情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
【独】 歌い続ける カンターミネ突如、混沌とした警察署内に、署内放送が響き渡る。 外の花火に続いて。それは業務連絡でも、上司からの叱咤でも、 内部告発でも、誰かの怒号でも悲鳴でもない。 力強く、軽やかなドラムの鼓動。 スネアドラムとシンバルが手を取って奏でる前奏。 貫くように、踊るサックスの音色。 トロンボーンと共に、身体が勝手に動くようなリズムを。 それらが合わさり、高まり、渦巻いていく中、 楽器のCD音源とは違う、『生の声』が叫ぶ。 聞き覚えのある者はいるだろうか?いるとしたなら、 『ライムグリーン』の髪色を思い出す事だろう。 《"Hey!Pachuco!"》 その声を合図に、署内放送の音量が最大に切り替わった。 牢の隅から隅まで。尋問室まで。 警察署内の全てに響く、バカ騒ぎのジャズの音。 この曲が流れた映画では、緑色の顔の怪人が暴れに暴れた。 仮面をつけたが最後、誰にも止められないという。 (-0) 2023/09/26(Tue) 22:00:27 |
【独】 歌い続ける カンターミネ《"Hey!Pachuco!"》《HEY!》《HEY!》 合いの手を、叫ぶ。楽しげに。同時に、署内の固定電話が 一斉に鳴り響く。受話器の先からは同じ音楽が流れて来る。 気が狂いそうな程、一瞬で深夜の警察署は騒がしくなった。 いつもの笑みがマイクの向こうに見える。 仮面ならぬ、端末を手に入れた先生は誰にも止められない。 三度、ループ処理された曲が叫ぶ。 《"Hey!Pachuco!"》 今度は、署の外で異変が起きた。 一斉に鳴り響く、耳をつんざくクラクションの音! パー、パー、パー!ファンファンファンファン!プーーーーーーーー!!ビッビー!ビッビー!! 近所の車という車が、警報音を発し始めたのだ。 静かに寝ているのは、古い時代のアンティーク品。 機械が入っていないタイプの昔の車だけ。 《"Hey!Pachuco!"》《HEY!》《HEY!》 それは勿論、警察署地下の悪ガキ達から押収した 改造車も含まれる。一般車なんか目じゃない、 バカみたいな音が地獄の底から響き渡った。パパパパパー! 近代の手が入った車達が、カーステレオを全開に。 夜中に突然歌い出す。近所中の灯りが付き、 怒号が警察署の方面へと投げかけられる。 釈放されている者以外の、立派に『証拠』の残る者も。 騒ぎに乗じて逃れる事が出来る、かもしれない。この、『先生』のように。 (-1) 2023/09/26(Tue) 22:01:25 |
【人】 歌い続ける カンターミネ「"Hey!Pachuco!" HEY! HEY!」 携帯端末を握って叫ぶ。寝てる奴が居ても叩き起こせ。 どうせここから先は大騒ぎの時間だ。 「……さーて、そろそろ誰かは動くだろ。 スマートキーハッキングしてーっと。 1、2台外壁に突っ込ませとくか。HEY!」 ドン!ドン!ドラムの音に合わせて、 それなりに高級な車が外壁に突っ込んだ。 「しばらくはこれでいい。あとは…… あーった。俺のク・ス・リ! ……あの変態メガネ野郎め、"本物"をくれてやろうかな。 ま、どうせしばらくは潜伏しなきゃいけないしな……」 呟くと、適当な無線機と知らん警官の端末を ダクトテープでぐるぐる巻きに。 曲のリピート設定をONにして、隠しておいて。 これが発覚する頃には、すっかり『先生』は 署内のどこかに隠れて消えてしまうのだった。 (16) 2023/09/26(Tue) 22:25:31 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 門を潜り ダヴィード大騒ぎの中で、あなたの端末が鳴る。 それを確認するのはいつになるかはわからないけど。 数件のメッセージが立て続けに入っていた。 それは前日に送ったものへの返信だ。 『故郷の母ちゃんか子供みたいな文章だなおい』 『怪我:ある 痛み:寝て忘れた 休み:しばらく取れない ご飯:臭いメシ飽きた 野菜:気が向いたら』 『歌はな、警察署で凄いのが聞けたぞ。 近くにいたら面白かっただろうに。 帰れるかは……まだちょっとわからんな。 やる事が残ってるから、俺も残ってるんだ』 『ま、帰れたら遊んでやろう。 なんたって俺は「先生」だからな』 メッセージはそう締めくくられる。 どうやら、口の叩き方からして元気らしい事は伝わるだろう。 (-10) 2023/09/27(Wed) 13:21:38 |
【独】 歌い続ける カンターミネとあるひとりの女性警官が姿を消した。 バカ騒ぎの中で消え去ったひとりの姿は、 喧騒の内にうやむやになり。 ある者は出ていった者達が抱えていった、 それも下着以外の全てを剥かれて、なんてことを口にしたが。 結局それも噂の内。今必要なのは人手でしかないから、 そんな噂もやがて消え失せてしまった。 「お疲れ様で〜す」 巡回の警官が笑いながらすれ違う。 ……あんな奴居たか?そう疑問を持った者もまた、 やがて忙殺に思考をもみ消された。 なにせ特徴の薄い警官だったから。 長くも短くもない茶髪が揺れる、小柄な警官だったから。 これは、どこかで事が動き始める前の事。 準備を始めた、『ケーサツ』の話。 鼻歌混じりに廊下を歩き、消えた人間のデスクを漁り。 書類を書き込むと、ポケットに捻じ込んで、 また署内のどこかへと姿を消した。 (-37) 2023/09/27(Wed) 21:02:45 |
カンターミネは、情報チームに連絡した。もうすぐ帰る予定だ、と。 (a11) 2023/09/27(Wed) 21:06:16 |
【独】 歌い続ける カンターミネ署内のどこかで『ケーサツ』の端末が震える。 取り出し見ればその場で仰け反るような文字が踊っていた。 「勘弁してよオッサン……なにしてんの……?」 思わず"素"が出た。こほん、と咳払いひとつ、 周囲に人影がないのを確認して高速で返事を飛ばす。 『他の連中には内密にして探し出せ』 《えっ?連携を取った方がいいのでは》 『殺すならそうだが、俺はまだ用があるんだよ。 指揮権も貰ってるし、港から最新の空撮ドローンを かっぱらってこい。熱源探知機能付いてる奴な。 それからチームルームに下水道の地図があったろ。 あの辺揃えてB4倉庫で開始しろ。 俺以外の誰にも知らせんなよ』 《しかし……》 『あ〜なんかうろ覚えだけど、確か港には 新型のグラボがどっかに運び込まれてた気がするなあ。 それはさておき、いい働きを見せた奴の手元には 幸運が転がり込むらしいって昔から言うんだよな〜』 《イエスマム》 『よろしい。他の連中に先を越されるな。 俺の直属情報チームの実力、見せてみろ』 そして端末を閉じる。 「始めよう」 警帽を深く被り直すと、『ケーサツ』は歩き始めた。早足に。 (-97) 2023/09/28(Thu) 17:14:53 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-100 ごつ、ごつ、ごつ。巡回の重いブーツの音がする。 それを履いた茶髪の ウィッグを被った 『ケーサツ』は、あなたの牢の前で止まった。本当なら、もう少し気の利いた声でもかけるつもりだった。 或いはおふざけの気配を纏わせて元気づけるつもりだった。 そこにある光景は、それらを忘れさせるのに充分過ぎた。 今この場にあのイレネオが居たら。もし、牢の中に彼が立っていたなら、間違いなくカンターミネは彼がやったと決めつけて、全力を賭して殺しただろう。 それくらい、その尋問の跡は慣れ親しんだ者にとってはまだ、『甘かった』。だからといって状態に安心する光景ではまったくないが。 鍵束を出す音が聞こえる。内1本が扉に挿される音が聞こえる。 少し古い牢の扉が軋みながら開いて、ごつ、ごつ、ごつ。 近付くにつれて、喉が詰まる。声の代わりにポケットから紙を取り出し広げて見せた。それは犯罪者の移送依頼書だ。 当然、偽造された。 「……、」 用意した言葉が出てこない。覚悟はしていたはずだが、 それでも足りていなかったらしい。 少しの間の無言の後で、やっと声を出した。 「…… ん゛んッ 、ダニエラ・エーコ。お前の隠し持つ情報に関して、より上位の機関による精査を行うべきだとの進言があった。よって、三日月島刑務所までの移送を行う。……。移送車までの私語は厳禁だ。また、……」 少し気取ったような声。それも途切れ途切れに。そして、 「あー、やめた。迎えに来たぜ、お姫様。」 いつもの声でそう告げた。 (-102) 2023/09/28(Thu) 19:01:57 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-104 「おぁぇ」 そんな間抜けな声が出たのは『努力』を見たからで。 変装の意味がなくなる、慌てて抱きとめるような格好に。 流れる涙にこれまた慌てて、偽造書類を取り落とし、 茶髪のウィッグを揺らしながら辺りを窺う。 「あ、え、エリー、ごめんて、遅れたのは謝るって。巡回ルートの把握と監視カメラの細工に手間取ったの。でもほら、来たから。ちゃんと来たろ?な?後もう車で外出るだけでこの場はクリアだから、な?安心してくれって。あ、あれか!?い、痛かったか!?」 慌てたおかげで勘違いも甚だしく、息つく間もなく 口を動かしながらわたわたと身振り手振り。 それでもなんとか痛くないだろう場所を探し触れ、寄って。 「……え、えっとな、後はもう、偽造書類とかあるし、 このまま護送車で脱出するだけだから。 運転手も用意してあるから、手当はそこで――」 ふと、目についた。約束の証がない指。 触れれば当然痛いだろうから、そこには触れないように。 そっと手を取って、ほんの僅か唇を落とす。 「――今はこれで我慢して。生えたらまた、塗らせてよ」 そうして、瞳を目前に。指先で慎重に涙を拭う。 これ以上余計に傷つけないように。 酷な事に、まだやる事は残っている。 まだ止まれない。まだ終わってない。まだ、まだだ。 でも、この一瞬だけでも、安堵を抱かせてやってほしい。 それが、多分俺が任された事だ。あの男から。 (-109) 2023/09/28(Thu) 20:45:29 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-128 「……後でたっぷり泣いてもらうぞ、その口も素直に してやる。カンターミネ式尋問術、ピヨピヨ口の刑だ」 おどけて笑う。 わかってるから。 「正直言って、外はっていうか全部の状況がかなーりヤバい。 が、今説明するのはエリーの心などがもっとヤバいから、 後で手当しながら言う。いいな?よし、行こうぜ」 こほんと咳ばらいをひとつ、書類を改めて拾い上げ。 「……結構。常にそう従順であってもらいたいものだ」 今度は気取って、小柄なケーサツが先導する。やがて辿り着いた駐車場では、改造車が未だ喧しくアラームだのクラクションだのを響かせ続けて、その対応に追われる者が殆どだった。 おかげで記帳係を見つけるのに少し手間取ったが、 ともあれ護送車を一台手配して、あなたを護送席に、自身を運転席に。 「さて。ドライバーの所までちょっと我慢してくれよ!」 ちなみにケーサツの方は運転があまり得意ではない。 車は揺れに揺れたし、敷地から出る際門柱に車体を擦ったが、 丁度その辺りで運転手らしき男がやってきた。 「御苦労マリオ。悪いね、運転は苦手で。交代だ。 俺は後ろで見張るから、一先ず西ルートで走ってくれ」 (1/2) (-131) 2023/09/28(Thu) 23:09:43 |
【独】 歌い続ける カンターミネ>>-128 >>-131 「場合によっては後で車を変えるが、とりあえず 手当から……つっても湿布と軟膏、 あと俺製の鎮痛剤くらいしかないけど。 爪は……まあ持ってる訳ないよな、 普通に被覆材使って応急手当にしとくか……」 そんな感じで、あなたの隣に寄り添って。 いそいそ、せかせかと傷を見ていく。 勿論運転手が覗けないように事前にカーテンはした。 頬にはアイシング。痛みが酷ければ鎮痛剤。 肩はどうしたもんかと思いながらも、 軟膏タイプの麻酔で一時的に痛みを引かせるだろうか。 「さて、改めて。 おかえり、エリー。 待たせてごめん。そんでごめんついでに、もう一個ごめんがある。 この後色々やる事がある。多分エリーにも来てもらう。 質問と泣きごとと愛とかまあその他なんでも聞くし、 疲れてるなら寝てもいい。数時間は余裕あるはずだし」 とりあえず一旦落ち着ける状況にはなったようだ。 聞ける限り聞いてもいいし、抱き着けるだけ抱き着いてもいいし、心配させやがってとパンチの一発をいれてもいい。 カンターミネは、傍に居る。 (2/2) (-132) 2023/09/28(Thu) 23:19:59 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ>>-140 >>-141 「うん、」「おかえり」 何度言ったって別にいいはずだ。この先何度だって言う訳だし。 そうしてしなだれかかる貴女を、当然のように受け止めて。 その背に手を回して、二度、三度軽く叩く。あやす様に。 ウィッグ、結構高いんだけどなあ、なんて考えは いつもなら口からからかうように出てたけど、今日はナシだ。 「……。」 温めるように、背中を擦る。昇った指を髪に沈めた。 尋問の形跡か、少しべとついたのを構わず、指で梳く。 「ん」 ほんのり上がる口角に、ばさりと揺れ落ちるライムグリーン。 解放された微かな汗のにおいが一瞬漂った。 髪から耳を、耳から頬を。腫れてない頬に指が流れる。 「……二度としない。だから、エリーも俺の傍から離れないでくれ」 囁く。真っ直ぐにミントグリーンを見つめ返す。 殆ど距離のない位置で、呼気を絡ませている。 ――王子様の瞳にも、今は波が立つのが見えるはずだ。 その多くは喜びで、幸せで。だが他が0とは、言えなかった。 それでもせめて、この子の前では、他の全ては塗り潰そう。 この先にある大きなものに対して、少しでも…… 約束通りに俺が支えて、約束通りに心を守る為に。 (-143) 2023/09/29(Fri) 0:44:54 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「―――」 1度2度。それから深く。深く……。 本音を言えば。永遠にこうしていたい。 薄汚れた痕を塗り潰して、 だけど……少なくとも、今はまだ、だめだ。これは、手当て。 この後に立ち向かう為の準備だから。 それでも求められる限り応え、何度だって撫でる。 だって、それだけ頑張ったんだ。少しは報われるべきだろ? 俺も一緒にさ。 やがて。強ばった声を聞けば、もう一度だけ唇で触れる。 顔を離せば、その目に僅かに迷いを乗せ、静かに目を瞑って。 開いた時には、迷いは消えていた。 (-198) 2023/09/29(Fri) 17:43:54 |
カンターミネは、口にする。「エリー、」その名前を呼ぶ時は、いつだって。 (a16) 2023/09/29(Fri) 17:44:26 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「俺は現場は見てないからチームからの報告書だ。あー、 まず、ノッテファミリーのアジトでスーツケースが 爆発したらしい。中身は花火で、けが人はナシ。その直後、 ……現れたアレっさんが、突然襲撃をかけた。単独で、だ。 現場にいた5名に重軽傷を負わせた、命に別状はなし。 そして直後アジト内に仕掛けた5つの爆弾を起爆。 爆破によるけが人はないが、建物と設備が それなりに被害を受けた。当人はそのまま逃走、 下水道に逃げ込んで以後行方を晦ませている……」 傍らに置かれていた二人分の着替え、 その片方のポケットから報告書を取り出して差し出す。 「……上からの指示としては『報復』だそうだ。 その、……今回の法案の件にも関わりがあるから、ってな」 これは、あなたを案ずるように言葉を少し暈した。 「エリー。俺は、アレっさんを探すつもりでいる。 報復なんかどうでもいいが、個人的な用があるからな。 ……あのおっさん、絶対前から準備してやがったし、 しかもこれ単なる裏切りじゃねーもん絶対」 そう呟いて、一度言葉を切る。 (-202) 2023/09/29(Fri) 18:00:08 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……ここから先は、聞かなくてもいい。 個人的な用を済ませる為にエリーにも来てもらいたいが。 それに際して、多分、エリーにとって 結構辛い事が起きる……と、思う。わからんけど。 俺が勝手に思ってる辛い事が、 俺が勝手に予想してる内容で、起きるかもしれんってだけ。 ……でも、多分、そうなるし、俺は……エリーを 泣かせるかもしれんが、内容も言うべきだと思ってる」 あなたにとって酷な事を伝える、とそう言っているらしい。 それでも、真っ直ぐに目は見つめたまま。 どんなに優しい嘘でも、あなたに嘘はつきたくない。 「聞きたくないなら、それを尊重する。 ここから逃げて、全部忘れたいって言うなら、 それでもいい。このまま車ぶっ飛ばして どっか別の国で生きるのもアリだ。 俺はそれについていくし、最後まで一緒にいる。 個人的な用だけ済ましたくはあるけど、 エリーが行くなって言うなら、諦めよう」 「けど、俺の話を聞いて、俺のする事を聞いて、 俺と一緒に行くって言うなら、改めて誓うよ。 俺は、お前を全部から守ってやる。 お前の心が痛い時、傍でずっと抱きしめてやる。 お前の足が折れそうな時、必ず支えて一緒に立つ。 ……どうする、エリー。」 (-207) 2023/09/29(Fri) 18:17:49 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「っ…………エリー……」 恋は胸を締め付けるなんて聞いた事があるし、 今までだって同じ相手に何度かそうなった事がある。 でもこれは、きっとそうじゃない。ああ、つまり、 これは本当に、……きついな。 せめて、と。震える手を握る。笑うその顔に近付き、 額を合わせる。目を閉じて、名を呼んで、目を開く。 ミントブルーが少し滲んだ。 「エリー。……ごめん、言うな。」 少しだけ、強く握る。だって、……自分の手も震えている。 「……ファミリーから狙われたら、逃げられない。 今は俺にも、他の誰にも見つかってないが、 時間の問題だと思う。アレっさんもわかってるはずだ」 遠回しに言いたくない。 それは希望の芽を潰しながら歩くようなものだから。 「そのくせ、襲撃は中途半端だ。設備施設に損害? 5人の負傷?アレっさんがやろうと思えば、 下手すりゃこの地域半壊までいけるだろ。なのに 『遠慮』してる。つまり裏切りは見せかけか、 じゃなきゃ……必要な処置って辺りだ」 自分の中でも整理をつけないといけない。 そうじゃなければ、目の前の子も守れない。 (-228) 2023/09/29(Fri) 21:31:10 |
【秘】 歌い続ける カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「それにこの前警察内で会った時、港を落ち着かせるよう 頼まれたし、指揮してもいいとまで言ってた。 メイドマンクラスの名前も出して使えとも」 つまり、完璧な港を扱う、用意周到で実力のある男なのに、 それを俺に渡す時点でもう、管理を投げたようなもの。 或いは、もうとっくに準備を済ませていた。 また、手を握る力が強まった。もう、唇の震えも隠せない。 (-231) 2023/09/29(Fri) 21:39:49 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「エリー。アレっさんは、……死ぬ気だし、 死ぬんだと、思う。殺されるのか、死ぬのかは、 ごめん、わからない。でも、命を落とすと、思う」 「俺より付き合いが長いエリーがどう思ってるかは わかんないけど……俺も、あの人には結構世話になった。 それに、エリーをあの人は世話してくれてたと、 思ってる。……俺、親ってものの事は、正直言って 全然わかんないから、間違ってるかもしれないけど、」 逡巡。迷い。口にしてはいけない、と思う。 でも、口にしないといけない、とも思う。 「 俺、アレっさんの事、エリーの親父さんみたいに思ってる。 俺がこっちの世界に来てから何度も世話になって、 カフェでバカ話して、なんだかんだ可愛がってもらって、 俺も、アレっさんのこと親父みたいに思ってたのかも。 ……アレっさんが、俺らの事どう思ってたかは、 全然わかんないけど。もしかしたら、 なんとも思ってないかもしれないけど、でも、」 「……俺達の親父が死ぬ前に、礼とか、文句とか、 ワガママとか、色々。……言いたい。言っておきたい。 すっげー辛いと思うけど、……言えないより、いいと思う」 「一緒に、言いに行かないか。中身はなんでも、いいから」 (-232) 2023/09/29(Fri) 21:41:26 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……。」 言葉を止める姿をライムグリーンに映す。 互いを映し、認める姿。 きっとどちらにも――震える女が映っていた。 子供の頃からあんまり変わらない二人。 我慢する方と、しない方。 わがままを言えない方と、言える方。 頷くあなたの言葉に、こちらも頷いてみせる。 「言えるよ。エリーなら……言える。 一緒に、言いに行こう」 勇気づけるように、あなたの手にくちづけを。 静かにしかし断言するその瞳には、あなたへの信が満ち。 もう、瞳に揺れはない。これはあなたの隣を行く。 (-248) 2023/09/30(Sat) 0:27:42 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラ「……よし、そうと決まればエリーは少しでも休むんだ。 俺のチームが今、アレっさんの移動先を探してる。 最新の機器でフル稼働でだぞ?楽勝で見つけてやる。 見つけたらすぐ、かっ飛ばして現地に向かうからな。 後はまあ、なんだ。……ノープランだ!はは……」 弱く笑うと額を離して、壁際に座り込む。 護送車の床は少し硬いが、持ち込んだ毛布が2枚。 1枚は床に敷いて、もう1枚はあなたに。おいで、と手招き。 「……なんとかなるよ。なんとか、する。 俺が傍に居る。俺が支える。俺が守る。 ……安心しろ、は無理かもしれないけどさ、 ちょっとはマシだろ?それこそ、この毛布みたいに!」 へら、と笑っておどけたようす。傍らのラップトップには、 絶えず状況連絡の様子が流れ続けていた。 (-249) 2023/09/30(Sat) 0:44:57 |
カンターミネは、歌う。歌うのが怖くとも。 (a23) 2023/09/30(Sat) 0:45:33 |
【秘】 歌うのが怖くとも カンターミネ → 摘まれた花 ダニエラいつもよりずっと控えめな甘え方。 それはどうしても、何かを我慢するようにしか見えなくて。 心の内がじくりと痛んだ。 その手を取って、ゆるやかにいざなう。 引きずる事も、迎えに行くことも簡単だ。 でも、カンターミネは、出来ればあなたの意志で 傍へ来ることを選んでほしかった。 これが強制では、ただの自分のエゴではないと信じたかった。 横たわったその顔にかかる髪を、少し退けてやる。 いつもの寝顔と違う表情にまた、じくり。 小声で運転手に指示を出すと、向き直って。 「……、una regina fulgida e bella al pari d'una fata siede accanto alla culla tua dorata...」 少しでも。ほんの少しでも、今が穏やかであるようにと、 前と同じ子守歌を歌って、怪我のない箇所を撫でさする。 やがて、ラップトップの端末から通知が届くのだろう。 あなたを起こすまでの間、これはずっと傍から動かなかった。 (-314) 2023/09/30(Sat) 16:56:38 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ「5番から8番。23から26、拡大。……違うな」「12番のこれは?」「違う、下水はとっくに抜けてるはずだ」「車の事故の報告」「車種は?」「俺が分かると思うか?」「何の為に情報チームやってんだバカ」「『先生』がキレる前に出せ」「……出たぞ、フィアット500」「渋いな……」「待て、フィアット?」「どうした」「確か黒眼鏡の旦那の店から出てった車の映像、監視カメラに」「回せ」「赤の……フィアット500!」「先生の虫を辿れ!」「45ブロックの監視カメラに該当アリ!」「時系列順に!」「中心部から随分離れてくぞ」「……もしかして、"港"じゃないか?」「一番近くのドローン回せ!」「2番ドローンが向かってる」「映ったか?」「いや……」「待った、橋の辺りに確か虫置いてたろ」「それだ、映像は?」「――通ってる!」「来たぞ!時間は!?」「12分前!」「このコースなら港湾倉庫だ!」「空撮は?」「待ってろ……あ!」「居たか!?」「居た居た居た!赤のフィアット500!」「旦那の港湾倉庫かよ!」「あそこかあ」「そりゃ見つからんわ……」「感心してないで連絡しろ!他の奴より先に先生を送り届けるんだ!」「了解」「あいあい」 情報チームの精鋭が目標を捉えるまでかかった時間は、 他の連中に比べれば随分短かった。 その理由があるとすれば、普段から『先生』が、 あちこちにばら撒いていた虫のおかげだろう。 今回の法案の事件のような、特定個人の会話を聞いたり ある一定の人間だけを追い続けるというような 局地的な精度を要する物には効果が薄い一方で。 『何が、どこを、いつ通過したか?』 そういったものの情報に関しては、カンターミネの虫と、 情報チームの連携による『網』は無類の強さを発揮した。 秘匿回線によるメッセージが届けられ、 カンターミネの目に入るまで数秒。 「――来たか。」 少しの不安と、覚悟を混ぜた呟きが小さく漏れる。 気が付けば外は夕陽で赤く染まっている。 顔に不安が出ないよう"王子様"の顔をしてから、 彼女を出来るかぎり優しく起こす。 そうしておよそ15分のラグを経て、 カンターミネとダニエラを乗せた車が、港へと走り出した。 (-372) 2023/10/01(Sun) 2:45:20 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-374 ずっと傍にいた女は、静かなあなたを見ていたけれど。 ふと、端末の時間を見てああ、と声を上げた。 「……エーコ、肩の鎮痛薬そろそろ切れるから。 新しい軟膏使うな?脱ぐの大変だろうし 勝手に手ぇ突っ込むから、痛かったら――」 固まったように。1秒か、もう少し。空白のあと、口を開く。 「――我慢せずに、言ってくれ」 それが、女にとって今一番口から出て欲しかった言葉、なのかもしれない。襟の辺りからそうっと、震える手を入れる。なんだか、悪い事を言ってしまった子供のように、あなたの表情を窺った。 それで肩になるべく負担のないように留めていたガーゼを少しだけ捲って、一度抜いて。それから軟膏を指にとって、また入れて……。無言のままに、治療を施した。 それから、目的地に到着する前の頃までは、 あなたの手を握ったまま、端末からの報告を読んでいた。 中身はまるで頭に入って来なかったが。 そうしてふと、口火を切る。 「……エリー。ひとつ「お願い」があるんだけどさ」 切り出した一言は、長年の付き合いでも珍しい言葉だった。 (-403) 2023/10/01(Sun) 18:00:26 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-374 >>-403 「もう何も、一切、全部、 我慢しないでほしい ん、だけど……」言葉尻を濁すのもまた、珍しいもので。 「いやその……伝わり辛いよな、えーっと……なんて言ったらいいんだろ……エリーさ、脱獄の時とかそうだったけどちゃんと……そう、わがままっていうか、自分の言いたい事?やだとか、一緒にいて、ってのを言ってくれたじゃんか。俺、あれすっげー嬉しくて……だから、えーと……他のさ。例えば痛いとか、辛いとか、やだとか怖いとかお仕事休みたいとか、そういう細かいのもデッカイのもぜーんぶ、……言ってくれたらなー、とか、思ってたり、するん、だ……よな」 とつとつと語る。ちらと顔を盗み見るような仕草。 やっぱり、悪い事をした子供のように。 「……いや、突然言われても難しいし、『今?』って感じだよな、ごめん。……でもほら、真面目な話って中々しないだろ?それに……その、今の内に少しでも言いたい事を言う練習が出来たら、って思ってたんだけど……」 窓の外を見やる。夕陽が創る海上の赤い世界が揺れていた。 「……まあ、なんだ。俺の為だと思ってさ。言いたい事あったら、言ってよ。なんでも……それこそ、夜ごはん何がいいとか……あー……そう、結婚式いつがいいとか、あればさ」 場を和ませるため、とばかりにそんな事を言って。 言っている内に、車は緩やかに停車する。 「……練習、してくか?その……俺で。 何か言いたい事とか……我慢してる事とか……」 今言った、お願いの内容を。これからする、『お話』を前に。 口を滑らかにする作業は必要だろうか? あなたからの返事があればそのようにしたあとで。 ないのなら、少し待ってから。 わかった、と口にして、車を降りる事だろう。 (-404) 2023/10/01(Sun) 18:03:42 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 額を合わせて言葉を聞けば、常とは逆に。 今度は、こちらが笑顔を張り付かせた。 あなたほどは上手くない。眉は八の字だし、口角だって 上を向いたり、下を向いたり。震えてすらいる。 本当を言えば、あなたの真似は無理だと確信している。 だって、そんな本音が現実になる予感だって消えてない。 信じてはいる、きっと間に合う、あの男がそんな、 と思ってはいるが。保証がないのは、どちらの可能性も同じ。 「……」 お喋りが静かになる。なんとか笑顔を作らないと。 『お姫様の王子様』らしく。せめて、この件が終わるまでは。 (-412) 2023/10/01(Sun) 19:28:08 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 >>412 「……任せとけよ、エリー。 その為に俺がいるんだ」 そう言って、手を取って、車を出た。 その先には、――きっともう、誰もいなかったんだけれど。 後には血の跡だとか、壊れた赤い車だとかばっかりで。 きっとそこには、ここにいた男と、もう一人の誰か以外、 誰の入る余地もなかったんだから、しょうがない。 しょうがないけど、しょうがないけれど、 (-413) 2023/10/01(Sun) 19:34:39 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-410 >>-411 >>-412 >>-413 「……ッの……」 ほんのひと時、ざわりと逆立ったライムグリーンは、 きっと父親のように思っていたからこそ、 「俺達の話くらい聞いて死ねよ、クソバカオヤジーーーーーッ!!!!」 夕陽が去るのと一緒に黒くなっていく、 海に向かってそう叫んだ。 ぜえ、はあ、と息を切らして、……そこでやめた。 空撮ドローンの音がする。間もなくここは 夕陽の代わりに、ドローンの投射光で照らされるだろう。 或いは、それが何か遺された物を照らす事も、あるのかもしれない。 (-416) 2023/10/01(Sun) 19:40:20 |
【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>140 言いたい事もなにもかも、色々あったけど。 結局その役も『父親』に取られたみたいだし。 「はーぁ」 なんて零すため息は少し自信を無くしたような。 でもまあ、それもいいだろ? だって、一番は俺が『王子様』である事じゃなくて。 彼女が前を向いて、歩いて行けるって事なんだから。 「……よっし!叫んだらすっきりしたわ、俺は。あはは! あ、今度さあ、他の奴とメシ食いに行くんだよ。 そこで俺達の結婚発表しちゃおうぜ。 ……あでもエーコがいるのバレていいんかな。 まあ、ダメだったら適当にボカして言うわ。 そもそもそいつら全員、バラしたらどうなるかくらい よーくわかってる奴らだろうしな。さーて、じゃあ――」 「エーコ、帰ろうぜ!」 (-429) 2023/10/01(Sun) 20:50:29 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新