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【雲】 三月ウサギきっと分からないだろう。 着る服すら満足に得られない、なんて。 そんな君と会うことを願ったのは俺なのに。 「 ………… 少なくとも。 その服の贈り主は、その金額に見合う価値を 君に対して感じたんだろう? 」 それがイコールで愛情とは結ばれないにしても。 望まれた存在であるというだけで。 その輝きは俺の心に影を作る。 (D5) 2021/07/07(Wed) 21:30:43 |
【雲】 三月ウサギきっと分からないだろう。 着る服すら満足に得られない、なんて。 そんな君と会うことを願ったのは俺なのに。 「 ………… 少なくとも。 その服の贈り主は、その金額に見合う価値を 君に対して感じたんだろう? 」 それがイコールで愛情と結ばれないにしても。 誰かに望まれた存在であるというだけで その輝きは俺の心に影を作る。 (D6) 2021/07/07(Wed) 21:48:35 |
【雲】 三月ウサギ先に顔を背けたのは俺なのに 自分とは違う足音が、半音だけずれて。 同じように絨毯に沈む音を背中で聞けば、 心の中で安堵した。 さらにその存在を裏付けるような可憐な声。 問いかけを受ければ、立ち止まって。 少し悩んでから。 劣等感に囚われた自身の思考を口にした。 「 ─── 俺は何も持ってない。 」 (D7) 2021/07/07(Wed) 21:49:41 |
【雲】 三月ウサギ…… 失態だ、と。 言った瞬間に強く思った。 明らかに、初対面の相手にする話ではない。 「 トト。 」 失言を取り繕うように話題を変えて。 互いに偽りの名乗りを済ませば、 同じく主人公ではない、その名前を呼んで。 揃いのキーを手に、 等しい数字が刻まれたドアの向こうへ。 (D9) 2021/07/07(Wed) 21:52:15 |
【雲】 三月ウサギどう贔屓目に見ても、自分の家より広い部屋。 あまりの絢爛さに、目眩でくらくらしたが。 一際目を引いたのは、奥に見える柔らかそうなベッド。 …… 二つあるなら 一つは自分が使ってもいいのだろう、多分。 ─── 彼女も、トトも会話を望んでくれるなら。 その体勢を作るべく、シーツの上に腰を落とす。 …… が、信じられない柔らかさ。 なんだこれ。俺の知っているベッドとは違う。 まるで身体が吸い込まれそうで、 怖くなって、慌てて腰を浮かした。 (D10) 2021/07/07(Wed) 21:53:25 |
【雲】 三月ウサギ「 ─── あのさ。 トトは、お金持ちの家に生まれて幸せ? 」 何食わぬ顔で、近くにあった椅子へと場所を移し。 トトの方も準備が整ったなら。 こちらから切り出したのは、こんな言葉から。** (D11) 2021/07/07(Wed) 21:54:36 |
【雲】 三月ウサギ「 ならトトは、価値がある人間なんだ。 」 それが教養か、学歴か、社会的地位か、人間性か。 定かではないけれど。 目の前の少女がその期待に応えたであろうこと。 疑わぬ口調で、断じると。 (D16) 2021/07/08(Thu) 12:06:24 |
【雲】 三月ウサギ身体を落ち着かせ、会話の姿勢を整え、 更にトトと自分の価値観の相違を理解すれば。 劣等感を抑えることは叶わずとも 最初よりは幾分か穏やかに、 言葉を紡ぐこともできただろう。 こちらとは重ならない瞳。 隣でも、向かい合うでもない。 他人同士の距離のまま、俺達は会話を続ける。 (D18) 2021/07/08(Thu) 12:07:17 |
【雲】 三月ウサギ「 …… 俺が持っていると思っていたものは、 俺のものではなかった。 そうだね。 世の中にはお金で買えるものは多い。 お金があれば、明日の心配をしなくて済む。 弟と妹にも美味しいものを食べさせられる。 惨めな思いもしなくていい。 でも ─── 」 トトの問いに、首を横に振る。 彼女と話すことによって引き出されていく感情。 それを整理し、筋道立てて言葉にすることは まだできなかったけど。 (D19) 2021/07/08(Thu) 12:07:26 |
【雲】 三月ウサギ「 俺は結局、ひとりだったから。 」 十分ではない回答を終えたなら。 自身の言葉を休めて、トトの様子を伺った。 おそらく着る服にも、 食べる物にも困ったことがないだろう美しい少女。 誰よりも幸せに近い場所にいるように見える彼女が それを理解できない理由を求めるように。** (D20) 2021/07/08(Thu) 12:11:54 |
【雲】 三月ウサギ「 ………。 そうだね。俺も同意見だよ。 」 …… トトのマッチング希望。 そこに俺が選ばれる理由。 思い当たるとしたら。 ここにいるのは、単なるひとりとひとり。 見てきた世界も、生きていた世界も別の色。 そこに共感なんか生まれるはずもなく。 (D28) 2021/07/08(Thu) 22:09:20 |
【雲】 三月ウサギ最後まで呼ぶことは叶わず。 紅茶を淹れるために立つ背だけを見つめ。 やがて彼女の手元、陶器の中で ゆっくりと茶葉が広がると同時に。 芳醇な香りが室内を満たす。 やがて戻ってきた彼女は、 再び重ならない点と点で。 これまで飲んだ中で、間違いなく 最も高価であろうドリンクを前に置いた。 (D31) 2021/07/08(Thu) 22:10:43 |
【雲】 三月ウサギこくん、カップを傾けて。 正直なところ味をきちんと理解できているか よくわからないままに。 自身の喉を湿らせ、言葉の通りをよくする。 ああ、でも誕生日は知っているな。 自身が劣等感に苛まれている相手のこと。 驚くほど何も知らないこと、 そんな相手に執着にも似た思いを抱えた自分に くつりと皮肉に笑ってから。 こほん、小さな咳払いを挟んで。 ひとつの提案をする。 (D33) 2021/07/08(Thu) 22:12:38 |
【雲】 三月ウサギ別に、ひとりだと言う彼女に 共感や同情をしたわけではない。 お金、価値を与えてくれる人間。 俺が欲しいものを持っているだろう、トト。 その心を満たすものが何か興味があった。 ただ、それだけのはず。** (D35) 2021/07/08(Thu) 22:15:01 |
【雲】 三月ウサギ「 …… 両親? そうだね。 彼らは、彼女を知っていたはずだった。 」 意図したよりも冷たい声が出た。 しかし吐いた言葉を飲み込む気も 取り繕う気にもなれなくて。 そう。知っていて手を貸したんだ。 目先の金目当てで。 あんな愚かしい行為に ───。 (D42) 2021/07/09(Fri) 20:27:31 |
【雲】 三月ウサギそれでも申し訳ないという感情は沸く。 すぅと吸い込んだ息を吐き、心を落ち着かせた。 自分は、ぶつける相手を間違えている。 だって彼女は、トトは。 ・・・・・・・・・・・・ なんの関係もないのだから ───。 (D43) 2021/07/09(Fri) 20:28:14 |
【雲】 三月ウサギ「 …… 単なる、興味本位だよ。 君みたいな、僕から見れば 最初から満たされているような人間が。 なおかつ幸福を得られるようなもの。 それがどんなものか、知りたくなった。 」 だから見つかるかどうかはわからないけど。 時間潰しくらいにはなるだろう?と。 一夜を共に過ごす相手に向けるには、 ロマンの欠片もない台詞で誘って。 (D44) 2021/07/09(Fri) 20:28:41 |
【雲】 三月ウサギだから俺の幸せで計ったところで。 どう考えても、物差しが足りないだろうけど。 言い出しっぺの自覚はあるから。 トトの問いかけには、ぱちりと瞳を瞬かせ、 それから沈黙をお供に思案する。 幸せだと感じるもの。 お腹がいっぱいになるご飯。 働かなくても勉強できる環境。 貧乏だからと、指をさして笑われない ─── (D45) 2021/07/09(Fri) 20:29:06 |
【秘】 三月ウサギ → トト「 …… 贅沢は言わない。 たったひとりでいい。 誰かに、人の代わりではない。 ─── “俺”を必要としてほしい。 」 (-53) 2021/07/09(Fri) 20:30:43 |
【雲】 三月ウサギ喉を伝い、空気を振るうのは 頭の中で並べていた、どの言葉とも別のもの。 胸の底から込み上がる想い。 俺にとっての、しあわせの形。 吐き出すように零したら、 そのまま手にしたカップを傾ける。 少しだけ冷めた紅茶は飲みやすくて。 先程はよくわからなかった 茶葉の風味を教えてくれた気がした。** (D46) 2021/07/09(Fri) 20:31:10 |
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