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【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ『へぇ、意外と社交的。』 『いいね、話すの、大事だもん。』 『誰かと仲良くなれた?』 『そんな話も、会ってからする方が良いのかな。』 『寮にいるよ。』 『じゃあ、入り口で待ってるね。』 (-202) 2022/02/21(Mon) 18:17:58 |
エノは、寮の入り口でしばし時間を潰していた。 (a43) 2022/02/21(Mon) 20:20:33 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「すごいね、バイク。乗ったことないや。」 君がバイクを止めるのを観察する。 VR世界のバイクを心配そうに見るなんて、随分物を大事にする人なんだと思った。 問いかけに、緩く首を縦に振って。 「ごめんね、俺が遅くしちゃったから。」 「いいよ。俺の部屋にする?フカワ君の部屋でもいいけれど。」 「身体冷えてない?」 俺の部屋なら暖房つけっぱだから暖かいけど、と首を傾げて。 (-220) 2022/02/21(Mon) 20:24:28 |
【赤】 美術 エノ『ありがとう。』 『あの人がどんなことをしたかによるけど』 『片づけは助かるよ。』 『しっかり理解できるといいな。』 なにを思って罪を犯したのか、何故その手段を選んだのか。 一つ一つを聞いて、一つ一つを真似してあげたい。 理解してあげたい。そうすれば寂しくない。 ただそれだけの想い。 『いいよ。俺、人のお願い聞くの好きだから。』 『君のお願い、何でも聞いてあげる。』 『ぜひ頼ってね、カミクズくん。』 契約は結ばれる。 (*11) 2022/02/21(Mon) 20:38:13 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「へぇ、俺はあんまりわかんないけど」 「バイクって高いんでしょ。免許もタダじゃないし。」 「すごい好きなんだ、バイクの事。」 「いいじゃん、乗れずに死ぬよりは。」 部屋はこっち、と先導する。 金属製の扉を開ければ、中から暖気が溢れてきた。 寒がりなのか、設定温度の高い温風がエアコンから流れ出ている。 「何かと知的好奇心があるね、フカワくんは。」 「うーん、どうなんだろう。応援とか協力って、打算的な感じがする。」 「相手の事を100%考えてされる行為って、思えないんだよな。」 なんか飲む?と台所のほうにいって。 別にその気になれば、空から飲み物くらい出せるけど。 「本当に仲良しなら。」 「死んだ時、一緒に死んであげた方が良いと思う。」 その方が寂しくない。 (-226) 2022/02/21(Mon) 20:47:02 |
【赤】 美術 エノ言葉が通じない場所にいる。 呟きがどこに届くこともなく。 青年は部屋で一人、端末を操作している。 「へぇ。」 興味の湧いたような呟きもまた、どこにも届かない。 『死体の処理に慣れているんだ。』 『なんだか不思議だね。』 『そういう仕事にでもついてたの?』 理解さえできればいい。 理解のためなら何をしてもいい。 だって、理解より幸せなことなんてないんだから。 今、理解の矛先は君に向いた。 端末の向こう側で、夕焼けのような眼が君の文字をなぞった。 (*13) 2022/02/21(Mon) 21:28:22 |
エノは、理解がしたい。理解されるために。 (a47) 2022/02/21(Mon) 21:56:18 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「まぁ、免許のお金は無意味だったね。」 「ここで焼肉食べればいいんじゃない。」 「気分くらいは晴れるかも。」 「そうだね、人に触れる感触も現実と同じみたい。」 「首に触ったら、脈拍すら感じるよ。凄いね。」 注文通りのコーヒーを作って、小さなテーブルにことりと置く。 自分はオレンジジュースを出して、ストローを咥えた。 「へぇ、そう。誰に言われたの。」 「って、教えられないかな。そう言う話し合い、もうされてるんだ。」 「誰かに票を集中させようとか、そう言う感じ?」 まぁそう言うのもやっぱり水面下では行われてるんだな、とジュースを啜って。 誰もが同じことを考え付くものだ、きっと昔からずっと、同じような冷戦があったのだろう。 「生憎と。そもそもあんまり人と会話できてないんだ。」 「そうだね、仲良し……というか、理解者が欲しいんだよ。」 「俺の好きなものとか、嫌いなものとか、なにを考えてるかとか、どうしてたいとか、そう言うのを言わずとも分かってくれる人。」 「親友とか、恋人とか、そう言う名前が付けられてる事もあるけど。」 「形は拘らないから、理解者が欲しい、そんな感じ。」 (-266) 2022/02/21(Mon) 23:22:43 |
【赤】 美術 エノ「特殊清掃員………」 呟いて、端末に浮かぶ文字を眺めて。 指を動かす。 『孤独死した老人とかを回収する人だ。』 『そりゃ後片付けもうまくなるね。』 『何でそんな仕事選んだの。』 『望んでやる人なんていなさそう。』 理解の刃は留まる事を知らない。 遠慮もなにもなく土足で踏み込んでいく。 『ちなみに。』 『何か俺にお願いしたくなるような事、あるの?』 今はまだないのかな。端末の向こうで首を傾げた。 (*16) 2022/02/21(Mon) 23:31:59 |
【赤】 美術 エノ『ふぅん、家族から離れたかったの。』 『理由を付けてでも一人で暮らしたいくらい。』 理由を付けないと、一人暮らし出来なかったんだ、と思った。 自分にはわからない感覚だ。 なにをしようとそれを止められたりすることもなかったし。 ただひたすらに放任主義だった。 面と向かって話してるわけでもなし、君の隠し事に気付けることもなく。 『大丈夫、拒否しないよ。』 『どんなことでもしてあげる。』 『君の事を理解したいからね。』 『思いついたらぜひ、お気軽に。』 誰かを拒否する事なんてしない。 理解を邪魔するあらゆることを、自分からすることはない。 (*18) 2022/02/22(Tue) 0:09:13 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「………えーっと………」 「……あぁ、アイドルの。」 「そういえば、会ったって言ってたもんね。」 あの子か、と顔を浮かべる。 なるほど、そう言う提案を持ち掛けてそうだ。 よほど死にたくないんだな、なんて思いながら。 「フカワ君は結構、性格が悪いね。」 「いや、好奇心が旺盛なのかな。常に逆側がどうなってるのか気になるタイプだ。」 「まぁ、何の指標もないよりかは、票も入れやすいだろうね。」 嫌いな奴とか、死んでも良さそうな奴とか、そう言うのを決めるより。 死にたくない奴を除外していった方が楽だ。 誰だって目的もなく人を死に追いやったりしたくない。 「フカワ君は最初からそうだったけど、成り行きに任せるよね。」 「何があっても仕方ない、どうしようもないって思う人?」 「君は大丈夫そうだよ。色んな人と話してるから。」 ごくごくと飲んだオレンジジュースが底まで下がって、ズズ、と行儀の悪い音を鳴らす。 溶けた氷の水を吸いながら、君に視線は向け続けて。 「俺もそうだよ。理解者を作る時間に充てたい」 「それだけが未練だから…………」 そうして、齎される言葉に。 (-280) 2022/02/22(Tue) 0:27:18 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「…なってくれるの?理解者に。」 前屈みに頬杖をついて、少しだけ距離を縮めて。 嬉しそうな、楽しそうな顔をして。 「いいね、やってみようよ、理解者ごっこ。」 「理解者がいたらどんな気分なのか、知れるかも。」 「理解者ごっこって、どうやればいいのかな。」 「どうすればいいと思う?フカワ君」 「コーヒーに砂糖を入れないフカワ君。バイクに憧れのあるフカワ君、贅沢なご飯と言えば焼肉を思い浮かべるフカワ君、何かと諦観的なフカワ君。意外とお喋りなフカワ君、好奇心旺盛なフカワ君。」 「……まだこれだけしか君を知らないや。」 「もっと知らなきゃ、理解者になれないね。」 君の理解者になれるよう頑張らなきゃね、と、楽し気に。 (-281) 2022/02/22(Tue) 0:35:27 |
【赤】 美術 エノ面と向かって話してるわけじゃない。 無機質な文字しか伝わらない。 今どんな顔をしているかなんてわからない。 もし、目の前に居たら。 その表情の遍歴を目の前で眺めていたなら、青年は─── ───それはそれは嬉しそうに、笑ったことだろう。 『うん、ばいばい。』 通信の切れる表示。 端末をぽい、とすぐそこに投げ、ベッドに体を倒した。 「…また一人になっちゃった。」 どこかに出かけようかな、なんて考えながら。 青年は青年の日々を過ごしていくのだった。 (*20) 2022/02/22(Tue) 1:17:16 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「なるほど。つまり君は……うーん……」 「参考にしたい?人の事を。」 死を間近にした人間がどうするべきか分からないから。 だから、人の事を見ていたいのかと受け取った。 ある意味ではそれも"理解"だ。 少しばかりの共感もできる。 「生きたい、死にたくない」 「大体皆そう言うよね。何度か聞いた。」 「漠然と生きたいと思うのが普通なのかな。」 理由などなくても生きたいのだと、演劇家が言っていた。 まだあまり理解できない心の機微だ。 目線があって、目に映った顔に。 笑うのが下手だね、とすっぱり言ってしまって。 (-369) 2022/02/22(Tue) 17:16:47 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「うん、なるほど……話し合い。」 「知りたい事を聞き、知って欲しい事を話す……」 なるほどな、と頷いて。 自分が欲しがっているのは、鏡か奇跡の類の物。 容易に手に入らないそれを、されど求めてしまう。 かといって降って落ちてくるようなものではなく、きっとそれは、長い時間と段階を踏んで、やっと手に入るもので。 ならば、まずは……… 「つまり、まずはお友達からと言うわけだ。」 一緒に死んでもいいと思えるくらいの。 "仲良し"なお友達を目指すとしよう。 そうして最期は理解されよう。 理解されなかったらどうしよう。 それでも理解を求めようか。 理解してくれるまで、何度も、何度も、何度も。 自分の全てを分かられるまで。 (-371) 2022/02/22(Tue) 17:24:17 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワそうして聞く、君の内側の一つ。 「暇つぶし。死ぬまでの。」 「俺を理解するのも暇つぶし。」 「……良いね。」 嬉しい。一つ君を理解できたことが。 嬉しい。暇つぶしに選んでくれたことが。 だって、暇をつぶすためなら君は。 好奇心の刃で俺の心を切り裂いてくれるだろうから。 撫でられる頭に拒むこともなく目を細めた。 少し心地良さそうにする。 「……じゃあ、俺も一つ。」 「俺の本当の名前は、 虹谷 絵乃(にじや えの) 」「ニジヤ製薬っていう会社の、社長の息子。」 それは、この国でも有数の、どこでも名前を聞くであろう会社。 絵はただの趣味なんだよね、と、心地良さげな目で君を見ながら告げる。 (-372) 2022/02/22(Tue) 17:36:55 |
エノは、池の前にイーゼルを立てて、キャンパスに絵を描いている。 (a71) 2022/02/22(Tue) 17:52:22 |
【人】 美術 エノ「…………………………」 焼肉屋だ…………なんかある……。 いつの間にか生えてきた日常感溢れる建物を眺める。 「……うーん、また夜になったら食べようかな。」 お肉は夜に食べたい。なんとなく。 (194) 2022/02/23(Wed) 6:47:54 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「なるほど……うん、いいね。」 「フカワくんのこと、またひとつ知れた。」 「嬉しいよ。君の事を知れるのが。」 髪を手に取られても、それに嫌そうな顔をすることも無く。 むしろ、もっととでも言うように頭を差し出す。 まじまじと、一つ一つの色を確かめるような所作に、 拒絶どころかむしろ、恍惚とした表情すら浮かべて。 好奇心の目に晒されることが気持ち良い。 もっと自分のことを見て、理解して欲しい。 衣服を一枚一枚脱がすかのように、裸の心を抱きしめて欲しい。 「別に俺がすごいわけじゃない。親から生まれただけだし。」 「自由だよ。会社を次ぐとか考える事もないし、お金も困らないし」 「友達にも気を使われる。あの会社の息子かって。」 「苦しいことなんて何も無い、恵まれた生活をしてたよ。」 「ただ、退屈ではあったけど。」 君も、自己紹介があるんだ、と。 ワクワクしながら、傾聴して。 (-442) 2022/02/23(Wed) 7:09:54 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「……クニユキくん。それが君の本当の名前。」 「弟君を騙ってたの?どうしてそんなことをしたんだろう?」 責めるような言葉、ではなく。 ただなんで?どうして?と純真な子供のように。 楽しげな目で、君に質問をなげかける。 「うん、いいね、人とご飯、あんま食べたことないや。」 「楽しみ……うん、楽しみだな。」 「バイクも趣味じゃないんだ…………思い出す?」 「記憶が無いの?」 あんまりそんな感じには見えなかったから、少し眉を上げて。 両手を君に伸ばして、頬に触れようとする。 何もかもを知りたい。 何もかもを知られたいから。 「……あぁ、用事があるなら、話を区切って貰ってもいいからね。」 叶うなら頬を撫でながら、そうこぼす。 毎日会えるなら、無理をしなくたっていいはずだから。 (-443) 2022/02/23(Wed) 7:16:11 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ「そう、きっと、ラッキーな生まれだった。」 「でも俺は、もっと庶民的な家で、一人っ子が良かったな」 「無い物ねだりだよね、こういうのは。」 撫でられる頭に自分からすり付けるように小さく首を振り。 家族の距離が遠かった。 沢山いる兄弟とも、そこまで仲が良くなく、悪くもなく。 一緒に出かけることもないし、喧嘩もしない。 親ともそう。…………だから、撫でられたこともないし。 消化不足って、どんな感じなんだろう。 満たされない感じなのかな。だとしたら、お揃いなのかな。 お揃いなら少し嬉しい。 「そっか、着ぐるみみたいなものなんだ。」 「……フカワ君の本当の姿が見れないのは、少し残念。」 「でも、そう。なんとなく、君はそういうことしそうだなって、感じするな。」 「君の事、ちょっと理解してきてるのかも。」 嘘が付けなさそうだし、歳も自分より上。 抱いていたイメージ通りで、それがなんとなく嬉しい。 自分が生き残ってしまった時、思い出す君の顔がきみのものじゃないのだけが残念だ。 (-462) 2022/02/23(Wed) 12:25:37 |
【秘】 美術 エノ → 不運 フカワ頬を優しく指で撫でる。 むに、と少し摘んでみたり。 人の顔って、こんな感触なんだな。 まぁVRだから、本当の顔ではないんだけど。 触れる度なんとなく理解度が高まるようで、嬉しい。 「……そっか。君は、君をちゃんと理解出来てないんだ。」 「分からないんだね、自分のことが、ちゃんと。」 「……今度一緒に出かけよう。図書館とか、公園、池もあるはず」 「どこか楽しい場所を見つけてみようよ。君の好きなものを見つけたいな。」 そうして見つけた君の好きなものの記憶に、 自分も顔を出していればいい。 自分の中に誰かを残したいし、誰かの中に自分を残したい。 君とは真逆。きっと、心に傷を刻み付けたいのだろう。 自分という傷を。 「うん、まぁ、理解者は1人いれば満足なんだけど。」 「連絡、待ってるね。お土産話も楽しみ。…………んー……」 「……早めだと嬉しい。」 君に理解してもらうために、思ったことをそのまま告げて。 次は何時間後だろう。待ち遠しく感じる。 そうして一度、汗ばむくらい室温の高い部屋から。 冷えた外へと、君を送り出すことだろう。 (-465) 2022/02/23(Wed) 12:34:52 |
【人】 美術 エノ日も暮れてくる頃、随分肌寒くなってきた。 そんな中青年は、南西の区画、広場の噴水前にイーゼルを立てる。 「噴水か。いいね。」 「綺麗にかけるかな。」 合議以外の時間は暇だ。 絵を描くにはちょうどいい時間なのだった。 (206) 2022/02/23(Wed) 14:02:12 |
【人】 美術 エノ>>217 「そうなんだ。まぁ、あんま人前で描く人いないか。」 大道芸くらいかな、と納得を示す。 君がそのまま見ていくようなので、正面に向き直り。 飛び散る雫の一つ一つを描いていく。 「楽しいから好きになるんじゃない?」 それって分けられるものなのかな?と首を傾げ。 あらかた風景を描き終われば、今度は人影をひとつ描いていく。 噴水に向かい合うような影。 「俺は楽しいし、好きだよ。」 「自分が作ったものを残せることが好きなのかも。」 「この絵を見て、自分のことを少しでも理解してくれる人がいるかもしれないから。」 人影の前にイーゼルを描き足して。 ざくざくと、さほど時間もかけずに描いていく。 「君はどう?なにか趣味はある?」 「その趣味は、好きだからやるの?それとも、楽しいからやるの?」 (219) 2022/02/23(Wed) 15:43:27 |
【赤】 美術 エノ青年はといえば、落ち着いたものだった。 趣味の絵に没頭して、されど別に逃避というわけでもなく。 言うなればそう、時間つぶしのような気持ちで。 筆を滑らせていた。 端末が震え……今は近くに人がいるから、メッセージを網膜の上に映し出す。 前回の経験から、随分VR上で様々な操作ができるようになっていた。 『それは。』 『いいか、悪いかってこと?』 『まぁ、なくていいなら無い方がいい制度だよね。』 死にたくないと思う人がいて。 死んで欲しくないと思う人もきっといる。 突然訪れる平等な死を、肯定できる人は果たしてどれほど居るのだろう。 『辛くなっちゃった?』 『取り留めのないことでも、話したら楽になるよ』 2回も選ばれてしまった君を可哀想、だと思ってるから。 せめて支えになってあげられればいいなと思った (*22) 2022/02/23(Wed) 16:37:40 |
【人】 美術 エノ>>223 ツルギ 筆はやがて、色の多い髪を描いていく。 噴水広場にひとりぽつんと立つ絵描きを、精巧に描いていく。 「無いんだ、趣味。」 「すごいね、退屈で死んじゃいそうだ。」 暇な時どうしてたんだろう。 さほど暇な時もなかったのだろうか。 ある程度描き終えた絵に背を向けて、君に向き直った。 君の言葉を聞く。ひとつ、頷いて。 「なるほど。」 「君は物事を頑張れない人なんだ。」 「何をしても、実らないかもしれない、無駄かもしれない」 「そんな思いでいるんじゃない。」 昨日の会話を思い出しながら、そう告げた。 徒労が嫌だと言っていた、君の言葉。 「成果が出るか分からないものに、力が入れられないのかな。」 つらつら、君を理解するために。 今理解してる中での、君への印象から推測して話す。 (228) 2022/02/23(Wed) 16:42:57 |
【赤】 美術 エノ青年には何も忘れたい事がない。 死んで悲しいなと思えるほど理解できた人もいなかったし。 それより前の、日常生活でも何も困ったことはなかったし。 心の底に何もない、ぬるま湯の風呂のような人生だった。 『うーん。』 『これは俺なりの考えだけれど。』 『死ぬのが怖い人って、未練がある人だと思う。』 それは例えば、もっと何々がしたかった、だとか。 あの人と一緒に居たかった、とか、遊びたかった、とか。 アイドルのライブに行きたい、とか、ドラマの続きが見たい、とか。 そういう、"生きて何かしたかった"から、それが出来なくなる死が怖いのだと、思ってる。 『怖くないよ。』 『生きてやりたいことがないから。』 『寂しいけどね。』 寂しいけど怖くはない。 それが青年の答えだ。 恐怖を感じるほど、未来を見据えた人生じゃなかった。 『君はどう、カミクズくん。』 『怖い?』 (*24) 2022/02/23(Wed) 17:18:51 |
【人】 美術 エノ>>232 ツルギ 「退屈から逃れるためにするものではないと思う。」 バッサリ。 自分はどっちもやったことないけれど。 たいてい目的があるとか、好きだからやるものだと聞く。 「結果がすぐ出るような趣味があればいいのかもしれないね。」 「それか、目標を短く設定するとか。」 「例えば、そう。人と話す事。人の話を聞くこと。自分の話をすること。心を近づけてみる事。」 「そうして少しずつ段階を踏めば、いずれ理解者ができるかもしれない。」 細かな目標は大事だよ、なんて。 人生の先輩らしい事を言ってみる。 背中から見ている君は分からないだろうが、青年は自分を描く時、瞳を閉じている。 視界がどこか別の場所にあるように。 それもVRの機能の一種なのかもしれない。もしかしたら、空中に目玉があるのかも。 風景が多数を占めるこの絵は、しかし青年にとっては。 肖像画であった。 「うーん…期待……そうだね。」 「どちらかと言うと、諦められないだけかな。」 「一人でも、心から理解してくれる人がいてほしい。」 「そんな夢を諦められなくて、求めているだけ。」 「俺は君みたいに、何かに裏切られたような経験もないからね。」 風が吹いて、首筋に冷たさを感じた。 肌についた水滴を、指で拭った。 (234) 2022/02/23(Wed) 17:45:47 |
【赤】 美術 エノ『へぇ、やりたい事がないんだ。』 『意外だな。』 『だって、理由を付けて家族から離れたいくらい、一人暮らしがしたかったんだよね。』 『一人じゃないとしたい事が出来ないからだと思ってた。』 なにかをしたいから。 そのために一人暮らしがしたかったのだと、思っていた。 そうじゃないというなら。 家族と離れる事 そのものが理由だったのだろうか。果たしてそれは、どんな事情なのだろうか。 『ないよ。』 君の質問には、すぐに返信が来る。 『元から無かったんだ。よかった事、嬉しい事。』 『だから生き延びた後も当然なくて。』 『何もないまま、今日まで来ちゃったよ。』 『だから、まぁ』 『死んでた方が楽だったかも、とは少し思うね。』 1回目を生きて帰ってきたときの周りの反応も。 腫れ物を触るかのようで、今までもそうされてきたのだけれど。 より一層に距離を置かれたようで、寂しかった。 死が齎す負の感情より、生きて得る虚無の方が多い。 だから死ぬのが、怖くない。 そんな感じだ。 (*26) 2022/02/23(Wed) 17:57:17 |
【赤】 美術 エノ『何から?』 躊躇う事もなく、理解の刃を振るう。 その曖昧さを許さないとでも言うように。 理解のためなら、何も省みないとでも言うように。 ずけずけと、踏み入る。 死んでいたほうが良かった。 全く思わない人間は、相当幸せだ。 誰かを、間接的にとはいえ殺して生きることは。 心からそう言えないくらいの負担で。 最も、青年は。 あまりそこを悩んだりはしていないが。 『そうだね。』 『俺の唯一つの夢だから。』 『できれば叶えたいよ。死んだら敵わない。』 それもある種の、未練だろうか。 (*28) 2022/02/23(Wed) 18:28:01 |
【赤】 美術 エノ君の答えを聞く。 失った空白。代わりになれなかった。 推察できることはある。 なるほど、と一つ頷いた。 『そっか、残念だったね。』 淡白な返事、は、文章だから。 端末の向こうで、青年は一人部屋で。 恍惚の顔をしていた。 それは君の事情がどうとか、そういうのじゃなくて。 ただ、そう、君を一つ理解できたから。 衣服を一枚脱がすかのように、君の心を薄着にできたから。 それが嬉しくて、理解することと理解されることは紙一重だから。 部屋で一人、笑っていた。 『理解者と一緒に死んだらさ』 『そこで変化が止まるのかな。』 『だったらそれが一番だよね。』 そうありたいな。 (*31) 2022/02/23(Wed) 19:20:21 |
エノは、自室から、裁判場に向けて歩き出した。 (a108) 2022/02/23(Wed) 19:49:53 |
エノは、裁判場で、再び絵を描きだした。最初の時と同じように (a113) 2022/02/23(Wed) 20:36:25 |
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