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【人】 文字食う紙魚 蛇神 阿門「……」 秘密の打ち明けのために皆の視線があつまり、意見する様子に耐えかねるように。 荷物を持った陰がその後ろを通り過ぎていく。 明日からは、個室で過ごせるように申請を出してきた。 (2) 2022/02/02(Wed) 22:12:55 |
【秘】 文字食う紙魚 蛇神 阿門 → 2年 不破 彰弘「例えば。お前はあの場で俺が出ていって、 『みんな、こんなふうに秘密を明かされることなんて大したことじゃない。 それよりもここで出来ることを楽しみ、勉学に勤しもう。 互いの秘密にしていることを尊重しあい、認め合うべきだ』 といえば、納得して溜飲を下げるのか?」 わざと口調は平坦に、あまり大仰にならないようにした。抑えているから、ではない。 やたらに装飾し、大げさにしたところでそこに含まれた真意はわかりやすくなっても、 ただただその態度の良点から目を背けているのだと、誤解されては困るからだ。 「他人の気持ちを仔細に想像して痛みを分かち合い、明かされた者を明るく気遣って、 こうあれかしと啓蒙することが尊ばれる素晴らしいふるまいに見えるのなら、 確かに俺や偉智の態度は不思議であったり、他よりも無理をしているように見えるだろうな。 俺はお前たちがどんな人間で、これまでどんな思いでそれを隠してきたのかを知らない。 もう少しはっきりとした言い方をしようか。 俺はお前たちを明るく鼓舞するほど、無神経にはなれない」 (-106) 2022/02/03(Thu) 16:09:15 |
蛇神 阿門は、そうした問答の中にはいない。 (a34) 2022/02/03(Thu) 21:43:59 |
【秘】 文字食う紙魚 蛇神 阿門 → 2年 不破 彰弘「お前が"それくらい辛いなら"と言うから、"どう"辛いのかを問うただけだ。 秘密を一度明かされてしまったから、お前には想像がつかないのかもしれないな。 そうでなくとも、けれども、俺は"嫌だ"。俺は俺を守るために、自信の秘密は知られたくない。 少なくとも自分以外の人間の手によって強制的に明かされるなんてのは、絶対に嫌だ。 いいか、俺にはああして自らの悩みを分かち合うことが、例え本当に最終的に、 何らかの良点として自分の人生に貢献するのだとしても、それでも嫌だと言っているんだ」 貴方ではない誰かに、同じ様に辛そうと、異質だと問われたとき。 こうして答えた言葉は少しも理解はされず、子供の考えだと断定された。 貴方もそうするのか、そうしないのか、それは蛇神にはわからない。どうあれと望むべくもない。 ただ、こうして聞きに来たということが、価値観の違いを物語っている、それだけだ。 「"何か力になれることはないか"、 ない。 同じ立場であるお前が、このどうしようもない催しを中断できるなら良い。 だけど出来ないだろ。首肯しなければ棄権と見做すとされたんだ。出来るはずもない。 必要以上に暴かず、暴かせない、それ以外になにか出来ることなんてのは、誰にもない」 → (-254) 2022/02/04(Fri) 2:30:58 |
【秘】 文字食う紙魚 蛇神 阿門 → 2年 不破 彰弘そこまで言ってから、ようやく言葉を切って溜め息をついた。 どこかにかすかに、八つ当たりの心はあったのかもしれない。 それでも謝ったりもせず、後悔もしていないようだった。 問いを投げかけられる前から、態度も好感度も、何も変わったわけではない。 「くだらない用件ではないだろ。真面目に考えて、そう至ったんだから。 お前がくだらない用件だったと言った瞬間に、それは無価値になる。 お前はやっぱり、もう少し自分に自信を持ったほうが良い」 それそのものは弁解でもなく、気遣いでもなく、貴方の態度を見て思った本心だった。 かすかに隙間から吹く夜風がバルコニーを冷やしている。 上着の要りそうな、ほんのりと肌寒い空間だ。長居をしたい場所ではないだろう。 こんなところに逃れ出て、快適な時間を過ごせるわけもない。 それでも、秘密を分かち"合って"いない人間がいられる場所ではないのだ、あそこは。 自分の悩みを打ち明け心を開くほど、誰とも言葉はかわしていないのだから。 「ここでの学習やレジャーは、まあまあ楽しいよ。 受験から開放されて初めての旅行だし、なおさらだ。 こんなレクリエーションなんて無くて、ただ遊ぶのに集中できてればよかったんだけどな」 あなたが去っていくのなら、それを止めたりもしない。 そうするほどにはやっぱり、互いに交わす言葉は少なすぎたのだろう。 (-255) 2022/02/04(Fri) 2:37:46 |
【秘】 文字食う紙魚 蛇神 阿門 → 2年 不破 彰弘「ああ」 返答は短かった。互いに言いたいことは言えただろう。 少なくとも蛇神はそう感じていたし、貴方がもしもそうでなかったなら。 手酷いまでに無神経な青年は、貴方の優しさには気づけなかったのだろう。 ただ、何事もなく、唯の人間同士の言葉の交わしあいがあった、それだけ。 みんなの中心のうちに戻る貴方を見送り、 誰も周りにいない人間だけが、星天を望むバルコニーに残った。 (-341) 2022/02/04(Fri) 19:28:34 |
蛇神 阿門は、その周りに星だけを置いていた。 (a57) 2022/02/04(Fri) 19:29:03 |
【独】 文字食う紙魚 蛇神 阿門例えば誠にこの催しをひらいた人間は、悩みを抱えた人間を救うためなのだろう。 人の心の内側に閉じ込めたものというのは守ることはできたとしても、 救うことはできやしない。暗闇の中を頭を隠してやり過ごすに等しい。 多くのものはここで悩みを打ち明けて、自らを解放し。 かけがえのない縁を手に入れることができたのだろう。 そうでないものであってもきっと、誰かを助くことができた。 それは、人生においてかけがえのないことなんだろう。 きっとみのりのあることばかりが、全てではない。 何も得られずやり過ごすことが、では、未熟で無益なことか。 ――そうかもしれない。 少なくともここにいた多くの者にとっては、そうなのだろう。 自らを打ち明けず、他の秘密に多く干渉せず、誰とも寄り添わなかったものは。 きっと、"かわいそう"なのだろう。 他の手を振り払ってここまではるばると来て、 一世一代機会を逃して、ただ、自らの殻に閉じこもるばかり。 嘲笑の的がそこにあるだけなんだろう。 (-363) 2022/02/04(Fri) 20:54:15 |
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