人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:


【人】 食虫花 フィオレ

同じ頃、近くのショッピングモールで記念セールが行われているらしい。
朝から景気よく花火も上がっていて、パレードも相まって人通りはいつもよりも少し多いくらい。

キャップを目深に被って、カジュアルなパーカー姿の女が人込みの中を歩いている。
ノーハンド通話でもしているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら。
花火を眺める人達の間を縫っていく。

「―――」

長身の男が、視界に入る。
目を細める。口元のインカムに何事かを呟いて。

後ろから近付いていく。その匂いは、姿は、よく知っているものだったから。
殆ど至近距離。背中に近付いて、口を開く。

「―――Ciao.」

そんな声は喧騒にかき消される。
背中に突き付けた拳銃が、間違いなく右の胸に向けられて。


人差し指が、引き金を引いた。

消音器で抑えられた音は、花火にかき消えてしまうだろうか。
それでもそれは確かに、放たれたのだ。

#BlackAndWhiteMovie
(3) 2023/09/26(Tue) 21:53:37

【人】 食虫花 フィオレ

>>5 >>6

「………」

拳銃を持った手は、震えている。
女は、人を撃ったことなんてなかった。
あなたのことを、信頼していた。本当に、信用していたのだ。

けれど、今は。
柔らかな笑顔を浮かべていた女の顔は憎悪の色に染まって、あなたを睨みつけている。

あなたの向ける笑顔に、ぎりと歯を噛んで。

何で、笑うのよ。
何で、何で、
あの子達を手にかけたあんたが、何で

#BlackAndWhiteMovie
(7) 2023/09/26(Tue) 22:11:22
フィオレは、拳銃を下ろした。もう、必要ない。はずだ。
(a0) 2023/09/26(Tue) 22:13:09

【人】 食虫花 フィオレ

>>21 ロメオ

「……まだ生きてた」
「……けど、これ以上は…」

人ごみの中を追いかけるだけで目立ってしまう。
それに、胸を撃ち抜いたのだ。時間の問題だろう。

「……大丈夫では、ないかも」

思ったよりも、負担が大きい。
ふらりと人ごみの中を歩いていく。

眩暈がする。吐き気が込み上げてくる。
すっきりすると、思っていたのに。

「悪いけど、車…用意しておいてくれる?」

#BlackAndWhiteMovie
(23) 2023/09/26(Tue) 22:48:13

【人】 食虫花 フィオレ

>>27 ロメオ

ふらり、キャップで顔の隠れた女が車までたどり着く。
助手席……を通り過ぎ、後部座席に転がり込む。
そのまま丸まって、しばらく動かないだろう。

「………」

お水、と小さく呟いて。運転席の方に手を伸ばしている。

#BlackAndWhiteMovie
(31) 2023/09/26(Tue) 23:29:42

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、ぐ……」

地に身体が押し付けられる。
露出した肌に、転がった砂利が食い込んで眉を寄せた。
携帯には手を伸ばすものの、自由に動けるあなたにかなうわけもなく。
返して、と口では言うものの。きっとそれは聞き入れられないのだろう。
あなたの下から、女が睨みつけている。

「話すと、思ってるの……」
「何も話すことはないわ、あんたみたいな人に……!」

体重が掛けられたくらい何だ。そんなことで仲間を売ったりはしない。
気丈な態度の女は、簡単には屈しないだろう。
(-5) 2023/09/26(Tue) 23:44:27

【人】 路地の花 フィオレ

>>32 ロメオ

置かれていたクッションに遠慮なく顔を埋めている。
キャップがはずれて、あなたと同じようにポニーテールにした髪があらわになった。

「……こんなもんか、って思っちゃった」

ペットボトルを受け取り、ふたを開けて。横になったまま口を付ける。
目を伏せてぽつりとつぶやいた。

「思ったより、ずっと……すっきりしない」
「あいつが、笑ったから…?」

脳裏に焼き付いて離れない。
あんな顔が出来るなら、どうしてあんなことをしたのか。
わからなくて、気持ちが悪いままだ。

#BlackAndWhiteMovie
(33) 2023/09/27(Wed) 0:35:41

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

「それを言うなら。」

ざり。体重をかける。度に靴底が地面と擦れて音を立てる。

「黙秘の権利があると思っているのか。」
「お前のような悪人生き物に?」

横向いて倒れた貴方の身体を、押さえつけた膝で地面に転がした。仰向けに、急所の多い腹が自分に正対するように。

「吐け。」
「それとも吐くか?」

ぐ、と。
重みが食い込む先は、貴方の腹だ。
(-17) 2023/09/27(Wed) 16:03:40

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「あっきれた……悪人は、人間じゃないとでも言いたい、わけ?」

は、と挑発するように笑ってみせる。
警察だろうが関係ない。この男の言い分に乗ってやるつもりはない!

「っ、ぁ…く……」

背中が地に付けられて。
柔らかな女の腹に、男1人分の体重がかけられていく。

苦悶の表情を浮かべていたかと思うと、女の体が小さく跳ねた。
甘い声が漏れる。
内臓が圧迫されて苦しいのに、苦痛とは別の波が襲ってきていた。


女は、性行為をしてきた直後だった。
だから、あなたの責苦に快楽が揺り戻されている。
苦痛が上回れば、流石にそれどころでなくなるだろうけれど。
(-23) 2023/09/27(Wed) 17:23:57

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

「先にそうしたのはお前たちだろう。」

成り立たない会話の応酬。
貴方もそろそろ気づくだろう。どうやらこの男は貴方を人間一般市民扱いする気持ちがそれほどない。
けれどそれには男の中で何か理屈があるらしかった。貴方の気にすることではないが。

「お前たちは」

ぐ。


「他者を尊重するのか?」

ぐ。


「しないだろう。マフィアだからな。」

ぐ。ぐん。


一定のリズムで圧迫される内臓。
さて次の責め苦をどうしようかと考える間の手慰み。
続く暴力を予見させる行動。カウントダウン、だったはずの、それ。
対する貴方の反応に、男は怪訝な顔をして動きを止めた。
薄暗い路地。表情は伺えず顔を寄せることになる。
発作か何かを起こしているなら厄介だ。まさかこの行為が、貴方の快に繋がろうとは思うはずもなく。
(-30) 2023/09/27(Wed) 18:58:32

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

この男が何を言っているのか、女には理解が及ばない。当たり前だ。

「バカ、ね」
私たちマフィア、ほど、っ…繋がりを尊重、するところ…ないわよ…っ」

少なくとも、あんたよりはずっと。と口角を上げて。

は、と熱い息を吐く。下腹部が疼いて、喘ぎ混じりの声が小さくこぼれる。
場違いのようにも思えるその反応に、あなたが顔を近付けたのなら。
そこはハニートラップを生業とする、彼女のテリトリーだ。

「っ、ふ……
捕まえた


自由な腕が、あなたの首に回されて。
ぐ、と彼女の方へ引き寄せられる。
あなたの唇に、女の唇が合わせられた。そのまま、抵抗の暇すら与えず 唇を舌でこじ開けてやる。
マフィアを毛嫌いしている様子のあなたなら、嫌悪から身体が離されるはずだと踏んで。
吐き気と快楽が迫り上がるのに耐えながら、あなたの口内を犯そうと舌を蠢かせた。

花の棘には毒があるの。
気安く触れると、痛い目を見るわよ。
(-41) 2023/09/27(Wed) 21:34:50

【人】 路地の花 フィオレ

>>38 ロメオ

「……」

そうなのかもね、なんて言葉を口にしようとして。
結局は開いた口からは何も発さずに、クッションに頬を埋めている。
いやな気持ち悪さだけが、ぐるぐると頭の中を回っていた。

「分かんないわよ……」
「……もしかしたら、……ううん、」

何でもない、とやはり言葉を飲み込んだ。
私が間違えているのかも。とか。本当は、もっと確かめるべきことがあったのじゃないかとか。
全部、全部。今更だ。

「これで、子供たちの未来が救われればいい…」
「もう、誰もいなくならなければいい」

ロメオ、とあなたの名前を呼んで。
後部座席で両手を広げている。寂しい時の、合図だった。

#BlackAndWhiteMovie
(50) 2023/09/28(Thu) 2:27:52

【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

にまにまと笑いながら話を聞いている。
言いづらそうな理由なんて知らなかったから、ただあなたが珍しい顔を見せてくれるから。
楽しくなってしまって。

「そんなことがいいの!
 アレの腕の中、凄く安心するんだから」
「ね、約束よ。ちゃんと叶えてよねっ」

ホッとしたように息を吐いて、笑みを返す。
こういう反応はやはり、あなたに甘えているからなのだろう。
年下らしいと感じるかもしれない。
あなたとの未来を、疑問なく信じている。

「ん……ふーん、ふふっ」
「好きじゃない、それは大好きだって言うの!
 嬉しいな、アレがそんなに私のこと考えてくれてたなんて」

そんな顔しなくてもいいのになんて言いながら、頬を染めて笑う。
いつもじゃれ合っているきょうだいが、いつになく褒めてくれたのだ。
可愛がられている自覚はあったけど、言葉にしてもらえるのはまた違ったうれしさがあった。

「私も、アレのこと大好きよ」
「だから、早く出てこれることを祈ってるから」

かしゃん、と牢に手を置いた音が小さく響く。
触れられない。
だから、触れられる場所に早く戻ってきてくれますように。

「じゃあ、そろそろ行くわね。
 フレッドが何も怪我してないといいけど……アレも、これ以上怪我しないようにね」
(-60) 2023/09/28(Thu) 2:49:03

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ

くそー、なんて悪態をつきながら、
はいはい、と手を振った。

「全く、今お前を抱き寄せられないのが残念だよ」
「約束約束。叶えるから」

     ――嘘。


珍しく嘘をつく自分に顔をしかめて、
けれどかつて、腕の中にあった体温は本物だった。
それを確かめるように、自分の腕をさすって、

「大好きね、……まー、そうかもな、うん」

その言葉を口にすることが、正しいのか。
自問と自戒が渦を巻いて、普段はくるくると回る口を重くする。

そうしているうちに、格子が音を立てる。
届かない手をこちらに伸ばす女に、
もう
届かない笑みを返して。

「おー。俺もそう祈ってるよ。
 お前も無茶すんなよ、怪我も。あーそれともし金とかないってなったら、俺の口座にはいってるから。あれ、非常用。ちゃんと使えよ!」

はよ行け行け、なんて手ぶりをしながら、あれこれつけたしで放り投げる。手が触れられないなりにあなたを気遣う言葉をいくつも取り出して、


「帰り。車気を付けな」

──見送った。いつものように、いつものようにはできずとも。
(-64) 2023/09/28(Thu) 5:53:10

【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ

逮捕された人たちが解放されてから、暫く経って。
落ち着いた頃合いにメッセージがひとつ。
よく知るところとなった女からのものだ。

『Ciao,テオ』
『夜、どこかで時間取れない?ゆっくりお話したくって』

『何か飲みたいものとかあれば持って行くわ』
(-66) 2023/09/28(Thu) 7:29:00

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

口元が“N”の形を作った
────お前たちは違うNotte siete diversi.
それはこれまでも繰り返されてきて、これからも繰り返される否定。


しかし、その唇から音が発されることはなかった。
絡め取るように回される腕。それから柔らかい感触。
しまった、と思った時にはもう遅い。内側の粘膜にまで触れられ​、それが口付けであると遅れて知る。
勝ち誇ったようなターコイズが近くで細まった。のを、見て。


男は、

その首を絞めた。



何よりもまず嫌悪。背筋から項までが総毛立つような不快感。その次に焦り。何かが仕込まれてやしないか・・・・・・・・・・・・・という恐怖。油断した。まずかった。マフィアとはそういう生き物だ・・・・・・・・・・・・・・
舌に噛み付くなんてそれなりの高等技術は思考に及ばない。まず飛び出すのは手。片手で貴方の首を押さえつけて絞めあげ無理矢理引き剥がそうとする。これは男の腕力だ。通常なら負けることはないだろうが。
(-80) 2023/09/28(Thu) 10:56:12

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、!」

口内を堪能するような時間は与えられず、女の細い首はその手に捕えられて。再びこの地に縫い付けられる。
ギリ、と締め上げられて。首に回していた腕で、あなたの片腕を握って離させようとする。
女の腕力だ、敵いっこない。

この口付けは、咄嗟に思い付いたものだ。
故に、何かを仕込む余裕などなかったのだが。あなたを疑心暗鬼にさせたならそれで十分仕事を果たせたと言える。


打って変わって、あなたの下の彼女は苦しげに顔を歪ませている。
結局のところは引き剥がせなかったわけだから、形勢逆転とまではいかなかった。
(-81) 2023/09/28(Thu) 11:21:47

【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ


『いいですよ』
『なんでもいいです』

音声入力なんかしたことないし、かといえ細かいニュアンスを記せるほど自由な指はないから、突き放すというかもはやただただそっけない文面になってしまった。

『一度家に来ますか』
『開けています』

ベランダに飾っている花たちのことも考えなくてはならないし。
そんな気分で、軽い気持ちで家に招くのだった。
(-90) 2023/09/28(Thu) 14:11:43

【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ

『はいはい、じゃあ適当に持ってくわ』

手の状態は知らずとも。
まだ万全ではないのかも、ということくらいはわかる。

『元々家で済ませるつもりだったから、出かける準備はしなくていいわよ』
『買い物が終わったら向かうわね』

サングリアやワイン、カクテル用のジュースパック。
それからスプーンやフォークを不要とするご飯やデザートの類をいくつか買っていく。
せっかくだし、遅れた退所祝いみたいなものにしてしまおう。そんな魂胆で。

買い物を終えたなら、あなたの家に向かっているだろう。


メッセージが来た日の夜、あなたの部屋の扉がノックののちに開かれた。
(-91) 2023/09/28(Thu) 14:21:23

【秘】 新芽 テオドロ → 路地の花 フィオレ

「本当は次に備えて、
 もう少し整理とか準備などしてようと思ってたんですが」

「あまりにも予定のブッキングが多かったですね」

以前来た時とまるで変わらない、
どことなく寂しいシンプルの過ぎる部屋を背に出迎える。
これ以上どこを整理できる場所があるというのだろうか。

「さ、適当に置いて行ってください。
 俺が手伝えることは殆どないでしょうので、あんたの勝手に。
 勿論狼藉を働いたら蹴り出しますが」

出迎えも漫ろに背を向けて歩いていく。
手袋の嵌められた腕先の動きは少々ぎこちなく、室内でつけているのはまあいいとして、この季節にしては暑苦しそうに見えただろうか。
(-94) 2023/09/28(Thu) 14:44:50

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

くそ・・女、とは言わなかった。
それなりの自制、それなりの理性、それなりの当然の善性は、男にもあった。
この時は、まだ。


焦りで鼓動が逸る。それで思考が鈍くなり、貴方の首を押し付けるようにする力ばかり強くなる。はっと下を見れば酷く歪んだ顔があって、男はそれにも動揺した。動揺した自分に、それを催させた貴方にまた苛立ちが募った。
舌打ちがひとつ飛ぶ。ままならない思考とこの行為に対して。伴って男は貴方の上から退き、同時にその半身を蹴り飛ばした。
八つ当たりだ。

貴方の身体が再び砂利を擦って転がるだろう。壁にでもぶち当たればどこかしらが切れるかもしれない。しかしむしろそれを利用して、距離をとって立ち上がろうとすることは不可能ではない。かもしれない。
(-95) 2023/09/28(Thu) 14:48:28

【人】 路地の花 フィオレ

>>51 ロメオ

「泣かない、泣くわけないわ」
「……ありがとう、ロメオ」

一人だったら、きっとどうにもできなかった。
感情のやり場も、それを発散することも。

大丈夫、これは前を向くための儀式だ。
共犯者と言ってもいい関係のあなたと、背負ったものを分け合うような気持ちで。
これからも、私は間違っていなかったんだと思えるように。

「あなたがいてくれて、よかった」

胸を借りて、優しい声でそうつぶやくのだ。

#BlackAndWhiteMovie
(55) 2023/09/28(Thu) 20:24:32

【秘】 路地の花 フィオレ → 新芽 テオドロ

「何、準備って私のために?」
「これ以上整理なんてしたら、この部屋から物なくなっちゃうわよ」

軽口を叩きつつ。
よいしょ、とまた大荷物をテーブルの上に置いて。
今すぐ食べないであろうデザートは、いくつか冷蔵庫に入れさせてもらって。
空きを聞いてなかったから、入ってよかったと思う。

「まあ警察もあんなことがあった後じゃあね」
「今時間取れてるのが奇跡なくらいじゃない。まだ全然落ち着いてないんでしょ?」

怪我人に手伝わせるわけにはいかないと、最初から自分で準備するつもり満々だったようだ。
テーブルの上に酒と食べ物を並べていく。今日は出来立てのものが多く、料理はまだ温かい。
たまにちらりとあなたの様子を見ては、手、相当ひどいのかななんて気にしたりして。

「狼藉なんて働いたことないでしょ、失礼ね」
「それより、手袋。暑くないの?外せとは言わないけど」

まだ見せたくないんでしょ、と。
物を並べながら、何でもない風に。
それでも顔を見たのなら、ちょっとだけ拗ねてるようにも見えるだろう。
(-110) 2023/09/28(Thu) 20:47:55

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

首がギリギリと、強く強く締め上げられる。
息が出来ない。視界が歪んで、腕を剥がそうと掴む手から力が抜けそうになるのを何とか気力で堪える。
舌打ち一つ、耳に入ったかと思えば。
空気が入り込んでくる。気道が塞がれ続けていたせいで、異物が入ってくるような感覚に咳き込んで。

ガッ!!


それも長くは、許されない。
蹴り飛ばされた体は、砂利の散らばる石畳を勢いづけて転がっていく。
尖った石が肌を傷つけ、白い肌に小さな赤い花を咲かせる。

壁に背中をぶつけ、今度は身体を丸め大きく咳き込んだ。
痛みと、苦しみとで表情は歪んだまま。
あなたの方に、顔を向ける。

「っ、けほ……は、……」

苛立ちを見せるあなたに、女が笑みを浮かべてみせたようにみえたかもしれない。
(-117) 2023/09/28(Thu) 21:50:08

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

再び踏みつけにしようとした足はそのまま地に降ろされ土を蹴った。それは子どもの癇癪じみた仕草だった。
二度もあんな気色の悪い声を聴かされるのはごめんだ。

けれど男は子どもではないから、続く動作には悪意が込められて遊び・・がない。

裏路地の砂ぼこりが巻き上げられてぱらぱらと貴方の顔やら身体に降り注いだろう。荒く息をした口にも僅かに入り込んだかもしれない。浅い青の瞳に触れそうで咄嗟に瞑ったかもしれない。
男はその隙を狙う。

ざり。体重の位置を僅かに変える音。そのすぐ後。

丸まった腹を目掛けて蹴りが飛んだ。上手くいけば薄い腹に深く入るはずで。
加えて再び弾かれた身体はまり・・のように弾むはず。

「盛ったか?」
「何か。」

この国じゃサッカーは人気のスポーツだ。
蹴飛ばす以外に同じところはなく、全く愉快にはなれなかった。
(-146) 2023/09/29(Fri) 1:10:45

【秘】 路地の花 フィオレ → アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

「ふふ、ここから出られた時の楽しみに取っておきましょっ」
「アレならすぐにでも出てきちゃいそうだけど」

きっと、そう時間はかからないはずだ。
あなたのことを信頼している。本当に。微塵も、約束を疑わない。

「あは」
「嬉しい、ホントに。アレ、全然言ってくれないんだもの」

珍しく素直な言葉をいくつも聞けたからか、妹分の女は心底嬉しそうに頬をほころばせて。
こんなこと今後あるかもわからないから、噛み締めるように大好きかあ〜と口にしたり。


「もー、何年ここにいるつもりでいるのよ」
「お金だって足りてるって言ってるのに……過保護よ、過保護!
 …ま、いいけどね。うん、アレが安心できるようにちゃんと守ってみせるわ」

格子に置いていた手を離して、呆れたような顔ののち。仕方ないなあと緩めて。
体温代わりに投げられた気遣いを、大事に大事に受け取った。


「うん。フレッドにもアレが元気そうだったこと伝えておくから」

それと、と一度言葉を切って。背中を向けて少し歩いたかと思えば。
振り返って、にいと笑う。

「アレ、大好き。また会いにくるから!」

ばいばい、と手を振るのだろう。また会えると信じて。
次はもっとゆっくり話せればいいなんて、叶わない願いを胸に抱くのだ。
(-151) 2023/09/29(Fri) 1:49:11

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

げほ、げほ、と咳き込んでいれば。
少しだけの間を置いて、砂埃が女を襲う。
口の中がざらつき、目に入らぬよう瞑った目を両腕でかばって。
あなたの思惑通り、大きな隙が出来る。

が、っ!
う……ぐぇ……っ」

靴先が、女の腹に突き刺さる。
一瞬浮いた体は、もう一度壁に思い切りぶつけられて。
再び地に落ちた。まるでボールのような扱いだ。
膝で圧迫されていた時とは比べ物にならないくらい、抉るような衝撃が内臓を襲って。
その場に胃の中のものが吐き出される。
つんとした匂いが鼻を刺激して、口の中がきもちわるい。

その衝撃で、ポケットから
注射器
が転がり落ちる。
中身こそ空になっているが、使用された形跡のあるもの。
疑心暗鬼になっているあなたは、これをどう取るだろうか。

「っ、ぐ……あ、は」
「どう、おも、う?」

青い顔で、しかし。
負けるわけには、いかなかったものだから。
(-157) 2023/09/29(Fri) 2:05:05

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

びちゃ。

きっとそういう音。濡れた音が地面に散った。
同時にすえた臭いが立ち上り、男は厭うように距離を取ったろう。誰だって汚物で衣服が汚れるのは嫌だ。

────それでもきっと、
ここにいたのが貴方ではなく一般市民であれば、
迷いなく助け起こそうとしたはずだ。


潰れた蛙のような声を上げて身を震わせる貴方を、視線で見下して男は眺めていた。
月色の目を丸くして見ていた。そうしてひとつ、静かに息を吐いた。ぱち、ぱち。瞬きは油断の合図であり、転換の印。

一度目の暗転の後、瞳はまだ貴方を見ていた。
二度目の明転の後、瞳は転がる注射器に向いた。

男が手を伸ばす。貴方が奪い取らないのであればそれを拾い上げるだろう。しゃがみこんで、針先を見つめて。

「使ったのか?」

誰に、と言わなかった。
むしろそれは、自分ではないと確信した落ち着きだ。
逸っていた鼓動は今は収まっている。体温の上昇や低下、発汗等もない。それに針を刺された感覚はなかったし、液状なら──思い出したくもないが──口づけで仕込むのも不可能だろう。
だからこそ。
だからこそ問う。

無辜の民を犠牲にしたかと問う。答えの見えた問いだ。
見えているから、畳みかけて問い質す準備は出来ている。
(-163) 2023/09/29(Fri) 2:55:48

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

暫く、まともに声を出すことすら叶わないだろう。
身を丸めて、痛みを逃すのに精一杯で。

転がった注射器を拾う手を、止めることは出来なかった。
中身は空であるし、仮に女の体を調べたところで元の液体を持ち歩いているわけでない。それが何であるかまではここではわからないだろうが。

「……どう、かしら…使ったか、どうかくらい……見れば、わかるでしょ」

時間稼ぎにもなるか怪しい返答だ。
使用されていること自体は明白だから、否定する意味もない。
痛みを堪えながら、片手を身につけておきあがろうとしている。
もう片方の手は腹にあてて。ぐ、と力を入れる。
動きは緩慢で、簡単に妨害できてしまうだろう。
(-175) 2023/09/29(Fri) 8:45:36

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

肘の辺り目掛けてふるった。注射器を掴んだ手だった。立ち上がる仕草を妨害する。
というよりは、嬲りに偏ったような動作だ。

当たり所が悪ければ関節が非可動域に曲がり込んだかもしれない。或いは、使用済みの注射器の針が刺さったかもしれない。単にバランスを崩して、再び地面に顔から叩きつけられただけだったかもしれない。

血液の匂いはここにない。
ここにいるのは血に飢えた狂犬ではない。

「人を殺しておいてその態度か?」
「心が痛まないのか? これだからノッテマフィアってのは嫌なんだ。」

決めつけ。マフィアとはそういう生き物だ。
しかし今回はひとつだけ当たっている。貴方が人を殺したということ。

「黒眼鏡の命令か?」

問いながら自分の携帯を取り出す。
逃げない内に応援の要請。それから被害者の捜索が急務だ。相手をねじ伏せて少し落ち着いた頭は冷静な判断をしようとし、しかしそれは隙にもなる。
(-190) 2023/09/29(Fri) 13:19:31

【人】 路地の花 フィオレ

>>56 ロメオ

「涙は安売りしてやらないんだから」

少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。
あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。

「やってやったんだから。私」


「ね、何でもしてくれるなら」
「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」

みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。
解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。

#BlackAndWhiteMovie
(77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14

【妖】 路地の花 フィオレ

「どこからそんな自信が出てくるんだか」

なんて呆れたように言いながら。顔は穏やかな笑みを浮かべて。
あとで整理するものがあれば手伝いくらいはするわよ、と続けて。
あなたが部屋のものにあまり触れられたくなければ、1人の時に任せるだろうが。

「意外と余裕…があるわけじゃ、ないんでしょうね。動ける人はとんでもなく忙しくしてそうだもの」

テーブルにグラスも並べて。
なんでも良さそうだったから、白ワインを注ぐ。辛口で食事向き。

「私はこう見えて気遣い屋さんだけど」
「そう。まあ無理に見せてとは言わないわよ、その手に関してはね」

他はまあ、追々。
とりあえずは食事が先決だ。

「乾杯でもする?」
($1) 2023/09/29(Fri) 14:20:27

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、う…、!」

注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたのち。ぶらんと力が抜けたように垂れ下がる。

全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。
気力でもって、なんとか耐えている形。
まだ、立っている。

「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」

口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。
息を整える。痛みに意識を向けないように。

「違うわ。私の、独断よ」

たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。
ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。

話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。
強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。
携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。
ここで捕まるわけには、いかないのだ。
(-196) 2023/09/29(Fri) 17:23:04

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 路地の花 フィオレ

>>5:-581
「ああ、いつだって俺の子猫ちゃんのおねだりは歓迎だ」

何処かの噂で聞けば、この男は部下を持つのを嫌がっている。
本当に誰かを抱えるのは苦手で、責任を取るのも面倒くさくて仕方ない。

それでも貴方だけは簡単には手放してやらないと、貴方の意志を大事にしながら共に歩かせると決めたのだ。
誰かに言われたからでもなかった、後で――誰かさんに言われてしまうが、そんな背中を押す言葉なんていらなくて。

「頼むぞー。一番が自分だからな。
 俺はちゃんと、……お前が帰ってくる場所を守ってやるよ」

いつかその場所が自分自身にならなくなっても見守り続けよう。
この場所を離れたくないというのならずっと傍に置き続けよう。

貴方は自分の部下で、自分は貴方の上司だ。
血の掟などなくとも絶対の誓いをここに、そう信頼を込めて貴方の額に口づけを落とした。
(-200) 2023/09/29(Fri) 17:47:22

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ


──貴方が初めて人を撃ってから数日後の夜。

其方のスマートフォンに着信がひとつ。
非通知、或いは『公衆電話Telefono pubblico』と表記されたそれに出てくれるのなら、聞き慣れた弟の声がしたことだろう。
用件としては短い、『今夜どこかで会えないかな』。

承諾してくれたのなら貴方が指定してくれた場所へ。
場所の指定が無ければ昔二人で遊んだことのある公園へ。

昼と比べれば人気のない場で、弟は貴方が来るのを待っている。
黒いパーカーのフードを被り、ぼんやりと月を見上げていた。
(-235) 2023/09/29(Fri) 22:28:02

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ

「ああ、すぐに出るさ」

嘘は言わない。

「そう、俺は嘘は言わねえよ。
 まぁお前は特別だ」

嘘を言う。

「──そうそう、ここに来る前、ちょうど荷物送ったから。
 じき届くと思う。
 まあ、適当に受け取ってくれ」

いつものこと。

「──ああ。
 まあ、…色々、気を付けてな」

いつもでないこと。


手を振って、その背中を見送る。
はあ、と息を吐いて、


「じゃあなあ」




(1/2)
(-236) 2023/09/29(Fri) 22:39:38

【秘】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡 → 路地の花 フィオレ


翌日、あなたがいない時だろうか、荷物が届く。
入っているのは、口紅が一本。
色々悩んだ結果、あなたに似合うかもわからずに選ばれたに違いない、
オレンジのシアーリップ。
どういう意図で選んだのかも何も書いていないままだ。

──いつものように。

(2/2)
(-237) 2023/09/29(Fri) 22:40:04

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、う…、!」

注射器の針を避けるような動きをしたばかりに、下手にその拳を受け止める形になる。ゴキ、と嫌な音がしたような気がした。
地についた肘に、強い痛み。
全身の痛みに、意識が持っていかれそうで。
気力でもって、なんとか耐えている形。立ち上がろうとした格好のまま、脂汗を浮かべている。

「っ、…はぁ……先に、不義理を働いたのは…彼の方、よ」

口の中の異物を胃液と唾液に混ぜて、地の吐瀉物へ垂らすように吐き出し。
息を整える。痛みに意識を向けないように。

「違うわ。私の、独断よ」

たまたま火遊びの相手が、ファミリーに害を生した男だったというだけ。
ここに誰の命令も介在しない。この殺しだけは、自分だけの責任だ。

話していれば、あなたが携帯を取り出したものだから。勘がまずい、とでも告げたのか。
立ち上がろうとしていた格好から強く地面を蹴って、諸共地面に叩きつけられるよう飛びかかる。
携帯を取り落としてしまえばいい、と。不意をつく形で。
痛む身体も、男女の対格差も考えない。がむしゃらに仕掛けたお粗末なものではあったけれど。

ここで捕まるわけには、いかないのだ。
(-241) 2023/09/29(Fri) 23:09:48

【人】 路地の花 フィオレ

>>78 ロメオ

悪戯小僧には、目を細めて悪い女ぶった笑みを返す。
こどもっぽい仕草が、なんだか今は一番似合う気がしたのだ。

「片っ端から気になるもの買ってみちゃう?
 出来立てのお惣菜とか、お店の人の今日のおすすめとか!」

今なら何だかいいものと出会えそうな気がしたから。
あなたが運転席に戻っても、後部座席に居座ったまま。
体は起こして、白いクッションを抱きかかえる。
キャップをかぶり直して、アクティブなスポーツレディの装いをもう一度。

「うん、いつでも行けるわよ」
「安全運転で、でもぱっと済ませちゃいましょっ」

吹っ切れたような顔で、楽しそうに笑ってみせた。

#BlackAndWhiteMovie
(84) 2023/09/29(Fri) 23:27:25

【妖】 路地の花 フィオレ

じゃあ後で手伝うわね、なんて会話をしたかもしれない。
この女に任せると、捨てようと思っていた物をいくつか持って帰られるかもしれないけれど。
それはそれとして。

「お気の毒様ねえ」
「まあ、警察も上がああなった以上はドタバタ騒ぎもやむなし……っていうか。
 それくらいで済んでよかったって感じじゃない?書類仕事で済むなら、それほどの痛手でもないでしょうしね」

署長代理とやらが捕まることで、丸く収まっているならいいことなのだろうけれど。
自分が撃ち抜いた彼の事も公になっている。結構な地位にいたらしいと聞いたから。
警察内部の事情に疎い女は、実際のところどうなの?と聞いてみている。

落ち着かない様子をちらりとみて、にまと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「怪我人は大人しくしてて下さ〜い」と楽しそうに口にして。
鼻歌まじりにデリのパックを開けていく。
チーズとろけるピザに熱々揚げたてのアランチーニ。ジューシーなポルケッタ、パリパリのパネッレにほくほくクロッケー……本当に片っ端から屋台飯を買ってきたようなラインナップ。
結局こういうものが一番おいしいのだ。

「まあそれもそうなんだけど。
 テオが見せたくないものは、無理に見たくないってだけ」

嫌な思いさせたくないし。気を遣ってくれてるのを無碍にはしたくないし。

「できないことはないか、じゃないのっ」
「もし難しそうなら私の片手をテオだと思って乾杯するから」

どういう有様かは知らないけど。無理してグラスを落としたり、不安定になってもいけないし。
ちゃんと持てる状態でないと、この女は折れなさそうだ。
($3) 2023/09/30(Sat) 0:56:35

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

半端に立ち上がった姿勢では男の頭の位置も低かったはずだ。
身体ごと突進すれば胸あたり、或いは運良く顔面に入った・・・かもしれない。がつん、ともどすん、ともつかない音が大きく鳴って、男の身体がよろめいた。

けれど、それでも。重みの差というものは大きく。
そもそも筋肉量だって随分違う。よろめく以上のことは起こらず、しかし目論見通り携帯は軽い音を立てて地面を転がっていった。
男が顔を顰めたのが至近で見えたろう。鋭い犬歯が剥き出しになり、チ、と舌打ちが寄越される。
苛立ちにかっと燃える瞳は金で、温度の上昇がよく分かった。

貴方は男の胸元に埋まっているだろうか。
未だに組み付いて離さないでいるだろうか。それをラッキーだなんだと思う遊び心が男にあったなら、こんな出会い方はしなかっただろう。
生真面目で四角四面で実直な男は、貴方の両頬を両手で掴む。
けれどそれは整ったかんばせを眺めるためでも、勿論口付けのためでもない。

「動くなよ」

​────ごん。

声の直後、仕返しとばかりに硬い音と感触が響く。
額と額を打ち付ける音。貴方は上を向いていたから、首にかかった負担も大きいはずだ。
それで腕が緩むなら突き飛ばして立ち上がるだろう。じんじんとこちらの頭も痛んでいるけれど、背に腹はかえられない。転がした携帯、或いは手錠​
──今は持っていないのだが──
を探す隙を見せた。
(-255) 2023/09/30(Sat) 2:07:53

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

公衆電話からの着信に、怪訝そうな顔。
怪しい相手ならすぐに切ればいい、と通話ボタンを押して。声を聞けばすぐに、愛しい弟のものだと分かったものだから。

あなたから会えないかと打診があったのならそれを拒むことは絶対にない。
公衆電話からかかってきたのだから、もし何かあったら連絡をこちらから取れないだろうしと。
場所の指定を結局委ねて。

夜、月を見上げるあなたの元に駆け寄る足音が一つ。

「───フレッド!」

名前を呼んで、駆け寄ってくる。
まだ顔も見えていないあなたを、そうであると確証があるかのように。
(-264) 2023/09/30(Sat) 3:41:26

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

女の身体はあなたの胸元に勢いをつけてぶつかって。
あなたのことを地に伏せることは叶わなかったけれど。
カシャン、と石畳に携帯の落ちる音が耳に入る。
目論見は上手く行った。

「は、あは……これ、で……」

少しは時間稼ぎになっただろうか。
苛立ちの色を見せるあなたの顔を見て、"してやったり"といった表情を見せて。
しかしすぐに、その顔も眉を寄せ 苦痛のそれに変わっていく。
痛みが、どっと襲ってくる。
腹も、肘も、背中も喉も。痛みが、戻ってきて。
立っているのもやっとなそれらに、女は"あなたに掴まっているしかない"。
縋るように、そうしている。だから。

「っ、が……!?」


頬は容易に捕らえられる。
痛みにぼんやりとした頭が、あなたを見上げて。
強い衝撃。
ノイズが走る。
ぐら、と脳が揺れて。縋っていた腕の力が抜ける。
今度はあなたの思惑通りに、突き飛ばされる。尻もちを着く前に、なんとか踏ん張って。

もう、後は意地だった。
あなたが自分の携帯を拾いに行こうとしたのなら、無防備な尻ポケットに手を伸ばす。
彼女自身の携帯だけでも返してもらおう、とでも言わんばかりに。
ぐらりと揺れる体が、ふらふらとあなたの背後に近付いていく。

これさえあればあとは、逃げるだけなのだから。
(-267) 2023/09/30(Sat) 4:12:02

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

名を呼ぶ声を聞けば弾かれたようにそちらへと顔を向けて。

「──ねえさん!」


珍しくこちらから両腕を伸ばし、駆け寄ってきてくれた貴方をぎゅうっと強く抱きしめることだろう。
伝えたいことがある、言いたいことがある。その為に呼んだくせに。
言葉はすぐに出てこなかった、ただ細い肩に顔を埋めて。

「…………フィオねえ……」


その存在を噛み締めるように、そのぬくもりを確かめるように、もう一度呼んだ。
抵抗がなければ少しの間そのままでいて、とはいえその内にはちゃんと顔を上げ貴方を解放することだろう。

「……あはは、話がしたくて呼んだのに、会えたの嬉しくて全部吹き飛びそうになっちゃった。ごめんね」

「ええと……あのさ。
 オレ、家を出たんだ。それでその内、街も出ようと思ってる。
 色々あって……なんていうか、ニーノは死んだことになって、それで今後はフレッドとして生きていこうと思うんだけど。
 死人が歩いてたらマズイからそのへんのね、調整、それから自分探し……?うん、とりあえずそんな感じで」

「だからねえさんともちゃんと落ち着いて会いたかった。
 ……急に、いろいろごめん」

ひとまずは随所奇妙なところがあっただろう理由の説明をして、とりあえずの貴方の様子を伺っては表情を覗き見る。
(-309) 2023/09/30(Sat) 14:57:56

【妖】 路地の花 フィオレ

優秀な人は引く手数多でいいことねえ、なんて言う。
その分頼られて大変なのだろうけど。

「そう。妥当な処分が下るといいわね」

下手人の捜索が始まっていると聞けば、少しだけ目をそらすようにして。
それでも、それ以上の動揺はない。
協力者がうまくやってくれているだろうから、よほどのことがなければ足がつくこともないだろう。
そして何より、目の前の彼に知られたくはないものだったから。

あの時のことを見られていたなんて、彼女には知る由もないのだ。


「もう!前から尊重はしてたと思うんだけどっ」
「あなたが何してようと勝手に喜んでる女なんだから。
 まあ……しつこく付きまとってるところを言ってるなら、たまには放っておけって言うのも分かるけど」
「不機嫌になったくらいで離れるような女、つまんないでしょ」

黙って近くにいるくらいはするのだろうけど。
「病人食の方が好みだった?」なんて揶揄いながら。

「それなら許してあげる。軽めのグラス選んだから、そんなに力入れなくていいわよ」

それじゃあ、と気を取り直して。

「お疲れ様、テオ。乾杯〜」

テーブルの上で、グラス同士をぶつけ合うのだろう。軽い音が響いた。
($5) 2023/09/30(Sat) 16:56:31

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

「あら……珍しい、フレッドの方から来てくれるなんて」

あなたがぎゅうと強く抱き着くと、驚いたような顔をするけれど。
すぐに穏やかな笑みを浮かべて、少しだけ低い位置にあるその頭を撫でてやる。
フィオねえだよ、と優しい声で口にして。
あなたが熱を出してしばらく会えなかったあとに、久し振りに再開するとこんなふうに顔を埋めてくれたっけ。なんて懐かしく思いつつ。

「解放されたばっかりなんだもの、私だってこうしたかったわ」
「だから気にしないで、ね」

ちょっと座ろうか、とベンチを指して。
話が短くたって、まだ出所したばかりなのだ。体力が心配だ。

そうして落ち着いた状態で、あなたの話を聞くことになるのだろう。
うん、うん、と口を挟まずに相槌を打ちながら。だんだんと表情は曇っていく。

「そう」
「街を、出るんだ。……気軽には、会えなくなっちゃうのね」

寂しいな、と。飲み込めずにいた言葉は素直に口をついて。
しょうがないことだとは分かっているのだけれど。

「でも、フレッドが決めたことなんだもんね」
「お姉ちゃんなら、応援しないといけないよね」
(-320) 2023/09/30(Sat) 17:47:57

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

強く打ちつけたことでずれてしまった眼鏡の位置を直すとか、
連絡のために携帯をまた拾い上げようとするだとか、
今は手にしていない手錠を咄嗟に探す仕草だとか。
そこここに充分な隙があって、男の手慣れなさ・・・・・を示していた。

雑に突っ込まれたそれを奪い取るのは難しくないだろう。
先程とは違いこの道は狭く、男は後ろを向いている。
振り向くのにかかる時間は、貴方の逃走に寄与するはずだ。


────当然、男は追いかけるだろうが。
仕返しに砂でもかけてやれば、更に時間は稼げるだろう。
(-326) 2023/09/30(Sat) 18:52:37

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

耳元で落ちる優し気な声は、昔から聞くそれとずっと変わりない。
この声がずっとあったからニーノを手放しても自分フレッドを思い出せる今がある。
その名を呼び続けてくれた感謝も込めて、抱きしめる腕の力は強かったのだろう。
同じ気持ちを抱いてくれていたと知れば安堵をしながら、指されたベンチに隣同士に座る。

「…………ううん」

「応援してくれたらさ、すっごくうれしいけれど。
 いやだなって怒ってくれてもいいんだよ。
 止めるのは難しい、んだけど……」

それでも感情に蓋をしていつか煮凝ってしまうのなら、今自分にぶちまけてくれたっていいとも思う。
自分だって寂しいから、隣に座る貴方の指先を左手で撫ぜた。

「……オレも弟だからって。
 ねえさんのすること全部に応援はきっとできないから」

そうしてぬくもりを感じながら開いた唇が伝えるのは。
あの日から貴方に話したかったこと、届けたかったもの。

[1/3]
(-353) 2023/09/30(Sat) 21:57:20

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「ねえ、フィオねえはやっぱりさ……マフィア、なんだよね? 
 にいさんとおんなじ」

「あんまり何してるかって詳しくないけれど……誰かの命を奪うことも、あるんだよな。
 そういうのが必要なときがあったりとか。
 ……何かあったときに、そういう手段が取りやすかったり、とか」

脳裏に過るのは今でも思い出せる一瞬だ。
あの時酷く痛んだ胸がまだ疼く心地がする。
大事な人が、大事な人を撃ったこともそう。
……それから、もうひとつも。


「でも、オレはさ。
 そういうの、あんまりねえさんにしてほしくないって思う。
 人生の中で選択に悩んだときに……それが並ぶようになってほしくない」 

「オレは、そう思ってる。
 ……ねえさんが大事だから、思ってる」

綺麗ごとだけで生きていけないのは知っている。
憎しみや悲しみが簡単に片の付けられる感情ではないことも。
だからこれは貴方の行為を否定したいがために紡ぐのではない。
誰よりも大切に想う貴方の前だからこそ、これ以上を偽ることなどないように。

「だからねえさんのこと、応援できないこともあるんだ」
「…………でもね」

そうしてその先に、一番に伝えたいことを伝えられるように。

[2/3]
(-354) 2023/09/30(Sat) 21:58:15

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ


「もしねえさんがこれから先、何をしたって。
 どんな罪を犯すことがあったって──」

ぎゅう、と。
今このひと時だけは、誰よりも近くに自分がいる。
その証明をするみたいに手を強く握った。

「──オレの "だいすき" は変わらないから」

「辛くて苦しいときは、傍に居たいし。
 涙だって拭ってあげたい。
 世界で誰よりも、ねえさんの一番の味方で居たい」

今までみたいには簡単に会えなくなる。
涙落ちるときに傍にはいられないかもしれない。
だけどもしまた、貴方の心が暗闇に落ちることがあるとき。
今のこの瞬間が微かでも光を届けられたらいいと、願って。

「そう思っている弟がいるってこと。
 離れてもずっと……忘れないでいてねって」

「伝えたかったんだ、今日」

そうして笑みを浮かべて、その顔を覗き込んだことだろうか。
受け取ってもらえるかなあ、そんな期待を込めた瞳を細めて。

[3/3]
(-356) 2023/09/30(Sat) 22:01:20

【秘】 路地の花 フィオレ → 幕の中で イレネオ

「っ、痛……」

頭を抑えながら。それでもこの機を逃すわけにはいかないと、あなたのポケットに入った携帯電話を抜き取って。
足元の砂利を砂ごと掬ってから、痛む身体を引きずって走り出す。
片腕に力が入らない。新たに連絡を入れる余裕はない。
だから、最初の場所へと戻るしかない。今ならまだ、迎えに来たはずの同僚がいるはずだ。

「はっ、……ッ!」

蹴り上げられた腹も鈍い痛みが走って、顔を顰める。
足が縺れそうになっても、ひたすらにこの路地を抜けだすために足を動かして。

あなたが迫ってきたところに、掬った砂を投げつけてやるのだろう。
狭い路地では、それを避けることも難しいはずだ。あなたのような体格ならなおさらのこと。
(-364) 2023/09/30(Sat) 23:06:01

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ

「……フレッドは自分探しをするんでしょ?
 だったら、やっぱり姉さんは止められないよ」
「寂しいけど、ずっと会えないわけじゃないのよね?」

指先に触れるあなたの体温に、ずっと触れていられたらななんて思うのだけど。
無理をしているわけではない。
今まで気軽に会えた分、会えない時間が増えるのは心配になるというだけで。

「………何で」

知ってるの、と。
あなたの口から出てくるとは思わなかった"マフィア"の言葉に目を見開いて。
驚愕したような様子で、あなたの顔を見ている。
知らないでいてほしかった、なんて言えるわけもなくて。
そのまま目を伏せてしまうのだけど。

うん、と相槌を打った。
自分だって、出来れば殺しはしたくない。
そう思っていたのだけれど。でも、どうしたってマフィアである以上は。
避けては通れない。もう、引き返せない。
胸がぎゅうと痛むのだ。

(-377) 2023/10/01(Sun) 8:57:33

【秘】 路地の花 フィオレ → 夜明の先へ ニーノ


「……フレッド」

けれど、あなたがくれたのは否定の言葉ではない。
手に伝わる温もりも、真っ直ぐな言葉も。
自分がいつもそうするみたいに、寄り添うようなそれで。

「そんなこと言われたら……甘えちゃうよ、姉さん」
「忘れない、忘れるわけない。姉さんも、フレッドのこと大好きだもの」
「嫌いにならないでくれて、ありがとう」

だいすきなあなたが、自分を大好きなままでいてくれるというなら。
これ以上のことはない。
その顔は、眉こそ下がってはいるものの 笑みを浮かべていて。

胸を張れるような立場じゃなくてごめんね。
そんな言葉は飲み込まれた。
あなたはそんな言葉を望んでいないとわかっているから。
(-378) 2023/10/01(Sun) 8:58:57

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「……甘えてよ。
 恩返しさせて、ねえさんがいたから生きてこられた」

大袈裟に言っているわけでは決してない。
貴方が居ないと本当に、生きてはこられなかっただろう。
早々に命を落としていただろうし、今も自分を見失っていた筈だ。
そんな大切な家族に少しでも返せるものがあるのなら。
躊躇うことなく差し出したいと強く願う。

「…………へへ。
 ちゃんと伝えられてよかった。
 オレもありがとう、言葉、受け取ってくれて」

「ずっと会えないわけじゃないよ。
 たまには帰って来ようって思ってるし……
 どこに行くか決めたら、ちゃんと伝えるし!」

まだ決まっていないけれど決まったその時には。
真っ先に貴方に伝えて、手紙を送り合ったりしてもいい。
会いに行ける距離なら遊びに来てもらったり、とか。
今はまだ見えていない先のことを思いながらも。

[1/2]
(-385) 2023/10/01(Sun) 12:17:06

【秘】 夜明の先へ ニーノ → 路地の花 フィオレ

「此処を出る前にはまた挨拶しに行く。
 あ、だから今日住んでるところ教えてね」

何を偽ることもなくよかった。
これからも、貴方の前ではずっと本当のままでいられることを安堵して。
圧し掛かっていた重荷が軽くなった心と共に笑い、そっと手を引き立ち上がるだろうか。

「……夜遅くに来てくれてありがとう。
 ええっと、送るよ、……ボディガード?うん。
 もうちょっと話したいし」

こんな夜道を一人で帰らせるわけにはいかないからと言葉を添える。
にいさんにだって、色々と任されたしなと頭の隅。
近くでずっと支えるのは難しそうだが、自分なりにできることをこれからも貴方へと贈っていきたい。
そんな考えは今は一先ず胸の内に秘め、貴方が了承してくれるのなら仲良く手を繋いだままに歩き始めることだろうか。
輝く月と瞬く星だけが、寄り添う姉弟の暖かな絆を見守っていた。


──例え、立つ場所がこれから先も違うところにあったとして。
それでも男は家族を、あなたを、愛している。
不変などないのが世の常だとして、
そんなもの関係ないって笑い飛ばせるぐらい。
この感情だけはいつか最期を迎えるそのときまで変わったりしない。

いつの日か貴方という花が教えてくれた愛の強さを胸に抱き。
男はこの先も塞ぐことのない瞳に世界を映し──生きていく。


[2/2]
(-386) 2023/10/01(Sun) 12:18:51

【秘】 法の下に イレネオ → 路地の花 フィオレ

路地裏を知り尽くしている程度では貴方に分があった。
それでも“このあたり”に限ればおそらく互角だった。

だから男は油断した。
だから男は隙を見せた。
自負があったから、思考が鈍った。
鼠程度捕まえられると思っていた。

窮鼠は猫を噛むのだ。
投げつけられた砂はさしてダメージにならなかった。
それでも物体が迫れば目を守ろうとするのは反射の動作だ。
立ち止まった隙に貴方は角を曲がったかもしれない。最後の力を振り絞って走ったかもしれない。それだけの時間はきっとあった。
入り組んだ路地は分かれ道が多く、そのひとつひとつを確認するだけで時間を取る。

貴方は逃げた。
男は追った。
貴方は逃げるためだけに走った。
男は、貴方が自分から逃げている・・・・・・・・・のだと思った。
街に出るという選択肢を失念している。



だから。
男は貴方を見失ったのだろう。
建物の向こうから車の出る音だけが聞こえて、
ようやく気付いたころには遅かったのだ。
(-400) 2023/10/01(Sun) 16:11:56
フィオレは、気まぐれに、もらったリップを塗っている。似合う?なんて近くにいる彼に聞いたりして。
(a49) 2023/10/01(Sun) 20:38:38

フィオレは、なんとなく、予感がしたのだ。
(a52) 2023/10/01(Sun) 20:39:32

フィオレは、予感が、悪い方向に当たるなんて。この時は思っても見なかったのだけれど。
(a53) 2023/10/01(Sun) 20:48:31