人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【秘】 幕引きの中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ

エルヴィーノさん・・・・・・・・。」


無骨な指がさらりと頬を撫でる。
呟いた声を聞いた者は一人もいなかったはずだ。

男は暫くの間、そのまま貴方の傍にいた。
それは飼い主の目覚めを待つ愛犬の姿のようでもあったし、やはり貴方の眠りを守る番犬のようでもあった。

#AbbaiareAllaLuna
(-269) 2023/09/30(Sat) 5:05:40

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-257 >>-258

「違うの?
 それなら勘違いした僕が悪かったかな」

知らないことはたくさんあっても、その性格位はよく知っているつもりだった。
幼馴染が照れているのも、嘘をついているのもわかったけれど、その言葉を額面通りに受け取って、表情を緩めて笑う。
怪我のない左肩にあなたの頭が置かれれば、その頭を左手で柔らかく撫でた。

「……居ないの?
 血の掟は知ってるけど……あまり守られて無くない?」

これはあなたのことを言ってるわけではない。
事実、マフィアと関係を持っている知人が周りに多いのだが、男はその事をよく知らない。
あなたとの関係を外に漏らすことがなかったのは、掟に裁かれることがないようにと、勝手に配慮していたことだった。

(-282) 2023/09/30(Sat) 7:37:13

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

「…………逃げ切ってくれなきゃ、困るよ」


呟かれた言葉が、あなたの耳に入ったかはわからない。
男は本来、正義感なんていうものはあまり持ち合わせていない。
あなたを捕まえると豪語する理由は、たった一つだけ。

あなたを警察に渡す気はない。


ただ、それだけだった。

恋愛感情なんて、とうにない。
だけどその重い鎖が切れることも絶対にない。
すでにそんな感情は超越して、重く歪んでしまっている。

それでもはっきりと、僕はキミに愛していると告げることが出来る。
何だって出来る。
死ぬことだって別に怖くないのだ。
あなたに幸を与えられれば、それだけでいい。

これはだって、僕に出来る、最大の我儘なんだから。


花浅葱の瞳が、遠い異国で知られるダンダラのようだ。
そこに『忠愛の誠』が存在しているというのなら、
その相手は決して、警察へのものではなかった。
(-283) 2023/09/30(Sat) 7:40:36

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-282 >>-283

「悪くは、ない……いや……。
 今思えば本当にお前以外見てなかったのが恥ずかしいんだ。
 子供の頃は全部お前優先にしてたから……」

その頃から向けている感情は変わらない。
大事なひとつ下の幼馴染、歳の違いなんて気にしないで。
一緒にいられるために周りの媚を売れた、文句を言ってくるやつの排除もした。
その時から貴方に対する感情はとっくに歪んでいた。
愛でも恋でもなくて、きっと純粋な友情ではなくて、それでも失いたくないものだった。

「まあまあ……守られてるぞ。というか隠されとる。
 厳格に気にしてるのは俺より上の立場のやつだ。
 下の輩はすこーしだけ緩いんでね」

今の地位を保っていたのも、貴方との交流を咎められないためもあった。
血の掟を交わしてしまえば自分はきっとそれに従うようになる、
貴方に会うなと言われるのまでは良い、殺せと言われたらどうすれば良い?
そんな日が訪れてしまうぐらいなら、きっと自分は此度の騒動のような大事を起こさないと言い切れないのだ。
世界と貴方を天秤にかけて釣り合わせることが出来る。
今はそれが落ち着いているからこんなに穏やかでいられるけれど。

(-304) 2023/09/30(Sat) 13:20:38

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

「……
俺はマフィアだからなあ


愛してる、誰にも言えないと思っていた言葉。
あなたにかけられたとき、そのままそっくり返せると思った。
あの牢屋で揃いの首輪をつけられて、
確かにその言葉に懐かしさと切なさを抱いてしまったから。

何だってできる。
死ぬことだって別に怖くない。
貴方が幸せであれば、それだけでいい。

これは我儘なのか? 俺はいくらでもし続けていたいのに。
終りが来るその日まで、穏やかに笑っていたいだけだったのに。
(-305) 2023/09/30(Sat) 13:21:48

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4

「……ちゃんと気づいていればよかったな」

そうしたらこんなすれ違いなんて、最初からなかったろうに。
あの頃は純粋に幼馴染を慕っていたのだと思うけれど、重い感情に不快感を示すことなどきっとなかっただろうと思うし。

今思えば、初恋はラーラではなかったのだ。
ラーラを好きになって、想いを告げた日。
「私はルチアーノが好き」だと言われ抱いたのは、ラーラに対する嫉妬心だった。
ラーラに振られることよりも、ルチアーノを取られる事が、嫌だった。
それは友情の域をゆうに超えていると指摘できるほどに。

「ふぅん。
 そういえばルチアはまだ血の掟は結んでないんだったね」

それをきちんと守って初めて上に上がれるというのなら、本当は自分たちは会わないほうが良いんだろう。
でもそんな事、出来ないよ。
もう疎遠だった頃みたいには戻れない。
あなたがずっと無事であるように手を回して、見守っていたいと思っている。
あなたの心が、悪いものに囚われてしまわないように。

(-310) 2023/09/30(Sat) 15:52:35

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310

「なにそれ、わかってるよ」

あなたがマフィアであることは、ちゃんと。

でもこの時、まだわかってなかったんだ。
あなたの愛の重さもまた、とっくに歪んでしまっていたんだって。
すれ違った重すぎる心は時に、鋭い刃になって互いを傷つけ合う。

けれども。
その原因を作ってしまったのは、紛れもなく、何も知らなかった愚かな自分だ。

(-311) 2023/09/30(Sat) 15:53:43
エルヴィーノは、不思議そうにその紙袋を見た。
(a30) 2023/09/30(Sat) 15:54:07

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310 >>-311

「見舞い……?」

冷たい風が、互いの髪を揺らした。
手渡された小さな包をしげしげと見つめて、「あけても良い?」と聞いてみる。

駄目だなんて言われることはないから、左手で苦心しながら包を開いてみれば、そこには――――――

壊れた、丸い眼鏡。
レンズが片方割れてしまっていて、それが新品の物でないことは誰にだってわかる。

ヒュ……

乾いた息を吸った。
吸ったけれど、まるで酸素が入ってきていない、気がする。

だって、脳裏に浮かんだのはあの。
ギラギラと輝いた、金の瞳で。


「な……で……。
 これ、は……っ、どうし、」


目の前に居る幼馴染は、マフィアだ。
聞かずとも何が起きたかなんて――――――
わかってしまう


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」 
(_5) 2023/09/30(Sat) 15:58:20
エルヴィーノは、が上げたその慟哭は真昼の庭に響いた。
(a31) 2023/09/30(Sat) 15:58:36

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

あなたは騒動の後、署に出向く機会がいくらかあっただろうか。
それともあなたの友から話を聞く機会があっただろうか。

いずれにせよ、あなたが教育係を務めたひとつ下の後輩が、銃に倒れ入院しているとの知らせだ。
怪我の詳細は肩関節損傷、鎖骨下動脈損傷。
噴水のように吹き上がった赤い鮮血は、その場に居合わせた警官が圧迫止血を施し命をとりとめたらしい。
あの日仰いだ協力の約束。
その仕事の最中、署長代理逮捕の大金星との引き換えにしては大きすぎる代償だ。

あなたがその病室を訪れるのはいつ頃だろう。
1週間以内の事ならば、ベッドの上の男はあなたににこやかな笑みを浮かべて迎えるはずだが―――――
(-312) 2023/09/30(Sat) 16:19:35

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-216
「……よかった。
 何だかんだ、正直言うと選んだからには、ね。
 喜んで貰えた方が嬉しいから安堵したわ」

両の手を合わせながら喜びを素直に露にする。
この辺りの喜楽の感情を正直に見せる所は昔から変わりのない所で。

「実は推理小説、あまり詳しくないのよね……
 あ、モンタルバーノは私も好きよ!あれ、あれはミステリーの方になるんだっけ……
 だから買おうとした本は一回」

「……警察を、やめる事になる人が少しいそうね。
 こればかりは皆各々の考えだから何も言えないけれど、
 寂しいって気持ちはあるわね。
私が言えた話じゃないけれど…」


なんせマフィアになろうと考えていた女である。
寂しいですら本来言ってはいけない話かもしれないが、皆なら許してくれるだろうとの甘えだ。

「さて、本屋が閉まる前に一度どんな本が並んでるか
 見に行ってこようと思うわ。またねエルヴィーノ。
 次の機会には本をどっさり持ってくるわ」

この女の事だから、加減しろと言うレベルの多さの本を持ってくるかもしれない。
(-319) 2023/09/30(Sat) 17:32:14

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



署に出向く機会も、友人に聞く機会もあっただろう。
そのどちらかは明かすことはないが、
ともかく、君の病室に出向くのは確かで。
それはきっと一週間以内のこと。

ガガッ。…ガッ、………ガラガラ。


扉を開ける音が外から響く。
何やら、少し手こずっているような様子だが。
暫くすればドアは開いて、君の知る男の姿がそこにある。

とは言っても無事とは言えず、左手は三角巾で吊り、
右手は包帯で巻いて、左耳にはガーゼが貼ってある。
しかしそれを感じさせることもなく、

「やぁ、エル。…随分と、無茶をしたようだね?」

何となくいつも通り、
しかし少し異なった印象を覚えるような冷静さで問う。

「……約束、守れなくてすまなかったね」

そうして、二言目は謝罪だ。
もしもあの日君の約束を果たせていれば
君は、そんな怪我を負うことなどなかったのかもしれない。

考えたところで、仕方のないことだけど。
(-331) 2023/09/30(Sat) 19:20:00

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-331

「……!?」

慣れぬ左手でスマホの操作をしていたときだろうか。
急に不器用に扉を開く音が部屋に響いて、びくりと肩を震わせた。

「誰かと思ったら……。
 先輩こそ、僕とそう変わらない大怪我に見えますよ」

一週間がもうすぐすぎるとはいえ、未だ何本もの点滴を受けながらベッドで過ごす身の上としては、話し相手になってくれる人が来るのは喜ばしい。
リハビリは早い方がいいというから、明日にはおそらく始まるのだろうが。
なにせ暇なのだ。
寝るだけの日々というのは。

「良いんですよ。
 先輩は先輩の仕事をしていたんでしょう?」
「それで十分です。けど、その傷は……何があったんですか」

確かにあなたが居ればこの怪我は負わなかったかもしれない。
それでもこの傷はあなたのせいではない。
自分への不幸ならば、このように考えることが出来るのに他人の不幸はそう考えることができない。
男の思考は何処か歪だ。
(-337) 2023/09/30(Sat) 19:33:49

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



同じように入院している誰かさんのように
何を言っているんだ?
と首を傾げたり、
緩やかに閉まっていく扉に足を挟む、ことはない。
素直に病室内に入り、ベッド際へと近づいていく。

「はは、俺はデートをしていただけだよ」

嘘、とも言えない。
その詳細までは言えないが、確かに彼女とデートをした。
女性を誘うには些か、
いや、かなり色気のない場ではあったが。

そうして、怪我のことを問われれば、
落ち着きを見せた表情からパッと切り替え笑って。

「デートに心が弾み過ぎてね、ついうっかり
 階段から足を踏み外してそのまま転がってしまってね……」

いやぁ、君も気を付けた方がいい。
男は笑顔のままそう付け足して、傍にある椅子に腰掛けた。

これは嘘。しかし必要な嘘だった、と考えている。
誰を守るためか、誰を隠すためか。
そんなことは、どうだっていい話だ。
(-339) 2023/09/30(Sat) 19:51:42

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-339

「デート、ですか。
 まぁ良いですけどね、相手は美人でした?」

あなたが【A.C.A】の人間だったことは聞いている。
それでも男はあなたへの態度を変える気はなく、今もたったひとりの先輩だと思っていた。
そのあなたがデートだと言ってはぐらかすならば、それは詳しく聞かないほうが良いということなんだろう。

それでも怪我の方については、明らかに嘘だとわかってしまった。
そんな、笑顔で心配させまいとする下手くそな嘘だ。
デート相手よりも気になる事だったけれど、そう言われるとやっぱり、あまり追求はできない。

「それはあまりにも不用心が過ぎるでしょう……。
 言いたくないってことなら、深く聞かないことにしますけど……もう少し後輩にも心配させてくださいよ」

男は何も知らない。
あなたと同じように、自分が教育係を務めた後輩がその怪我を負わせたこと。
行方不明となって、その捜査も手打ちになってしまっていること。
その他も、全部だ。
(-341) 2023/09/30(Sat) 20:04:04

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「…あぁ、とても美人で俺には勿体ないくらいだった」

本当。それが誰だとは言わないし言えやしない。
でも君はきっと聞かないでいてくれる。
そう信じているから、男は緩やかに微笑んだ。

それで怪我の嘘、その笑顔は
"いつも通り"に振舞っていたつもりだが、
君が察してしまうのなら何も言えるはずがない。
だとして、その詳細を明かすことは一生、ないだろう。
聞かれたら答える男ではあっても、
それだけは語ってはならない真実ものだった。

「はは、これが真実だよ。俺を疑うのかい?
 こんなにも正直者で無敵の俺だと言うのに」

今まで散々リヴィオ・アリオストに騙されてきたんだ。
君は、何も知ることなく未来を歩いていくべきだ。
例え歪んだ道だとて、その道が途絶えない限り、ずっと。

ただ、出来ることなら本当は、
その歪みがいつか、真っ直ぐになればいいと。
君のことが大切な先輩は未来に期待している。

例えその未来を、この海のような翠に映すことがなくとも。
(-345) 2023/09/30(Sat) 20:34:04

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-345

「デートついでに病院まで連れて行ってもらったらいいんですよ、先輩は」

まさか本当にそうなってたとは、流石に思ってないが。
それでも手当をされている様子を見れば、病院に一度は行ったのだろうからとりあえずは及第点だろう。

「そういう事にしておいてあげますよ。
 僕の周りは皆すぐ無茶をする人ばかりだ……あ、そういえば先輩、イレネオ知りませんか。
 連絡が取れないんですけど……アイツ、釈放ちゃんとされてますか?」

勿論正直に答えなくて良い。
答えるべきではない質問だ。
ただそれでも、それを知らぬ愚かな男は、可愛い後輩を純粋に心配をしていただけ。

「……先輩?」

どこか遠くを見ているようなあなたに気づいて、ベッドに寝かされたまま不思議そうに、その顔を見上げた。
(-348) 2023/09/30(Sat) 20:56:00

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>_6

「むり。……嫌だ。行かないで」

何処にも行けないから、
頼むから、今僕をひとりにしないで。

胸にぎゅっとその眼鏡を抱いて、頭を振った。
すがるように伸ばした左手は、あなたの袖をぎゅっと掴んでいる。
事実、痛み止めが切れた肩が悲鳴を上げるかのように痛んで、顔色も青白く死にそうな顔をしている。

けれど。

「……どうして……」
「イレネオは殺されたの……?」


震える声が、それを問う。

あなたがこれを持ってきた。
それは、マフィアかそれに関係する何かによって彼は殺されたということ。
あなたはその死を見届け、正しく処理をしたということだ。
だったら、その死の原因をあなたは知っているはずで……。

僕は、それを知らなきゃいけないはずで――――
(_7) 2023/09/30(Sat) 21:13:22

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「はは、病院デートなんてつまらないだろう?
 今度は埋め合わせとしてカフェに行く予定さ」

嘘、本当。ぐるぐると混ぜて、分からないようにする。
それが今までのリヴィオ・アリオストという男で、
無敵という仮面は剥いでしまったとしても
リヴィオもまた、都合の悪いことは覆い隠していく。
それが上手く出来るからこそ、
"リヴィオ・アリオスト"は20年近く生きていた訳だ。

「…イレネオ?いや、俺は知らないな。
 ばたばたしたまま警察を辞めてしまったからね」

本当。行方すらも知らない、生死だってそうだ。
でもそのひとつを考えない訳ではない。
答えは結局分からないから、箱の中に仕舞われたままだ。

元気だといいねと呑気にも語るのは、願いか、あるいは。

「あぁ、あと君は"僕の周りは"と称するが
 今の現状を見ると君が一番無茶をした人間だからね。
 それを忘れず、見舞いに来る人の有難みを噛み締めてくれ」

「君がこうなる事で悲しむ人はちゃんと、いるんだからね」

これに懲りたら無理はするな。
今回は仕方がないとはいえ、命がいくつあっても足りない。
不思議そうにこちらを見る視線に笑いかけて、
ゆっくりと、腰掛けた椅子から立ち上がった。
(-350) 2023/09/30(Sat) 21:25:37

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-350

「え……本当に連れて行ってもらったんですか」

埋め合わせと言うくらいだから本当にそうだということだ。
冗談のつもりだったのに。
誰だか知らないが、相手の女性に少しだけ同情してしまった。他意はない。

「そうですか……。
 携帯にかけてるんですけど、繋がらなくて。
 ……まぁ、いいです彼も忙しいんだろうし……って、ええ?
警察やめた?


どうして、という言葉はあなたの笑顔に封殺されてしまっただろうか。
なんとなくだけど、答えてくれる気がしない。
答えてくれたとしても、それもまた、はぐらかされたような答えに違いない。

「僕のは運が悪かっただけで……。
 まぁ、死にかけたのは確かですけど…………」

あなたより傷は少ないけれど、この一つの傷が致命傷になりかけた。
それは本当だ。
けれども、僕は。
僕はあなたの後輩だから。

「でも」
「それブーメランですからね」

僕だって、心配するんですよ。
ねぇ? 先輩。
(-355) 2023/09/30(Sat) 21:59:49

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



連れて行ってもらったのか。
さて、笑顔に隠されたものはどちらだろう。
混ぜて隠して、本当の答えは箱の中。

椅子から立ち上がった後、ぐっと背を伸ばす。
傷んだ骨に若干響いたが、これくらいじゃ笑顔は崩れない。

辞めた理由を問われれば「A.C.Aだったから」の一言。
他の理由はもしかすると、まだ、あるのかもしれないが、
複数回答を求められた訳じゃあないから、内緒のままだ。

「おや、君は一体いつから先輩に言い返すようになったのかな。
 俺は無茶ではなくてデートの結果さ、同じじゃない」

「棚上げは良くないよ、エルヴィーノ後輩君

包帯の巻かれた右手を伸ばす。
その手は、君の背……ではなく、軽く肩を叩いて、
それから身を反転。都合の悪いことブーメランは知らないフリ。

「君とも今度、約束の埋め合わせをしよう」

君の心配を背に受けながら
ひらひらと手を振り、緩慢な足取りで扉の前に。
「あ、しまった」などと呟いているのは、多分気の所為。

両手が不自由ってのは本当に──不便なことだ。
(-359) 2023/09/30(Sat) 22:24:46

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

ゆっくり、上がる。
病院の階段を、一歩ずつ。

それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。

ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。
絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。
すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。

歩けるようになって、リハビリを始めた。
手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。
砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。

本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。
金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。

だって。

寂しいんだ。
心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。

#BelColletto
(98) 2023/09/30(Sat) 23:13:14

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

「やっとついた」

白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。
ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、
柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。

身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。

手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、

……ぱた。
ぱたり。


静かに雨が頬を伝った。

「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」

「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」

僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。
僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。
僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。

――知らないことは、罪だ。

だからこれは、全部僕のせい


#BelColletto
(99) 2023/09/30(Sat) 23:14:13

【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

「……レオ……」


あの日約束したその名を呼ぶ。

「レオ………ッ」

何度も、何度だって、その名を呼ぶ。
天国への道を閉ざす、格子の前で。

「約束、守って……る、だろ」
「なのになんで、応えてくれない……っ」

だけどそこに、あなたは居ないのだ。
今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。

#BelColletto
(100) 2023/09/30(Sat) 23:15:34

【魂】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

>>_8 >>_9

「そう……だね」

僕は
確かに運がいい

ルチアーノが居なければ、遺品の一つ手に入らなかった。
死体は決して見つからず、最後は行方不明で処理されてしまうかもしれない。
死亡したという事実が知れただけ、僕にとってはきっと幸せなことなのだ。

「うん……。
 きっと間違えたんだ……」

じゃなきゃ、あの真面目な、真っ直ぐな人がこんな事になるわけがない。

心に巣食う自責の念はまだ小さい。
それはこうして抱きしめてくれる腕が、優しい声が食い止めてくれているかのようで、心地いい。
がらがらと心が崩れていく。

僕が。
僕が何も見ず、あなたの声だけ聞いてあなたの傍にある事が、あなたの幸だというのなら。
僕はもう、きっと他の誰かを見ることはない。
信じるものは、ひとつキミだけ。

「ルチア……。ルチア……!
 ごめんね。でも、ルチアが外に出れて、本当によかった……」

だからずっと、強く抱いていて。
僕はもう絶対、その心ごと、キミの傍を離れないから。
(_10) 2023/10/01(Sun) 6:54:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「……心配? 大丈夫、ルチアが良いって言うまでここにいるよ」

入院は思ってたよりも長期間に及んだ。
元々一人暮らしをしていた関係上、関節の損傷という怪我の具合もあったが、加えて動脈をやられていたことと、精神も病んでいると診断されたことが理由として大きかったようだ。
本人は早く退院したかったが、幼馴染が最大限病院を利用しろと言うので素直に従ったらしい。

容態が安定してからは精神的な病気の方が厄介で、男はとにかく眠らないと、病院関係者も頭を悩ませていた。
幼馴染が来てくれた時だけはぐっすり眠れているのも確認されていて、薬が効かないから助かると思われていたに違いない。
また、同期の二人や先輩も時々顔を見せてくれていたから、病院で問題行動を起こす……なんてことは起こらないから、扱いやすいおとなしい患者の一人であったことは間違いない。

ただ。
たったひとつの、行動を除いては――――――――


#VerdeMare
(_11) 2023/10/01(Sun) 19:47:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「ねぇ、ルチア。お願い」

首を噛んでほしい首輪をかけてほしい
そう言い出したのは、首についていた歯型の痕がなくなってしまった日のことだ。
幼馴染には勿論そんな趣味はない。
しないと自分で首を爪で傷つけるから、1・2回はそのお願いを聞いたかもしれないが、その後は犬用の首輪がついた。
病院の方々はさぞ不審がったに違いない。
診察の際に「人間関係を整理しては」と遠回しに幼馴染と別れることを勧めた医師もいたことだろう。
時間が経てばそういう発作みたいな衝動も少なくなってきて、首輪はチョーカーとなり、いつしかネックレスなりアクセサリーを首につけていれば安心できるようになっていた。
けれど最初の時の、あのルチアの悲しそうな顔が忘れられない。
悲しくなって、ごめんねと言って頭を何度も撫でたのを、よく覚えている。

この頃には、いつだったか。
僕が二人目に好きになった人
だったラーラが亡くなっていた。
薬の処方ミスがあったらしい。
不運なことだが、彼女には身よりもいなくて訴える人間も居ない。
あしながおじさんを続けていたけれど、その必要もなくなってしまった。
その知らせを聞いた時はまた精神的に危うくなったけれど、この時もまた、幼馴染が傍についててくれたから無事だった。

#VerdeMare
(_12) 2023/10/01(Sun) 19:48:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

月日は巡る。
リハビリを経て職場復帰を果たすころには、約2年の月日が経とうとしていて。
表面上はもう、以前と変わらなぬ笑みを浮かべ仕事に取り掛かることができていた。

だが、内面はどうだっただろうか……?


海風が薫る砂浜でひとり、遠くに輝くシーグリーンキミの瞳を見つめていた。

幼馴染ルチアは、僕を大事にしてくれる。
それはすごく、嬉しいことで、幸せなことだ。
あなたが笑ってくれるから、僕は隣で穏やかであればいい。

でも、時々すごく、寂しくなる。
ルチアは、僕を決して抱いてはくれないし、抱かせてもくれない。
愛してると告げてみても、そうだなと笑うだけ。

別に、いいのに。
僕はもう、キミだけしか見てないのに。
悲しませたくはないから、絶対に気持ちを返してほしいなんて思わないのに。
一度抱き潰された体が疼くから、沈めてほしくて。

#VerdeMare
(_13) 2023/10/01(Sun) 19:50:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

だけどそれならと、適当な人の腕をつかもうとしたら怒るから、それはせずに首輪をつけるんだ。
あなたが訪れてくれるのを待つ、忠実な犬のように。

僕は――――

もし死に方を選べるなら、
キミに殺されるのが一番いいよ。ルチア。
キミが我慢できなくなったなら。
キミが死んでしまうその前に。
僕を優しく抱いて殺してね。


指先からこぼれる愛を集めて、全部キミにあげるよ。

僕は最期まで、キミの笑った顔が、見たいから。

#VerdeMare
(_14) 2023/10/01(Sun) 19:50:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「やぁ、はじめまして、おちびさん。
 わぁ、思った通りすごく良いね、毛並みもふわふわだ」

ある日。
腕におちびさんを抱いて、嬉しそうに笑う男が一人。付き添い一人。
医師に動物を飼う事による精神治療と生活改善を更に進めてみてはどうだろうかと勧められたから、ペットを飼うことにしたのだ。
ペットはゴールデンレトリバーの子犬。
大型犬のほうが落ち着いていて気性が優しいから、おすすめ出来ると言われたのもあるが、なんとなく、この子犬に一目惚れをしたのだ。
尻尾を振って甘える仕草が、とても可愛かったから。

「キミのお陰で、部屋も随分変わったよ。
 あ、こっちのお兄さんはルチア。よく家に来る人だから覚えようね」

犬を飼うと決めてから、同期の……特にアリーチェが犬用のグッズを買っては差し入れしてくれる。
今では子犬用のグッズで部屋が彩られ、生活感のなかった寂しい部屋が嘘のように変わっていった。
いつかは庭付きの部屋に引っ越して、外でいつでも遊べるようにしてあげたいとも思っている。

#VerdeMare
(_15) 2023/10/01(Sun) 19:52:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「え、名前?」
「勿論決まってるよ。
 ……というより、それしか浮かばなくて」

名前を問われ、子犬に舐められくすぐったそうにしていた顔を上げて、男は頷いた。
抱いた子犬をじっと見つめ、気に入ってくれるかなと頬を緩め。
もったいぶるような間を取って、口を開く。

日に当たればきらきら輝く金の毛並みだから、それは勿論。

「キミの名前は今日から
”レオ”
だよ」

想いに想いを重ねて、僕は今日を生きる。
こぼれ落ちた愛は、全部集まったかな。

忠犬さん。
どうか僕が死ぬ殺されるその日まで、ずっと傍に居てね。

#VerdeMare
(_16) 2023/10/01(Sun) 19:52:58
 


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