兄 エーリクは、メモを貼った。 (a5) 2020/05/15(Fri) 6:36:31 |
兄 エーリクは、メモを貼った。 (a6) 2020/05/15(Fri) 6:40:19 |
【独】 兄 エーリク/* と、特殊窓2つ……! これはこれで面白いけど!! 恋窓と魂信窓の片方はあっても 両方を取り入れたケースは余り見たこと無いから珍しそうだ。 (-16) 2020/05/15(Fri) 6:46:43 |
【人】 神置 穂村雨は蕭々と降っている ぽつりぽつりと寄り集まった雨粒は 地表に溢れて道や畑や庭との境界線を たちまち曖昧にしてしまった 果てが分からない水溜りは 今の季節、村や島でよく見る光景で ひとも鳥も他の獣も動くものは他に何もなく ── 雨だけが、ただ蕭々と降っている (36) 2020/05/15(Fri) 12:50:20 |
【人】 神置 穂村雨粒は水溜りに数多の波紋を作っていき 波紋は互いにぶつかり合いながら 輪郭をすぐさま相殺していった 空はしばらく晴れる気配はない どんよりとした雨雲は上空に居座ることを 決めたようで、分厚く色濃く空を覆っている 水溜りに無数の波紋を作りながら 雨は静かに全てを閉ざしていた (37) 2020/05/15(Fri) 12:51:25 |
【人】 神置 穂村どうしても夢でないと悟らねばならなかった時、 自分は茫然とした。そうして懼れた。 全く、どんな事でも 起り得るのだと思うて、深く懼れた。 しかし、何故こんな事になったのだろう。 分らぬ。全く何事も我々には判らぬ。 (39) 2020/05/15(Fri) 12:53:36 |
【人】 神置 穂村自分は直ぐに死を想うた。 しかし、その時、眼の前を一匹の兎が 駈け過ぎるのを見た途端に、 自分の中の人間は忽ち姿を消した。 再び自分の中の人間が目を覚ました時、 自分の口は兎の血に塗れ、 あたりには兎の毛が散らばっていた。 (41) 2020/05/15(Fri) 12:56:34 |
【人】 神置 穂村 ── 空港にて ── [数えきれない人々が通り過ぎていく 人々は川のように通路を流れていた 生み出す雑踏は、天井と床に反響し 長く広い通路の中に漂い満たしていた そんな通路の一画に ロープで区切られた空間が設けられ 一台の飴色のピアノが置かれていた 自由に弾いていいと書かれた札が立ち 椅子にに座って鍵盤カバーを上げれば 通りすがりの旅行者たちが 思い思いに弾いて、立ち去るのが常だった が、しかし ──] (43) 2020/05/15(Fri) 12:59:23 |
【人】 神置 穂村穂村、もう少しだからな …いい子で待っててくれよ [蓋やカバーが分解され、 ピアノはその内臓を剥き出しにされていた 近くにはナイロン製のキャリーバッグと リュックサックから出された大量の工具が 敷布の上にバザーかと思う状態で並んでいた] (44) 2020/05/15(Fri) 13:00:13 |
【人】 神置 穂村[離れた壁際にある椅子にかけて 本を読んでいたこどもは、無言で頷いた 父の作業はすぐに終わるものではない そういう仕事なのだというのは分かっている 故に、いつものこととも分かっている そのまま、視線を本に戻して 文字の作る言葉や文章を追い始めた] (45) 2020/05/15(Fri) 13:01:07 |
【人】 神置 穂村[父の神置燈夜は「ピアノ調律師」であった どんな仕事かと問われれば 「ピアノのお医者さんみたいなもの」と 穂村は答えていたし、そう彼から教わっていた 違いといえば、ピアノが自ら来るのではなく 島の診療所の先生みたいな往診がほとんどで 調律師自身が歩く診療所であること それから、楽器店勤務ではなく 調律師を抱える事務所に所属している関係で 主に一般家庭のものではなく 学校やホテル、コンサート会場やホール それから、駅や空港、街中に置かれている 多くの人々が行きずりで弾いていくピアノ それらを調律することもあった] (46) 2020/05/15(Fri) 13:02:35 |
【人】 神置 穂村[いつもは学校があるから留守番だ しかし、ちょうど夏休みだったのもあり 本やゲーム、宿題道具などを持ってきて 父につきそい空港の通路の片隅で過ごしていた こんな時は漫画はかさばるから 大抵小説をもっていくことにしている ハードカバーやソフトカバーも荷が重くなる そう考えた結果、こども文庫と呼ばれる 新書サイズの本や文庫本に落ち着いたのだった] (47) 2020/05/15(Fri) 13:05:03 |
【人】 神置 穂村[読んでるシリーズものも既に最終巻 あと数ページで結末が分かる そこまで読み進んだ時のこと 流れる雑踏から、ひとりの男が現れた そろそろ、作業が終わったのか 父はピアノを元通りの姿に組み終えて ピアノもすっかり綺麗に磨かれており 仕上げの弾きの作業に入っていた] (48) 2020/05/15(Fri) 13:05:57 |
【人】 神置 穂村[本業は調律師とはいえ、 父の音色は押しつけがましいところがなく 土に染み込む雨粒みたいに スッと耳に馴染むから、穂村は好きであった その曲が彼の出現と共にぷつりと途絶え 視線を移すと父は弾くのをやめて] (49) 2020/05/15(Fri) 13:11:16 |
【人】 神置 穂村…フェイ、久しぶり [男は四角い楽器ケースを背負った旅行者で 様々な人種国籍の入り乱れる流れにいたから おそらく、海外から来たのだろう 父はピアノから顔を上げ 彼 ── フェイに笑顔で手を振り挨拶をした どうやら互いに親しい間柄だったらしい 再会の握手とハグの様子から 穂村にもそれは朧げながら理解でき 気づいたら、フェイからハグをされていた] (50) 2020/05/15(Fri) 13:12:16 |
【人】 神置 穂村[父以外にされることなど島でもなく 況してや父の付き添いで他国に行った時にも してくるのは、ほぼ女性だけだったから 驚きはこの上なく しばらく、雑踏の音が世界から消えた 当の父はそれを笑いながら眺めて 店仕舞いの作業をしているではないか 驚きつつも、嫌ではなかったし 彼もすぐ解放してくれたから無害な知人 穂村の中でもそう認識された そして、後片付けが済んでから 3人でラウンジへと向かったのだった ── 雨音みたいな雑踏を聴きながら 十年余り昔の、父と彼との思い出である*] (52) 2020/05/15(Fri) 13:16:35 |
【人】 軍医 ルーク―― 父親の話 ――[ 物心ついたころには家にはおらず、 世界中彼方此方を旅してまわっていた研究者の父は、 良く言えば夢追い人、 一般的に言えば生活力皆無のロクデナシだった。 気付けば自分も似たような道を歩んでいたのは、 果たして奴の影響を受けたのかどうかは知らないが、 片付けられもせずに積み上げられた本の中で育てば、 まあ、自然の成り行きではあっただろう。 ろくに連絡も寄越さなかったそいつが、 死んだと聞かされたのは、暫く前―― そう、あの大穴が出来たときのこと。 穴の調査に赴いて調査拠点に留まっていた父は、 そこから突如現れた『怪物』に殺害されたのだという。] (53) 2020/05/15(Fri) 13:19:46 |
【人】 軍医 ルーク[ 当時の自分も、既に医術の道に踏み込んではいた。 衝撃を受けるだろうと予測してか、 遺体の状態について口ごもる父の同僚に、 いいよ、見る、とだけ告げて安置所に赴いた。 ぽつんと灯された裸の明かりが、薄暗い安置所を照らす。 回収された部分だけが入っていた遺体袋は、 人ひとりが入っているにしては、随分に小さかった。 ――自分は、きっと平気だったに違いない。 思い出される自身は、どうしてか、遠い後姿だけれど。] (54) 2020/05/15(Fri) 13:20:01 |
【人】 神置 穂村 ── 中華飯店 ── [昼時の店は喧騒が時々起こっていた 学生街の一角にある店ではよくあること 小雨と思っていたら 突然雨脚が強くなったみたいに 誰がが声を上げ食器や椅子やテーブルが 音を立ててというのも日常茶飯事 通って2年を越した穂村も いい加減になれた風景だった 高い位置に置かれたテレビは点いてはいても 画面では司会のタレントが話してる声は聞こえず 消音してるのに等しい その内、誰かが消すかも知れない] (55) 2020/05/15(Fri) 13:20:06 |
【人】 神置 穂村…おっちゃん、炒飯と湯麺 別々にどっちからでもオッケーだよ [午後の休講は確認済みである 学食かコンビニでサッと済ませて 慌てて練習室に駆け込む必要もない となれば、空いた時間に何をしようか考えて ゆっくり食べることも出来るということ 結果、選ばれたのはこの店だった] (56) 2020/05/15(Fri) 13:21:11 |
【人】 神置 穂村…あちーっ、おばちゃんサンキュー [先に来た湯麺を受け取ってにっこり笑う ポケットから100均で買ったシュシュを出し 無造作に髪を束ねるとそれで結んだ 手にしていたスマホは 既にメッセージを送信していたから アプリを閉じてバッグのポケットにスッとしまう 返信を待つなら出しておく方が合理的 とはいえ、それに伴うリスクの方が重大だった ある意味命綱ともいえるツールを 無防備に晒せるほど能天気にはなりたくない 過去に失くしたぬいぐるみやお気に入りの本 それらを思い出せば嫌でもそうなる] (57) 2020/05/15(Fri) 13:22:46 |
【人】 神置 穂村…いっただきまーす [割り箸を割って口の中を火傷しないよう ゆっくりと麺を啜る 返信が来るなら後で見ればいいし 来ないなら、それはそれで向こうの都合 自分の方が突発で出来た空き時間だし こちらが目くじらを立てたり 感情的になるのは明らかに筋違い 食べ終わるまでに返信がなければ 彼は暇ではないということだろう 果報は食べて待つことにした**] (58) 2020/05/15(Fri) 13:24:33 |
【人】 軍医 ルーク[ その拠点に赴いていることは知っていた。 居所を知らせる手紙なんて寄越しやしなかったけれど、 父の知り合いが気を使って知らせてくれたのだ。 まあ、一年か二年はそこに留まるのだろうと思っていた。 研究のこととなれば寝食を忘れる破天荒のロクデナシは、 調査拠点でもさぞ持て余されていたに違いない。 いや、あれはあれで、案外人望もあったようだ。 情に厚く、人には親身になるたちのようだったから。 もし何か面白い結果でも得られようものなら、 同僚や警備員を捕まえて、 どんちゃん騒ぎの酒盛りでも始めたりだとか。 ―― 今となっては、想像するのみだ。 その調査拠点に残っていたものは、 殆どが死んでしまったのだと聞く。 早々に避難できたものは、何が起こったかは当然のこと、 ろくに見てはいなかったようだ。 少なくとも自分は、何が起こったか、 何一つ知らされることはなかった。 ただ、“怪物”が現れたのだと――それだけ。] (59) 2020/05/15(Fri) 13:29:19 |
【人】 軍医 ルーク[ 残されたものは、多くはなかった。 形見の遺品も礫の下に埋もれ、見つかってはいない。 ただ、身に着けていたものがひとつ。 白い狐耳の若い女性と、同じ耳の子供が写る写真。 それだけが、奇跡のように傷一つなく残されていた。 もう、随分と昔のものだ。 ああ、そういえば、最近写真なんて撮っちゃいなかった。 自分でも忘れていたようなそれを、 そいつが肌身離さず持ち歩いていたのは、 ひどく意外だった。] (60) 2020/05/15(Fri) 13:30:11 |
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