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【秘】 諦念 セナハラ → 商人 ミロク生き延びる事は恥ずべき事。 生きて虜囚の辱めを受けず。 そう教わり、そう育った男は、己の身を恥じている。 それは死ぬまで変わらなかった。 「……牧師様のような事を言うんですね」 しかし貴方の言葉が、自分の救いになることを理解している。 けれども自分は救われるべきでないと、今も考えている。 「……。季節と言ってもね、 常夏の島で生まれましたから。ああでも、」 許される事。想われる喜び。 全てをとうの昔に忘れた男は──、 いつか自分を許せるのだろうか。 「……その時こちらでは、鬼灯が実っていたそうです」 それは、誰にもわからない。 (-10) 2021/07/12(Mon) 13:18:19 |
【神】 諦念 セナハラ雨が止んだ事に気付き、病院を出た。 泥濘に足を取られる事も無く、 地面を見下ろしながら歩いている。 ふと、地面の色が違う箇所に気付く。 商人は骨と一緒に埋める、と言っていたが。 ここである確証もなく、掘り返す理由もない。 ……己が殺めた彼等の傍にいなくてはならない。 強迫観念にも似た思いが、男をそこへ導いたのかもしれない。 (G0) 2021/07/12(Mon) 13:40:18 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロクミロクの遺体を運ぶ二人を見た。 メイジが行うならまだ理解できるが、 ロクは心境が変化したのだろうか。 今の自分に手伝える事は何もない。 踵を返し、宿直室へ向かう。 そして卓袱台の上に置かれたままの封筒を見れば、 少し困ったように頬を掻いた。 「んん、どうしましょうかね……」 加担する人間が増えたのならば、遺書も書き変えた方が良いだろう。 死者の言葉が伝われば苦労しないのだが……。 「…………、いや」 ふと、生前の会話を思い出す。 まるで死者と話したかのような言葉。 彼なら、もしかすると。 手術室で処置を待てば良いが、 もしも自分の存在を伝えられてしまえばそれこそ恥だ。 少し考えて、貴方がひとりになるのを待つ事にする。 (-16) 2021/07/12(Mon) 18:18:14 |
セナハラは、廊下の奥からじっと手術室を見つめている。 (a1) 2021/07/12(Mon) 18:18:43 |
セナハラは、自分も霊の癖に滅茶苦茶ビビった。 (a2) 2021/07/12(Mon) 19:30:46 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク「……ああ、本当に見えるんですねえ」 あの時、普段ならば口にしないような本音を吐いてしまった。 こちらにも気不味さはあるが、 どちらかといえば申し訳なさが勝っている。 結局のところ、貴方の善性は守れなかったのだから。 「ね、共犯者さん。少し手伝ってほしい事があるんですよ。 なに、貴方にとっても都合が良い筈です」 生前よく見られた笑顔が、そっくりそのまま浮かぶ。 此れが繕ったものである事は、 ついぞ誰にも知られないままだった。 手招きをすれば、律儀に廊下を歩いて宿直室へ向かう。 室内には入らず、廊下から中を指差した。 ニエカワの目の届く位置にいようとしているらしい。 「あれ、遺書なんですけれど。 ここを出る時に、中身を書き換えて欲しいんです」 室内を覗き込めば、 卓袱台に一通の封筒が置かれているのが見える。 (-20) 2021/07/12(Mon) 20:40:33 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク「どうぞ。特定の個人に宛てた物ではありませんので」 封筒には『此手紙を讀んだ方へ』と書かれていた。 封を開ければ、中には数枚の手紙が入っている。 『全て私が脅し關わらせた事です。』 という書き出しから、その遺書は始まる。 (-24) 2021/07/12(Mon) 23:09:56 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク『彼の御父上に金を借りてゐました。』 『出世拂ゐとゐふ話でしたが催促をされ、 返すあてが無ゐのでやむなく殺めました。』 『食糧が足りなゐ中、 私は嘗て彩帆で食べた肉の味を思ひ出しました。 だうしても死ぬ前に再度味わひたゐと思ひ、 明治君を脅したのです。』 『私が殺し、彼に處理を手傳わせました。 つまり彼は壱人も殺してなどゐません。』 『大變申し譯無く思つてをります。 私の命だけでは拭ゑぬ罪とは思ゐますけれども、 明治君は被害者と云へませう。 だうかご容赦くださひ。』 内容に目を通せば、概ね罪の自供と 明治明という少年への恩情を願う物であることがわかるだろう。 (-25) 2021/07/12(Mon) 23:10:46 |
【秘】 諦念 セナハラ → 遊惰 ロク貴方が読んでいる最中であろうと、男は構わず話し続けた。 「貴方も関わってしまったでしょう。 ですから書き換えて、新しい遺書を作って欲しいんです。 他にも都合が悪い事があれば、全て僕が行った事に。 余所者の行いにするよりは、説得力があるでしょう。 ……ああ、家族はいませんのでそこもお気になさらず」 汚名に関して興味が無いのか、それとも慣れているのか。 男は淡々と、己を貶めるようにと告げる。 (-26) 2021/07/12(Mon) 23:12:02 |
失格 セナハラは、メモを貼った。 (a3) 2021/07/12(Mon) 23:49:02 |
失格 セナハラは、メモを貼った。 (a4) 2021/07/13(Tue) 0:00:24 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク男からすれば、貴方も充分に子供である。 生きるべきだと諭そうとして、 「……。まあ、自分の命ですから。 自由にすれば良いと思いますけど」 自分が教わった事を思い出し、やめた。 死ぬべきだとされる事と、生きるべきだとされる事。 その二つに差など無い。 せめて貴方達には自分の意思で決めて欲しい、 男はそう願っている。 「そこに新しい封筒と糊がありますから、 入れて封をしておいてください。 僕がこうして頼んだ事は伏せたまま、 メイジ君に渡して頂けますか? ……僕がここに居る、とは知られたくないもので」 小さく苦笑した。 彼に合わせる顔が無いのだった。 たとえ彼から見えないとしても。 (-29) 2021/07/13(Tue) 0:56:57 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク「ま、完全無罪ってのも難しいでしょうから。 特赦さえ得られれば良いですよ。 世間が彼を被害者と扱うのであれば、それでいい」 加害者として生きる事の苦痛は、知っているつもりだ。 被害者として生きる事の苦痛は、知らないのだが。 「他に頼む事はありませんよ。……あ、いや」 会話を終わらせようとして、思い出したように貴方を見る。 “彼方” の共犯者 にはしておいて“此方”にはしない、というのは筋が通らないだろう。 「少しの間だけで良いので、目を閉じてもらえませんか」 (-41) 2021/07/13(Tue) 20:50:47 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロクその頭部に手を伸ばす。 案の定触れる事はできず、ただ虚しくすり抜ける。 それでも。 撫でるように、掌で頭の形をなぞった。 「……はい、おしまい。 もう目を開けて良いですよ」 貴方が目を開ける頃には、もう手を下ろしている。 本当は見られても構わなかったが、貴方は拒むだろう。 貴方がこの手を求めていたのは今ではなく、 ずっと幼い頃だったであろうから。 全てが過ぎ去り、今となってはどうしようもない事だと理解しながら──、 そうしたかったという只の自己満足だ。 (-45) 2021/07/13(Tue) 22:27:08 |
【秘】 失格 セナハラ → 遊惰 ロク視界の隅に捉えたままの少年に、一瞬目をやった。 「そうですね。 まあ、僕はニエカワくん次第ですが」 貴方がどんな選択をしようと、 停滞する己から見れば進むことに変わりはない。 だからこそ、別れの言葉はこのひとつしかなかった。 「……いってらっしゃい」 (-69) 2021/07/14(Wed) 13:15:20 |
【秘】 失格 セナハラ → 首枷 ニエカワ「……お待たせしました」 短くそう言うと、貴方の傍らへやってくる。 たとえ目の届く場所にいても、やはり離れるのは不安だった。 「ニエカワくんはこれからどうしますか? 僕はその、きみの傍にいますから。きみが決めてください」 (-70) 2021/07/14(Wed) 13:22:50 |
【秘】 失格 セナハラ → 首枷 ニエカワ手を握られれば、僅かに身体が強ばってしまう。 それを悟られないように、笑みで誤魔化した。 「成仏は……できないと思うので。 僕が行くのは浄土ではなく、地獄でしょうから」 男は己を加害者とみなしている。 対して貴方は間違いなく被害者であり、 生前の行いに非などひとつもない。 この地を離れれば二度と会うことはないだろうと、思っている。 ──そうなってしまえば、己の罪は一体誰が許してくれるというのだろう? 「僕も、ね。ニエカワくんがいてくれれば、良いんです」 貴方と同じ言葉を返す。 されどその言葉の裏には、天と地程の差があった。 (-73) 2021/07/14(Wed) 14:09:41 |
【秘】 失格 セナハラ → 首枷 ニエカワひゅ、と止まった筈の息が詰まる。 首筋に触れる手が、まるで首輪のように思えた。 己を罰する男の魂は、 愛情という名の呪いによってのみこの地に留まるだろう。 「……、はい。誓います」 永遠を誓う言葉を、小さく呟く。 その永遠に未来などひとつも無く。 ──……結ばれた縁の色は、もう見えない。 (-77) 2021/07/14(Wed) 15:52:32 |
【秘】 失格 セナハラ → 首枷 ニエカワ何の抵抗もせず口付けを受け入れる。 覆水は盆に返らず、後戻りなどできやしない。 目を細め笑う少年を見て、思う。 自分はいつかきっと、逃げたくなる。 しかし貴方は、絶対に自分を離さない。 だからこそ、赦されたと安堵できるのだ。 ……一人では難しい約束も、二人でなら守れるから。 この枷は、罰を求め続けた男に相応しい。 (-79) 2021/07/14(Wed) 18:25:04 |
セナハラは、遠くから見守っている。 (a18) 2021/07/14(Wed) 20:56:40 |
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