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【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム[ ────アーレンベルクもその例外でなく。 血の禁術に悪魔との契約、 生まれ落ちた時より背負った使命に 死後の振る舞いでさえ異邦の存在に委ね…… 生殺与奪を投げ打って尚、 故国に戻って初めに果たすべき役目は決まっていた。 ] [ 即ち、父帝の 殺 害。帝国の命運を握る皇子は玉座に上がる時機を 意のままにする事さえ出来た。 命を刈り取り、力を得ることで戦支度は整う。 帰国して直ぐ行うと決めていたのは、 還御の報せが冷めぬ内に民を焚き付け 士気を保ったまま火蓋を切り落としたかったから。 ] (39) 2020/11/29(Sun) 2:26:38 |
【人】 アーレンベルクの書代替りは指折りの忠臣を証人とし 王宮の庭園にて執り行われる事となった。 若獅子が国土に入って間もないその日、 彼の護衛役にして騎士団長であるサー・アルベルタが 嚴めしい両手剣を抱えて庭園へと降る。 崩御の瞬間まで正当な皇帝である父は、 跪かなければ頭を垂れることもない。 その上で斬首用の得物を選んだのには、 罪人でなくとも安らかな慈悲を与えるという意図が 含まれている────という説が一般的だ。 (40) 2020/11/29(Sun) 2:27:06 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム( 人殺しも初めての経験ではない。 剣で兵を殺す方法なら十の頃、罪人を練習台に教わった。 大将であり、最も強力な駒で在るべき『王』は 血を見ることを誰より早く知っておかねばならなかった。 王とは象徴だ。そして同時に兵器でもある。 国の治め方をありとあらゆる視点で習ったが、 どれも空虚な教典の様に記憶からすり抜けた。 父と己とではまるで本質が違うと知っていながら、 殺して奪う事には……一抹の不安が存在した。 ) (41) 2020/11/29(Sun) 2:27:41 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム[ 少年は剣を取る。 新たな王に相応しい佇まいで陽の光に其れを翳す。 抱いたあらゆる雑念を振り払おうとする様には、 まだ僅かに幼さと未熟さが混ざっていた。 咎人でも、魔女でも、平民でもなく。 誰より神聖な存在である実の父は、 同時に運命に呪われた子を生み出した張本人で。 ] ( ……この路を恨んだ事は無いが、 選択肢などあってなかったようなもの。 “自身で選んだ”などと宣えたのは 俺の見栄か、或いは恐れからだったのか。 今となってはもう分からないが、 この瞬間、確かなのは──── ) ──────── 父上、 (42) 2020/11/29(Sun) 2:28:10 |
【人】 『赤い霧』 ヴィルヘルム栄光を掴み取ったその後──── 再び相見えるは地獄にて。 ( 我々はどうしようもなく、 業火に灼かれるべき人殺しだと云うこと。 ) (43) 2020/11/29(Sun) 2:28:41 |
【人】 仇討王 ヴィルヘルム[ 僅かに横に『ずれた』果実は、 重力に従って滑り落ちようとする。 重い剣を庭園の床へと放り捨てて、 代わりに蜜を零す赤い実を胸に受け止めた。 新皇帝の足許には切り倒された木が横たわり、 その洞から同じものを垂れ流していた。 ] ( 何を言い立てた所で 我々が殺人者なのは明白だとしても、 この 業 は神にさえ裁かせはしない。 ) (45) 2020/11/29(Sun) 2:30:32 |
【人】 アーレンベルクの書実母の鮮血を被って生まれ落ちた皇子は、 実父の血を浴びると同時に『王』と成った。 先帝の崩御を告げる鐘が町中に響き渡り、 道を往く誰もが足を止め、王宮へ向けて祈った。 誇り高き国民は皆、返り咲く時を待ち侘びている。 両腕に預けられた首を棺桶にその手で納め、 拾い上げた剣を大地に突き立てて 彼は皇帝として初めの命令を降す──── (46) 2020/11/29(Sun) 2:31:02 |
【人】 アーレンベルクの書帝国歴720年 風の月8日 先帝ヘルマンの“急逝”は周辺諸国にも伝わったが、 同時期に起こった帝都からの中央軍出兵は 公国領において大混乱を引き起こした。 平原に居城を構える公国諸侯アリン家は 充分な武器と人手を揃える暇もなく戦争に突入する。 後の世に『獅子戦役』と謳われる闘いの幕開けであった。* (48) 2020/11/29(Sun) 2:32:30 |
【人】 一 夜端[父は出来る限り夕食は家でとる。 家族と共に過ごす時間と定めているのだ。 俺もその習慣は大切に守っていた。 今日はちょっとしたハプニングで遅れるかと思ったが 走って帰ることで間に合わせることが出来た。 食事中の口数はさほど多くなく カトラリーがたてるごく小さな音が 時間を刻んでいく。 ──そんな中、ガシャンと騒音が響けば 父を除く全ての人間が息を呑んだ。] (50) 2020/11/29(Sun) 13:52:56 |
【人】 一 夜端[皿を落としたらしいメイドが 必死の形相で父に向けて土下座をする。 ── どうか、お許しください……。 声は酷く怯えていた。] ……っ [反射的に開きかけた口を閉じ、 喉まで出掛けたなにかの言葉を飲み込んだ。 そうして目を伏せる。] (51) 2020/11/29(Sun) 13:53:31 |
【人】 一 夜端[その間にも父は周りへの目配せひとつで 不出来な使用人の処罰を命じていた。 処罰の内容は、俺にはわからない。 生爪を数枚剥がす程度で許される時もあるけれど 彼女の両手に爪は残っていなかった気がする。 背けた視界の端。 メイドは取り囲まれ引き摺られながら 部屋の外へ消えていった。] (52) 2020/11/29(Sun) 13:53:46 |
【人】 一 夜端[遠去かっていく悲鳴が潰える前にも 父は何事もなかったかのように 再びカトラリーを動かす。 遅れを取らぬよう俺も食事を再開した。 大好きな筈のハンバーグは、味がしない。] (53) 2020/11/29(Sun) 13:54:34 |
【人】 一 夜端[不意に正面から飛んできた問い掛けに またか、と不貞腐れたくなるのを堪えて 首を横に振る。] 、、、、、、、、 彼が嫌がることは何もしていません [真っ直ぐにそう答え、 それ以上の会話はなかった。] (55) 2020/11/29(Sun) 13:55:01 |
【独】 転入生 二河 空澄/* んんんんん まひるくんも最高だけど、よるはくんもいいなぁ なーの生み出す子は なんでこんなに魅力的なんだろ??? ぜーんぶ まるっと解決できちゃうような 方法ってないんかなぁ、、、 (-12) 2020/11/29(Sun) 14:03:55 |
【人】 転入生 二河 空澄[苛立ちとか、焦りとか、やり切れなさとか、 よくわからないモヤモヤで 頭の中がぐちゃぐちゃしてるからだろう。 夜気と冷たい指に撫でられて>>5 ぴくり、とはするけど 脇腹の痛みはほとんど感じない。 だけど、彼の置かれている現状を 知れば知るほどに、…辛くて 眉がぎゅっと寄っていたから 痛そうに見えてしまったかもしれない。] ……ん、っ [赤い痕全体を覆ってくれる湿布は スースーして思いの外、気持ちよかった。>>7 やっと安心したみたいに床へ座り込む彼の横、 同じように ぺたりと腰を落ち着けて ありがとうと告げると、 また話を促すように小さく頷いた。] (60) 2020/11/29(Sun) 16:11:53 |
【人】 転入生 二河 空澄[けど、分かったことがある。 真昼くんは、もう諦めてしまっているんだ…ってこと。 村のことや自分のことを語る口調は 淡々としていて あまり感情が見えない。 それが余計に 彼がどうしようもない現実として 心底 諦めてしまっているんだってことを ひしひしと伝えてきていた。 痛くて、切なくて、…… ] (62) 2020/11/29(Sun) 16:16:32 |
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