人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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【人】 宮々 蓮司

信号が赤くなって車を停める。
停車中でも俺の視線は前を向いたまま、隣の子がこちらを見ていることにもまるで気を留めず。


ただ、スピーカーから聞こえる歌に合わせて指を鳴らした。

─── パチン、パチン

それもまた何処かで聴いた大切な音。


不思議だった。音に合わせて指を鳴らすたびに、脳裏に浮かんだシルエットが彩を増していく気がした。
その服はあまり趣味ではなかった。だけど、それは彼女によく似合っていた。
だから全く着なくなってしまったのなら、それはそれで少し惜しい気もしていた。


それなら誰にも荒らされたことのなかったルージュ。
それもまた、綺麗で可愛らしい彼女によく似合っていた。

そして、そう、そんな風に完璧に装っていた彼女の、意図的に作られた唯一の隙、それは────


信号が青に変わって、車を発進させる。
自然、指を鳴らす音は途絶えた。*
(78) 2022/05/28(Sat) 19:55:15

【人】 雨宮 瀬里

 

 ぱちん、ぱちん、と指が鳴る
 そのたびに、何か大切な景色が色づいていく

  『 私ね、変わろうと思って 』

 それは確かに私の声
 変わるための後押しをしてくれたのは…?
 
 透明な歌声、跳ねるような指の音、
 月明りが照らす暗がりの中で、
 明るい光が私の、  
私の……?


      
真っ赤
ななにかが、見えた気がした

 
(79) 2022/05/28(Sat) 20:21:27

【人】 雨宮 瀬里

 

 明るい光に目線を向けようとして、
 
           
       車が動く。
       思考は途切れる。



 「 何か、思い出せそうな気がしました 」

 それだけ言って小さく笑うと、
 私は手元のスマホに視線を落とす。
 車の中。会話などはほとんどないはず。

 
(80) 2022/05/28(Sat) 20:21:48

【人】 雨宮 瀬里

 

 スマホに残されたメールも写真も、
 どれも私の知らない雨宮瀬里だった。
 たくさんの景色や、たくさんの食事や、
 たくさんの笑顔が、そこには残されていた。


 「 楽しそう 」


 私はただの感想を呟く。
 他人事だけど、本当にそれは楽しそうだったから


 「 恋、してたんだなって、分かります
   恋をする人間と、同じ顔、してるもの。 」


 恋をしたい、だとか。
 同じ感情を取り戻したい。とかじゃないけれど。
 スマホに残った、二人の姿は、本当に楽しそうで

 ……だから、私は至極当然の質問を投げかける。

 
(81) 2022/05/28(Sat) 20:22:03

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 どうして、恋矢を抜いてしまったんでしょうね 」


 貴方は知っていること。
 私は覚えていないこと。

 ただの、話のきっかけにすぎない。 *

 
(82) 2022/05/28(Sat) 20:22:14

【人】 宮々 蓮司

どうして?
そんなのは決まってる。
命と恋を天秤にかけたのだ。
それで恋を取るほど馬鹿ではなかったということ。
誰だって命は惜しい。


 「 死にたくなかったんだろうな。」


患った病は大した病気ではなくて、でも宮々の人間には致命的にもなり得るものだった。ただそれだけを伝えた。

それは当たらずとも遠からず。

恐れたのは死んで、永遠に瀬里を失うことだったけど。
それも今となってはわからなくなっていたこと。
(83) 2022/05/28(Sat) 21:12:09

【人】 宮々 蓮司

恋をしている顔。

自分のスマホには二人の写真がそれほど多くはなかった。
風景だったり、それから瀬里≠撮った写真。

確かに写真の中の彼女は今横にいる彼女とは違って、とても楽しそうに、そして幸せそうな笑顔ばかりだった。
きっと、それをカメラ越しに見ていた自分も同じ顔をしていたのだろう。


 「 少し、……羨ましいな。」


恋矢が重篤な病を引き起こすなら、
自分は二度と恋なんてできないことになる。

今はもう恋に憧れも何も抱いてはいないのだけど。
胸には後悔のような昏い水底へと沈むような感情がある。

結局、瀬里を失ってしまうことへの後悔が。
(84) 2022/05/28(Sat) 21:12:23

【人】 宮々 蓮司

車は駅前に着くと静かに停車した。


 「 着いた、な。」

いつか「どこにも辿り着きたくない」そんな風に言った男がいた。そいつは今のよう場面を想像していたのだろうか。


ここで、彼女が車を降りればそれでおしまい。
さっき彼女が言った通りたまに連絡が来るかもしれない。
でも、きっとしばらくすればそれもなくなる。
だからと言って何もできないし、何かしようとも思えない。

なあ、蓮司
お前はこんな終わり方も想定していたんだよな?


エンジンを切ると、助手席の瀬里へと視線を向けた。*
(85) 2022/05/28(Sat) 21:13:55

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 病?
   ………そう。だったんだ。 」


 病によって、恋矢を抜かざるを得なかった。
 そんな話は今、初めて聞いた。

 ううん、瀬里≠ヘ知っていたんだろう。
 知ったうえで、それを受け入れたとき
 私は、どう思ったんだろう。

 うらやましい、の声に私は小さく微笑んだ
 
 
 「 これほど楽しそうに過ごしていたのに
   恋心と記憶が消えてしまったのは……
   ……きっと、悔しかっただろうな。 」


 恋心が消えるときの感情なんてわからないけど
 でも大切にしていたものを喪わざるを得ないときの
 悔しさとかなら、分かる気がするから。

 
(86) 2022/05/28(Sat) 22:39:03

【人】 雨宮 瀬里

 

 駅前で車が止まる。
 私が全く知らない駅だったけれど
 きっと家までは帰ることはできるだろう。


 「 ……うん、 」


 貴方の視線がこちらへと向く
 
 ここで、私が車を降りればそれでおしまい。
 時々私から連絡をするかもしれない。
 だけどそれもいつ終わるかはわからない。
 だからと言って何もできないし、何かしようとも ──


      二つの色の違う瞳を
      私のスカートとお揃いの色の左目を
      私が…好きだったであろう、その瞳を、


 
(87) 2022/05/28(Sat) 22:39:48

【人】 雨宮 瀬里

 


 ねえ瀬里
 貴方はこんな終わり方も想定していたの?



 
(88) 2022/05/28(Sat) 22:40:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 ──────── ちがうの。



 
(89) 2022/05/28(Sat) 22:40:41

【恋】 雨宮 瀬里

 


 こんな終わり方なんて望んじゃいないの。



 
(?0) 2022/05/28(Sat) 22:40:55

【人】 雨宮 瀬里

 


      頬を流れる涙の意味を、私は知らない
      貴方が見たことのない涙を
      私はきっと、初めて流した。 *


 
(90) 2022/05/28(Sat) 22:41:44

【人】 宮々 蓮司

それは何か考えるよりも先の行動だった。

気づけば手を伸ばしてその涙を拭っていた。

どうしようもなく切なかった。
そして、彼女が涙を流しているのが、そうさせているのが自分なのだと思えば許せなかった。
(91) 2022/05/29(Sun) 0:49:20

【人】 宮々 蓮司

 
 「 泣かないでくれ、
   わからないけど、
   どうしてかはわからないけど、
   瀬里に泣いてほしくないんだ。」
 
(92) 2022/05/29(Sun) 0:49:46

【人】 宮々 蓮司

胸が押し潰されそうだった。
これは蓮司≠フ残滓なのだろうか。
瀬里≠愛した男の恋の欠片なのだろうか。
(93) 2022/05/29(Sun) 0:50:23

【人】 宮々 蓮司

 



 ──────── ちがう。


 
(94) 2022/05/29(Sun) 0:50:50

【恋】 宮々 蓮司



 ぜんぶ俺なんだ。


(?1) 2022/05/29(Sun) 0:51:23

【人】 宮々 蓮司

昨日まで瀬里を愛していた事実は消えない。
彼女を愛していたのも、それだって俺なんだ。

記憶を失っても、恋心を失っても。

──── 全部俺なんだ。
 
(95) 2022/05/29(Sun) 0:51:58

【人】 宮々 蓮司

 
 「 こんな終わり方は嫌だ。」


理由を聞かれてもわからない。
だけど、こんな終わり方は絶対に嫌だった。
昨日までの蓮司≠ェとかじゃない、昨日も今もなく俺が嫌だと思っている。*
(96) 2022/05/29(Sun) 0:52:15

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 …っ、ごめんなさい
   泣くつもりとか、なくて 」


 意に反して流れ出た涙を
 あたたかな指先が拭うなら、
 私は思わずそれを否定するけれど、
 涙は簡単には止まってはくれなかった。

 それでいて、もっと触れていたいと思ったのは
 昨日までの私?それとも今の私?

    それとも、全部、私なのだろうか。


 
(97) 2022/05/29(Sun) 8:44:32

【人】 雨宮 瀬里

 

 洋服の好みが変わっても
 恋矢が刺さって恋心を抱いても
 それがまた喪われて想いが消えてしまっても

 私に起きた変化はすべて、
 雨宮瀬里そのものなのだろうか。

 貴方に出会って、貴方が日常を満たして以降の
 私自身の記憶は喪われたままだというのに


 
(98) 2022/05/29(Sun) 8:45:06

【人】 雨宮 瀬里

 

 こんな終わり方は嫌だ。
 はっきりと音になって耳に届いたそれに
 私はこくりと頷いた。


 「 私も。こんな終わり方は嫌 」


 理由なんて私だってわからない。
 だけど、こんな終わり方は絶対に嫌だというだけ。

 
(99) 2022/05/29(Sun) 8:45:18

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 私ね、記憶を取り戻したい
   どうしたらいいか、わからないけど… 」


 恋をしていた私も、今の私も、私だというのなら
 恋をしていた時の私の記憶を、取り戻したい。
 オーディオからは相変わらず透明な歌声が響いている。 *

 
(100) 2022/05/29(Sun) 8:45:30

【恋】 宮々 蓮司

涙を拭った手をそのまま瀬里の頬に当てた。
柔らかで暖かな感触。
ゆっくりと、そっと撫でた。
(?2) 2022/05/29(Sun) 10:36:43

【人】 宮々 蓮司

 
 「 恋人に、……ならないか? 」
 
(101) 2022/05/29(Sun) 10:36:59

【人】 宮々 蓮司

それは提案。

恋心がなくても、かつての二人に関する記憶がなくても、二人が恋人同士でお互いを深く愛していたのなら。
中身が伴わなかったとしても、
その形がもしかすると何かのキッカケになるかもしれない。

そうは言っても、恋心のない二人だ。
だから、少しずるい理由を付け加える。



 「 きっと、
   瀬里≠熈蓮司≠烽サれを望んでいるはずだ。」


たとえ、まるで別人の様に感じていても、
やはりそれは二人にとっても過去であることに変わりはないはずだから。

*
(102) 2022/05/29(Sun) 10:37:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……恋人に? 」


 私が浮かべるのは困惑の色。
 それでも頬に触れた手を避けることもしないまま
 貴方の両の瞳を見つめる。

 恋心とはどんなものだっただろうか
 思い出せぬままに、恋人の振りをするのは

 ──── ああ、それはかつての私。
 そんなことも忘れているくらいに、
 いつの間にか私は変えられていた。

 憶えていないから、きっと貴方のお陰。

 
(103) 2022/05/29(Sun) 11:12:42

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……うん、構わない。
   瀬里≠熈蓮司≠烽サれを望むもの。 」


 流れていた涙が止まったから、
 きっと、そうなのだろう。


 「 ……改めて、っていうのもなんだけど
   雨宮瀬里です。……よろしく……? 」


 きっと2回目の初めまして。
 はにかんだ笑顔は、営業スマイルなんかじゃない。
 
(104) 2022/05/29(Sun) 11:13:20
 




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