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【人】 鈴掛 未早―― Nightschool at xx:xx [ 今日も家には誰もいない。 三年前の一件があって、 結婚する時に辞めた看護師の仕事に復帰した母は、 今ではおよそ私とは反対の時間を生きている。 つまり夜勤が多いってこと。 洒落っ気のないウインドブレーカーと ゆるっとしたシルエットのボトムス。 マフラーをぐるぐる巻いて、そうすれば きっと近い距離でエンカウントしない限り 知り合いだって鈴掛未早だとは気付けない。 さすがに制服姿で深夜に出歩いたら色々問題でしょ? ] (821) 2022/10/24(Mon) 23:10:29 |
【人】 鈴掛 未早[ 願い事がないわけではなかった。 それを形にすることができなくて、 どうにも行き詰まっていた。それだけ。 願って得るようなもので 渇望を埋めることはできないとわかっていたから。 なら何を願えばいいのか、 思っても何も見えなくて、考えあぐねていただけ。 考えて、考えて、 ――― 振り返ってみれば、 答えは案外その中に転がっているものだよ ] (822) 2022/10/24(Mon) 23:11:16 |
【人】 鈴掛 未早 [ 「やっぱり億万長者にしとけばよかった」とか しょうもない後悔をする瞬間は絶対ある。 この先の人生絶対に何度だってある。 でもそのくらい、許してよ ] (823) 2022/10/24(Mon) 23:12:04 |
【人】 鈴掛 未早[ あの日行った道を辿る私は 絶対どう考えても不審者だった。 誰かに見られたら驚かせたかもね でも、たぶんそういうことはない…といいな おまえそれ間に合う? ぐらいの 深夜に出てくる高校生、いない方が良いに決まってる ] ―― こんばんは ねがいごと、決めたよ [ 旧校舎の奥、あの日と同じ場所、 変わらない姿をした、白い幽霊。 その姿を見据えて、私はすっと笑みを浮かべた ] (824) 2022/10/24(Mon) 23:12:28 |
【人】 秋月壮真[ 俺はあの中には混ざれない。 偉そうなことを言っても 言葉に怯え 人の裏側に怯え 自分自身にすら怯えている 結局俺は…… 臆病なだけだ。 俺の寂しさの半分なんてそんなもの。 怖いのはどこまでも” 人 ”だった。 ] (828) 2022/10/24(Mon) 23:21:13 |
【人】 秋月壮真[ 帽子を風よけにして 当ても無く走った よかった 意識を取り戻してくれた これからきっと良くなる 弟はまた歩ける。 弟はまたバスケが出来る。 弟は───────……。 もう俺を兄とは 呼んではくれないかもしれない。 ] (829) 2022/10/24(Mon) 23:21:17 |
【人】 秋月壮真[ でもまだその時は来ていない。 これからの未来は変わるかもしれない。 自分の手で 誰かの手を借りて チャンスはこれからも巡ってくる。 その時に勇気が出せたら。 俺の幸せの家族の形は 変わるのかもしれない。 ] (830) 2022/10/24(Mon) 23:21:22 |
【人】 秋月壮真[ いつか欲しいな 白い羽根 飛び立てる羽根が 俺にもあれば……。 それはきっと願った時から 背中には痕ができる。 ] [ 半透明な羽根が ふわりと空に溶けた───。 ] (832) 2022/10/24(Mon) 23:21:30 |
【人】 秋月壮真[ 溶けた空に手を伸ばそう。 友と一緒に 未来を掴もう。 大切な人と一緒に。 未来への道は俺の願う通りにはいかない。 そう教えてくれたのは 健人だから。 俺の手は今も君と繋がっている。 ] * * (833) 2022/10/24(Mon) 23:21:43 |
【人】 工藤 彩葉― Stand by me ― [月明りの下で、俯いた私の目には 千葉くんの手の動きがしっかり見えていて。>>582 照れ隠しの必要は全くなかったと思う。 そんなことしなくても、私は顔を上げられなかったし 隠し事を暴く余裕なんてちっともなかったの、 千葉くんも気付かなくていいからね。 ただ、触れた手を握り返した。 その感触が、楽器と触れ合った時間の長さを物語る。 私の手からは真逆のことが伝わってるんだろうなと、 そう思えば恥ずかしさが別種のもので上書きされて。 急に感じた、秋の夜長と思えないような暑さも いくらか和らいだ気がした。 千葉くんが何も言わないから、 私も何も言わず。 多分、言えなかっただけなんだけど 昨日より話し声も少ない、暗い帰り道なのに 今日はあんまり驚かないんだね、 なんて頭の中では考えていた。] (834) 2022/10/24(Mon) 23:22:20 |
【人】 工藤 彩葉[さて、互いの指先の感触を知ったところで、 私がその差について思い知ることになったのは 数か月も経ったころだったかな。] 千葉くん、どうしよう 指が痛くて練習が捗らないの…… [どこからどう見ても泣き言なんだけど、 千葉くんならこれで、私が真面目にやってるってこと わかってくれると信じてるから。 冬の乾燥が私に追い打ちをかけたに違いない] (838) 2022/10/24(Mon) 23:22:32 |
【人】 工藤 彩葉[そうは言っても、勉強はしっかりしてたし。 複数の誰かさんとも一緒に試験勉強とか 休み中の課題、こなしたりしたかもね。 頑張ろうね 自分の部活も、ちゃんとやっていた。 そういえばユメリンの曲、ついに私も買っちゃった。 それから、前より少し、ロックバンドの曲を 流す機会が増えたかもしれない。 でも息抜きだって大事だから。 いろんな人と、いろんな所へ 遊びに行ったりもしていただろう。 クリスマスパーティーみんなでやらない? って言ってみたりとか。 補習がなかったらね お正月も、今度は神社に願掛けに行ってみる? バレンタインは深く考えず、友チョコ交換しようって 言ってしまって、あとで後悔したかもしれない… 料理上手な友達がいたら、私だって手を抜けないし すごく頑張って手作りしたと思う。 誰かさんにもお裾分けするね。まだそういう名目。] (839) 2022/10/24(Mon) 23:22:35 |
【人】 工藤 彩葉[おじいちゃんとの約束を果たせたのは、 三年生になってからだった。 演奏難易度のこともあるけど、 せっかく覚えたんだからって、弾き語りにして。 直接会いに行くのはやっぱり難しくて、 画面越しにはなってしまったけど。 それに意味がないとは思わない。 もちろんそれまでの間、 千葉くんには練習を見てもらっていたから。 『 Let It Be 』は聴き飽きちゃったかもしれないね? いろんなこと、千葉くんにはもう話していた。>>581 でも終わったあとに、私が伝えたのは] おじいちゃん、すごく喜んでくれたよ。 大好きな曲なんだって。 千葉くんのおかげだね。本当にありがとう。 [それだけ。それで十分だった。 私にとっても、十分だった。] (840) 2022/10/24(Mon) 23:22:38 |
【人】 工藤 彩葉[お別れの時がやってきたのは、 それよりもう少し後。 うちの両親は、今は学業に専念すべきって方針で 高校生の間アルバイトは禁止されていたから。 大学に進学したらバイトしてお金を貯めて、 イギリスに会いに行きたいな。 なんて未来の話をしていた矢先のこと。 再び、風邪をこじらせての肺炎で 心の準備している暇もなくて、あっという間だった。 本格的に受験シーズンを迎える前だったのは、 私にとって、幸いだったんだと思う。 家族全員は無理だったけど。かろうじて、 お母さんと私だけは駆け付けることができた。 最期の時の準備を、両親はすでにしていたのだった。] (841) 2022/10/24(Mon) 23:22:41 |
【人】 工藤 彩葉[幽霊に会いに行ったあの日。 本当はもう一つ、選択肢があった。>>291 孫も、実の娘のことも忘れてしまったおじいちゃん。 でも、おばあちゃんのことだけは忘れなかったから。 このまま一生、最期のその瞬間まで おばあちゃんのことを覚えていてくれますように。 二人が幸せに暮らせますように。 でも私はそれを選ばなかった。 「私の顔はすっかり忘れたくせに、 ママのことは時々思い出すんだから、 愛妻家っていうか何ていうか。」 なんて、笑って言ったお母さん。 もし私が願っていたら、その『時々』を なくすことができたのだろうけど。 その言葉に、私は笑って頷けなったかもしれない。 代償ってやっぱり、そういうことなんだろう。 結果論になってしまうけど、 私はこれでよかったんだと、心から思っている。 思えている。 でも、もしおじいちゃんが何もかも忘れてしまって、 おばあちゃんやお母さんが悲しんでいても、 私はあの日の選択を後悔しない。 そういう覚悟はちゃんと持っていたつもり。] (842) 2022/10/24(Mon) 23:22:44 |
【人】 工藤 彩葉[日本に帰ってくるまで、不思議と涙は出なかった。 おじいちゃんの死に顔が安らかだったからかな。 少しの間、学校を休むことになったから 友達にはちゃんと理由を伝えていた。 次に登校したのは週明けのこと。 私はちゃんと笑えていたから、 心配はかけなかったと思う。 でもその前の週末に、私はまたギターを取り出して。 家族のいる家で弾く気にはなれなかったから、 天気のいい日に練習に使っていた河川敷に行って 私はもう一度、あの曲を奏でた。] Let it be, let it be Let it be, let it be Yeah, there will be an answer Let it be ... ふっ…… う [どうしてかな。急に泣けてきて。 歌にはそういう力があるのかもしれないね。 思い出も涙も、全部、 私にとって必要なことだったんだろう。 だから、本当にありがとう。] (843) 2022/10/24(Mon) 23:22:46 |
【人】 工藤 彩葉[千葉くんの好きな曲を聞いたのは、>>637 気持ちを切り替えた後のことになったかな。 お互いの進路も決まる頃だったかもしれない。] あ、その曲も知ってる。 映画も観たよ、スタンド・バイ・ミー。 [その曲も、っていうのは 『 Let It Be 』の件もあったけど。 千葉くんの好きな曲、今は色々知っていたし>>1:549 なんなら、私もたくさん聴いていたから。 ギター演奏の参考にしたいから色々教えて、 って言ったのは信じてもらえてたんだったかな だから、千葉くんが普段、 どんな曲を好んで聴くのか私は知っていて。 その歌が単純に、好みだけで選ばれたんじゃないと わかってしまって。 さすがにね、このくらい続けてると 千葉くんが練習したのかどうかも気付けるし。] (844) 2022/10/24(Mon) 23:22:50 |
【人】 工藤 彩葉……ありがとう。 [お手本を聴き終わって口にした一言には、 たくさんの想いを込めて。 でもそうだね、私もあの月明りを思い浮かべていた。] (845) 2022/10/24(Mon) 23:22:53 |
【人】 工藤 彩葉[その曲を私が歌って、奏でた日。 私たちの関係は、何か変わっていたかな。] それじゃ、聴いてください。 ……やっぱりちょっと、恥ずかしいな。 一緒に歌ってくれてもいいんだよ? [なんて笑いながら。 もう『お礼』という名目も、 必要なくなっていたかもしれないね。] (846) 2022/10/24(Mon) 23:22:56 |
【人】 工藤 彩葉Whenever you're in trouble (喧嘩をした日もあったかな) Won't you stand by me (それでもまた会いたくて) Oh stand by me (教本はもらうんじゃなくて、ずっと借りておくね) Oh won't you stand now (返す日は来なくていいと、そう思ってるから) (848) 2022/10/24(Mon) 23:23:28 |
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