【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラ暫しの後。 猫被りは言葉通りにホテルの前に車を停め、 あなたの部屋の扉を叩き、また戻ってきた。 「待たせて悪いな。そいじゃ……っと あ"ークソ重、持ってくわ」 「そんじゃ、邪魔したな。扱いには慣れてっから安心しな」 なんて、わかりきった事を言って。 猫被りはホテルを後にした。 それを隠れ家の一つへ持ち帰れば、 中身を分別する為に再度開け、検めたことだろう。 そうして見知らぬ封筒を見付ければ、 表紙に記されていたのは同僚の名前。 何だかんだと情に流されがちな男は、 きっとこれも、無視する事はしなかっただろう。 (-72) 2023/09/24(Sun) 3:04:46 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 笑わない カンターミネ近すぎる攻撃を避けることは叶わなかった。 避けたとてほんの少し位置がずれるだけのこと。概ね貴方の想定通りの場所に、この男は頭突きを叩き込まれる。 「────ゥ、」 小さくくぐもった声を漏らした男は、しかし、それ以上の何をもしなかった。 顔を顰めることも、声を荒らげることも、衝動的な暴力を振るうこともなかった。 つ、 と赤い血が鼻腔から流れ出して。ぼた、ぼたり と滴り落ちていっても。何もしなかった。貴方の口に指を捩じ込んでいるだけ。閉じきらないように固定しているだけ。これからの行為で自分が被る害が最小限になるようにしているだけ。 貴方が選んだ手段が頭突きだったのは幸運だった。 貴方が蹴飛ばしたのが机や椅子だったのは幸運だった。 その攻撃が遍く"男性"の急所に向いていなかったのは幸運なことだったのだろう。だからこそ、男はこれだけ余裕を保っていられて。 そうして今後もないように、先んじて貴方の下肢に体重をかけることが出来た。 その下を暴こうとすることすらない。 男は貴方に欲情しているのではない。 ただ貴方を傷つけたいだけ。 ただ貴方を貶めたいだけだ。 ▽ (-73) 2023/09/24(Sun) 3:04:56 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 笑わない カンターミネぐ、と男の手が貴方の頭を抑えつける。 親指をそこに突っ込んだまま。引き伸ばされた唇が痛むであろうなんて気遣いは当然ない。手錠で繋がれただけの腕は一番自由だろうが、身体をひたりと近づけてしまえば結局動きは止まるはずで。 ────勿論、見越した貴方が万歳の姿勢でも取っていれば話は別だ。この男はそれを咎めないから。 貴方の至近に近づいて。 べろ。自身が流した血液を舌先で舐め取って。 男はそれを完遂する。 貴方の口内に男の舌が、唾液が、血液が入り込んだ。単なる嫌がらせ。手の込んだ嫌がらせ。縮まっているのであればその舌に敢えて擦り付けるように触れ合わせて、上下に完全に注ぎ落とすようにして。指のせいでどうしても閉じきれない隙間からは下品な水音が聞こえたかもしれない。 貴方がいくら歯を食い縛ろうと辞めない。貴方が唸ろうと呻こうと暴れようと辞めない。それ以上のことはしない。ただ、辞めない。 相手の言葉に心を乱されない方法はいくつかある。 そのうちのひとつは 相手を人と思わないこと 。精々けだもの程度に思っておけば、罵る言葉も態度も何処吹く風でいられるものだ。暴れる様や与えられる痛みもそう。死に際の虫が暴れる様なものだと、今は感じられる。 (-74) 2023/09/24(Sun) 3:07:10 |
【人】 傷入りのネイル ダニエラ>>8 リヴィオ 「…あー。リヴィオさあん。」 到底上司に見せるとは思えない仏頂面。 尖らせた唇でその名を呼んで、前髪を見て、ジェラートを見て。 そのヘアピンは、何の変哲もなければ飾り気のひとつもないシンプルなヘアピンで。 だけど不思議と他の似たヘアピンでなく、 それ なんだろうと思えた。「あたしは明日お会い出来た方が嬉しかったですけどお。」 拗ねた顔のまま拗ねた声でいう。 こういうとき、女が告げるのは本心だ。 けれど、まあ。察しが悪いわけでも決してなかったわけだから、自分を納得させるための溜息だけついてまたその顔を見上げた。 「…まあ、いいですう。」 「なんですかあ、話ってえ」 微かに形作った笑顔は歓迎の証。 どうぞどうぞ、寧ろお座りくださいな。 それに関しては本当に、嫌な顔ひとつせず。 #specchio (9) 2023/09/24(Sun) 3:12:29 |
【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → コピーキャット ペネロペあなたが名に釣られ封筒を開けて。 尚且つ中のチップのデータを確認してくれたなら。 そのチップには、『プラン』とやらが書かれている。 どうやって調べたのか留置所まわりの機密に触れうる各種情報と、 『合図があった場合、あるいは取締法が突如廃止になった場合、混乱と立場を利して脱獄を手伝うこと』という文言。 どこかの誰かが何やら大層な計画を、そのくせかなり人任せな状態で立てていたものらしい。 (-75) 2023/09/24(Sun) 3:17:20 |
【赤】 無敵の リヴィオ懐から月桂樹の葉をモチーフにしたブローチを取り出す。 つける勇気はなかったんだ。 だけど、お守り代わりにはなっていたよ。 未来が、 それなりに 惜しくなるほどに。「狡をしている気分だな……」 それだけではないとしても、破滅願望を理由にここにいる。 誰かを傷つけるように選択した人間が、 何かを掴むことなど、許されるとは思わない。 ……だけど。 「…俺を甘やかす人間に文句を言って欲しいね」 冗談めかすように笑いながら、独り言ちる。 その言葉を聞く者はいないから、本当にただの独り言。 手の内でブローチを弄んで、考えるように手を止めた後、 テーブル上に置かれた小箱の中にそっと仕舞う。 お守り代わりではあったが、この先に持っていくには壊れそうだ。 家主の留守を任せるように、それは置いていくとしよう。 代わりに、彼女から最初に貰ったヘアピンで前髪を飾り、 さっさと床にでも 寝転がってしまいたい気分を抑えて立ち上がる。 (*2) 2023/09/24(Sun) 3:24:02 |
【秘】 路地の花 フィオレ → オネエ ヴィットーレ「解放されたら、今度は一緒に一から選びに行きましょうね」 「ヴィーのお店、楽しみにしてる人達のために…もっといいお店を作らなきゃ」 失ったものはまた取り返せる。 きっとあなたが解放される日はそう遠くない。信じている。 だから前向きでいようと思うのだ。 「そんなヴィーにみんな甘えてきたんだもの」 「こんな時くらい、気を抜いたっていいのよ。一番辛いのはあなたなんだから」 抱き締めてあげられたらいいのに。今までしてもらった分を返してあげられる位。 あなたと自分を隔てるものは、見た目以上に分厚い。 「……ありがとうね」 「皆の事、私もちゃんと大事な家族だと思ってるわ」 こんな私でも認めてくれる。 出来る仕事を仕込んでくれて、甘えさせてくれて。 だからこそ、もっと役に立てればと思う。…そのためにもやっぱり、ここで止まるわけにはいかないから。 「うん、気を付けるわ。それで、ちゃんと迎えに来るから」 待っていてね。ガラスにこつんと額をくっつけた。 (-76) 2023/09/24(Sun) 3:28:12 |
【秘】 笑わない カンターミネ → 幕の中で イレネオ暴れる。その言葉通りの事だけをしていた女は、 それこそ"けだもの"程度の行動しか取る事が出来なかった。 下肢を抑えられるまで、アドレナリンの齎す興奮に 酔ったまま、ありもしない『外』の動きを呼ぼうとした。 それはカンターミネが自身を弱者として認識していたからに 他ならない行為でもあった。これは、激情を持ち、 マフィアとしての多少の暴力に馴染んでこそいたが。 所詮は、組み敷かれる程度のか弱い女でしかなかった。 故に、それは実に簡単な事だったに違いない。 見越す事もせず、両手も塞がれ、怒りのままに暴れるのも 抑えていれば何の障害にもなり得ない。 まざりものが舌と共に口内を踏み荒らす頃、 ようやく女はそこに嫌悪の音を含めたうなりをあげた。 きっとそれは、"それなりに"あなたの欲を満たした事だろう。 (1/2) (-77) 2023/09/24(Sun) 3:29:19 |
【秘】 幕の中で イレネオ → オネエ ヴィットーレぶじゅ、ぶじゅ、と滲んで吹き出す血。 その速度に呼応するように伸びやかに飛び出した悲鳴。それを、男はまるで気に入りの歌を聞くように口角を上げて享受した。 歩く指先は軽くなり、ステップを踏むようですらいた。全て、全て、貴方の視界の外側での話。 貴方の頬に涙が流れるのを男は見た。 それが室内灯を跳ね返すのを見た。また笑った。 ────自分と同じ図体をしていた生き物が、あんなにも飄々としていた生き物が、自分より縮こまって自分より下で惨めに蹲って泣いている! それは強者の高揚。 上下の関係の錯覚。 歴史の中で幾度と繰り返されたきた、醜悪な勘違いのひとつ。 「もうシェイカーは握れないな」 「関係ないか。お前はマフィアだし」 「偽る道具がなくなった方が人のためだ」 上機嫌に紡ぐのはそんな言葉。 男の瞳は輝いて室内を物色した。 探している。探しているのは最早、貴方の罪ではない。 貴方を痛めつける材料を、より大きく鳴かせる道具を探しているだけ。 ▽ (-78) 2023/09/24(Sun) 3:29:41 |
【秘】 笑わない カンターミネ → 幕の中で イレネオ……そのまま厭だ嫌だと喚くだけの虫や獣であったならば、 そもそもあなたは負傷などしてなかったはずだ。 アドレナリンがなければこの行為に至れなかっただろうが、 同時にアドレナリンがあるからこの後に至るはずだ。 だからきっと、これもまた"天秤"なのだろう。 『正義』は言った、お前達に法はないと。 だが、その言葉は残念な事に間違いだ。 『正義』が存在する以上。 もう一方の正義も存在する。 そうしてそれらは、共に天秤にかけられる。 優位であった天秤は、僅かな薬剤の効果が切れると共に 冷静さ、否、残酷さを取り戻した女によって再度、傾けられるだろう。 それは明らかな変化だった。 女から抵抗が失われた。諦めを感じさせるような変化だった。 あなたがそこで興味を失い、或いは何かを感じて身を引けば、 「その後」は来ない。だがそこでまだ、続けるのであれば。 これ幸いと、『正義』の執行を続けたのであれば。 女は、あなたの舌を奥へ誘ってから、 ぎぢ。 と。その一部に穴を空け、あるいは 咬み千切るだろう。 けだものが如く。 (2/2) (-79) 2023/09/24(Sun) 3:29:42 |
【秘】 幕の中で イレネオ → オネエ ヴィットーレ ────ぱりん。 ガラスが割れる音 が耳に届いたのは、貴方が呪詛を吐いてから幾らか後のこと。当然まだその指先は痛むのだろう。それでもその耳はきちんと音を聞き分けたはずだった。 きっと貴方もよく聞いたことのある音。 空の酒瓶を誤って落とすと、そういう音がする。 (-80) 2023/09/24(Sun) 3:30:27 |
【秘】 黒眼鏡 → 傷入りのネイル ダニエラ/* これでエンディングルートがまた一つ決まった気がします!(楽しい) 宜しくお願いします…!! スーツケースについては善く活用してくださいね!!!!!!!!(放任) (-81) 2023/09/24(Sun) 3:36:15 |
【秘】 コピーキャット ペネロペ → 傷入りのネイル ダニエラデータを確認したなら、 たいそうな事をする輩も居たものだと嘆息し。 そしてやはり、『やりそう』な顔が脳裏を過る。 『獄中に、何らかの混乱に乗じて 脱獄をしようとしている輩が居る』。 少なくとも、宛先にはそれさえ伝われば十分だろう。 そう判断して、面会の算段を立て始めた。 外部からの手引きの算段も、しておいて損は無いだろうな。 (-82) 2023/09/24(Sun) 3:40:18 |
【赤】 無敵の リヴィオ「……エルにはなんて謝ろうか」 手伝うって言ったのにな。また嘘を吐いてしまった。 まぁ、彼は優秀だし上手くやるだろう。 そう思っておかないと許容範囲超えで頭がおかしくなりそうだ。 おかしくなるついでにぶっ倒れてそのまま、 最悪目を覚まさない可能性がある。 もうかなり約束からの気力だけで何とかしている。 これがアドレナリンってやつ?医者に怒鳴られそうだ。 考えるのはやめよう。頭の痛さが増してしまう。 懐から電源を落とした端末、 それから素敵な先輩が渡してきたマフィアから押収した銃。 それらをもう一度確認してからスーツ内部に押し込んだ。 ポケットの中の袋も……ある。忘れ物はなさそうだ。 流石にこれを持って面会はまずいので、 午後の予定を片付けてから取りに戻るとしよう。 「………どの面下げて、という話だが」 己を慕ってくれている後輩を思い浮かべて、 深いため息が零れていく。 今更会いに行くのもそうだが、彼にも沢山嘘を吐いた。 (*3) 2023/09/24(Sun) 3:49:50 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ絞れるような声は耳に好かった。 締めつける胎の感触も好かった。 きっと肌越しに感じる、速い鼓動も好かった。 何もかもが好ましかった。だから、欲深く貴方を食らった男は、精を吐ききった後も貴方に触れることを辞めない。 ずるり、寄せあっていた身体を動かす。花浅葱を隠して閉じた瞼に唇で触れる。 額やら頬に張り付いた髪を摘んで戻してやる。首筋に玉として浮かんだ汗を舌で掬う。 自ら付けた赤い痕を労わるように舐めもした。痛みと共に熱を持っているだろうか。 きっとそうする度に貴方は少し身動ぎをした。 僅かな感覚にまた身を震わせたりしただろう。 全て曝け出して、自分の下敷きになっていて、 今も無防備でいるこの人が、自分のせいで果てたのだという事実は、 それもやはり、男にとって好かった。 どうしてやろうかな。 心中の呟きは音にならなかったはず。貴方は深い眠りに落としてくれと言っていた。 そのまま貴方が男の行いを放っておくなら、これは再び緩やかに腰を動かし始めるかもしれないし。 そうでなくともいい。もう疲れ果てて眠れそうだと言うのなら、後始末を手伝う程度の甲斐性はこれにもあるはずで。 (-83) 2023/09/24(Sun) 3:54:18 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 黒眼鏡貴方から感じ取ってい悪癖が何処まで残っていたのか確信づくまでに時間を要してしまった。 少しは減っていないかと期待していたのだ。けれどその少しもなかったのは誰のせいか。 多分自分が隣ようと変わりはしなかったのだろう、貴方の求めた存在はこんなガキじゃない。 「聞いて驚くな、初対面だ」 ロゼッタに齧り付き口元のソースを拭う。 「手遅れでダメなのは、お揃いだろあんた達……」 ああ、本当に嫌だ。こんなところで勘が冴えないで欲しい。 思えば貴方には多くのヒント自体は与えられてきていたのだ、先程の状況報告も見直す必要があるかもしれない。 最終報告を正しいものにすればいいだろうと男はひとりごち。 誰かがはじめた巫山戯た茶番劇なぞ、自分が全部纏めて壊すと決めていたのだ、情報の取捨選択を間違えようとファミリーの被害を減らせたのならそれでいい。 運良く、都合良く、結局は。 そんな男の思い通りに執行絡みの話は仕組まれはじめていた。 (1/2) (-84) 2023/09/24(Sun) 4:01:50 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 口に金貨を ルチアーノ「言われなくても祈ってるわよ、馬鹿」 ぴん、と指先でメッセージを弾いて。 『うん』『じゃあ、しばらくは会えないものと思って過ごしてたらいいのね』 そう命令でも受けているように。自然に、あなたのことを意識しないように。 もし何かがあっても、自分たちは何も知らないといえるように。 別に、あなたの部下なんだから一蓮托生だって言ってくれたっていいのに。 なんて思ったりもして。 『覚えててくれたの?うれしい』 チーズが好きになったきっかけのお店だった気がする。 そんな昔の事、よく覚えていたなあ。なんて、少しだけ感傷。 『分かった』『何もないことを祈るけどね』 『楽しみにしてるわ』 「……ほんとに、置いていかないでよね」 ぽつりとつぶやいた言葉は、誰に聞かれることなく消えていく。 結局のところは、祈りが通じたのかもわからない。 あなたの思惑通りなら、いいタイミングだったとも言えるのだろうけれど。 今は、知る由もない。 (-85) 2023/09/24(Sun) 4:03:12 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 黒眼鏡機嫌が良さそうな貴方の顔を見て、やはり手遅れと、物悲しさを感じる。 もう既に全ての手筈は整っているのだろう。 自分がしたのは開演までの幕前を荒らしただけ。 「……なあ、アレ」 子供はあの年に傍にいられなかったことをこんなに後悔すると思わなかった。 「もう、俺はあんたのことを知ろうとして良いのか」 「あんたの嫌がりそうなこと、辞めてたんだが」 もしかしたら嫌がってはなくて。 そこにある墓を暴かれたくなかっただけなのかもしれないが。 (-86) 2023/09/24(Sun) 4:05:53 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 笑わない カンターミネざらりとした舌の表面が貴方に触れている。 剥き出しの薄い粘膜に無遠慮に触れている。 それで貴方が唸る声に、平素の男ならばきっと満足そうにしたはずだ。 けれど今の男は違った。これは今、自分の愉しみではなく、貴方の不快を優先している。 だからその声に満足そうに喉を鳴らすこともない。ただ粛々と、ただ淡々と、咥内から精神を凌辱することだけに熱心でいる。 それは正義の執行とは真逆の行動だった。暴力と圧力で相手をねじ伏せようとする、男が最も嫌う行為だった。 ご名答、『外』の助けなんて来やしない。 それに関しては素直な男の言う通りだ。 ここは治外法権。可視化法は適用外で、 被疑者に不利な規則ばかりが支配する。 だから。 だからだ、男が引くことが出来たのは。 正義にかまけていればきっとそうはいかなかった。貴方の思う通りこれは裁きに浮ついて、見えた罠に足を挟まれたはずだ。 引いた舌に男は満足した。 貴方をねじ伏せたと錯覚した。それですんなり離れようとする。 ────けれど、それは間違いであって。 貴方は全力で噛み付いたのだろう。であれば。 人体の中で最も硬いその上下ひと揃いの万力は。 せめて男の指の、骨を砕くまでは出来ずとも、 表面を破損させるくらいわけもないはずなのだ。 助けが来ないのは、男にとっても同じこと。 (-87) 2023/09/24(Sun) 4:09:13 |
【秘】 黒眼鏡 → 無敵の リヴィオ「はあ、そりゃあまた」 初対面、ときいてますます、目を丸くして驚いたように。 「若い奴はやっぱ、いいな。 色々なものを救おうと頑張れて、未来があって。 応援したくなるよな」 手をぱんぱんと叩いて拭い、珈琲をぐいと飲む。 ──彼が珈琲に拘るようになったのも10年前だ。 「一応言っとくが、俺とあのクソは完全に別件だぞ。 まったく、ちったあ大人しくなったと思ってたのに。 とんだ食わせモンだよあのオッサン」 どうやら留置場には、鏡は置いていないらしい。 自らを省みることも無く、あるいは全て承知の上で、 男はスウェットの裾で手を拭いつつあなたの問いかけを聞く。 「ん?」 ああ、と。もう一度、あなたの目をじいと見て。 「俺が、ダメだって言ったことがあったか?」 なくはない。 だが、こういう目をしている時には、一回も無い。 (-88) 2023/09/24(Sun) 4:17:30 |
【秘】 路地の花 フィオレ → 口に金貨を ルチアーノ「当たり前よ、そんなの」 「止めてもらえてよかったわね、私は今から好感度を下げるか迷ってるところ」 こんな時に何してるのよ、とあきれ顔。 とはいえまあ、自分も人の事はあんまり言えないのだが。 それはそれ、これはこれ。 「それで……じゃあ」 「ルチアーノは、全てを終わらせるために捕まりに行くってこと?」 (-89) 2023/09/24(Sun) 4:27:51 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロくふ。 弱々しい抵抗に、男は息を漏らした。 それは笑ったようにも聞こえた。睡魔に犯された貴方の耳が、勝手にそう聞いただけかもしれない。 こちらの表情はきっと伺いにくいはずだ。顔の中心で鼻を摘んだ手は大きく、貴方の口元に寄せられる手もまた大きく。近づくもので視界は遮られて────そうしてそんなものに目を凝らすには、状況が緊迫しすぎている。 従順に開いた貴方の口。 慈悲を与えるような優しさと丁寧さで、男は貴方の舌に再び錠剤を乗せた。 そのまままた、吐き出されぬよう手のひらで塞ぐ。 さて。 今度こそ自白剤であればいいが、と男は思った。 が────それは叶わぬ期待。 実際この場にある錠剤の中に、 自白の効果があるものはない。 それは男が既にダメにしてしまったから。 残るのは精力剤のみなのだが、 それをこの男は知らなかった。 (-90) 2023/09/24(Sun) 4:28:13 |
【秘】 笑わない カンターミネ → 幕の中で イレネオもし、体内の音を聞けたなら、今この女からは 水音と同時にブチブチと血管の切れる音が響いただろう。 それも、相当に大きく。だからこそこれは一度誘った。 そうしてなお、獲物が逃れるなど許せなかった。 相手の考えや信念など、今この瞬間はどうでもいい。 これが考えるのはあなたと同じだ。鏡のように。 お前には罰が必要だ。 離れようとしたのが、不味かった。 きっと、近すぎたが故に瞳に爛々と燃えるライムグリーンが 見えなかったのだ。苛立ちに唆されたのだ。 そうでなければ、あなたのような警察が、 これに後れを取るはずがない。 カンターミネは、離れていく頭にもう一度頭突きを見舞った。 また口の中が少し切れたが、厭いはしない。 緩んだ手、指の拘束を大きく首を振って"ずらした"。 そうして、ずらされた先は――罰を執行するのには、 余りに原始的な。人体で作られた、 断頭台 だった。まず、ごり、と音がする。それは右か左か、ともかくあなたのどちらかの親指が断頭台に嵌まり込んだ音だった。次いでめき、と音がする。それは丁度親指の付け根、第二間接が軋む音。そのままなら根元から捩じ切られるだろうが、抵抗しない訳もあるまい。 抵抗したなら、第一関節程度までは抜けたかもしれない。だが、このけだものは、一度憎んだものを決して逃がしはしなかった。ばぎ、と音がした。丁度、それは七面鳥の骨をへし折るような音だ。或いは、警察であるあなたにはより耳馴染みがある音かもしれない。そう、人骨の折れ、砕ける音だった。 (1/2) (-91) 2023/09/24(Sun) 4:31:51 |
【秘】 幕の中で イレネオ → 口に金貨を ルチアーノ立ち止まった顔に男は怪訝な顔をした。 それは明確に、男に向かって話しかけたようだった。 しかし男は相手の顔を知らない。相手の言うことも、要領を得ていないように思う。 やり過ごすことも考えた。 無視を決め込むことも考えた。 けれど隣の女の存在が気がかりだった。 このまま居座られては不愉快だ。 「何か。」 一言。 要件を言え、と。それだけの言葉。 男は『特命』を受けていた。 そこには対価として、ある程度の行動の自由の担保もあった。 だから、もし、貴方が望んで。 男がそれを了承すれば。 二人きりで話すことも、不可能ではない。 (-92) 2023/09/24(Sun) 4:34:23 |
【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 路地の花 フィオレ「あ? もう捕まってる 」夜のうちに男は本当に静かに捕まっていた。 「俺をしょっぴいたやつとデートしててなあ? 帰り道にそのまま」 「……明日か明後日ぐらいに納まり始めてくれると良いなあ。 ……まあ、どこぞの誰かが嫌がらせしてるからわからんか。 少なくとも量は減るだろうよ」 そう言って改めて貴方と向き合う。 「今お前にあっておきたかったのが……。 ヴィンセンツィオの話だ」 と。ようやく貴方を呼び出した本題を話し始めた。 その名前で貴方がどんな反応をするかを確かめている。 (-93) 2023/09/24(Sun) 4:35:17 |
【秘】 けだもの カンターミネ → 幕の中で イレネオもう、誰が殴ろうが、叫ぼうが。 このけだものには、関係なかった。 怒り狂った女は、きっと少し離れた体の隙間から、 手錠で繋がれた手を抜け出させ、その拳を握って。 自らの顎を下から思い切り打ち抜いた。 その衝撃を最後に、 ぶつり。 あなたは喪失感を覚えるだろう。 生まれてからずっと一緒だったはずの十本の内、 大きく太い一本を失ったのだから。 赤い液が勢いよく、その後はリズミカルに吹き出す。 止血しないのならば、辺りは大変な事になる。 そうしてライムグリーンに赤を浴びた女は、笑う。 口内で転がした指を、あなたの混ぜた液を、絡めて、 「ベッ!」 音を立てて、部屋の隅へ向けて吐き出した。 口元は真っ赤に化粧をしていて、頭もまだらに染まり。 日頃の子供達が見たなら、一生のトラウマになるような。 けだものはそこに立つ。自ら入れた一撃で朦朧としながら。 それでも、怒りと残酷さを手放すことなく。笑っていた。 (2/2) (-94) 2023/09/24(Sun) 4:36:53 |
【秘】 月桂樹の花 ニコロ → 幕の中で イレネオ最初の一錠の時よりも随分弱い抵抗で 二錠目の薬もまた、口の中に入れられて。 もし貴方が鼻の手を除けないなら 口まで塞がれれば呼吸が困難になったせいか また飲み込む気配があっただろう。 そうして得られる効果は、精力剤のもの。 睡魔に加えてどうしようもない熱が男を襲うのだった。 頬に赤みが差し、呼吸数が上がる。 「っ、ぅ…くっそ……」 そう間をおかない、二種の薬の服用に 熱と、睡魔とで、頭がおかしくなりそうになる。 「なにが、したいんだ、おまえ……」 流石に尋問には関係ない薬の効果が二度目にもなれば 疑問も膨らむというもの。 ただ、目の前の貴方に対して劣情をぶつける訳にもいかず 堪えるのに必死な表情を見せるだろうか。 (-95) 2023/09/24(Sun) 4:45:57 |
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