──　Siren　──


［大学へは悠凛のタワマンから
　公共交通機関を乗り継いで30分と少しでいける。
　3講目なら昼過ぎに出れば余裕。

　バイクを使えばもっと早いけど。
　それも色々目立つので普段は自粛。
　中型は大学入学と同時に車のと一緒に取った。
　大型二輪免許は少し前に取得したばかり。
　新しいバイクはピッカピカでまだ乗ってない。
　怪我に気を付けろって言われてるしな。
　大型は走りは安定するけど、
　倒した時に脚挟んだりすると…ね。

　俺の学部は演劇映像コース。
　何とか現役の年齢通り3年次生に食らいついてる。

　この3講目は何でだか仕事とよくぶつかる。
　普段は代返頼んでなんとかなって
　提出レポートは感想文みたいなもんで
　何んとかなるって高をくくってた。
　ほら、心は詩人だからな？
　けど、その考えはどうやら甘かったらしい。］

　──　回想：大学に向かっている途中　──


［別れ際に悠凛の言っていたことが、
　今更のように気になってきた。

　“αまで寄ってくる”

　………イヤだな。
　リヒトみたいなやつに、悠凛の匂いを嗅がせるのは。
　
　思考は微妙に迷路にはまりながらも
　明後日の方向までは外れなかった。

　ええっと？
　ツアーの時なんかどうしてんの？
　悠凛が汗かいた時、リヒト、どうしてんの？！］