ふたりでひとつの傘 ─── ああ、そうだね。 同じがいいのか、個々がいいのか。 相合傘に押し込んだり、別々のお返しを用意したり 僕だって、答えなんか持ち合わせていなかった。** (58) 2023/05/06(Sat) 5:26:32 |
【人】 火澄 七瀬全身を濡らすには及ばない雨。 それでも互いに傘を開いた分、 私達の距離を開かせるのには十分で。 「 …… 禎光? ああ、それは。 仕方がないですね。 禎光は ─── 身体が弱いのですから。 」 だから、瀬名の手から傘が離れて、 唐突に彼女が私の隣へと飛び込んでくれば。 縮んだ距離に、思わず心臓を跳ねさせました。 (62) 2023/05/06(Sat) 10:41:42 |
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