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【秘】 寡黙 エミール → 遊蕩 ディルクアンジュの痣が光ったとのお触れと、祭りの終了の予告。 気の毒そうな声。 それを聞きながら、痣の光らなかった男はぽつりと呟く。 「……終わったな」 ――二人で現実逃避したその夜。 話していたとおりに落ち合って、力を授かった視線で絡み取り。 ……結果予想外のことが起きていた。 ……痣は光らなかった。 いや、それだけなら別にありえることではあったが。 何故か、隣に立つ男と妙な絆めいたものが繋がってしまったのだ。 「痣が光らなかったのは俺達だけか……」 つまり、彼の選択肢は奪えなかった。 自分の選択肢も……なくならなかった。 「俺達だけ、……選択をしなきゃいけないということだ」 帰るのか、帰らないのか。 これは選択することをここまで避けていた二人への、神の導き。 あるいは神の試練なのだろう。 (-1) 2024/02/14(Wed) 23:51:46 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエそれは祭りも終盤のある時間。 聖女に会うその前に、あなたの姿を探している。 これまで、あなたの姿を探すのに苦労したことはなかった。 孤児院に行けば、探さずともその姿を見ることが出来たから。 でも今は違う。 人の群れをかき分けるようにして歩いて、あたりを見回す。 他人の視線など気にもしない。 むしろ祝福の声に反応するかのように視線を動かして、貴方の姿をみつけるのだろう。 「――――」 これまで男は、貴方の名を呼んだことがなかった。 貴方だけでなく、誰の名も。 「…………ファリエ」 少しばかり、むず痒い。 (-5) 2024/02/15(Thu) 14:14:40 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ揺れる亜麻色の髪から漏れ出る痣の光が、舞い散る六花を照らしている。 振り返った柔らかい表情に、なにか一つ乗り越えたようなすっきりしているように思えて、ひとつほっと息をついた。 「え……と」 名前を呼ばないのには理由があった。 繋がりをできる限り、持ちたくなかった。 愛着も執着も、持ってしまうと離れがたくなるとそう思っていたからだ。 それをどう言ったものかと、言葉に詰まる。 視線を少し泳がせて、やっと、こくりと頷いて。 「そう……宿題、持ってきた」 懐かしい。 自分でない自分だった頃は、毎日のようにやっていた単語に口元を緩めた。 「俺……、聖女と話したよ。 随分自分勝手で、強引で……でも、すごく寂しがりやだ。 アンタはそれを、どう思う?」 (-8) 2024/02/16(Fri) 14:39:31 |
【秘】 寡黙 エミール → 遊蕩 ディルク>>-7 ディルク 「いいんだろ。一応」 選ぶことすら出来ないよりは、多分。 ……なんて、話してもないのに互いに自分たちが同じであることを断定しているかのよう。 心の置きどころがないのなら、置きどころを一つにしてやろうと思ったのだが。 ……何故か、自分との間に繋がりが出来てしまったがそこはそれだ。 「ひとつだけ……教えれることがある」 「もし……今を捨てたとして……そして得るものはない」 「全部元に戻るだけだ、元のところに……」 ルールがある以上直接的な言葉を用いることは出来ないが伝わるだろうか。 つまりは、元の世界に戻る場合。 ――死んだであろう時間に戻るということ。 「……アンタは、ここに残るものは何もないのか。 …………俺は、ある」 自覚してしまった、執着心。 (-9) 2024/02/16(Fri) 15:08:19 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ>>-10 ファリエ 「いや……何も変わらない。 会ったとはいっても、全部夢だったと言われてもおかしくないし……顔はどうしたって見えなかった」 あなたの問に、軽く首を振った。 顔は見ることは出来なかったが、それでいいと思ったのだ。 自分は聖女に力を与えられたし、願いを叶えてもらえる。 所謂お気に入りの一人といったところなんだろう。 あの時言葉をかわしたのが本当は聖女じゃなかったとしても、全てが只の作り話だと思われても構わない。 大事なのは、夢の出来事も全て含めて、答えを決めたということだけ。 その、答えは――― 「実は……俺、死んだかもしれない両親に会えるんだよ」 「その……資格がある」 「でも、それを受けちまったら……アンタにも、子どもたちにも、二度と会えない」 遠い遠い場所に、行ってしまうから。 言い方は少し抽象的になってしまったが、意図はきっと伝わるだろう。 あなたの反応を伺うように、じっとその瞳を見つめて返した。 (-13) 2024/02/17(Sat) 20:07:53 |
【秘】 寡黙 エミール → 遊蕩 ディルク>>-12 ディルク 「まぁ……流石に全部そのままってわけじゃないとは思うんだけどな」 死んだ体に戻りましたなんて言われてもお粗末な話しだ。 自分の場合、家族も皆一緒に乗っていた10歳の体にだ。 そこに24になった意識のまま戻って、天涯孤独になってしまったとしたら……。 そう考えるとゾッとするものがある。 彼らの無事を祈っているけれど、無事でない可能性が限りなく高い。 そんな事故だった。 「だけど、それだけじゃないんだ。 迷うのは、それだけじゃない……」 目に浮かぶのは、これまで関わってきた人たち。 あの日掴んだ物を、離したくないと思ってしまった。 「俺も楽しい時間が、あった。 ここに残して消えたくない……そう思う自分は、薄情なのかどうか……随分考えた」 何度もごめんなさいと、つぶやいた。 (-17) 2024/02/18(Sun) 1:46:50 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ>>-18 ファリエ 「……俺は別に優しくない。 ずっと自分勝手に生きてきたからな。何にも固執しないようにして、いつでも今を捨てれるように」 けれどもう。 ここで過ごした年月は、元の世界で生きていた10年を優に超えてしまった。 どんなに無関心でいようとしても、出来てしまった執着を簡単に捨てることはもうできなくて。 自重するように嘲笑う。 何かを捨ててしまう時、胸は痛むけれど。 自分にとって、いま大事なのは。 産んで愛してくれた両親よりも、これからも手を伸ばしてやりたいと思う人たちのこと。 「聖女も、聖女の祝福も関係ない。 祝われようが残念がられようがどうでもいい」 また会う事があるならば、その時はもう少し穏やかな会話をしてみたいとは思う。 別に、あの聖女のことが嫌いではなかった。 それよりも特別なものが、あるだけの話し。 ▼ (-26) 2024/02/18(Sun) 20:55:32 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ>>-18>>-26 ファリエ いつも、何も口にしないまま生きていた。 だけど大事なことは、言葉にしなければ伝わらない。 そうやって失敗したことは、確かにあって。 その度に感じたこの胸の苦しさを、どう言葉にすれば、貴方に伝わるだろう。 視線を落として、降り注ぐ六花の奥にある済んだ瞳を見つめた。 はく、と息を吸って、吐いて、もう一度。 「ただ俺は……ここが好きだ」 「……一緒に居るなら、……アンタが良い」 少し声のトーンが落ちてしまったが、これが答え。 自分自身で考えて決めたこと。 男が選び取れるのは、ひとつだけ。 ▼ (-27) 2024/02/18(Sun) 20:59:30 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ (-28) 2024/02/18(Sun) 21:01:27 |
【秘】 寡黙 エミール → 遊蕩 ディルク>>-23 ディルク 「あぁ……どっちをとっても後悔するなら」 「今俺が、何に手を伸ばしたいのかで考えることにした」 執着しないようにしてても、過ごしたこの14年で積み重ねてきた愛着を捨てることはもう出来ない。 両親も、妹も大事だけれど。 今、手を伸ばしたいと思える人が、ここに居るから……。 「……考えた結果、……帰らないことにした」 「俺に選べるのは、どちらか一つだけだから……」 この答えが、貴方の判断の助けになるかはわからないけれど。 繋がった魂の色が伝わると良いかなと思うのだ。 (-29) 2024/02/18(Sun) 21:17:21 |
【秘】 寡黙 エミール → 遊蕩 ディルク>>-30 ディルク 「……あのさ」 今この瞬間、ふと。 名前を呼ぶ勇気を、持ちたいと思った。 この世界に留まる決意が、出来たから。 「……沢山、後悔しよう。 俺達には、その権利がある」 去ろうとする者に手を伸ばすことを、貴方はあまり望まないかもしれないけれど。 でも、また会えるなら。 「……また会おう」 理解っている。 選択によっては、二度と会えない可能性があることを。 それでも、貴方が変わっていくその様を見られたらと願うのだ。 男は見つめ続けた。 貴方の背が喧騒を抜けて、見えなくなるまで。 (-31) 2024/02/18(Sun) 22:05:46 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエ>>-37>>-38>>-39 「……うん。 ずっと、我慢してた……んだろうな、俺は」 10代の少年が、何にも心を捕らわれないようにするなんて、相当心を押し殺してないと出来はしない。 そうして出来上がったのが、寡黙な青年という代名詞を得た人間だった。 それをやめてでも何かに手を伸ばしたいと思えたこと。 ずっと大事にしていきたいと思う。 幾つもの星が昇り、幾つもの霜が降りても、ずっと。 自分たちはきっと、まだまだこの世界で生きていくには未成熟だから。 この世界の色んなところに触れていくのが必要なんだろう。 ▼ (-41) 2024/02/19(Mon) 0:32:32 |
【秘】 寡黙 エミール → 白昼夢 ファリエそれでも自分が抱いている想いが伝わったことが嬉しくて、めったに緩まない目元が緩む。 連れていきたい、どこまででも。 胸を張って、自分たちはこの世界に生きる人間なのだと聖女に、この世界に示せるように。 「あぁ、……一緒に行こう、この世界に」 ゆっくりと手を伸ばして、あなたの手をそっと握った。 あの時と同じだけど、あの時より温かい小さな手。 「……アンタが思うよりずっと、俺はアンタが好きだから……よろしく、これから」 初めて、強くなろうと思った。 大切な人を守り切るくらいの力を。 この世界で生き抜く強さを。 共に過ごせる時を大切にしていくために。 そうして自分たちは色んな場所を巡って、 いろんな物を見て、何かを感じ取ってこの世界を生きていく。 思い出を心のアルバムに飾って何冊も、二人で共有していけたらいい。 (-42) 2024/02/19(Mon) 0:33:55 |
エミールは、近くに居た猫が、にゃおんと鳴いたのを聞いた。 (a7) 2024/02/19(Mon) 0:35:15 |
エミールは、それはまるで、答えと門出を祝ってくれているように感じていた。 (a8) 2024/02/19(Mon) 0:35:45 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ聖女に宣言するなら、教会で。 あの人同じように聖女像の前で、その顔を見上げた。 この像の聖女の顔がそのままなのかどうかは自分にはわからない。 けれども纏う雰囲気は、きっと同じもので―― 「答えを持ってきた」 俺は―― 「俺は帰らない。この世界で生きていく」 すぅ、と息を吸って、大きく吐いて深呼吸。 あなたの反応があるはずだと信じて、静かに目を閉じた。 (-43) 2024/02/19(Mon) 1:38:51 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ>>-44>>-45 聖女 ぱちり。 目を瞬かせた。 だって、像と見た目は変わらないとは言え……先日話したときよりもずっとイメージが幼くて。 「……良いも何も、そう決めた」 「俺がここで過ごした時間は、元の世界での時間よりも……もうずいぶん長い」 だって、わかるだろ。 男が前の世界で生を閉じたのはわずか10歳。 あなたと変わらぬ小さな子供だった。 家族への想いがなくなったわけではない。 ただ……元の世界に帰って、一人にはなりたくなかった。 この世界で、一緒にこの世界を見て愛せたらと思えた人がいる。 その人をここに一人残して消えることが、何より嫌だったから。 「もう、チャンスなんてなくていい」 あなたの前でしゃがみこんで、目線を合わせた。 困惑を隠せないその顔に、目尻を下げ。 その頭をぽんぽんと撫でた。 まるで、小さな子供への対応のそれだ。 姿を見てしまったから仕方ない。 ▼ (-52) 2024/02/19(Mon) 14:36:02 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ>>-52 「俺はこの世界で生きると決めたからな」 「だから願いも考えた」 本気だから、そんなに困らなくて良いという意味を込めて言う。 「ひとつめは……俺とファリエに守護の加護を」 それは万能のものではないだろう。 それでも、この世界での旅には危険が伴うことを俺は知っている。 自分の力で守り切るのは前提だけれど、加護があれば安心というものだ。 まぁもしかしたら、痣が光ったファリエには必要ないのかもしれないが、そこはそれ。 「ふたつめは……」 「俺みたいにここに連れてこられて、帰れなくなった人たちに。 前の世界の事を忘れてしまいたいやつがいたなら、忘れさせてやってくれ」 帰れないなら、未練を残していてはうまくこの世界に順応できない。 絶対に忘れたくない人もいるだろうから、希望制だ。 「俺は……心のアルバムに仕舞っておくことにする」 それは思い出そうとしなければ考えもしないもののように。 ふっと、時々懐かしむくらいで丁度いいと、そう思えたのだ。 (-53) 2024/02/19(Mon) 14:37:29 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ「違う……って」 なんでだよ、と独り言のように呟く。 聖女像を見上げながらも、なんだか腑に落ちない顔つきだ。 そういえば、ファリエも聖女についてはなんだか色々思うところも、心境の変化もあったようで、それを確かに見せてくれていた。 聖女にも人と同じような感情があるようだから、もしかしたら二人の間には何か交流のようなものがあったのかもしれないと考えた。 だからといって、それをどうこうするつもりはないのだけど。 「当たり前だろ。……大事にするさ」 色濃い方面には大分無知できてしまった男だが、感情は死滅してはいない。 全ては、これからだ。 ひとひらの雪辺を手のひらで受け取れば、じわっと溶けて水になってしまった。 聖女は、もう居ない。 これからの人生は、自分だけが紡いでいく物語。 (-58) 2024/02/19(Mon) 20:38:09 |
【独】 寡黙 エミール祭が終わって、様々を整理して。 男は育ててくれた師匠と別れて旅に出た。 傍らには、亜麻色の髪を持つ女が一人。 この世界のキレイなものを沢山見に行きたい。 そうしてこの世界を愛して行きたい。 だから二人で一歩ずつ、この世界を歩いていく。 孤児院を訪れた際には、驚かれたり、子供に泣かれたりと大変だった。 なんでこの子が良かったのと聞かれても、この人が良かったとしか言いようがなく閉口した。 詰め寄ってくる女は怖いと、初めて知った。 そういえば、時折 モジョ という単語を聞いたけれど、あれは一体何だったのだろう。10年しか向こうの世界で生きられなかった少年には預かり知らぬ単語であったし、孤児院だけで通用する単語だったのだろうと納得して、確かに彼女を貰い受けた。 そこにはもう、喪女などという女は存在しない。 しあわせのかたちを手にした女が居るだけだ。 (-59) 2024/02/19(Mon) 20:47:48 |
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