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【人】 雷鳴 バット朝の陽を受け、水面はきらきらと輝いている。 早々に食堂での食事を終えると、中庭の噴水の端っこに座り込んだ。 しんと静まり返った中庭は吹き付ける風も冷たく、食堂より過ごしやすいとはいえない。 持ち出した食事を口に運びながらぼうっと、昨日今日の変化を思っていた。 (0) 2022/04/30(Sat) 21:44:01 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ「一緒に過ごして、お世話になって」 「頑張ってるなって人の行く先が」 「よいものであってほしいと、思うのは、だめ?」 それを特別と呼ぶかどうかは、人によって違うものなのだろう。 頼る頼らぬに関わらず、青年は貴方を大切に思っているのは確かだ。 「頑張るのは」「当たり前じゃないよ」 「人生を費やすのは」「大変なこと」 「ツキも僕が勉強を頑張れば、えらいと言う」 「それとおんなじことだから、褒められて、いいんだよ」 布団を掛けた貴方の背中のあたりを介抱するように撫でるのは、 あんまりよろしくないことなんだろうか。 ほとんどふかふかの感触しかないから、互いに人の気配は感じられないだろうけど。 まだ稚気の見え隠れする顔貌は励ますような柔らかい声を落とす。 五歳も年下の子供がそうするのは、生意気だと思われてしまうかな。 貴方が同じ高等部にあった頃まだ小等部に身をおいていた青年は、 その肩に乗っている重圧がどれだけのものかなんてのは、知らないのだ。 まどろむような時間は、いつまでということもなくとろとろと終わる。 夜まで、貴方が職務についている間はそこにあったかもしれないけれど、 夕餉を過ぎてふと気づいた頃には、やっぱりどうしても青年の姿はなく、 きっとあの森の奥深くに、身を潜めてしまった後なのだろう。 (-41) 2022/05/01(Sun) 2:17:34 |
バットは、早い内に食堂を抜け出てしまっていたから。同じように抜け出る姿があれば目撃くらいはしていたのだろう。 (a7) 2022/05/01(Sun) 2:19:15 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキそして。 約束していた次の日のいつか、貴方の都合のいい頃に。 青年はきちんと、貴方の問いに応えるために自室に控えているだろう。 けれど、"何か"が彼の手を引くようだから。 夜、ひいては深夜から更に次の昼に至るまでは、それには応えられない。 それでも決して約束を違えるつもりなんてのは、ない。 いつもと同じように、花とドライフルーツをブレンドしたお茶をもらってきて、 落ち着いて話す時間をつくるために、最善は尽くすつもりなのだ。 (-45) 2022/05/01(Sun) 3:08:00 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス低く視界の外にある気配、けれど青年は慣れ親しんだもののよう。 きちんと貴方の接近に気づいて目を向ける位置を下げて、 ぼんやりとしたような表情にちょっとだけ笑みを乗せた。 「どうしたの」「僕に用事?」 「だいじょうぶ、付き合うよ」 何の用事かも聞いていないうちに、二つ返事に貴方についていく。 どんな用事であったとしても、貴方の誘いを断わったりなんてはしやしないけど。 (-47) 2022/05/01(Sun) 3:37:31 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス晴れ晴れとした日の降り注ぐ庭が暖かな印象を受ける。 ぽかぽかと黒い衣服に陽光を受け続ければ服の下の空気もあったまって、 ちょっとだけ眠気さえ誘いそうな様相だ。 貴方に倣ってベンチに座ってから、問いかけがあるのを待つ。 黒板に刻まれていく文章が指す意味を少しだけ考えるような間があって。 「……それは」 「"どの"」「病気の話?」 「治したい」「けど、治るかわからないものもある」 「治ったなら、いいけれど」「治るとなにがいいのか、わからない」 哲学じみて受け取られそうな問答は、単に言葉を扱うのが不得手だからだ。 漠然としたものを掲げるような言い回しは、貴方の問いへの答えになっているだろうか。 困ったように下がった眉は、何に対して困っているのだろう。 (-69) 2022/05/01(Sun) 13:34:06 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ備え付け、或いは青年が貴方に用意した椅子は、 背もたれから肘掛けにかけて毛布がかかっている。 万一の時に運びやすいように、一人の時に倒れても頭を打たないように。 そうした小さな積み重ねを貴方が受け取るかどうかは別の話。 こくりと頷いて、貴方が用意した時間へと青年も都合を合わせる。 受け取った紙をじっと見下ろして、さらさらと書き進める。 ・森で怪我はしていますか?……N ・普段から森へと向かう理由を教えてくれませんか?……N ・何か悩みを持っていますか?…… 途中でふ、と顔を上げた。 困っているみたいに言葉を探して拾い集めて、貴方に問いかける。 「なんでもいい?」「病気に関わるかわからない」 「僕は継父母が僕の"何を"問題にして」 「ここに連れてきたのか知らない」 「いつもよく眠れなくて、授業中に眠いことも」 朝、森から帰ってきたのだろう青年はいつも寝起きが悪くて眠そうで、 埋め合わせをするように夕日の内は飼育小屋の近くでうとうととしている。 時折、教員から注意を受けることもあった。 成績についても含め、おとなしい彼はしかし模範的な生徒ではなかった。 貴方と同室になったのはいつからだったか、 さておきそうした行動の是正についても、ひょっとすると期待されていたのかもしれない。 (-71) 2022/05/01(Sun) 14:01:27 |
【秘】 雷鳴 バット → 充溢 バレンタイン「バレンタイン」 ひとつ上、比較的年の頃の変わらないほうの上級生が貴方に声をかけたのは、 夕方から夜へと色を変える頃だった。 少しだけ寝癖がついて非対称になっている髪を見るに、 どこかで眠っていたのかもしれない。声も少しだけ、抑揚がいつもよりもない。 「ジャステシアのこと、気になる?」 「僕もなにか手がかりがないかと思って」 「 ……森なら僕もよく行くから 」「探す?」ジャステシアは昼の内には生徒の群れに戻ってきたか、もしくはまだ姿を見せていないのか。 そうした状況で彼女の身を案じる貴方を見て、声を掛けてきたのだろう。 もしも帰ってきたあとだとしても、どうしていなくなったのかは判明していない。 解決していない自体に対しての働きかけをしたいか、と聞きたいらしかった。 (-73) 2022/05/01(Sun) 14:25:27 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス少しだけ目を丸くして、それからまたやっぱり困ってしまった。 少なくともこの問答を経て、或いは普段の生活を経て。 貴方を傷つけたかったり苦しめたかったりするわけではないのだ。 「ラピスは……」 言葉を選ぶ。言葉少なな物言いはいつも誤解を生みがちだ。 なるべくそうならないように、自分の中で織り込んでいく。 外の世界に望むもの。 育ちきった自身のかたちに望むもの。 答えるには、きっと青年と貴方では見えているものが違うのだ。 ひどく遠回りに、その差異を埋めようと頭を回している。 「お父さんとお母さんのこと、好き?」 「大きくなったら、何になりたい?」 質問を質問で返したなら、しょうがないと思われてしまうかな。 けれども今は、貴方の言葉を聞いてから話がしたかった。 (-77) 2022/05/01(Sun) 14:49:34 |
【秘】 雷鳴 バット → 充溢 バレンタイン「ごめん」「僕が、気にしないから」 「ひとにも同じこと押し付けた?」 貴方の言葉を受けて最初に顔に浮かんだのは、ばつの悪そうなそれだ。 こうした周囲との"ずれ"自体はよくあることなのだろう。 相手との応答から感知することは出来ても、どうにも。 自分で事前に気を回してやるということは、青年には難しいようだった。 「もし一緒に探すなら」「今日じゃなくても」「夜に森に来て」 「僕はいつも森にいるから……」 同じ部屋、或いは彼の動向を見ているもののいくらかは、 いつも彼が夜に部屋を抜け出すことを知っている。 貴方もひょっとすると年が近いから、そうした動きに気づいていたかもしれないし、 貴方の既往歴からするに他人の隠し事にはあまり気が回らなかったかもしれない。 ともかく、貴方の都合のよい時にと曖昧な約束を取り付けた。 「みんな帰ってきたら、いいのに」 (-80) 2022/05/01(Sun) 15:48:17 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス「ラピスは」「大人だね」 愛されて、艷やかで。白色のりんごみたいにほころんだ頬。 果実に挟まれた花びらみたいな唇が言葉を発さず、表情だけを作るのを見ている。 檸檬の枝のように細い指を今更、黒い指がきゅうと一本だけ絡めた。 「僕は帰っても」「居場所はない」 「僕は"病気のこども"らしい」「だからここにいる」 「でもみんなは」「病気だけど、"病気のこども"じゃない……」 誰かに言われた言葉をなぞるような言い回しには明らかに侮蔑が混じっていた。 青年が抱いたのではない、誰かが青年に向けたもののトレースだ。 溌剌とした子どもたちの様子は、青年の目にはどんなふうに映っているのだろう。 「治ったら」「僕はどこにいくんだろう」 「僕は僕の」「病気が治るとなにがいいのか、わからない」 「僕の病気が治ったら」「僕は"病気のこども"じゃなくなるのかな」 答えのない問いを重ねる行いは、貴方を傷つけてしまうだろうか。 ひどく迂遠に回り道をした堂々巡りの問いかけは、貴方への答えになっているだろうか。 貴方が青年だったなら、自分の病気を治したいと思うこと、 自分の病気を治すということがどういう結果へ繋がる行いなのかがきちんとわかるのだろうか。 (-86) 2022/05/01(Sun) 16:34:26 |
バットは、"病気の"こどもたちが遠くで笑い合う様子を眩しそうに見つめている。 (a16) 2022/05/01(Sun) 16:37:35 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ「うん」「そうなんだって知った」 「ここはどこかに傷のある子どもを」「治してあげる場所」 ギムナジウムはどんな場所なのか。貴方の口を通して噛み砕かれて。 元あった認識とまじり、それが何かというのはきちんと理解された。 おそらくは大きく違えているわけではない、その背後に何があるとしても。 病や心の瑕疵に対するアプローチは確かに成されているはずなのだ。 「そう……」「ツキにも、心配させてる」 「でも僕は」「夜の方がうまく身体が動くから」 「上手く寝られないと」「うるさくしてしまうし」 まごつくような言い回し。決して困らせるために問題行動をしているのではないと。 けれども現状貴方の悩みのタネの一つとなっているのだから、それは詭弁だ。 弱々しい反論は、本当は自分の行動は良いものではないというのがわかっているから。 しゅんとしたように大きな体は肩を下げて、普段よりも小さくなったように見える。 貴方の言っていることは優しいし、正しいものなのだ。 それから。貴方への問いには随分時間をかけて答えた。 言うべきか迷ったふうではあった。これもまた、Noと答えてしまえばよかったかも。 けれどちらちらと貴方の目を盗み見て、反応を伺って。 たっぷりと時間を掛けた後に、青年は答えた。 → (-112) 2022/05/01(Sun) 19:59:53 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ「僕がいると」「空気が悪くなる」 「眠れずにいるのが」「もぞもぞうるさい」「鬱陶しい」 「昼間は働け」「役立たず」「"病気のこども"を引き受けるんじゃなかった」 並べられた言葉は、"彼らが以前言っていた言葉"だ。 写しのように並べられた言い回しにはたっぷりの悪意が含まれていた。 青年のものではない誰かの感情は、決して子供に向けるものではない。 青年がギムナジウムにやってきたのは小等部の頃、五年以上前の話だ。 当然それ以降、家族らしき人々と顔を合わせたことというのは、無い。 「僕がここにいるのは"病気のこども"だから」 「みんなは、"病気の"子供」「違うものなのは、ここに来て知った」 「僕は"病気の""病気のこども"なのかな」 (-113) 2022/05/01(Sun) 20:00:14 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクスまだ朝日の眩しさが昼に成り切らない頃、だろうか。 持ち出した食べ物をこっそりと口に運んでいた青年は、 声をかけられた肩を大きく震わせた。まるで隠し事があるように。 さっと手元を隠して、食べかけのそれらをナフキンの内側にしまい込んでいる。 どうやらいつも、食堂でちょっとだけ食べたふりをした後。 誰もいない場所に本命の食事を持っていっては、こそこそと続きをしているらしかった。 「フィウクス……」 いかにもばつの悪そうな顔と声で貴方に答える。 何をしている、という問いに対しての明確な答えはなかった。 気弱な態度は大きな図体とは相反したものに見えるだろう。 青年よりも年上の貴方は、ひょっとするとそういう仕草を見るのは初めてではないかもしれない。 何人かがそうしているのと同じく、バットは食堂であまり食事を採らない様子だった。 (-115) 2022/05/01(Sun) 20:05:54 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピスふたつ布を挟んだ指の温度はほとんど感じられない。 けれどもその下にあるものが温かなものだと青年は知っている。 或いは、きっとそうだろうと思い込んでいるだけなのだろうか。 「ラピスが僕の居場所になるのは」 「……うれしい、けど……」 はにかむような柔らかい表情が顔貌に浮かんだのは一瞬だけ。 大きな体、強い力。それに全く見合わない頼りない筋肉の動きが、 ほんのちょっとだけ指先を曲げただけで、縋りつくのは終わってしまう。 沈黙。頭の中を整理する時間。青年は頭の回りが早い方ではない。 貴方に勉強を教えてもらっているときもいつもそうだ。 きっと教えてもらっている時間より、それを噛み砕こうと待たせている時間の方が長い。 「ラピスは先生になる」「僕は」「僕の病気は……」 「ひとつは、頭の病気だから」「一緒にいけないよ」 軽度の精神遅滞がある、と。 教師群は青年の病状について、結論付けていた。 (-116) 2022/05/01(Sun) 20:13:53 |
【秘】 雷鳴 バット → 充溢 バレンタイン「僕は夜は眠くない」「だから」 「そうじゃないバレンタインは」「大変かも……」 「……来てくれると嬉しい」 無理をさせているな、というのはきちんとわかってはいるようだ。 だからこれはあくまで貴方の都合のよい時、そうしたい時。 いつまでだって、青年の方は待てる話。無理になんては、言わないこと。 申し出が貴方の行動を強制してしまわないようにと、拙い言葉を重ねた。 「わかった、それじゃ」 「都合の良い時に声を掛けて」 「……」 しばし、突っ立ったままで沈黙する。不安にさせてしまったかもしれない。 途切れた会話を繋ぐのは不確かな思案だ。ただの勘違いかもしれない。 だから思い当たる節が無いのであれば、聞き流していい話だ。 「もし近いものを」「抱えていたら」 「それも、力になれるかも」 指先まで隠れた指を口元に当てて、同じように考え込んだ。 申し出はそれまで。思い過ごしなら、それでよい話だ。 改めて、また都合の良い時にと。言い残して青年はその場から踵を返す。 (-118) 2022/05/01(Sun) 20:20:38 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス小さな貴方を慈しむ時間は、優しい。 大きな貴方を仰ぐ時間は、心地よい。 それが何かと重なるのであれば、きっと―― 絡んだ指に返すように掬い上げて、力を掛け返す。 潰してしまわないように柔く包むだけ、黒い指が重なるだけ。 けれども決して貴方を拒絶したいわけではないのだと、 この距離感を大切にしていることは決して嘘偽りではないのだ。 「……それは」「違う理由」 「ラピスが心配すること」「じゃ、ないよ」 小さな貴方は青年よりもずっとしっかりしていた年上だ。 だから言葉でそうして遮ったところで無理からぬことなのだろう。 ごまかすように肩を寄せて、ほんのすこしだけ体重を預けた。 「病気を治すこと」「あんまり考えてなかったな」 「いつか、どうすればいいのかなんて」「なんにも思いつかなかった」 「……ラピスの疑問に」「うまく答えられた?」 (-210) 2022/05/02(Mon) 19:19:31 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキどうだろう、或いは適切な治療なんてのは誰にも出来なかったのかもしれない。 ギムナジウムは万能ではない。無能でもない。決して実績がないわけではない。 それでも出来ることに限りはあるものだ。 人間の頭にはどうしたって測り間違いがあるものなのだから。 ぱち、ぱちと目を瞬かせたのは貴方の言葉に驚いたからなのかもしれない。 自分の意見がそんなふうな貴方の態度を引き出すことになるだなんて、 青年のほうは少しも思いはしなかったのだろう。 ちょっとだけ怯んだ様子なのは、自分の状況を意識的には酷だと思っていなかったからだろう。 無意識的には悲鳴をあげているからにこそ、こうして挙げたのだろうけど。 「……」「ごめん」 「困らせたかったわけじゃ」「なくて」 「そういうことが」「知りたいのかと、思った」 青年の拙い頭でどれだけ貴方の言葉と、その裏にある想像を理解できたか、 それは青年自身にもはかれないことではあるけれど。 話せないことがあるのを加味した上で、貴方の伸べる手に答えたかった。 頷いて、きちんと確かに貴方の目を見る。 「わかった」「少し、考えてみる」 「全部聞くことは出来ないだろうけど」 「ツキが俺に掛けてくれる言葉とか」「気持ちとか」 「ちゃんと受け止めて」「返せたらいいと思うから」 ころ、と傾いだ頭は貴方の手の中に収まるように。 高いところに据わった重しを、果実の落ちるように預けてみた。 (-218) 2022/05/02(Mon) 20:10:54 |
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