【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「少し、調理場で話したのですが。 ……私はどこで生まれたか、いつ生まれたかが分かりません。 それ自体は珍しくないと思っています。 今の主人に拾われ、芸を少々。 顔が、良かったようなので。上手く稼げました。 12の頃から商業を学び、違法なものも含め多くを売りました。 信頼と、倫理観は同じ場所にない。 ただより高いものはなく、できた信頼は次の 取引 に繋がる。そう、実践で学びました。 金銭を要求しながら、価値を求める。 相手の悩みや、必要なものを見定め、商品を提供する。 表情が乏しい私でもできました。 むしろ心地よかったです、『想像以上に優しかった』 『こんなにもらっていいのか』『あなたはいい人だ』、 そうやって言ってもらえるんです。 取引 さえできて次につながれば損なんてないんです、ただで渡す代わりにその商品を必要な理由を必ず求めます、 ……寄り添い同情し生き様に感心することが心から好きです。 誰かは、騙していると、言うのかもしれません。 ですが、これが私の 商人 としての。ミロクとしての生き方 になりました」▼ (-133) 2021/07/10(Sat) 14:34:22 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「ようやく、ここにきてからの話です。 私は取引を、"目的"と"言い値"で交換しています。 商品を渡す代わりに、 欲しい"理由"と、払おうと思える"金銭"をいただくんです。 それが、見合う見合わないか、嘘か本当か 犯罪に手を染めようと商人の私には関係がありません。 理由は、先程言ったとおりですね? 私は、偽善のつもりはありません。 商人として取引をしに来たのですから」 でも、と続け。 死んでも個人の情報は守り続けるべきだと、 細かい内容は伏せられる。 質問をされたら、答えるかもしれないが。 ▼ (-134) 2021/07/10(Sat) 14:40:10 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「私から取引をすることはあまりありません。 ひとまずの目標は患者さんや、技師のアユミさんでしたね とくに、 困っていそう でしたから。一番はじめに、ニエカワさんの 夢 を聞いて取引をしました。少しの金銭をやりとりをして、未来を夢見ました。 少し間に合わないとも、思いましたが。 次にロクさんです。取引したのは 願い でした。他にお礼にピアスを一ついただきました。 それは。取引とは関係ない物でして。 とても、嬉しく思いました。"私が"いただいた価値ですから。 次にタマオさんと 言葉 の取引をしました。この取引は、私の人生にとって目からうろこでした。 ですが、どうやら過剰に払いすぎたらしく。 その後いくつか私の手伝いをしてくれるようになりました。 それが先程の話に繋がります。 次にフジノさんと 未来 の取引をしました。村での暮らしや、有意義な会話をして。 彼女には大人になるまで生きていて欲しいと思いました。 次にメイジさんと 将来 の取引をしました。落ち込んでいましたが、生きていて欲しいとお伝えしながら、 無事に別れを言えました」 ▼ (-136) 2021/07/10(Sat) 14:44:28 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「その中で、 取引 が一つ。ありました。私が死ぬこと に、価値 を見てもらえたんです。商品にしたつもりはその方は無かったのでしょう。 ですが、生きていてもなにもなかった私は、 求められた瞬間、人生を差し出せると思いました。 理解していただけますか? できませんかね。 望まれたことなんて無かったんです、生死のどちらも。 私はなんのために生きていたのでしょう。 そんなところです、私が死んだ理由は。 私を死んで欲しい [必要] としてくれたのが嬉しかった。ただ。どうして死んだのか、と聞かれて答えたのですが。 正しい答えを返せていないようです。 あなたに生きて欲しいから、取引をしたからだと言ったのに。 どうしてわかってくれないんでしょうね」 男は酷く饒舌に語った。死んでいるのに。 (-137) 2021/07/10(Sat) 14:50:23 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク「……、…………。………………」 途中から あっ人選間違えたな とは思ったが、最後まで相槌も打たず聞いていた。「……まあ、貴方の生い立ちは理解できるかもしれません。 価値なんて人によって違いますし、 何より恩義や信頼という感情は強い。 金銭で買える品ではありませんからね」 最初の印象通りだと思った。 取引という形に固執していたのは、ただの結論。 経緯を見れば、商人としての生き方しか知らない子供の様だった。 商業を学ぶ前から自分の芸を売っていたのだから、 恐らく、物心つく前から商人だったのだろう。 きっと人との関わり方を、取引以外に知らないまま死に絶えたのだ。 → (-149) 2021/07/10(Sat) 17:48:21 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク貴方が本当に望む物は金銭や価値などではなく、 人との交流において得られる感情そのものではないかと。 心を動かす何かではないかと。 「貴方がどんな人生を歩んで来たかは知りません。 けれども話を聞いて、納得はしました。 もし僕が同じ立場にいたら、同じ事をしたでしょうね」 そう思い至りながらも、口にはしない。 互いに死んだ身だ。 指摘した所で、何の益にもなりやしない。 「その取引をしたの、ロクさんでしょう? 彼は正しく、真っ当な倫理を持っていますから」 これまで自身の付加価値だけを求められ、 応じてきた人間“そのもの”を要求するなど──蜘蛛の糸を垂らす事に等しい。 それをあの青年は、理解できなかったのだろう。 → (-150) 2021/07/10(Sat) 17:49:40 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク「さて。貴方に合わせるなら、 僕も何か話した方が良いですかね?」 自身が死んだ時の話を求められていたが、 忘れたふりをする。 この少年のような男に話すには、 あまり気が進まない経緯だからだった。 (-151) 2021/07/10(Sat) 17:50:33 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「……、……。 その取引をした方は。 死にたがっているように見えていました。 一人の意志だけで生きるというのは難しいことなんですね」 男は、そう思ったようだった。生きて欲しかったと呟く。 後に学べば一人よりも二人、支え合って生きていくのが人生を豊かにすることもあるという論につながる。 今では到底出てこない意見だったりした。 「はい、なんでも。あなたのことが知りたいです。 聞かせてください。あ、聞けなかったこともあります。 夢や目指してること、困ったことはあったのかなど。 あなたは大人で、何でも自分で解決しようと見えましたから、聞けなかったんです」 男は、ミロクとしてしか生きていられませんでした。 だからこうして相槌をうってもらえるだけで満足なのでしょう。 なんせ、話をするのも聞くのも大好きなだけですから。 いろんな話を省略してくださっても、構いません。 (-157) 2021/07/10(Sat) 19:21:23 |
【独】 諦念 セナハラフジノちゃんと全然話せなかったのが悔しいぜ…… 絶対家庭環境最悪だもん 父親ってやつはこれだからよ バラして食べちゃおうね (-164) 2021/07/10(Sat) 22:32:32 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク独りの人間が生きていく難しさは知っている。 つい先程、諦めた立場だった。 「何でも、って。夕飯じゃないんですから」 何か面白い話は無いのかと、 子供に強請られているような心地がした。 苦笑を零し、心中でそっと後悔する。 こんな状況でなければ、彼のことも貴方のことも、 助言くらいはできただろうから。 こうなる前に。 「夢や目標なんて大層なものはありません。 困ったことと言えば、夢見の悪さくらいですかね。 ……僕は大人で、貴方達の善性を守りたかった。 ですから、ええ。聞かれても答えませんでしたよ」 物言いは過去のものだ。 死んで失うものなど無いのだから、今は違う。 (-165) 2021/07/10(Sat) 22:40:16 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク「僕の人生はあまり聞いて心地の良いものではありません。 そうですね、……医者を志した理由に関わることだけ。 以前は誤魔化してしまいましたから」 湯を沸かした調理室で問われた事だ。 貴方達が自分よりも年嵩であれば、あの場で話しただろう。 「僕が外地で生まれ育った事は話しましたね。 彩帆という場所です。 海のずっと先にある、淡い緑の海が美しい島でした」 努めて思い出す事ではない。 あの島での思い出は、全てが苦痛に満ちているから。 それは決して誰のせいでもない。時代のせいだ。 地平線に辿り着くよりも早く沈む疎開船を見て。 溺れているであろう母と姉と妹を見て。 父は“ここにいろ”と言った。 「……美しい島でしたが。戦争が始まれば、 そこは内地よりも過激な戦いが繰り広げられました。 内地からの物資も届かなくなってしまってね。 ほら、海も空もアメリカーに取られちゃいましたから」 僅かに訛りが現れた。 自覚しつつも、続けていく。 (-166) 2021/07/10(Sat) 22:42:53 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク「銃も、手榴弾も、服も、水も、食べ物も、全て。 底をついたんですよ。 畑は燃えてしまったし、空爆で建物は全て、 跡形も無くなっていました。 しかしそれでも腹は減る 。食べ物と言えば、共に逃げる生き物くらいで。 ……父から食べ方を教わりました」 その生き物は二本足で歩き、言葉を扱うことができた。 共に励ましあい、笑い合うことができた。 そんな、生き物だった。 「……、問題は戦争が終わって、平和になってからです。 毎晩夢に出るんですよ、よくも食ってくれたな≠チて。 血肉の色が、味や臭いが、忘れられない。 だからね、それを日常にすることにしました。 鉄錆の臭いも、冷えた人肌も日常にしようと。 上書きしたかったんです、あの日々を」 (-167) 2021/07/10(Sat) 22:43:32 |
【墓】 諦念 セナハラこれはどこかの時間。 死んだ男は、手術室で自分の死体と少年を見つめていた。 聞こえないと知りながら、返事をし続ける。 「きみは何も悪くないんですよ」 以前のように頭を撫でようとして、 己がさせたことを思い出せば、手を下ろした。 「いつか、助けがきますから」 どうせわからないのだから、撫でてもいいとわかっている。 しかし、そんな資格は無い。 「……」 いや、自らそれを捨てたのだ。 ──貴方は良い子だから。 ──自分の我儘に付き合ってくれると、信じていた。 「ありがとう、」 「ごめんなさい」 あのとき伝えたかった二つの言葉を、小さく呟いた。 (+21) 2021/07/11(Sun) 1:10:45 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラセナハラの人生はミロクの人生とはかけ離れたものだった。 しかし選べもしない運命と、 生きるための行動に頭が働かないほど愚かでもなく。 だからこそ、ゆるく、首を傾げ。 納得していないかのような仕草をしたあとに、その顔を見た。 「解決は、しましたか?」 ▼ (-176) 2021/07/11(Sun) 12:17:17 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「とても、辛いことだと思います。 あなたの食べた方は心が狭く、 あなたのことをいつまでも恨み、 生きていることを喜ばないそんな方々だったと、 あなたは思っているのですから。 不仲であったのならば御愁傷様でした。 あなたがそれで得ようとした日常に、 "そんなことを言わないような"方との、 良い縁が結ばれていたのならいいのですが。 いかがでしたか?」 (-177) 2021/07/11(Sun) 12:19:21 |
【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク「当人達がどう思ってるか、なんて決まってるでしょ。 飢えてりゃ皆心が狭くなります。 親だって子供が煩わしくなる。 自分さえ助かりゃ良くなるんですよ。 それに。 遺族にとっては、終わった話じゃあない」 眉を顰めた後。 決め付けるような物言いと、 吐き捨てるような抑揚で言うのだった。 その時その場所における真実が、今もそうであるかのように話す。 男の刻は止まったまま、死に絶えたのだ。 「解決は、……しないまま終わりましたね。 縁もあったらこんな事にはなってないですよ」 人を信じない男は、 自身を求める少年の言葉も未だ嘘だと思っている。 それは戦争の後遺症であるが、気付けぬまま。 (-193) 2021/07/11(Sun) 19:49:38 |
【秘】 商人 ミロク → 諦念 セナハラ「そうですか、それは。 とても、残念です」 取引を持ちかけたら、何を求めたのだろう。 すぐには思いつかなかった。 「私、もう少しだけここにいられるようです。 誰かを死の世界に誘える能力があるみたいで。 この力と人の魂の重さを考えながら過ごしていくと思います。 だから、少しでも、です。 あなたの人生を許した人間がここにいることを、 覚えていてもらえたらと思います。 お話、楽しかったです、また聞きたいです。 たとえ……もし、成仏をして会えなくなったとしても。 あなたが生まれたことを空に祝うことぐらいはできます。 どんな季節に、あなたは生まれましたか?」 男はこの病院で誕生日を祝うことを覚えました。 それは、とても尊く、心が暖かくなることだと思いました。 死んでもなお、想われることは嬉しいのだと、そう感じたのです。 それを、あなたにも感じてほしいと思いました。 (-196) 2021/07/11(Sun) 20:32:45 |
セナハラは、幸せが何よりも恐ろしい。 (c8) 2021/07/11(Sun) 20:52:02 |