【人】 軍医 ルーク ―― 回想:第二研究所 ――[ 天の穴の向こうから来た人間。 それが意味するところは、一つだった。 機獣はただの災厄ではない、 送り込んでくる者たちがいるということだ。 あれが生物ではなく機械の一種であることを考えれば、 それは当然とも言えたのだけれど、 この世界の“上”にもう一つの世界があって、 そこに住まう者たちが自分たちを滅ぼそうとしていることは、 頭の中の世界がひっくり返るような衝撃ではあった。 ――天の向こうには、世界がある。 父の話を思い出す。 その父は、現れた機獣に襲われて死んだ。 彼女は、仇と呼ばれる存在であったのかもしれない。 けれど、日々身体を切り刻まれ、 その小さな体に傷を増やしていく子供を そのような目だけで見ることは、 どうしたって出来そうもなかった。] (176) 2020/05/23(Sat) 10:30:49 |
【人】 軍医 ルーク[ 捕虜から情報を引き出そうとするのは当然のこと、 増して自分たちが滅ぼされようとしている瀬戸際だ。 そう思おうとしても、どうしても見過ごすことが出来なくて、 せめてやり方を変えることは出来ないのかと訴えた。 諭すように、けれども苛立ちを隠さず、上司はこう言った。 “人道主義も結構だが、付き合っていられる状況ではない。 彼女から引き出される情報は、確実に我々の有利となる。 君の自己満足に付き合って、 手の内にあるそれをみすみす逃し、 何百何千という人が死ぬことになってもいいという、 それだけの覚悟で言っているのか? 君は汚れ役は周りに任せて、 感謝される役回りを与えられた。 その上で綺麗事を重ねるのは、 虫が良すぎるというものだ。 おままごとも程々にしておきなさい” どれ程食い下がっても、出来ることが何もなかった。] (177) 2020/05/23(Sat) 10:31:46 |
【人】 軍医 ルーク[ なかったのだろうか? ほんとうに? もし本気で状況を変えようと、 死に物狂いで戦ったなら、 結末は変わっていたのではないだろうか。 それをせずに、状況に流されるままに甘んじて。 恨まれて当然だった。 自分も、彼女を傷つける者たちと変わらないというのに、 その子供は、恨む素振りを見せなかった。 ――少なくとも、表立っては。 時折こっそりと持ち込む菓子を、嬉しそうに頬張る。 食べることが大好きで、 美味しいものを食べると何より幸せそうにする、 そんな子供だった。] (178) 2020/05/23(Sat) 10:34:13 |
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